拘縮改善のリハビリ方法は?予防にも効果的な足関節・足首・肩のマッサージ方法を解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「拘縮改善のリハビリ方法には何があるの?」 「拘縮予防の効果があるマッサージ方法を知りたい!」 このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか? 関節が固まることで起きる拘縮ですが、回復させるにはリハビリが欠かせません。 可動域制限を改善できれば自立した生活に繋がり、よりリハビリへの意欲も高まるでしょう。 こちらの記事で、拘縮改善のリハビリや予防に効果がある足関節・足首のマッサージ方法などを解説していくので、参考にしてみてください。

拘縮改善のリハビリ方法についてざっくり説明すると
  • 運動療法や物理療法で治療を進めるのが基本
  • リハビリを行うことで回復させることは可能
  • 関節可動域訓練やマッサージは非常に効果的

拘縮とは

拘縮(こうしゅく)とは、何らかの原因で関節が正常な範囲で動かなくなってしまった状態を指します。 寝たきりの期間が長く続いてしまうと身体を動かせる時間が激減してしまうので、寝たきりをきっかけとして体の関節が固まるケースが多いです。 拘縮になってしまうと身体を自由に動かすことができず、また介護を受ける際にもスムーズな介助ができなくなります。

軟部組織とは

拘縮は、関節が固まり正常に動かなくなる症状です。 関節が固まる原因は様々ですが、一般的に軟部組織の短縮や癒着によって関節可動域が制限されている状態を拘縮と呼んでいます。 なお、軟部組織とは以下の部位の総称です。

  • 骨組織を除く結合組織(腱、皮膚、靭帯など)
  • 血管
  • 筋組織(筋膜、横紋筋・平滑筋)
  • 末梢神経組織(神経節、神経線維)

軟部組織が固まり関節可動域制限されることが「拘縮」

関節を動かさない期間が長期化してしまうと、軟部組織が固まり関節の可動域が狭くなってしまいます。 つまり、関節の可動域制限が起きるので、日常生活でも様々な不便が出てきます。 通常の生活で軟部組織が固まることはありませんが、長期に渡って入院する場合などは要注意です。

関節運動とは

関節を可動域の範囲内で動かしてだんだんと関節の可動域を広げていく運動のことを関節運動と呼びます。 通常であれば関節の曲げ伸ばしを問題なく行えますが、何らかの問題が発生すると関節の曲げ伸ばしが難しくなります。この状態が拘縮です。 特に自覚しなくても、日常生活において自然と関節を動かすことはできますが、老化に伴って関節は固くなってしまうので意識的に関節を動かす意識を持つことは大切です。

拘縮は早めの対処が重要

約2週間に渡って関節を固定した状態や動かさない状態が続くと、関節拘縮が徐々に進行し始めます。 そのため、骨折などでギプスをはめるケースでも拘縮には注意しなければなりません。 関節の固定が4週間になると、周りの組織が癒着してしまい症状の改善が難しくなってしまいます。 関節が拘縮してしまうと、改善することが難しくなってしまうことから、意識的に拘縮予防に励むことが重要です。

拘縮はなぜ大きな問題なのか

日常生活の些細な動きでも私たちは関節を使って動いています。そのため拘縮により関節の可動域が制限されると、日常生活の様々な場面で支障が出てしまいます。 例えば、普段「歩く」動作も股関節が働いており、睡眠中に寝返りをする際にも股関節が運動しています。 つまり、拘縮が起きるとこれらの運動も満足にできなくなってしまう恐れがあるのです。 また、例えば足関節が拘縮すると「立つ」「歩く」という動作が難しくなってしまい、ベッドから車椅子に移乗する際にも体重移動がうまくできずに介護者の負担を増やしてしまいます。 自立した生活が脅かされるだけでなく、介護者の負担も増やしてしまう点も大きな問題点と言えるでしょう。

拘縮の原因

拘縮が起きてしまう原因としては、寝たきり状態になり運動機会が激減することが代表的です。 身体を動かせないと、筋肉や軟部組織にコラーゲンが徐々に蓄積して筋肉を強靭にしてしまい、その結果として関節の柔軟性が失われて拘縮を引き起こしてしまうのです。 なお、拘縮には脳梗塞や麻痺をきっかけにして、抹消神経や中枢神経系の疾患が引き起こす神経性拘縮と、筋肉の可動域制限によって起こる筋性拘縮があります。 どちらの拘縮も、適度なストレッチやリハビリを行うことで予防できるので、日頃から関節を動かすことを意識しつつ運動する習慣を取り入れることが重要です。

拘縮を予防・改善するためのリハビリ

拘縮の症状を改善したり予防するためには「運動療法」と「物理療法」の2つの治療が主となります。 拘縮予防法の中でも最も効果的なのは、椅子から立ったり座ったりする動作を繰り返すことです。 このシンプルなリハビリにも様々な関節の動きが関連しているので、意識的に行うことで拘縮を予防できます。 また、拘縮の発生には筋力の低下も関連しているので「自分でできることは自分で行う」ことを強く意識しましょう。 毎日の努力を継続することが拘縮予防に繋がるので、意識的に運動したり動く習慣を取り入れてください。 なお、以降で解説するストレッチやマッサージは拘縮の改善・予防にも効果的なので、不安がある方はぜひトライしてみてください。

