【医師監修】16種類の特定疾病一覧|介護保険制度との関連性や診断基準まで全て解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「特定疾病とは何?」

「特定疾病にはどんな種類があるの?」

このように特定疾病が心配で、詳しく知りたいと思っている方も多いでしょう。

この記事では、特定疾病について、16種類の一覧、介護保険制度との関連性や診断基準まで全てをわかりやすく解説します。

この記事をご覧になれば、特定疾病として診断されて心配な方も、どのように対処したら良いかがよくわかるでしょう。

特定疾病一覧についてざっくり説明すると
  • 特定疾病は16種類の病気
  • 特定疾病に認定されると40歳~64歳でも公的介護保険サービスを利用できる
  • 特定疾病と診断された場合は要介護認定を受けケアプランを立てるとよい

特定疾病とは?

特定疾病」とは、介護保険法施行令第2条に列記されている16種類の病気です。

特定疾病は、次のいずれかに該当します。

  • 一般的に65歳以上に多く発症するが、40歳以上65歳未満でも発症が認められる、罹患率や有病率が加齢と関係している病気
  • 3~6か月以上継続して要介護・要支援状態となる割合が高い病気

どちらも、加齢に伴って生ずる心身の変化によって、要介護状態の原因となる心身障害を生じさせると認められる疾病です。

特定疾病の認定を受けると、本来なら介護保険サービスの対象外の40歳~64歳の人も、介護保険の第2号被保険者として介護認定を受け、公的介護保険サービスを利用できます。

大事なポイントですので、押さえておきましょう。

16種類の特定疾病を一覧で紹介!

16種類の特定疾病の要点を、疾患の原因、発症が多い年齢や性別、発症部位、症状の4点を中心にまとめておきます。参考にして下さい。

がん(末期がん)

がん患者の方のイメージ

  • 疾患の原因:様々な要因が関与していると考えられていますが、中でも ピロリ菌、肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス感染などが原因の癌は、ワクチンや治療による予防が期待でき、多くの癌の原因とされる喫煙・飲酒などの生活習慣は、自らの取り組みで発症リスクを下げることもできます。
  • 発症が多い年齢や性別:40代以降、男性の発症率がやや高いです。
  • 発症部位:2018年の統計では大腸、胃、肺、乳房、前立腺の順になっています
  • 症状:初期はほとんど症状がありません。痛み・食欲低下などの症状が現れるときは、進行がんが疑われます。

特定疾病になるのは末期がんです。医師が、進行性で致死性があり、治癒困難と判断することが要件です。

致死性とは死に至る可能性です。

治癒困難とは、余命6か月程度の状態を指します。症状緩和・直接治癒を目的としない抗がん剤治療は、特定疾病になります。

関節リウマチ

関節リウマチの患者イメージ

  • 疾患の原因:炎症性自己免疫疾患。遺伝的要因、喫煙、感染などが考えられていますが、よくわかっていません。
  • 発症が多い年齢や性別30~50歳代の女性が多いです。
  • 発症部位:全身の関節
  • 症状関節に慢性の炎症を生じ、痛みやこわばり、手足の変形、機能障害が発生します。筋力低下などで、身体を動かしにくくなります。

自覚症状や臨床検査結果を総合して判断されます。自覚症状は、朝こわばりが1時間以上続く、両側の同じ部位で関節炎が起こる、などがあります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状

  • 疾患の原因:脳と脊髄の運動神経細胞の異常による筋萎縮・筋力低下ですが、原因はわかっていません。
  • 発症が多い年齢や性別:中年以降、特に60歳前後の発症が多いです。
  • 発症部位:上肢(手・指先)・下肢、顔・舌・喉、その他全身の筋肉
  • 症状ボタンがとめにくい、つまずく、食べ物がつかえる、呂律がまわらない、などの初期症状があり、徐々に進行し、重い筋萎縮や筋力低下が生じます

