介護療養型医療施設(療養病床)とは|費用・選び方から特養との違い・入所条件まで解説
更新日時 2023/05/01
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「介護療養型医療施設とは、一体どのような施設なの?」
「介護療養型医療施設の費用や選び方のポイントについて知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
介護療養型医療施設とは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同じく介護施設の種類の一つです。
療養病床とも呼ばれていますが、他の施設よりも医療ケアを重点的に行ってくれるので、病状に不安がある人でも安心して利用できます。
こちらの記事では、介護療養型医療施設の特徴や費用、また選び方のポイントについて詳しく解説していきます。
家に要介護者がいる人にとっては、特に有益と言える情報を掲載していますので、ぜひ参考にしてください!
- 特別養護老人ホームや老人保健施設とは、適用される法律が異なる
- 他の老人ホームと比べると、安い費用で利用できる
- 多床室が多かったり、レクリエーションが行われない点に注意
- 介護療養型医療施設は廃止されて、今後は介護医療院になる
介護療養型医療施設(療養病床)とは
介護療養型医療施設(療養病床)とは、比較的要介護度が高い方を対象としている介護施設です。
上のイラストのように、充実しているサービスと充実していないサービスがあるので、事前にしっかりと把握しておきましょう。
手厚い医療処置とリハビリを提供する施設なので、一般的な介護施設よりも医療環境が整っている点が特徴です。
基準により看護師が他の施設より多く配置されており、経管栄養・痰の吸引・インスリン注射などの医療処置も行っています。
多くの介護療養型医療施設は医療法人が運営しており、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同じく公共の介護施設の位置づけとなっています。
また、介護療養型医療施設では、入居者の健康状態や介護度合いに応じた個別ケアプランが作成され、専門的なスタッフがそのプランに基づいた適切な介護やリハビリを提供しています。
レクリエーションなどは行われない
介護療養型医療施設は、看護師・医師・介護福祉士・管理栄養士などが医療や看護を提供してくれる施設です。
病院と同様に24時間体制で医療スタッフが常駐しているため、入居者が健康状態に急変があった場合にも迅速かつ適切な対応が行われることが期待できます。
介護サービスに加えて、各施設で特化しているサービスを受けることができるので、各人にとってベストな施設選びがしやすい点が特徴です。
あくまでも療養や医療の提供が行われるので、一般的な有料老人ホームなどで提供されているイベントやレクリエーションなどは行われないことが多いです。
そのため、イベントやレクリエーションなどを重要視している人は、民間企業が運営している有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などへの入居を検討すると良いでしょう。
おすすめの有料老人ホーム・サ高住はこちら!介護療養型医療施設を利用するメリット・デメリット
介護療養型医療施設は他の介護施設と異なる点も多いので、特徴を把握することが重要です。
こちらのトピックで、介護療養型医療施設のメリット・デメリットを紹介していきます。
メリット | デメリット |
---|---|
一時金が不要で比較的安価 | 医療費用の加算で費用が割高に |
容体が悪化しても一般病棟への移動が容易 | イベントやレクリエーションが少ない |
医療ケア、機能訓練が充実 | 利用は終身制ではない |
介護度が高い方でも入居可 | 相部屋が多いため、プライベートの空間が少ないこと |
利用するにあたっては、以上のメリットとデメリットがあることを念頭に置いてください。
一時金が不要で月額費用も安いので、経済的なメリットが大きい点は大きな魅力です。
また、例えばプライベート空間が少ない点をネックに感じるなら介護療養型医療施設はやめておくなど、自分の価値観と照らし合わせることも重要です。
なお、より詳細な内容については後述します。
【データで見る】介護療養型医療施設の実態
上記のグラフは、厚生労働省が発表している介護保険施設の平均在所日数の推移を記したものです。
特養の平均在所日数が1400日を超えている一方で、療養病床では400日程度となっています。
また、グラフから退所した後の3分の1の利用者が「医療機関」に移っており、4割が「死亡」していることが分かります。
看取りケア・ターミナルケアが行われる
