認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)とは?対象者や定員・利用条件も紹介

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「認知症対応型通所介護はどんなサービスで、どんな人が対象なの?」

「認知症対応型通所介護に家族を通わせたいんだけど、どうすればいい?」

ご家族に認知症の方がいる場合、専門的な施設でケアを受けさせたいと思うのではないでしょうか。

そこでこの記事では、認知症対応型通所介護について詳しく解説します。認知症対応型通所介護の特徴をしっかりと把握し、効果的に利用できるようにしましょう。

認知症対応型通所介護についてざっくり説明すると
  • 利用条件は認知症と診断されており、要介護1以上と認定されている方
  • 要支援認定を受けている方は、介護予防認知症対応型通所介護の対象者となる
  • 定員は12名以下で、利用者一人ひとりに手厚いケアが可能

認知症対応型通所介護とは

認知症対応型通所介護を利用する高齢者

認知症対応型通所介護とは、認知症の症状があり要介護状態である方に対して、日常生活の世話や生活機能の訓練をするサービスのことです。

認知症対応型通所介護は、デイサービスやグループホームで行っており、家族の介護負担を軽減し、高齢者の方が自宅での生活を続けながら適切なサポートを受けるための重要なサービスとなっています。

一般の通所介護では、認知症に対応できないこともあります。しかし、認知症対応型通所介護では認知症の専門的ケアが受けられることが特徴です。

また、認知症対応通所介護は、日帰りでサービスを提供することにより、

  • 利用者の社会的孤立の解消
  • 利用者の心身機能の維持・回復
  • 家族の介護負担の軽減

といった、いくつものメリットがあります。また、施設側で送迎も行うため、家族は負担を感じることなく、利用者を施設に任せることができます。

認知症対応型通所介護のサービス内容

認知症対応型通所介護では、記憶力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしている要介護者に対して、入浴や食事などの介護や、機能訓練を提供しています。

認知症の症状を緩和し、認識や記憶力を向上させるためのトレーニングなど、高齢者の方の自立した生活の支援が主なサービス内容となります。

認知症対応型通所介護は、2006年に地域密着型サービスの一つとして位置づけられました。そのため、認知症対応型通所介護は、地域と連携したサービスを提供している点も特徴です。

地域密着型サービスとは、認知症をはじめとした要介護度が高い高齢者が地域で引き続き生活ができるよう、市町村が指定した業者が地域住民の方々に対して提供するサービスのことです。

また、地域密着型サービスには「地域密着型通所介護」「認知症対応型共同生活介護」などさまざまなサービスがあり、その中の一つが「認知所対応型通所介護」です。

利用条件と対象者

認知症対応型通所介護の利用条件は、認知症と診断されており、要介護1以上と認定されていることです。

利用を希望する際には、医師による診断書の提出をすることが求められることがあります。

また、その事業所がある市区町村に住んでいる方が対象者となります。ただし、市区町村によっては、他の地区に住む方の利用を認めている場合もあります。

事情は各自治体によって異なりますので、お住まいの自治体にご確認ください。

一方で、認知症と診断されたものの要支援の認定を受けた方の場合、受けられるサービスは介護予防サービスとなりますので、利用できるものは 「介護予防認知症対応通所介護」 になります。

介護サービスは、一般的に要介護1以上の認定がないと受けられないサービスが多いですが、認知症対応型通所介護の場合は、要支援の方でも認知症と診断されていれば介護予防認知症対応型通所介護として利用できるので安心です。

認知症対応型通所介護の施設の種類

認知症対応型通所介護施設は、利用定員が12名以下で、認知症患者の方を対象としている施設です。

また、施設の種類には併設型、単独型、共用型の3種類があり、それぞれに異なった特徴が存在します。

種類 特徴
併設型 特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに併設されている事業所
単独型 認知症対応型デイサービスを行う事業所
共用型 グループホームのリビングなど共用で使用される場所で介護を提供する

