介護休業給付金とは?雇用保険等の支給条件や金額の計算方法・いつもらえるかまで紹介
更新日時 2023/12/11
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「介護休業給付金って何?」
「介護休業給付金ってどうやったらもらえるの?」
親や祖父母など、家族の介護のために仕事を休まざるを得ない人は多くなっています。
しかし、仕事を休むと収入がなくなるため、休職を決断できない方も少なくないでしょう。
そんな方のための給付金として、介護休業給付金が存在します。しかし、詳細な内容をまだ理解していない人も多いでしょう。この記事では、介護休業給付金について詳しく解説します。
「介護のために休職したいけど、お金の問題が…」とお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 介護休業給付金とは雇用保険の制度で、家族の介護のために休職する場合、給料が最大で67%支給される制度
- ハローワークに介護休業給付金支給申請書などを提出する必要がある
- 介護休業給付金の計算式は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%
介護休業給付金とは
介護休業給付金とは、家族の介護のために仕事を休業する際、給料の67%が保証される制度です。
介護のために仕事を休業すると、もちろん満額の給料はもらえないですが67%の給料が保証され、休業期間が終わると職場に復帰することができます。
そのため、介護と仕事の両立を支援する制度だと言えるでしょう。
介護休業は法律で認められた権利で、条件を満たした場合に最大93日まで、最大3回までの分割で支給されます。
また、介護休業給付金は、厚生労働省が管轄する制度であり、国民年金や健康保険に加入している労働者や公務員などが対象となります。
介護休業は職場復帰が前提
介護休業とは、要介護状態の家族を介護するため、休暇を取得できる制度です。
介護休業は、要介護状態の家族を介護するため、目安としては2週間以上仕事を休まなければならない状態のときに取得できます。
また、介護休業は、介護休業終了後に職場復帰をする人が対象であり、介護休業後に退職することが決まっている人は、介護休業を取得することができません。
なお、介護休業を取得するには家族が要介護状態である必要がありますが、厚生労働省によると、要介護状態とは
負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。
出典:厚生労働省
とあります。介護休業を取得するには、この、要介護状態の家族を介護するためである必要があります。
介護休業と介護休暇はどう違う?
介護休業と介護休暇は、同じようなものに思えますが、別のものです。
介護休暇は介護休業と同じく、家族の介護と仕事を両立させるための、法律で定められた権利ですが、介護休業とは休める期間や申請方法に違いがあります。
介護休暇と介護休業は、主に4つの違いがあります。その中でも代表的なものは、取得できる日数です。
比較項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
---|---|---|
取得可能な日数 | 対象家族1人あたり年間最大5日 | 対象家族1人あたり、通算最大93日 |
賃金・給付金 | 原則無給(会社で異なる) | 原則無給(会社で異なる) 条件次第で雇用保険の介護休業給付金制度の利用可能 |
申請方法 | 当日でも申請が可能 | 開始日の2週間前までに、書類を揃えて提出する |
対象者 | 雇用期間が6か月以上 要介護状態の対象家族を介護 |
同一の事業主に1年以上雇用されている 介護休業開始予定日から93日経過しても、6ヶ月は雇用が続く 要介護状態の対象家族を介護 |
このように、介護休暇と介護休業には、申請方法や対象者などに違いがあります。
どのような介護をするのかによって、介護休暇を取るのか介護休業を取るのか決めるのがよいでしょう。
なお、介護休暇についてはこちらのリンクでも解説しております。ぜひご覧ください。
介護休暇とは?介護休業との違いや給付金を受給する条件・申請方法まで解説
介護休業給付金を受け取る条件は?