介護療養型医療施設では、利用者の終末期を担う場所として看取りケア・ターミナルケアが行われています。
看取りまで行ってくれる施設は、家族からすると非常にありがたい存在と言えるでしょう、
厚生労働省が発表した「介護サービス施設・事業所調査」2016年版によると、介護療養型医療施設利用者の平均要介護度は4.36でした。
つまり、介護療養型医療施設は自立した生活が難しい介護度の高い利用者が多いため、何らかの医療ケアが必要であることが分かります。
また、介護療養型医療施設に勤めている医師は、利用者の危篤時や看取り時に際しては医療機関にすぐ移動できるようサポートすることもあるため、医療的ケアが非常に手厚い点が特徴です。
介護療養型医療施設と特養・老健との違い
それでは、介護療養型医療施設と特別養護老人ホーム・老人保健施設との違いについて見てみましょう。
紛らわしい点が多いので、しっかりと相違点を把握しておきましょう。
特養と老健は介護施設だが療養病床は病院
特別養護老人ホームや老人保健施設などの各施設は、関係している法律に違いがあります。
介護療養型医療施設(療養病床)は医療法と介護保険法で規定されている一方で、特別養護老人ホーム(特養)は老人福祉法と介護保険法に規定されています。
また、老人保健施設は介護保険法が関連しています。関係する法律が違えば特徴やサービスも異なるため、様々な点で大きく異なる施設同士となっているのです。
対象者の違い
介護療養型医療施設(療養病床)を利用するためには、他の介護保険施設と同様に要介護認定を受けている必要があります。
一方で、特養は介護の必要性が高い人を対象としているので、要介護3以上の方が利用できます。
いずれの施設も、利用者は介護保険制度に基づいて利用することになるので、一定の条件が設けられているのです。
特養に関しては、何らかの理由で介護保険が利用できない場合に、老人福祉法に基づいて利用できるケースがあります。
例えば、虐待によって介護認定の申請がされていなかったり、認定を待っている間に生命の危険が脅かされる場合などが該当します。
一方、老健は、要支援1以上または要介護1以上の方が利用できます。介護保険ではなく、社会保険や医療保険などの保険制度に基づいて利用することになります。
また、老健には医師や看護師が配置されていることが多く、病院に入院する必要がない程度の病気や、慢性疾患の方が利用することが多いです。
介護療養型医療施設は終身制ではない
介護療養型医療施設は食事や排泄の介助などの介護サービスを受けることができますが、あくまでも医療機関です。
急性疾患からの回復期を目指すための医療的ケアが中心となるので、その点には留意しておきましょう。
終身制である特別養護老人ホームと違い、心身が回復した場合は退所を求められることもありえるので、事前に知っておきましょう。
老健にはデイケアサービスがある
老人保健施設は、特養と病院の中間のような位置づけの施設です。
入居だけでなく、ショートステイや理学療法士・作業療法士などの専門スタッフがリハビリを行ってくれたり、デイケアのサービスを提供してくれる点が特徴です。
老人保健施設はリハビリを通じて入所者の在宅復帰をサポートしているので、基本的に3~6ヵ月しか利用できません。
また、老人保健施設は医療を受けられるだけでなく、地域のリハビリ拠点にもなっているので、使い勝手の良さが人気を得ています。
入居一時金・月額等の費用
それでは、介護療養型医療施設の費用について見てみましょう。
介護費用について不安を持っている人は多いと思いますので、事前にしっかり確認しておいてください。
介護療養型医療施設は比較的安い
介護療養型医療施設に入居する際には、基本的に初期費用は発生しません。
また、月額費用も他の介護施設より比較的安く、9~17万円程度が目安となります。
なお、月額費用の内訳としては介護サービス費の数割と生活費となっており、介護保険が適用されるため自己負担の割合は収入によって異なります。
つまり、本人や世帯全員が生活保護を受給していたり、また年収が低ければ居住費や食費は低く設定されるのです。
条件を満たせば、高額介護サービス費などの制度を使って費用負担を軽くできる場合もあるので、詳細については施設に確認しておきましょう。
実際の費用
それでは、2021年4月時点の介護療養型医療施設を利用した際の利用の目安について解説します。
<従来型多少室の費用(30日換算、要介護3の場合)>
内訳 | 利用料 |
---|---|
居住費 | ¥11,310 |
食費 | ¥43,350 |
その他費用 | ¥11,000 |
介護療養型医療施設サービス費 | ¥29,460 |
サービス加算 | ¥1,567 |
合計 | ¥96,687 |
<ユニット型個室の場合(30日換算、要介護3の場合)>
