生活保護でも老人ホームに入居できる?費用や認知症の方の入所条件まで徹底解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「生活保護を受けているんだけど、老人ホームに入れるのかな?」

「生活保護を受けながら老人ホームに入る手続き方法が知りたい!」

生活保護を受給している方は、老人ホームへ入居したいとお思いの方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、生活保護受給者が老人ホームに入るにはどうすればよいのか解説します。

生活保護を受給している高齢者の方やそのご家族の方は、ぜひ参考にしてみてください!

生活保護でも老人ホームに入居できるかについてざっくり説明すると
  • 生活保護受給者、低所得者でも老人ホームへの入所は可能
  • 特別養護老人ホーム(特養)は公的施設なので費用が安い
  • 老人ホームによって入居条件は違うので確認が必要

生活保護を受給中でも老人ホームに入居可能

生活保護の人の支援

生活保護を受けている方や低所得者の方でも、老人ホームに入居することは可能です。

入居できる老人ホームとしては、費用が安い特別養護老人ホーム(特養)が挙げられます

ただ、特別養護老人ホーム(特養)は入居待ちになる可能性が非常に高いため、有料老人ホームの入居も合わせて検討することをおすすめします。

有料老人ホームは一般的に高額なことが多いですが、中には生活保護受給者や低所得者を積極的に受け入れているところもあります。

生活保護受給者や低所得者が入居可能な割合

生活保護受給者向けの料金体系

公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」の調査によると、最も料金相場が高い住宅型有料老人ホームでも、3割近い施設で生活保護用の料金体系を設定していました。

無回答の施設もあったため、実際の割合はさらに高いことが予想されます。

生活保護を受給していると選択肢は限られるもの、入居できる老人ホームは一定数あるのです。

筆頭候補は特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。公的施設であるため、費用の負担が比較的少ない施設となっています。

ただ、少ない費用で住む分入居希望者が多く、多くの特別養護老人ホーム(特養)は満室状態で、入居待ちが多いのが現状です。

また、特養の入居対象者は要介護3以上の方なので、利用者が限られる点には注意が必要です。

特別養護老人ホームに入居を希望する場合は、事前に入居申し込みを行い、空きが出た際には早めに手続きを進めることが重要です。

また、特養以外にも、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、様々な介護施設が存在するため、自身の希望や状況に合わせて選択することが大切です。

生活保護でも個室タイプに入居可能

個室タイプの施設は一般的に費用が高めですが、厚生労働省は2011年から生活保護受給者でも個室タイプに入居可能な制度を導入しています。

運営する社会福祉法人が低所得者の利用者負担を軽減するために自ら費用を負担している場合、厚生労働省がその費用を一部助成することになったのです。

この助成制度のおかげで、生活保護受給者の方が個室タイプに入りやすくなりました。

ただし、個室タイプに入居するためには、その施設に空きがあるかどうかによって入居可能な時期が異なる場合があります。

民間の有料老人ホーム等も検討しよう

有料老人ホームは企業が運営する民間施設です。生活保護受給者を積極的に受け入れている有料老人ホームは

  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム

の3つです。これらは、公的施設である特別養護老人ホーム(特養)よりも費用が高額ではあります。

しかし、一般の介護保険被保険者とは異なり、生活保護受給者は自己負担額0円で介護サービスが受けられます。 また、入居の条件次第では、費用を安く抑えることも可能です。

ただ、中には生活保護受給者の受け入れをしていない施設もあります。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、要介護認定の方だけではなく、要支援認定を受けた方も入居可能な施設です。

介護サービスは施設のものではなく外部のものを利用し、必要なサービスだけを選べます。

そのため、在宅介護を受けていたときに利用していた訪問介護などのサービスを、引き続き利用できるといったメリットがあります。

なお、施設の入居条件によっては、要介護度が高くなると退去しなければならない場合もある点には注意が必要です。

また、入居にあたっては施設ごとに異なる利用料や入居条件があり、入居前にしっかりと確認することが重要です。

家族や友人との付き合いも続けたいという方には、個室タイプの施設よりも、ルームシェアタイプの施設が適しているかもしれません。

グループホーム

グループホームは、軽度または中度の認知症と診断された高齢者の方が入居対象です。

グループホームを運営しているのは、医療法人、社会福祉法人、民間の企業などです。

グループホームは、認知症と診断されている方、かつ要支援2以上の方で、日常生活をある程度営める方が入居しています。

ただ、要介護度が上がったり、医療的なケアの必要性が上がったりしたときには退去しなければならないことには注意が必要です。

また、グループホームは定員が少なく、家庭的な雰囲気があるため、入居者同士やスタッフとのコミュニケーションがしやすく、生活の質の向上につながるとされています。ただし、グループホームには施設によって異なる特色があり、入居前に慎重に比較検討することが重要です。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、要支援の方、要介護度が低い方が入居されることが多く、自由度の高い生活を送ることができる施設となっています。