末期になるまで感覚障害や眼球運動障害などが認められないのも特徴です。治療方法は確立していません。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因は?食べ物・ストレス・遺伝の影響などを解説

後縦靱帯骨化症

後縦靱帯骨化症とは

  • 疾患の原因:脊柱のほぼ全長を縦走する後縦靱帯が骨のように硬くなり脊髄を圧迫しますが、原因は特定されていません。
  • 発症が多い年齢や性別:50歳前後が多く、男性では女性の倍近く発症しています。
  • 発症部位:頸椎が最も多いですが、胸椎や腰椎にも生じます。
  • 症状:首筋や四肢のしびれ・痛みから、徐々に運動障害・知覚障害が起こります。

重症になると起立歩行、日常生活が困難になることもあります。

上記症状が画像所見による靱帯骨化と因果関係があるとされる場合に特定疾病と認められます。

骨折を伴う骨粗鬆症(骨粗しょう症)

骨折を伴う骨粗鬆症

  • 疾患の原因:加齢などによる骨量減少、栄養不足・運動量低下などで、骨が脆弱になります。骨形成より骨吸収が早い状態です
  • 発症が多い年齢や性別:50代以降、特に閉経後の女性に多くみられます。
  • 発症部位:背骨・股関節・手首・腕の付け根など
  • 症状骨折、背中・腰が曲がる、身長が縮むなどの症状が出るまで、自覚症状はほぼありません。

骨がもろくなり、ちょっと転倒しただけで骨折します。寝たきりになることもあります。

脊椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折・転子部骨折が特徴的です。

また、以下の記事では高齢者によくある大腿骨頸部骨折についてまとめていますので、併せてご覧ください。

初老期における認知症

認知症患者の方のイメージ

  • 疾患の原因:最大原因は加齢による脳細胞の活動低下です。
  • 発症が多い年齢や性別:高齢者の発症が多い認知症ですが、初老期とは」40~64歳が対象です。
  • 発症部位:脳
  • 症状記憶などの認知機能が低下します。理解力や判断力にも影響します。

日常生活・社会生活が困難な状態の総称です。次の3つの症状が代表的です。

  • アルツハイマー型認知症:もの忘れ・意欲低下がみられ、居場所もわからなくなります。
  • 脳血管性認知症:脳の血管障害によって、身体障害や排尿障害を伴うことがあります。
  • レビー小体認知症:意識レベルの変化や幻視が特徴的です。

進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)

パーキンソン病のイメージ

  • 疾患の原因:脳の神経細胞が減少します。原因は解明されていません。
  • 発症が多い年齢や性別:50歳以上60歳代で多く発症します
  • 発症部位:大脳基底核、前頭葉、脳幹などの特定部位
  • 症状下が見づらく転びやすい(進行性核上性麻痺)、筋のこわばり、左右どちらかの動きのぎこちなさ(大脳皮質基底核変性症)、静止時のふるえ(振戦)・筋肉のこわばり・無動)・姿勢障害(パーキンソン病) がみられ、日常では転倒予防が大切です。当初は症状が似ていますが、年単位で次第に特徴的な症状が現れます。

症状が進行すると、日常の動作が次第に緩慢になります。パーキンソン病は、薬剤などの治療効果が高いものが多いです。

脊髄小脳変性症

脊髄小脳変性症のイメージ

  • 疾患の原因:約30%が遺伝性とされ、病因遺伝子の多くが判明していますが、弧発性の場合は不明な点が多く残されています。
  • 発症が多い年齢や性別:小児からの発症もありますが、30−40才代での発症が多いです。
  • 発症部位:小脳
  • 症状歩行時のふらつき、手の震え、呂律がまわらないなどの運動失調、末梢神経症状、自律神経症状があります。

ゆっくり進行しますが、高次機能障害が現れることもあり、進行すると寝たきり状態になります。

特定疾病の認定は、専門医が症状を詳しく診断して総合的に判断します。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症のイメージ