拘縮には関節可動域訓練が効果あり

関節の可動域制限を緩和する関節可動域訓練は、ROM(Renge of motion)訓練とも呼ばれています。 なお、関節可動域訓練には大きく筋肉を伸ばすストレッチと、関節を動かす自動運動・他動運動に分けられます。

関節可動域訓練を行う目安

ストレッチは筋肉が伸びた状態を維持する動作を指しますが、筋肉を伸ばした状態を約30~60秒程度維持しましょう。 繰り返すことで少しずつ筋肉が柔らかくなるので、2~3セット行うとストレッチ効果が高まります。 ストレッチのような関節可動域訓練は、痛みのない範囲で可動域全域で行ってください。 各関節5~10回を1セットとして、1日に2~3セット行うことで高い拘縮予防が期待できます。 なお、痛みや違和感がある場合は中止してください。

ROM訓練は自動運動を優先的に

関節可動域訓練は、まずは自動運動を行うことが基本です。 自動運動で自力で動かせる範囲を確認し、できる範囲は自動運動でケアすることが重要です。 自力で動かせない人は他動運動で足関節を動かしてもらい、痛みのない範囲で大きく動かしていきましょう。

関節可動域訓練のやり方

それでは、具体的な関節可動域訓練について見ていきましょう。

足関節を動かす

足関節のストレッチ

足関節を動かす際には、まず踵を包むようにして足を持ち、前腕を中心に足全体を押して筋肉を伸ばすストレッチをしましょう。 これによりふくらはぎの筋肉が伸びるので、この状態を3~5秒維持してゆっくりと元に戻します。 この動作を繰り返すことで、徐々に筋肉が柔らかくなり足関節の可動域は広がります。

足趾を動かす

足趾を動かす

足趾を動かす際には、まずは足の親指と人差し指を持って上下に動かしてみましょう。 この動作を人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指の容量で全ての指で行っていきます。 各運動5~10回1セットを1日に2~3セット行い、毎日継続することで足首の可動域は広がるでしょう。

肩・肘を動かす

肩・肘を動かす運動

肩・肘を動かす際には、まず仰向けになり痛くない方の手で痛い方の手首を掴みます。 痛い方の腕は力を抜き、痛くない方の腕でゆっくりと頭上に挙げていき、軽い痛みが出た箇所で動きを止めます。 軽い痛みがある状態を10秒キープし、この動作を10回行うことで、肩と肘の関節を動かすことができます。

その他の拘縮改善方法

続いて、関節可動域訓練やマッサージ以外の拘縮改善方法について紹介していきます。

ポジショニング

寝たきり状態が続いている場合、足の下にクッションを入れたり数時間ごとに体位を変えたりすることで、背中にかかる負担を軽減すると同時に拘縮予防に繋がります。 できるだけ動くことを意識し、自動運動や他動運動を実践していきましょう。 寝たきりになると拘縮の発症リスクが一気に高まるので、体位変換などを意識的に行うことが重要です。

軽い動作の練習

拘縮の多くが関節の不動によって発生するので、日常生活を送る中で関節を動かすことが重要です。 座ったり立ったりするなど軽い動作をするだけでも拘縮の発症リスクは抑えることができます。 下半身を使う動きをすると、自然と足首の関節が動かされるので、関節の可動域を維持することができるでしょう。 軽い動作であれば身体への負担も少ないので、積極的に行うことをおすすめします。

マッサージも拘縮予防に効果的

リハビリも重要ですが、医療保険が適用される「訪問マッサージ」の活用も拘縮を改善・予防するのに効果的です。 足関節や足首に痛みがある高齢者はリハビリ不足に陥りがちで、寝たきりになりやすいので訪問マッサージの利用も検討しましょう。 訪問マッサージを受ける場合は医師の「同意書」が必要です。治療は「筋まひ」「筋萎縮」といった症状に対して医療保険が適用されます。したがって介護保険と併用できるので高齢者から多く利用されています。 関節をマッサージしてもらい少しずつ動かすことで、可動域が改善されたり血行が良くなる効果が期待できます。 継続的に訪問マッサージを受けてかなりの改善をするケースもあります。個人差はありますが、訪問マッサージの活用も選択肢の一つに考えておくといいでしょう。

拘縮改善のリハビリ方法まとめ

拘縮改善のリハビリ方法まとめ
  • 関節可動域訓練のリハビリ効果は高い
  • 軽い動作の練習を積極的に行い、より良い生活動作につなげよう
  • 訪問マッサージを利用して、症状改の改善を目指そう

リハビリを積極的にに行い、マッサージなども取り入れることによって症状の改善につなげましょう。 こちらの記事を参考にして、ぜひ拘縮改善に励んでください!

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター副センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 准教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

監修医師の所属病院ホームページはこちら 監修医師の研究内容や論文はこちら

この記事に関連する記事

認知症のリハビリ(作業療法)の内容は?効果や実施方法・注意点まで詳しく解説

【専門家監修】脳梗塞の回復を促すには|後遺症を軽くするリハビリ方法を期間別に紹介

【専門家監修】構音障害・失語症のリハビリ|訓練方法から家族ができるサポートまで解説

【専門家監修】パーキンソン病のリハビリ方法は?リハの重要性や自宅でできる運動も解説

全国の老人ホーム・介護施設・高齢者住宅を探す

介護施設の種類
介護施設の比較
介護施設の費用

上に戻る 上に戻る