また、サービス付き高齢者向け住宅の中には介護サービスが充実している施設も多く、要介護5の方まで受け入れている場合もあるので、要介護度が高くなってもそのまま住み続けることも可能です。

学研ココファンの運営するサービス付き高齢者向け住宅でも、24時間体制でケアスタッフが常駐しているほか、高額な入居一時金も不要なので、安い老人ホーム・介護施設をお探しの方はぜひご検討ください。

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介護保険サービスの費用負担の限度額

高齢者への費用負担

生活保護受給者は、介護保険サービスの利用料には介護扶助が適用されるため、介護保険サービスを受けても自己負担はありません。

ただし、介護扶助でカバーできるのは要介護度に応じた介護サービスのみです。介護保険適用外のサービスは自己負担となります。

老人ホームでかかる、介護保険サービス以外の家賃、生活費はそれぞれ住宅扶助、生活扶助として支給され、それを老人ホームに支払います。

支給上限額が地域によって異なる

生活保護費の支給上限額は自治体によって異なります。

希望する施設が見つかっても、支給限度額以上の費用がかかる施設であれば入居できないということになります。事前に、ご自分の生活保護費支給限度額を確認しておきましょう。

なお、生活保護受給者が利用できる老人ホームは、一般的に都心よりも郊外にあるものの方が多い傾向があります。

都道府県別の入居一時金・月額費用の目安

都道府県名 入居一時金 月額費用
北海道 30万円 12万円
岩手県 13万円 11万円
東京都 400万円 25万円
神奈川県 200万円 20万円
長野県 40万円 14万円
愛知県 50万円 15万円
大阪府 80万円 15万円
香川県 20万円 13万円
福岡県 60万円 12万円
宮崎県 3万円 8万円

出典:ロイヤル介護

これはあくまでも相場ではありますが、都市部の方が費用が高く、地方の方が入居一時金、月額利用料ともに安いことがわかります。

年金収入があっても生活保護は受給可能

年金収入があっても生活保護は受給できます。ただし、その場合は生活保護費から年金収入の額を引いた金額を受け取ることになります。

例えば、単身の方の生活保護費が13万円だとします。その方が老齢基礎年金を受給している場合、2021年度の月当たりの年金額は6万5,075円です。

そのため、13万円から6万5,075円を引いた64,925円が生活保護費として支給されます。

生活保護を受けている人の介護保険については、以下の記事で詳しく解説しています。

生活保護でも介護保険は使えるの?保険料の納付義務や介護扶助まで全て紹介

生活保護の扶助制度で費用負担を軽減

生活保護制度には、生活を送るにの最低限必要な費用を補助する扶助制度があります。そのため、老人ホームの入居費を生活保護費で賄うことが可能です。

それぞれの扶助には基準があり、生活保護受給者の生活状況に応じた基準額の範囲で支給されます。

種類 概要
住宅扶助 家賃や地代にかかる費用
生活扶助 食品や衣類の購入費用や光熱水費など、生活にかかる費用
生業扶助 自立のために必要な技能の習得にかかる費用
医療扶助 メガネやコルセットなど医療に関わる物品を含む医療費
介護扶助 介護にかかる費用
出産扶助 出産に必要な費用
教育扶助 義務教育を受けるために必要な費用で、学級費や教材費、給食費などを含む
葬祭扶助 葬儀にかかる費用

これら8つの扶助のうち、重要な扶助である住宅扶助、生活扶助、介護扶助、医療扶助について、以下で詳しく解説します。

住宅扶助は上限内で実費額が支給される

「住宅扶助」では、規定された上限内で家賃の実費が支給されます。厚生労働大臣によって都道府県ごとに限度額が設けられていますが、単身者の場合住宅扶助は月額5万円程度が目安です。

家賃が上限を超えている場合、超えている分は全て自己負担になります。ただし、世帯の人数や障害の有無など、受給者の状態を考慮し、最大1.3倍まで支給されます。

生活扶助は一定の金額が支給される

「生活扶助」は食費や光熱費などの生活費用が一定額支給されます。地域によって上限額が異なりますが、単身者の場合、月額6~7万円ほどが目安です。

毎月実際にかかった費用が実費支給されるわけではなく、一定額が支給される点には注意が必要です。

ただし、一ヶ月以上の入院があった際には「入院患者日用品費」が支給されます。

医療扶助・介護扶助は現物支給される

「医療扶助」「介護扶助」は現物支給され、生活保護の方は介護サービスや医療を無料で受けることが可能です。

また、介護保険適用で利用可能な訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、バリアフリーを目的とした住宅改修費用などは、全て介護扶助が適用されます。