  • 疾患の原因:加齢などによる背骨や椎間板・靭帯などの変形が原因です。
  • 発症が多い年齢や性別:中高年が多いです。
  • 発症部位:脊椎
  • 症状脊柱管狭窄による神経圧迫で、腰痛や下肢のしびれ・筋力低下、尿・便が出にくい膀胱直腸障害などが起こります。

歩行中に足がしびれ、休むと回復する間歇性跛行が特徴的です。

頚椎・胸椎・腰椎の1つ以上の脊柱管が狭小化し、神経の圧迫が確認でき、脊柱管狭小化と症状に因果関係がある場合に限り、特定疾病になります。

早老症

早老症の解説画像

  • 疾患の原因:遺伝子の異常により起こりますが、メカニズムは解明されていません。
  • 発症が多い年齢や性別:20代から起こります。
  • 発症部位:全身
  • 症状若年性白内障、白髪・脱毛、鼻が尖り鳥のような顔つき、骨粗鬆、アキレス腱など軟部組織の石灰化が見られます。

実年齢より早く全身に老化の兆候が生じる疾患の総称です。

ウェルナー症候群とは、早老症を代表する疾患の1つで、これは、世界の発症者の6割が日本人です。進むと、糖尿病、早発性動脈硬化、悪性腫瘍なども起こります。根治法は見つかっていません。なお知能は年相応に経過します。

多系統萎縮症(MSA)

MSAのイメージ画像

  • 疾患の原因:原因は解明されていません。
  • 発症が多い年齢や性別:多くは40歳以降で発症します。
  • 発症部位:自律神経、大脳基底部、小脳
  • 症状:自律神経症状(起立性低血圧、排尿障害)、パーキンソン症状(筋肉のこわばり・ふるえ)、小脳症状(ふらつき、呂律がまわらない、字を書けない))などがあります。

様々な症状が組み合わさって現れます。自律神経症状がメインのシャイ・ドレーガー症候群、パーキンソン症状がメインの線条体黒質変性症、小脳症状がメインのオリーブ橋小脳萎縮症に分けられます。

糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

糖尿病による各種疾病

  • 疾患の原因:糖尿病が原因の合併症です。
  • 発症が多い年齢や性別:糖尿病は40歳を過ぎると増えはじめ、65歳以降で最も多くなります。男女差は見られません。
  • 発症部位:手足、腎臓、目
  • 症状手足のしびれ・痛み、腎機能障害、視力低下などが見られます。

いずれも糖尿病の進行による合併症です。糖尿病だけでは特定疾病とは認められません

3つの合併症それぞれについて細かな基準があり、すべてを満たした場合に特定疾病として認められます。

脳血管疾患

脳血管疾患のイメージ画像

  • 疾患の原因:高血圧や生活習慣病が原因で脳血管が閉塞や破綻などを起こし、血液が脳組織に行きわたらず壊死します。
  • 発症が多い年齢や性別:60代以上の高齢で高血圧の人、生活習慣病がある人がなりやすいです。
  • 発症部位:脳血管・脳神経
  • 症状片側の手足・顔の麻痺やしびれ、言語・意識障害などの高次機能障害が生じ、通常の社会生活が困難になります。

脳の血管トラブルが原因で起こる脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの総称です。

介護保険の適用は、老化に基づく疾患が前提です。外傷による発症は特定疾病とはみなされません

脳血管疾患については、以下の記事でより詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

【医師監修】脳血管疾患とは|症状や脳卒中との違い・予防の方法まで徹底解説

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症のイメージ

  • 疾患の原因動脈硬化により血流が悪くなり、栄養や酸素が手先・足先に届かなくなることが原因です。
  • 発症が多い年齢や性別:糖尿病・高血圧・喫煙等の生活習慣病がある60歳以上の男性が発症しやすいです。
  • 発症部位:手足
  • 症状歩行時に冷感やしびれ感、痛みがあります。進行すると、安静時にも疼痛があり、潰瘍・壊死に至ることもあります。