内訳 | 利用料 |
---|---|
居住費 | ¥60,180 |
食費 | ¥43,350 |
その他費用 | ¥11,000 |
介護療養型医療施設サービス費 | ¥30,060 |
サービス加算 | ¥1,567 |
合計 | ¥146,157 |
以上のような月額費用となっていますので、一つの目安として参考にしておくと良いでしょう。 入居一時金が不要であることも考慮すると、他の老人ホームの利用と比べるとかなり安いので、自己負担の費用を抑えられることが分かります。
設備が充実している民間施設の中には、毎月25~30万円近くするものもあるので、やはり介護療養型医療施設はかなり安いと言えるでしょう。
要介護1以上が入所の条件
介護療養型医療施設に入所するためには条件が設けられており、まず医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者(65歳以上)という前提があります。
また、その他にも「感染症など治療の必要な疾患がない」など設けられているケースがあるので、事前に確認しておきましょう。
相部屋になるケースが多いことから、伝染病などの疾患があると施設によっては入居できない恐れがあります。
入居の際には、主治医の意見書や診断書が必要となり、これらの書類を元にして本人の健康状態や介護度を審査して、最終的な入居判断がされます。
65歳以下の方でも介護認定されている場合は入居できる可能性があるので、詳しくは各施設に相談してみてください。
サービス内容と医師の役割
介護療養型医療施設で提供されるサービスはかなり幅広く、以下のものを受けられます。
医療に関連する充実したサービスを受けられる点が大きな特徴です。
提供されるサービス
介護療養型医療施設では、以下のサービスが提供されています。
- 医師の診療
- 看護師、機能訓練指導員によるリハビリテーション
- 医師や看護職員による医療的ケア
(痰の吸引、胃ろう、経鼻栄養、酸素吸入など)
- 介護職員による介護
その他、生活援助に関連したサービスは提供されていません。
快適に利用するためにも、事前に受けられるサービスをしっかりと把握しておくことが重要です。
療養病床での医師の役割
施設にいる医師は、施設で行われている医療ケアを統括しています。
日常の医療ケアがきちんと行われているかの管理や指導はもちろん、投薬・注射・検査・エックス線診断などの画像診断を実施することもあります。
治療に関して不明点や不安な点があれば、医師に相談すると良いでしょう。
療養病床では、手術や放射線治療などの医療行為を除いて、医療サービスが介護保険で給付される特徴があります。
しっかりと適用される保険についても理解しておくことが重要と言えるでしょう。
医師・介護職員等の人員基準
続いて、介護療養型医療施設に規定されている医師・介護職員等の人員基準を見てみましょう。
項目 | 内容(100床あたりの配置人数) |
---|---|
医師 | 3人以上(1人は常勤) |
看護・介護職員 | それぞれ17人以上 |
リハビリスタッフ | 理学療法士又は作業療法士が適当数 |
介護支援専門員 | 常勤1人以上、100:1を標準 |
厳格な配置基準が定められているので、様々な医療従事者が施設内で働き、利用者の生活をサポートしていることが分かります。
そのため、医療体制は他の施設よりも充実しており、万が一の際にも安心です。
本人だけでなく、家族も安心して利用できる点が、介護療養型医療施設の魅力と言えるでしょう。
施設の設備は充実している?
医療ケアが充実していることは分かりましたが、施設の設備についても気になりますよね。
こちらのトピックでは、介護療養型医療施設の設備について紹介していきます。
多床室が多い
介護療養型医療施設は多床室が多いので、プライバシーの確保という観点からは他の施設よりも劣ってしまうのは否めません。
居室、浴室・トイレなどの共同設備、機能訓練室や診療室、食堂と共同リビングなどで構成されています。
また、施設が病院に併設されているケースもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
居室は従来型の多床室が約半数を占めており、まだまだ個室は主流ではありません。
病床が分かれている場合も
入居者100人に対し、医師3人が常勤している介護療養型医療施設では、病床が分かれていることがあります。
入居者を提供サービスごとに重度の要介護者用である「介護療養病床」と重度の認知症患者用である「老人性認知症疾患療養病床」 に分け、専門のスタッフを置くケースも少なくありません。
より専門性の高いサービスを受けたい場合は、このように病床が分かれている施設を検討すると良いでしょう。
入所相談はどこで行う?