このように、3つのタイプがある認知症対応型通所介護ですが、その中でも共用型は大きなメリットがあります。

共用型で介護が行われるリビングなど、利用者たちが集まって共用する場所では、利用者たちのコミュニケーションが生まれます。

それによって、認知症の進行をできるだけ抑えながら介護を行っていくという、ケアの方針をとっているのが、共用型の施設なのです。

認知症対応型通所介護のメリット

認知症対応型通所介護には、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリット3点をご紹介します。

送迎職員と家族に深い繋がりができる

認知症対応型通所介護では、施設の職員が利用者に対して自宅と施設間での送迎サービスを行います。

送迎時は、利用者の家族にとって、利用者の施設での状態や介護の仕方について職員に聞けるよい機会です。

認知症対応型通所介護は利用定員が少ないため、職員が利用者の状態を把握しやすいと言えます。また、送迎も同じ職員が担当することが多いです。

そのため、職員は各利用者の状態をよく把握しており、ご家族への報告もしやすいです。

このことから、認知症対応型通所介護では、家族と職員の結びつきも強くなり、深い繋がりができやすいと言えます。

利用者1人1人に合った食事とレクリエーション

認知症対応型通所介護は少人数制なので、一人ひとりに合った食事やレクリエーションを行うことができます。

利用者の中には、レクリエーションに上手く対応ができなかったり、興味が持てなかったりする方もいます。

そのような場合、その方の趣味が編み物であれば、レクリエーションの時間は編み物に取り組んでもらうといった臨機応変な対応ができるのです。

自主的なレクリエーションの参加を通して、高齢者の健康や機能が改善される効果も期待できます。

また、認知症により食事に時間がかかっても、職員は丁寧に対応することが可能です。

やる気を引き出す生活リハビリテーション

認知症対応型通所介護では、一般的な身体機能のリハビリに加えて家庭の状況を活かした生活リハビリも行います。

例えば、調理や配膳など、利用者本人ができることは出来る限り本人が行うことにより、身体機能の回復だけではなく、本人のやる気も引き出す効果があります。

認知症対応型通所介護で行った生活リハビリを、自宅に帰ってから実践する利用者もいるほどです。

通常の通所介護(デイサービス)との違い

認知症対応型通所介護の利用メリット

認知症対応型通所介護は、通常の通所介護(デイサービス)と異なるサービスです。具体的にどのような点が異なるのか、以降で詳しく解説していきます。

認知症に特化したケアを受けられる

認知症対応型通所介護の管理者は、都道府県が実施している認知症対応型サービス事業者管理者研修を修了しています。

そのため、認知症対応型通所介護に通えば、専門的な認知症ケアを受けることができます。

利用者一人ひとりの状態やそのときの感情を重視し、その方に合った丁寧な認知症ケアサービスを提供することが可能です。

一般的なデイサービスでも認知症の方が通うことは可能ではありますが、職員の専門性が違うため、認知症対応型通所介護の方が安心して通えると言えるでしょう。

定員が少ないので介護が手厚い

認知症対応型通所介護の定員は12名以下です。一般の通所介護よりも定員が少ないため、職員が利用者の方々に対し手厚いケアができます。

認知症の方は、共同作業や大人数での交流が苦手な方もいます。 そのような方が一般的な通所介護を利用した場合、環境が合わないため興奮してしまったり、「行きたくない」と家に閉じこもってしまったりしかねません。

そのようなことを避けるためにも、認知症対応型通所介護では少人数に絞って適切なサービスを提供しているのです。

地域密着型サービスの1つ

認知症対応型通所介護の利用者は、原則として住民票がある地域の事業所に通うことになっています。

また、認知症対応型通所介護の事業所は、地域住民の方々に対してサービス内容を周知することにより地域に密着した事業所であることを目指し、半年に1回、地域の方々も参加できる運営推進会議を開催します。