動脈硬化症があるだけで、軽い症状の場合は、特定疾病になりません。腹部大動脈末梢側、四肢の主幹動脈、下肢の中等度の動脈などに閉塞が確認され、中等症以上の症状を伴うことが条件です。

慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患とは

  • 疾患の原因:たばこの煙などを長期間吸入することが主な原因です。
  • 発症が多い年齢や性別:40歳以上の中高年齢者、特に喫煙習慣のある男性に多く見られます。
  • 発症部位:肺
  • 症状身体を動かした時の息切れや、慢性的な咳・たんが特徴的で、呼吸機能が低下します。ぜんそくのような症状もあります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息などの総称です。気流閉塞が起こっている場合に、介護保険の適用となります。

両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

関節症のイメージ画像

  • 疾患の原因:股関節の形成不全や膝関節の軟骨のすり減りによる炎症で起こります。ケガが原因のこともあります。
  • 発症が多い年齢や性別:40歳以降に発症し、加齢とともに罹患率が高くなります。女性に多いです。
  • 発症部位:両足の膝関節か股関節
  • 症状痛み、腫れ、関節の変形で膝が伸ばし難い、などの症状が見られます。

初期は立ち上がりや歩き始めに痛みが生じたりし、その後次第に痛みが強くなり、活動機能が低下してしまうのです。

膝関節・股関節の変形による苦痛や機能低下が確認される場合に特定疾病とみなされます。

特定疾病と診断されたら?

特定疾病と診断された場合は、どのようにしたらよいのでしょうか。要介護認定とケアプランについて説明します。

要介護認定を受けてみよう

介護保険サービスを利用するためには、要介護認定が必要です。特定疾病と診断されたら、まず要介護認定を受けましょう。

保険適用で介護サービスを利用できるのは、原則として要介護・要支援認定を受けた65歳以上の第1号被保険者です。

40~64歳の第2号被保険者が保険適用サービスを利用できるのは、特定疾病が原因で要介護状態になったときだけです。

要介護の申請に必要なものは?

第2号被保険者が要介護認定を申請する場合に必要なものを、以下にまとめます。

  • 要介護・要支援認定申請書:地域包括支援センターなどの窓口で入手するか、市区町村のホームページからダウンロードします。
  • 主治医の存在を証明する書類(診察券など):それを基に主治医に意見書作成が依頼されます。主治医がいない場合は市区町村の指定する医師の元で診察を受けた後に書類を作成します。
  • 介護保険被保険者証(65歳以上の場合)または医療保険被保険者証(40~64歳の場合)
  • 印鑑

要介護認定については、こちらの記事でより詳しく解説をしていますので、合わせてご覧ください。

要介護認定とは?仕組み・実施方法や認定基準・要介護と要支援の違いまで徹底解説!

ケアプランを立てよう

ケアマネとケアプランのイメージ

ケアプランは、介護サービスの利用計画書です。要介護認定を得ても、ケアプランを市区町村に提出しなければ、介護保険サービスは利用できません。

ケアプランは、通常、ケアマネジャーが、本人・家族と相談して作成します。本人が直面している問題などを聞き取り、必要なサービス、利用時期・回数などを決めます。

ケアマネジャーは、計画通りのサービス提供の確認、ケアプランの見直し、などの事後評価も行ってくれます。

ケアプランは自分自身で作って良いの?

ケアプランは、自分でも作れます。自分で作った場合は、市区町村に届け出て確認を受けます。

しかしながらケアプランを自分で作成することはかなり手間がかかる作業です。サービス提供事業者や受けるサービスの種類・内容などを自分で決めなければなりません。経験がないと、簡単ではありません。

ケアプラン作成をケアマネジャーに頼んでも自己負担はありませんので、相談してみると良いでしょう。

ケアマネジャーはどうやって探すの?