介護休業を取得できても、介護休業給付金を受けるためには一定の条件を満たしていることが必要です。
またその条件は、労働契約に期間があるかないかで変わってきます。以下で詳しく解説します。
契約期間の決まっていない人
労働契約で期間の決まっていない人の場合、介護休業を開始した日より前の2年間に、雇用保険に加入している時期が12ヶ月以上あることが原則的な条件です。
ただ、この12ヶ月の間に、本人の疾病など事情が変わった場合には、受給要件が緩くなることもあります。
この12ヶ月については、
介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とする。
出典:厚生労働省
と定められています。
また、介護給付金を受け取るためには、介護休業開始前の6ヶ月間に、介護対象者が1か月以上在宅で生活していたことや、介護が必要なことが医師によって診断されていることなど、さまざまな条件があります。
具体的な受給要件については、厚生労働省のホームページなどで確認することができます。
契約期間の決まっている人
契約期間が定まっている人は「介護休業を開始した日より前の2年間に、雇用保険に加入している期間が12ヶ月以上である」という条件に加えて、以下の条件も満たす必要があります。
- 介護休業が開始される時点で、同じ事業主から1年以上雇用されていること
- 介護休業開始予定日から93日が経過する日から6ヶ月経過する日までに労働契約が終わると決まっていないこと
この条件を満たしていないと、介護休業給付金はもらえないので、しっかりと確認をしておきましょう。
介護休業給付金取得の注意点
介護休業期間中に就労した場合、就労した日数が10日間を超えてしまうと、その支給単位期間は介護休業給付金が支給されません。
1支給単位期間とは、介護休業開始日から1カ月のことです。
介護休業開始日から介護休業終了日が1カ月未満である場合は、就労した日数が10日以下であることと、日曜日・祝日なども含め、全日休業している日が1日以上あることが条件となります。
また、介護休業給付金の支給期間は、介護休業期間を超えて延長することができますが、支給期間は最長で介護休業期間の2倍までとなります。
ただし、介護保険法に基づく介護を必要とする状態が続いている場合に限ります。支給期間の延長を希望する場合は、延長申請が必要となります。
介護休業を申請するための条件
介護休業を取得するには、いくつかの条件があります。このトピックでは、その条件について詳しく解説します。
家族との関係
介護休業給付金制度には、介護をする対象家族が決められています。
対象家族の範囲
出典:厚生労働省(同上)
- 配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 子(養子を含む)
- 配偶者の父母(養父母を含む)
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
介護する人がこれらの対象家族に当てはまらない場合には、介護休業を取得することができず、介護休業給付金ももらえないことになります。
介護休業を取得できる条件
先ほど述べたように、介護休業を取得できるのは雇用期間が1年以上であり、要介護状態の対象家族を介護している従業員です。
これは正社員だけではなく、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員も対象となります。
また、介護休業開始予定日から93日経過したあと、6ヶ月以内に労働契約期間が満了すると決まっていない人という条件もあります。
給付金がもらえない人
一方、労使協定によっては、以下のような人は介護休業給付金がもらえないことがあります。
- 入社してから1年未満
- 申し出の日から93日以内に雇用が終了する
- 一週間の所定労働日数が2日以下である
介護をする対象家族の条件が合っていても、これらの条件を満たしていないと介護休業給付金がもらえないこともあります。
介護休業を検討している方は、労使協定もしっかりチェックしましょう。
休業可能な日数
介護休業は、要介護者の対象家族が1人の場合、通算で最大93日間まで休業が取得可能です。
先ほども述べたように、この93日は、最大3回まで分けて取得できます。 例えば、最初が30日間、2回目が40日間、3回目が23日といったように、分けることが可能です。
また、この93日間は、本来の勤務日だけではなく、会社が設けている休日、土日、祝日も含まれます。
介護休業を申請するのはいつ?
介護休業は事業主に対して申請しますが、いつ申請するのが適切なのでしょうか。
それは、介護休業開始日の2週間前までです。
介護休業開始の2週間前までに介護休業開始日と介護休業終了日を決め、勤務先に介護休業支給申請書などの必要書類を提出しなければなりません。
介護休暇とは違い、介護休業の支給申請書は前もって申請しなければならない点に注意が必要です。
介護休業は会社の就業規則に則って取得できるため、会社によってルールが異なる可能性もあります。そのため、まずは休業の旨を会社に相談することをおすすめします。
介護休業給付金の申請期間
介護休業給付金の申請期間は、介護休業終了の次の日から2ヶ月後の月末までです。
介護休業給付金を受け取れるのは休業期間が終了してからになります。例えば7月20日に介護休業が終了した場合、介護休業給付金を申請できるのは7月21日から9月30日です。
申請期間がこのように定められていますので、期間中の申請を忘れないようにしましょう。
ただし、何らかの事情で申請期間中の申請が間に合わなかった場合でも、救済措置は存在します。
厚生労働省によると、介護休業が終わった次の日から2年後が介護休業給付金受給の時効となっていますので、この2年の間であれば、介護休業給付金を受け取ることは可能です。
介護休業給付金の申請方法は?