療養病床への入居を検討している場合や希望する場合、様々な窓口が相談に乗ってくれます。
施設の選び方は人それぞれですが、判断に迷ったら担当窓口で相談してみましょう。
病院のソーシャルワーカーや役所の介護保険課、地域包括支援センターなどで情報を集めることができます。
現在は病院に入居中で、退院後の住まいを探している場合であればソーシャルワーカーに相談すると転院の手続きがスムーズです。
介護療養型医療施設を選ぶポイント
介護療養型医療施設を探す際に意識するべきポイントはいくつかありますが、選び方のポイントを紹介していきます。
- 相部屋に問題はないか
- 併設病院の評判はいいか
- 料金体系の加算項目が納得できるか
- 見学してみて、雰囲気が合うかどうか
- 医師や看護職員は介護の意識をしているか
- 一般病棟への移動できるかどうか
- 長期入居の是非
またミスマッチを防ぐためにも、実際に見学したり評判や口コミを集める作業は欠かせません。
病院の評判などは、インターネット上での口コミや、地元に住んでいる知人に聞いてみる、などで情報を集めるのも良いです。
信憑性のある情報をピックアップして、自分に合いそうかどうかを確認しましょう。
また、食費・住居費用以外にも医療処置によって費用が想像以上に加算されるケースがあるので、事前に施設側に確認することをおすすめします。
入所手続きの方法
介護療養型医療施設の入所を申し込む場合は、施設に行うことになりますが、施設への入居申込書を記入して窓口に提出することで手続きが進んでいきます。
複数施設へ併願で申し込むこともできるので、気になる施設が複数ある場合は一気に申し込んでも問題ありません。
手続きを進められるかどうか不安な場合は、地域包括支援センターなどで相談してみてください。
介護に精通しているスタッフが丁寧に教えてくれるので、積極的に活用しましょう。
申込みが済んだ後は、施設スタッフ・医師・行政担当者などで構成される委員会が「要介護度」「介護の必要性」「介護者の状況」「待機期間」「資産や収入額」などの要素を総合的に判断して、入所の可否を決定します。
入るのが難しい介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、2012年から新設が認められていません。
また、介護療養型医療施設は2023年度末で完全廃止となる予定で、新たな受け皿として「介護医療院」が2018年4月に創設されています。
介護療養型医療施設は施設数が減少している状況にあり、また定員の9割以上が埋まっている状況なので、今から入居を希望しても最低でも数ヶ月程度の待機期間が必要となります。
そのため、入居を希望する場合は各施設に待機人数や待機期間の目安などを確認し、可能であれば複数施設に申し込んでおくことをおすすめします。
また、併せて民間企業が運営している有料老人ホームの中から、医療体制が充実した施設を探してみてください。
療養病院は廃止され介護医療院が新設される
先述したように、介護療養型医療施設は廃止される予定です。
厚生労働省は、介護療養型医療施設を「介護療養型老人保健施設」「介護医療院」に転換しつつ、療養型を徐々に減らしながら廃止する方針です。
介護療養型医療施設は「医療と介護の境目が曖昧」「医療施設であるのに介護保険が適用される」という制度上の問題や指摘があったため、このような方針となりました。
なお、新たな受け皿となる介護医療院とは医療ケアと生活するための機能を併せ持っている施設で、特徴は以下の3点です。
- 長期療養のための医療ケアが常時必要な要介護者を対象とする
- 終末期医療(看取りやターミナルケア)を提供
- 生活の場としての機能が重要視されている
このように、生活の場として提供しながら手厚い医療ケアを受けられる点、終末期医療にも対応している点が特徴です。
民間介護施設の利用も選択肢の一つ
医療ケアの手厚さを重視するなら、介護療養型医療施設だけでなく民間企業が運営している有料老人ホームも検討しましょう。
看護や医療体制が充実した施設も多くあるので、ぜひ様々な施設について調べて情報を集めてみてください。
学研ココファンの特徴は?
また学研ココファンの施設では、全ての物件で24時間365日ケアスタッフが常駐しており、専門スタッフによる安心のサービスを受けることができます。
介護度の高い方から認知症の方まで、安心の介護対応を提供しており、併設のサービスを利用することで、それぞれのご希望に沿った最適なケアを受けることが可能です。
また学研ココファンが多数展開するサービス付き高齢者向け住宅は、全施設入居一時金0円でご利用いただけますので、費用を抑えてご利用いただけます。
安全・安心への最大限の配慮はもちろん、ご入居者様が暮らしやすいこだわりの設備・居室を用意しておりますので、ぜひチェックしてみてください。
近くのサ高住・介護付き有料老人ホームを探す!介護療養型医療施設の選び方や特徴まとめ
- メリットとデメリットの両面で、施設の特徴を把握することが重要
- 他の施設と比べると諸費用は安い
- 看取りケアやターミナルケアも行われるので、ご家族も安心
- 医師や看護職員に関する配置基準が設けられており、充実した医療ケアを受けることができる
介護療養型医療保険とは、要介護度が高い人を対象とした施設です。
レクリエーションなどは行われませんが、医療ケアが充実しており医師などが常駐しているので、安心して利用できる点が大きな魅力です。
また、看取りケアやターミナルケアなども行っているため、最期まで安心してご利用いただくことができます。
メリットだけでなく当然デメリットもありますので、特徴をしっかり把握した上で、ご利用者様のご意向とも照らし合わせながら実際に利用するか判断することが大事だと言えるでしょう。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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