ケアマネジャーは、居宅介護支援事業者の事業所に所属しています。ですから、利用した方の情報なども参考にして、自宅に近いなど、利用しやすい事業所を選ぶとよいです。

事業所のリストは、市区町村の窓口や地域包括支援センター、都道府県の介護サービス公表情報システムで見ることができます。

気軽に相談できる信頼できるケアマネジャーを見つけて、良い関係を築きましょう。

ターミナルケアマネジメントについて

ターミナルケアマネジメントは、末期がんと診断された利用者に対して適用される加算制度です。

ケアプランを変更する際は、通常、サービス担当者会議を開く必要があります。しかし、末期がんでは、ケアプランの見直しも迅速さが必要です。

このため、ターミナルケアマネジメントでは、主治医の助言を得ることが前提でサービス担当者会議を省略できます。

第2号被保険者が介護サービスを利用できるのは?

40歳以上64歳以下の方が介護が必要な心身状態になった場合に、介護サービスを利用できるのは特定疾病が原因のときのみですになります。

要介護認定を受けている人の割合は、65歳以上の第1号被保険者が圧倒的に多いです。第2号被保険者が有料老人ホームなどへの入居を希望する場合、年齢が若いので推定居住年数が長期になるとみなされ、入居一時金が高くなることもあるかもしれません。

さらに、第2号被保険者が要介護認定を受けているのは、16種類の特定疾病に該当する時に限られますが、特定疾病はいずれも難病です。このため、高度な医療ケアが必要になることも多く、医療体制が整っていない施設からは、入居を断られる可能性も高いのが現状です。

第2号被保険者におすすめの介護施設

ここでは、第2号被保険者におすすめの介護施設を、介護保険料や選び方などの観点からご紹介します。

第2号被保険者の介護保険料

第2号被保険者の介護保険料は、各医療保険者を通じて徴収されます。保険料の計算方法や額は、加入している医療保険によって異なります。

健康保険に加入している方の第2号保険料

健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料は、健康保険の保険料に上乗せして徴収されます。医療保険料と同じく、被保険者と事業主が1/2ずつ負担します。

健康保険は、社会保険適用事業所に勤めている方の保険です。協会けんぽと組合健保があります。

国民健康保険に加入している方の第2号保険料

第2号被保険者が国民健康保険に加入している場合の介護保険料は、国民健康保険の保険料に上乗せして徴収されます。

国民健康保険は、個人事業者や従業員、未就業者が加入する保険です。市町村国保と組合国保があります。

第2号被保険者の施設探しのコツは?

第2号被保険者に対応できる施設は多くはありません。インターネットなどで適切な情報を見つけるのは大変です。

気になる老人ホームがあれば直接問い合わせてみるのもよいです。自分で探すのが難しいときは、老人ホーム紹介センターなどを利用するとよいです。

予めやっておくこと

施設選びの前にやっておくべきことがあります。

1つは、自分の疾病の見通しについて正しく理解しておくことです。症状の進行、必要になるケアについて、担当医にきちんと確認しておくようにしましょう。

もう1つは、しっかりした資金計画です。年齢が若い分、入居期間が長くなり、医療費の増高も予想されます。柔軟に対応できる予算・資金計画にしましょう。

探すときに気を付ける点は?