地域社会や地域の人々と繋がりを持ち続けることで、認知症の方々が社会的に孤立することを防ぐためです。

認知症対応型通所介護の自己負担額の目安

認知症対応型通所介護を利用する際の自己負担額は、事業所の種類によって異なります。

自己負担額は基本的には1割ですが、利用者本人の所得によっては2割、3割負担になることもあります。

また、基本報酬については、以前は2時間ごとの設定でした。しかし、2018年の介護報酬改定に従い、1時間ごとになりましたのでご注意ください。

それらの背景を踏まえ、ここからは、認知症対応型通所介護の単独型、併設型、共用型それぞれの自己負担額について、目安の額を見ていきましょう。

単独型事業所の1割負担額

利用する時間 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
3時間以上4時間未満 540円 594円 650円 705円 759円
4時間以上5時間未満 566円 623円 681円 738円 795円
5時間以上6時間未満 853円 945円 1,035円 1,127円 1,219円
6時間以上7時間未満 989円 969円 1,061円 1,156円 1,250円
7時間以上8時間未満 989円 1,097円 1,204円 1,312円 1,420円
8時間以上9時間未満 1,021円 1,132円 1,242円 1,355円 1,465円

出典:健康長寿ネットより

併設型事業所の1割負担額

利用する時間 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
3時間以上4時間未満 489円 538円 586円 636円 685円
4時間以上5時間未満 512円 563円 615円 666円 717円
5時間以上6時間未満 767円 849円 931円 1,011円 1,094円
6時間以上7時間未満 786円 871円 955円 1,037円 1,122円
7時間以上8時間未満 889円 984円 1,081円 1,177円 1,272円
8時間以上9時間未満 917円 1,015円 1,115円 1,215円 1,314円

出典:健康長寿ネットより

共用型事業所の1割負担額

利用する時間 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
3時間以上4時間未満 265円 275円 284円 293円 303円
4時間以上5時間未満 277円 288円 297円 307円 317円
5時間以上6時間未満 443円 458円 475円 491円 507円
6時間以上7時間未満 455円 470円 487円 503円 519円
7時間以上8時間未満 520円 539円 557円 575円 595円
8時間以上9時間未満 537円 556円 575円 594円 615円

出典:健康長寿ネットより

費用が加算される可能性も

利用する事業所によっては、以下の要素・加算が加わり、自己負担額が増えることもあります。

  • 介護福祉士の専門性が評価されている
  • サービス提供体制強化加算
  • 介護職員処遇改善加算(現行加算)
  • 介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)

詳しい利用料などについては、利用を希望する事業所や、担当のケアマネージャーに確認してください。

内訳 金額
サービス提供体制強化加算Ⅰ 23円/1回
サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 18円/1回
サービス提供体制強化加算(Ⅲ) 6円/1回
個別機能訓練加算 27円/1回
口腔機能改善加算 150円/1回
若年性認知症利用者受入加算 60円/1回
入浴介助を行った場合 40円/1回
栄養改善加算 150/1回

介護予防認知症対応型通所介護とは

認知症対応型通所介護は、要介護と認定された方に対するものですが、要支援の方には介護予防認知症対応型通所介護が提供されます。

介護予防認知症対応型通所介護では、要支援の認知症の方が要介護状態になることをできるだけ予防するための、専門的なケアを受けることができます。

介護予防認知症対応型通所介護の内容

介護予防認知症対応型通所介護は、デイサービスなどの施設において、自宅と施設間の送迎、簡単な健康チェック、生活相談、食事の提供、排泄や入浴を介助するサービスを行っています。

