【専門家監修】認知症の方を病院に連れていくには?受診のタイミングなどを徹底解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「認知症の人を病院に連れて行くにはどうすればいいの?」

「認知症検査の受診タイミングがよく分からない...」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

認知症の症状を改善したり、進行を遅らせるためには早い段階で診断を受けることが非常に重要です。

しかし、病院に連れて行く口実探しが大変で、「病院に連れて行くにはどうすればいいの?」と悩んでいる方も多いでしょう。

そこで、こちらの記事では認知症の疑いがある人を病人へ連れて行く方法を紹介していきます。

物忘れがひどい人やその自覚が無い人が身内にいる方は、ぜひ参考にしてください。

認知症の方を病院に連れていくタイミングをざっくり説明すると
  • 家族を病院に連れて行くには、心理的なハードルを下げることが重要
  • 早い段階で受診することが、今後の対策を練る上で重要
  • 本人の自覚が無くても、家族が物忘れがひどくなってきたと感じたら受診を検討するべき
  • 地域包括ケアセンターやかかりつけ医など、頼れる人に相談することもおすすめ

認知症の診察のタイミングは?

認知症を診察するタイミングは難しいですが、早い段階からケアすることが重要です。

「家族を病院に連れて行くにはどうすればいいの?」という悩みは良くありますが、診察が遅れると対策も難しくなってしまうので要注意です。

受診は早いほど良い

物忘れなどを発症していても、初期の段階では判断能力がしっかりしていることも多いので、「もう少し様子を見よう」と受診を先延ばしにしてしまいがちです。

特に、アルツハイマー型認知症は症状がゆっくり進行するため、受診のタイミングを逃してしまうケースが多くあります。

受診を先延ばしにした結果、突然徘徊で行方不明になったり、家でボヤ騒ぎを起こすといった事態になってしまうことがあるので、「認知症かも?」と思ったら早期に受診しましょう。

早期受診のメリット

早期に受診することで、病因を踏まえた上で病気に合った薬を投与してもらえます。

初期の認知症は投薬治療で進行を抑えることができるので、適切な受診が非常に重要となります。

また、早期に診断を受けることで他の病気を発見できたり、その病気が認知症を引き起こしている場合は治療することで認知症の症状を軽快させることも可能です。

このように、早いタイミングで正しい治療を開始できれば、家族が認知症を理解して受け入れる準備もできるのです。

認知症の受診を促す方法

促進の概要

早期受診は非常に重要とはいえ、本人が認知症を認めていない状態で無理矢理病院に連れていくことはおすすめしません。

病院へ連れて行くには本人の心理的ハードルを下げる必要があるので、以下のような通院を促す方法を実践すると良いでしょう。

健康診断の流れで診察を受けよう

かかりつけ医院がある場合は、その医療関係者から「健康診断」として通院を提案してもらうと良いでしょう。

信頼できるかかりつけ医院からの提案であれば、本人も受け入れやすいためです。

なお、総合的な健康チェックは健康寿命を伸ばす上で必要なので、積極的に診断を受けましょう。

物忘れなどがひどいと感じたら、「脳の健康チェックも受けましょう」などのように医療関係者から提案をするように働きかけることで受診してくれるケースが多いのです。

他の人の例を話してみよう

病院に連れて行くには、知り合いの人が認知症の診断を受けに行った体験談などを話してみましょう。

「認知症だと思って病院で診断を受けたら、脳血管障害だった」などの話を何度か伝えることで、本人に受診の必要性を感じてもらえることがあります。

人は、自身のことよりも他人事の方が受け入れやすい性質を持っているので、他人のエピソードを離すことで自覚を促すきっかけにもなります。

かかりつけ医に促してもらおう

病院に連れて行くには、かかりつけ医など本人が信頼している第三者から伝えてもらうことが非常に有効です。

家族から受診を促されると抵抗感を感じてしまいがちですが、同じ年代の身近な第三者から「早期発見、早期対応」などの認知症の正しい対策を説いてもらうと、心理的なハードルが下がります。