施設を探すときに気を付けるべきことは、以下のような点です。

  • まず、自分の疾病に対応できる医療ケア体制です。疾病についての知識、希望するケアプランの可否、症状が悪化しても入居継続できるか、などを確認しましょう。
  • 次に、施設とのコミュニケーションです。快く相談に乗ってもらえるか、立地や周辺環境も確認しましょう。
  • また、楽しく生活できることも必須です。職員や入居者と良好な関係を保てそうか、体験入居してみるとよいです。

学研ココファンでは、これらの条件を満たす介護施設を多数取り扱っておりますので、ぜひチェックしてみてください。

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要介護度3以上であれば特養も選択肢に

介護保険を利用して入居できる介護サービス施設として、特別養護老人ホーム(特養)と、介護老人保健施設(老健)があります。

特養は、要介護3~5を対象とする終身利用型介護施設で、身体介護を中心に日常生活援助・健康管理を提供しています。

老健は、要介護1~5の方を対象にした医療ケアとリハビリがメインの施設です。入居期間は原則3か月で在宅復帰を目指します。

特養や老健は、民間の有料老人ホームよりも、費用を抑えることができます。特に供養は、費用も安く継続的に利用できるので、要介護度3以上の場合は、選択肢に入れた方がよいです。

介護保険と医療保険どちらを使うの?

介護保険の適用がある65歳以上の第1号被保険者でも、厚生労働大臣が定める、末期がん・多発性硬化症・重症筋無力症などの病気に該当するときは、医療保険が適用されます。

訪問看護

看護師や理学療法士などによる医療的ケアです。地域の訪問看護ステーションから自宅を訪問してくれます。

介護保険と医療保険の対象があり、基本的には介護保険が優先されます。どちらを使うかによって、1回の利用時間や1か月の利用回数に制限があります。 介護保険で訪問看護を利用する場合は、ケアプランで利用回数が決まりますが、基本、利用回数に制限はありません。

一方、医療保険の場合は、週3回以内の利用が原則ですが、厚生労働大臣が定める疾病の場合に限り、週4日以上利用できます。

訪問診療

医師による通院できない方のための医療サービスです。診療や治療、薬の処方・療養相談・健康相談などを行います。

診療計画に基づいて、利用者の自宅を定期的に訪問してくれます。利用できる保険は、医療保険だけです。

往診

訪問診療と同じく、医師が自宅で診察や診療・治療を行ってくれる医療サービスです。

訪問診療と違って定期的な訪問ではなく、患者から依頼があったときに、その都度、医師が訪問します。利用できる保険は、医療保険です。

訪問介護

ホームヘルパーによるホームヘルプサービスです。自宅まで来て食事や排泄などの日常生活の介護を行ってくれます。買物の付き添いや洗濯などの生活援助も可能です。

医療行為はできませんが、要件を満たしたヘルパーには、痰の吸引や経管栄養処置も頼めます。

居宅療養管理指導

医師や看護師、歯科医・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などの専門家が、自宅で健康管理面の指導やアドバイスを行う医療サービスです。

ただし、医師や歯科医師も治療は行いません。利用できるのは、介護保険だけです。

生活保護を受給していたら?

生活保護を受けている場合は、65歳以上と40歳~64歳で扱いが異なります。

65歳以上の場合

65歳以上の場合、生活保護を受けているか否かに関わらず、すべて自動的に介護保険の第1号被保険者となります。

65歳以上で生活保護を受けている場合は、介護サービス費の自己負担分1割が介護扶助でまかなわれます。

40歳以上~65歳未満の場合

生活保護を受けている40歳以上~65歳未満の方は、国民健康保険の被保険者資格がなく、介護保険の被保険者になれません。

ただし、65歳未満の生活保護受給者が要介護状態になった場合は、「みなし2号被保険者」として、全額介護扶助を受けて介護サービスを利用できます。

16の特定疾病の覚え方

16の特定疾病は、難しい病名もありますが、語呂合わせで覚えるとよいです。ケアマネジャーや看護師資格取得に向け勉強中の方は、ぜひ参考にしてください。

パセリ残したガキ外へ

  • パ:パーキンソン病
  • セ:脊髄小脳変性症・脊柱管狭窄症
  • リ:関節リウマチ
  • の:脳血管疾患
  • こ:後縦靭帯骨化症・骨粗鬆症(骨粗しょう症)
  • し:初老期における認知症
  • た:多系統萎縮症
  • が:がん
  • き:筋萎縮性側索硬化症
  • そ:早老症
  • と:糖尿病(合併症)
  • へ:閉塞性動脈硬化症