ここまで、介護休業給付金の仕組みや、介護休業支給申請書についてなど基本情報をお伝えしました。
それでは、実際に介護休業給付金を申請したい場合、どうすればよいのでしょうか。ここからは、介護休業給付金の申請方法について具体的に解説していきます。
給付金支給申請書を提出する
介護休業給付金の支給を受けるためには「介護休業給付金支給申請書 」と「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をハローワークに提出します。
また、これらの書類の内容を証明する添付書類も必要です。
「介護休業給付金支給申請書」の場合は、
出典:厚生労働省
- 被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
- 介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類(住民票記載事項証明書等)
- 介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類
- 介護休業期間中に介護休業期間を対象として支払われた賃金が確認できる書類(賃金台帳等) 介護休業申出書
これらの提出が必要です。
また「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の添付書類は、
「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の記載内容が確認できる書類(賃金台帳や出勤簿等)
出典:厚生労働省(同上)
となっています。
基本的には、介護休業給付金支給申請書などの必要書類は事業所側がハローワークに提出することになっていますが、休業する本人が提出することも可能です。
支給決定通知と支給される時期
支給申請の結果については、支給額等が記載された「支給決定通知書」か、「不支給決定通知書」により通知されます。
介護休業給付金支給申請書には、払い渡しを希望する金融機関について書く欄もあります。
支給決定された場合、介護休業給付金は、この払渡希望金融機関指定届に記載された保険者本人の金融機関の口座に振り込まれます。振り込まれるのは、支給決定後約一週間後です。
なお、振り込みに関する問い合わせは厚生労働省ではなくハローワークですので、間違えないようにしましょう。
実際にもらえる支給額の計算方法
介護休業給付金の金額は、給料の67%です。計算式は、休業開始時賃金日数×支給日数×67% となります。
介護休業中は、月給の80%の金額を目安に支給されることとなっています。そのため、給料の67%に加え、総額で80%の金額になるよう計算されます。
給付額には80%という上限がありますので、介護休業期間中に賃金が支払われると、介護休業給付金が減額されることもあります。 給付額が減るときは、休業中にもらえる給与が増えたときです。
例えば、普段は月給の13%と給付金67%が支給されていたところ、月給の20%がもらえる月があれば、総額で本来の月給の80%になるよう、給付金が60%に調整されます。
また正確な金額は 「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の「就業開始時賃金日額」 で決まります。
介護休業する際のポイント
介護休業給付金を受け取る際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
給付金の受け取りは介護休業後
先ほども述べたように、介護休業給付金をいつ申請するかは間違いやすいので注意が必要です。
介護休業給付金は、介護休業中ではなく、介護休業終了後の翌日から2ヶ月後の月末までに申請します。
介護休業終了時に支給されるので、介護休業中に給付金がもらえると勘違いし、介護期間中の費用について給付金をあてにしていると経済的に困りかねません。
介護休業から開業休業給付金が支給されるまでに時間がかかる点は理解しておきましょう。
複数の家族で給付を受けられる
同じ被介護者に対して介護する人が変われば、それぞれの介護する人が介護休業を取得できます。
例えば、祖父の介護のために夫が93日、妻が93日、孫が93日といったように、介護休業が取得できるということです。
また、同じ被介護者に対して、複数の介護者が同時に介護休業を取得することもできます。
先ほどの例で言うと、祖父の介護のため、父、母、孫の3人が同時期に介護休業を取得することが可能です。
また、支給要件を満たしていれば、3人とも介護休業給付金が支給されます。
同時に他の休業は使えない
厚生労働省ではさまざまな給付金制度があります。しかし、介護休業は他の給付金と同時に受けることはできません。
介護休業の期間中、新たに以下の休業が始まると、これらの休業の開始日前日に介護休業は終了し、介護休業給付金のそれ以降の分は得られなくなります。
- 他の家族の介護休業
- 産前・産後休業
- 育児休業
これらの休業が必要になった場合、全てを同時に取得することができません。 ただ、これらの休業取得後、新たに介護休業を取得することは可能です。
家族間でよく相談し、休業の取得時期をずらせば、条件に当てはまる場合それぞれの給付金がもらえます。
このように、複数の家族の世話をしなければならなくなる「ダブルケア」状態になった方は、いつ休業制度を利用するかご家族とよく相談してみてください。
介護休業給付金制度の利用は原則一度まで
介護休業給付金を受け取れるのは、同じ被介護者につき一度までが原則です。
ただし、93日分の介護休業を最大3回まで分割して使うことは可能です。被介護者の状態に合わせて、休業する期間を調整することができます。
例えば、「今現在被介護者の状態が悪いので、まず40日休み、その後30日、23日」と分けることができます。
また、同じ家族が介護にあたるとしても被介護者が変われば、もう一度介護休業が取得できます。
例えば、Aさんが母の介護に93日の介護休業を取得したあと、父の介護にまた93日の介護休業を利用する、ということが可能です。
休業期間は2週間未満でもよい
厚生労働省によると、介護休業給付金を満たす条件の一つに、
負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族(次のいずれかに限る)を、介護するための休業であること。
出典:厚生労働省(同上)
があります。この「2週間以上にわたり」とは、あくまで要介護者の状態を表すために使われている表現です。
実際には、5日間の介護のあと要介護者が施設に入所したので介護者が職場復帰できたといったケースの場合には、5日分の給付金をもらうことができます。
介護休業給付金についてまとめ
- 給料の67%をもらうことができる制度
- いつ介護休業を申請するかは、介護休業開始日の2週間前
- 介護休業期間中に、育児休業など他の休業と時期がかぶると介護休業給付金はもらえない
- 正確な金額は「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の「休業開始時賃金日額」で決まる
介護休業給付金は、介護と仕事を両立できる大変便利な制度です。雇用保険の制度の一環であり、労働者の権利ですので積極的に利用しましょう。
ただ、受給できる条件が細かく定められているので、自分が当てはまるかわからない方は、しっかり介護休業給付金がもらえるよう会社に相談することをおすすめします。
また、介護休業給付金は、給付されるまで介護終了予定日から2ヶ月以上かかることには注意が必要です。
その他、育児休業など他の休業と同時には取得できないなど、さまざまな条件があります。
介護休業についてしっかり理解してから制度を利用することをおすすめします。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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