つまり、診断の重要性を本人に理解してもらいやすいので、かかりつけ医に協力してもらうと良いでしょう。

医療機関の「もの忘れ外来」を利用しよう

医療機関の「もの忘れ外来」を担当する医師の多くは、日本老年精神医学会や日本認知症学会で専門医資格を修得した医師です。

つまり、認知症対策の専門家なので、非常に頼りになります。

もの忘れを主訴に受診した患者には、「老化によるもの忘れ」か「認知症のもの忘れ」かを判断する必要があります。

診断の結果「認知症ではない」というケースもあるので、家族は「最近、物忘れが気になるので一度受診してみよう」という理由で声をかけると良いでしょう。

精神科・脳神経内科・脳神経外科などに相談

認知症の診療は、病院の精神科・脳神経外科・脳神経内科・老年科などが、それぞれの得意な検査や治療方法を生かして診療しています。

どの科も基本的に認知症診断のエキスパートなので、それらの先生に相談するのもおすすめです。

また、その他の内科・外科疾患を抱えている場合は、高齢者専門の総合医療機関(高齢者医療センターなど)を受診すると良いでしょう。

地域包括支援センターを利用しよう

地域包括支援センターは、介護などの高齢者サポートを行っている頼れる相談窓口です。

認知症医療疾患センターや専門医を紹介してくれたり、診察のサポートを行ってくれる場合もあるため、積極的に利用しましょう。

しかし、本人からすると「自分の恥を他人にさらした」と感じてしまい、より意固地になってしまう場合があります。

そのため、まずは家族が相談して、その後に本人が地域包括支援センターで主体的に相談するようにエスコートしてあげましょう。

家族を病院へ連れて行くには、地域包括ケアセンターなどの公的機関を有効活用することをおすすめします。

認知症が診断された場合の告知方法

認知症の診断が出ても、本人に告知をするかどうかはケースバイケースです。

本人が「もしも認知症になったら告知をしてほしい」と話していたとしても、いざ告知をするとショックを受けてしまい、パニックを起こしてしまうケースがあります。

現状では、認知症を完全に治癒させる治療法や治療薬はないので、その先で大切なのは本人が「心安らかに」「誇りをもって」生活することです。

本人の精神状態に合わせつつ、告知するか否かを決め、必要なサポートをしてあげる必要があります。

判断能力が衰えていることを本人が感じており、困惑している場合は告知してあげると良いでしょう。

しかし、告知を受け入れずに告知のショックをずっと引きずってしまう恐れがあるのであれば、必ずしも告知にこだわる必要はありません。

告知後のサポートも大切

まだ症状があまり進行しておらず、判断能力が十分にある場合や年齢が若いケースでは、告知するメリットは大きいです。

判断能力があればその後の自身の希望を表明できるため、家族も意思を尊重しやすいためです。

また、認知症を発症していることを伝えた上で、その後に適切なサポートをすることも重要となります。

本人・家族・医師がチームとして問題を共有した上で、進行予防や生活支援などの対策を考えていきましょう。

本人が自分らしい生活を送るためには、本人の気持ちに寄り添うことが非常に重要です。

認知症を認めない人への対応方法

認知症と診断されても、自身が認知症であることを認めない人がいます。

これは、やり場のない怒りや不安などが原因で、自尊心を守るための自衛行動です。

そのため、家族が強い口調で認知症であることを指摘したり、無理矢理認めさせるのは逆効果なのでやめておきましょう。

本人が認知症と認めない場合は、かかりつけ医にそのことを伝え、適切な対処をしてもらえるよう、家族はできるだけ医者の言うとおりに行動するようにしましょう。

認知症を受け入れられなくても、以下のような有効なアプローチ方法はいくつかあるので焦らず試してみましょう。

声の掛け方を工夫してみよう

医療・介護関係者からは「もの忘れが気になるなら、この脳トレをしよう」「脳を健康に保つためには、このリハビリが効果的」などのように、前向きな気分になれる声かけをしてもらいましょう。

認知症であることを認めない以上、ソフトな態度で接してあげることが重要です。

また、家族が対応する場合であれば、例えば抗認知症薬を服用する際に「頭の働きをよくする薬」「イライラをおさめてくれる薬」などと伝えると、本人の抵抗感も薄まるでしょう。