疾病が2つあるものもあります。変形性関節症と(慢性)閉塞性肺疾患が入っていませんが、「へ」に含めると、覚えやすいです。

巌流へコジ早々にパキン

  • 巌:がん
  • 流:リウマチ
  • へ:ALS
  • コジ:後縦靱帯骨化症
  • 早々:骨粗鬆症(骨粗しょう症)
  • に:認知症
  • パキン:パーキンソン病
  • 咳小便:脊髄小脳変性症
  • 咳今日も: 脊柱管狭窄症
  • 早老化:早老症
  • タケ:多系統萎縮症
  • 闘志:糖尿病性神経障害
  • の血:脳血管疾患
  • 降下:閉塞性動脈硬化症
  • 肺疾患で:慢性閉塞性肺疾患
  • 関節変形:変形性関節症

不規則ですが、覚えやすい方もいるでしょう。

キノコにパセリとタコが、まっ、ソーセージ、へへ

  • キ:筋萎縮性側索硬化症
  • ノ:脳血管疾患
  • コ:後縦靱帯骨化症
  • に:初老期における認知症
  • パ:パーキンソン病ほか
  • セ:脊髄小脳変性症
  • リ:関節リウマチ
  • と:糖尿病(合併症)
  • タ:多系統萎縮症
  • コ:骨粗鬆症(骨粗しょう症)
  • が:がん
  • ま:慢性閉塞性肺疾患
  • ソ:早老症
  • セ:脊柱管狭窄症
  • へ:閉塞性動脈硬化症
  • へ:変形性関節症

やや強引ですが、1つずつ覚えることができます。

シャイなパリ人こっそり変装 初老で農協はいって萎縮どうしよう!

  • シャイ:シャイ・ドレーガー症候群
  • パ:パーキンソン病
  • リ:リウマチ
  • 人:後縦靭帯骨化症
  • こっそり:骨粗鬆症(骨粗しょう症)
  • 変:変形性関節症
  • 装:早老症
  • 初老:初老期における認知症
  • のう:脳血管疾患
  • きょう:脊柱管狭窄症
  • はい:慢性閉塞性肺疾患
  • 萎縮:筋萎縮性側索硬化症
  • どう:閉塞性動脈硬化症
  • しよう:脊髄小脳変性症

状況がイメージしやすい語呂です。がんと糖尿病が含まれていないので、注意しましょう。

特定疾病と指定難病の違いは?

16種類の特定疾病に該当すれば、40歳から64歳までの第2号被保険者でも要介護認定を受けて、介護保険サービスを利用できます。

これに対して、指定難病は、2015年に難病法が成立する前は、特定疾患と呼ばれていたものです。特定疾病が指定難病となる場合もありますが、指定基準が違います。

指定難病は、難病の4条件「原因不明、治療方法未確立、希少な疾患、長期療養を必要とする」に加えて、「患者数が一定の人数に達しない(人口の0.1%程度)、客観的な診断基準が成立していること」が、要件となっています。

2021年7月現在、333疾病が指定難病になっています。指定難病と診断され、「重症度分類等」に照らして病状が一定程度以上の場合医療費助成が受けられます。

16種類の特定疾病一覧についてまとめ

16種類の特定疾病一覧についてまとめ
  • 特定疾病の原因や症状、認定基準は疾病によって異なる
  • 第2号被保険者の施設選びは医療ケア体制・楽しく生活できることなどの点に気を付ける
  • 要介護度3以上の場合は特養も選択肢に入れた方がよい

16種類の特定疾病について、概要と介護保険制度との関連性や診断基準を見てきました。

特定疾病に該当する場合は、自分に合った施設を選んで適切なサービスを受けることが大事です。この記事を参考にされて、より良い方法を見つけていただければ幸いです。

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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