日帰りが基本であり、日常生活の世話や簡単な機能訓練が行われることもあります。また、施設内では、レクリエーションやイベントが行われることもあります。

介護予防認知症対応型通所介護の対象者

介護予防認知症対応型通所介護の対象者は、認知症の症状が明らかに見られ、かつ要支援認定を受けている方です。

ただし、認知症の原因となる神経変性疾患、脳血管性疾患などの疾患が急性である場合には、介護予防認知症対応型通所の対象にはなりません。

急性である利用者がいた場合、事業所側は利用者を病院に委ねるなどの対応をします。

介護予防認知症対応型通所介護の負担費用

介護予防認知症対応型通所介護を1割負担で7時間以上8時間未満利用すると、以下のような料金になります。

施設のタイプ 要支援1 要支援2
単独型 856円 956円
併設型 769円 859円
共用型 482円 510円

出典:健康長寿ネットより

なお、これらの料金には、送迎費が含まれています。食費やおむつ代は自己負担ですので、この表の料金には含まれていません。

また、サービスの内容や加算が加わるケースなど、事業所によって事情が異なるため、料金はあくまで目安です。正確な料金は、利用したい施設にお問い合わせください。

人員の配置基準

人員の配置基準については、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護で共通しています。以下では、両者の人員体制について詳しく解説します。

単独型・併設型の場合

人員体制は、施設のタイプによって異なります。 単独型・併設型の場合、以下のような人員体制になっています。

  • 生活相談員・・・1人
  • 看護職員または介護職員・・・2人
  • 機能訓練指導員・・・1人以上
  • 管理者

生活相談員と看護職員または介護職員は、サービスの提供時間によって1人以上配置する義務があります。

特に、看護職員または介護職員は、1人設置する義務があるのに加え、時間の単位によってはさらに1人以上配置しなければなりません。

また、管理者は、厚生労働大臣が定めている認知症対応型サービス事業管理者研修を修了していることが必要です。

共用型の場合

共用型の場合、提供するサービスである認知症対応型共同生活介護、指定地域密着型特定施設、指定地域密着型介護老人福祉施設の利用者の人数に対して、介護従事者の人数が決められています。

なお、生活相談員、看護職員、機能訓練指導員の設置は規定されていません。

また、管理者は認知症対応型サービス事業管理者研修を修了している必要があります。

認知症対応型通所介護の事業所の選び方

認知症対応型通所介護の事業所は、どのようなポイントに気を付けて選べばよいのでしょうか。

職員によるケアを確かめる

認知症対応型通所介護は、認知症に対する専門性を持った職員が、少人数制ならではの丁寧なケアを利用者一人ひとりに対して行うのがメリットです。

この点ができていない施設であれば通所する意味がありません。利用者さんのストレスが溜まってしまい、通所自体が嫌になり家に閉じこもってしまう恐れがあります。

この点がしっかりしている施設であるかは必ず確認しましょう。

見学に行き利用者の雰囲気を体感する

利用する事業所を決める前に、実際に事業所の見学に行くことをおすすめします。家族だけでなく、可能であれば利用者さんご本人も見学に行くとよいでしょう。

見学するときには、利用者の皆さんが楽しそうにしているか、穏やかな空気が流れているかなどを必ずチェックしましょう。

また、何よりも、ご本人と施設の雰囲気や他の利用者さんたちが合うかどうかは必ず確認するようにしてください。

運営推進会議に参加して利用者と会う

先に述べたように、認知症対応型通所介護の事業所では、地域密着型の施設として、半年に一度運営推進会議を行っています。

運営推進会議には誰でも参加でき、地域住民の参加を歓迎している事業所は多いです。

利用者家族が参加していることも多いので、運営推進会議に参加し、利用者家族に話を聞いてみることもおすすめします。

認知症対応型通所介護についてまとめ

認知症対応型通所介護についてまとめ
  • 単独型・併設型と共用型では、職員の人員体制の基準が異なる
  • 認知症対応型通所介護は地域密着型サービスで、地域との連携が重要視されている
  • 通常のデイサービスとは違い、認知症に関する専門的な知識がある職員が揃っている

認知症対応型通所介護の利用条件・対象者や、サービス内容、利用するメリットなどを解説しました。

認知症対応型通所介護の利用条件は、認知症と診断されている要介護1以上の認定を受けている方のみです。

まずは施設を見学し、利用者ご本人と合う施設がどうか確認し、もし合っていると感じたら、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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