「認知症」というフレーズを使うと敏感に反応してしまうことがあるので、工夫を重ねてみてください。

病院へ連れていく時の家族の心構え

近年は認知症患者に関して、「徘徊して近所トラブルを起こす」、「スーパーで万引きを繰り返す」などの身近な話を耳にすることが増えているでしょう。

、報道されているニュースを見ると憂鬱になってしまうでしょう。

このように、残念ながら「認知症になったら何もできなくなる」「異常な言動をするようになる」という固定観念や、認知症に関する悪いイメージが広まっているのが実態です。

そのため、本人が認知症であることを認めたがらないのは、仕方がないことであると考えてください。

実際には、認知症患者の全員がそのような事例に当てはまるわけではないので、認知症の正しい知識を共有することが重要です。

一番辛いのは認知症を発症した本人なので、最も身近で頼れる存在であるご家族が適切にサポートしてあげる必要があります。

こちらのトピックで、本人が認知症を認めない際のご家族の心構えについて紹介していきます。

本人に愛情を伝える

「認知症の可能性がある」と認めない人でも、心の中で認知症の自覚をしている人はいます。

確固とした自覚はなくても、漠然と「以前よりも思考力が衰えた」「これからどうなるのか」という認識をしていることがほとんどです。

本人が少しでも不安な気持ちを吐露した場合、家族はその気持ちをしっかりと受けとめてあげましょう。

家族として「あなたが大切な存在である」「心配している」ことを伝え、愛情表現をすることで本人は安心できます。

現状把握し問題解決の優先順位をつける

まずは、本人の生活現状をよく観察して、どのような問題を抱えているのか把握しましょう。

現状を把握しないまま焦って認知症対策を進めても、本当に必要な支援が受けられない可能性があります。

これらの情報は、その後の介護や自立した生活を送る上での重要なものなので、情報を元に優先順位をつけながら適切なサポートをしましょう。

課題や問題を把握することで、どのような介護サービスを利用すればいいのかな判断できるようになります。

認知症について学び協力を募る

家族が認知症に対して「怖い」「面倒くさそう」などのネガティブな考えを持っていると、本人もそれ以上に同じことを感じてしまいます。

まずは認知症の正しい知識を知って不安の軽減に努めましょう。

特に、診察を拒否する本人の気持ちを知るためには、認知症を発症した当事者が著作した書籍が非常に参考になります。

また、地域包括支援センターに相談すれば認知症に関する様々な情報や資料を得たり相談することができるので、積極的に活用するべきです。

家族の孤独や不安を分かち合い、理解してくれる人の存在は大きな励みとなるので、協力者を見つけることも非常に重要です。

自覚が無くても医療機関に連れて行こう

早い段階で家族を病院に連れ出し、しっかり認知症かどうかの診断を受けるのは本人のみならず家族のためにもなります。

高齢社会白書によると、要介護者と同居する介護者の介護時間は「ほとんど終日」と回答した割合が全体の19.3%でした。

つまり、介護者の約20%は自分自身の時間をほとんど確保できないまま日々介護に多大な負担を強いられていることが分かるでしょう。

これは介護者のワガママではなく、客観的なデータに基づいた現実なので、本人も認知症を発症する前から「介護は大変だから、家族にできるだけ迷惑をかけないようにする」ことを意識すると良いでしょう。

なお、当然、要介護度が上がれば上がるほど介護に割かなければならない時間は増えることから、やはり早期に診断を受けることは非常に重要なのです。

また、元気な内から「認知症がひどくなったら、施設に入居する」などの意思表示をしておけば家族も安心できるので、物忘れがひどいと感じたり、ちょっとした認知症の前兆や自覚を感じたら、病院で診断を受けましょう。

認知症が疑われる方を病院に連れていくタイミングまとめ

認知症疑いの方を病院に連れていくタイミングまとめ
  • 本人が「大切にされている」と感じられるようにしよう
  • 診断が出た際に、本人に告知するかどうかも決めておこう
  • 本人の警戒心を解きつつ、上手にアプローチすることが重要
  • 本人と家族のために、物忘れなどの症状が気になったら病院を受診しよう

家族に認知症の疑いがあり、病院に連れて行くには本人の尊厳にも配慮しながら上手にアプローチする必要があります。

自信が無い場合は地域包括ケアセンターやかかりつけ医に頼ることをおすすめします。

物忘れや感情の起伏が激しくなるなど、認知症の前兆を感じ取ったら早い段階で受診することが大切です。

ご本人を病院に連れて行く際に、こちらの記事を参考にして頂ければと思います。

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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