ただし、介護扶助は、介護保険の支給限度額を超えた介護サービス、介護保険適用外のサービスは自己負担となります。

また、医療扶助は、複数の病院で同じ科を同時に受診することはできません。

生活保護を受給する高齢者が入居するには

生活保護を受給している高齢者が老人ホームに入所したい場合には、どのような手順を取ればよいのでしょうか。

以下では具体的な入居の流れを確認していきましょう。

入居希望の際はケースワーカー等に相談

老人ホームに入所したい場合には、まずケアマネージャーまたはケースワーカーに相談します。

生活保護を受給している方が今の住所とは異なる市区町村に転居する場合には、移管という手続きが必要です。

そのため、別の市区町村にある老人ホームに入所したい場合にも移管の手続きが必要になります。

移管とは、生活保護の「管理」を現在住んでいる自治体の福祉事務所から他の福祉事務所に「移す」ことです。

移管は、元の自治体のケースワーカーと移行先のケースワーカー同士で行われます。

入居時に受給額の明細の提示が必要

生活保護の受給額以上の費用がかかる老人ホームに入所する場合には、

  • 受給額の加減設定を加える
  • 費用の不足分を親族に補填してもらう

このどちらかを選択する必要があります。いずれにしても、入居相談時には生活保護受給額の明細を用意し、提示しなければなりません。

また、生活保護の担当職員の方に相談することも必要です。親族の方へもあらかじめ相談をしておくべきでしょう。

老人ホームを転居する場合は移管手続き

先ほども述べたように、生活保護の方が別の自治体に引越しをするときには移管の手続きが必要です。そのため現在老人ホームに入居している方で、今いる自治体と別の自治体にある老人ホームに転居をするときにも移管の申請が必要です。

なお、自治体によっては移管が認められない場合もあります。 他の自治体の老人ホームに入居したい場合には、ケースワーカーなどに相談しましょう。

生活保護受給者の入所にあたっての注意点

老人ホームを検討する高齢者

ここでは生活保護受給者の方が老人ホームに入居する場合に注意しておきたいポイントをご紹介します。

生活保護でも入居可能か条件を確認する

老人ホームの中には、入居条件として「生活保護を受けてないこと」と明記している施設も多数あります。

その場合、たとえその施設の利用料が各種扶助の限度額内であっても入居は不可能です。

そのため、まずは生活保護でも入居可能なのかを確認する必要があります。

また、自治体によって生活保護の受給額は異なりますので、施設を管轄する自治体が変わる場合、変更後の受給限度額の確認も必要です。

入居までに時間がかかる可能性がある

老人ホームは受け入れ人数に制限があります。そのため、生活保護受給者でも入居可能な施設でもあっても、入居待ちになってしまうこともあります。

また、生活保護受給者ということで、入居条件や費用の面でなどの問題があり、入居可能な状態でも実際の入居までには時間がかかる場合も考えられます。

老人ホームに入居したいとお思いの生活保護受給者の方は、ケースワーカーへの相談をなるべく早く始めましょう。

保証人や身元引受人が必要な場合が多い

多くの老人ホームでは、保証人や身元引受人が必要です。入居者が入院するときの手続きや、利用料金の連帯保証人、入居者が亡くなったときの対処手続きなど、保証人が担うことは多数あります。

もし保証人、身元引受人がいない場合には保証会社の利用や、成年後見人を決めることが必要です。

保証人や身元引受人については、各老人ホームで対応が異なりますので、入居を希望する老人ホームにお問い合わせください。

認知症の生活保護受給者の入居について

生活保護受給者で認知症を発症している方でも、老人ホームに入居することはできます。

認知症により一人暮らしが難しい場合には、生活保護を受給しながら老人ホームに入居するのも選択肢の一つです。

入居にはまず要介護認定が条件

認知症などにより介護保険を使って介護施設へ入居するには、要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定を受けるには、お住まいの自治体の役所にある窓口、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターに申請します。

なお、申請時には、主治医が記載する項目がある申請書、介護保険の被保険者証、印鑑が必要です。

申請後には、自治体による訪問調査が行われ、申請者本人や家族へのヒアリングがあります。

その後、要介護認定について判定され、役所から要介護認定の通知が送られてきます。

認知症を疑った際の相談機関

認知症を発症したのではないかと感じた場合、まずは家族や主治医、地域包括支援センターに相談しましょう。

地域包括支援センターとは、地域の高齢者が暮らしやすいよう、包括的なサービスを行う施設ですので、認知症について相談すれば、病院の紹介などの対応をしてくれます。

要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネージャーに相談することもできます。

生活保護でも老人ホームに入居できるのかまとめ

生活保護と老人ホームまとめ
  • 民間の有料老人ホームも生活保護の方の入所は可能
  • 住宅型有料老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅なども検討しよう
  • 認知症を発症している生活保護受給者も老人ホーム入所は可能

生活保護を受給していても入居できる老人ホームはあります。特別養護老人ホーム(特養)がその筆頭ですが、特養はは公的施設であるため人気があり、入居が難しい場合もあります。

民間の施設でも生活保護の方が入居できる老人ホームはありますので、さまざまな施設を検討してみましょう。

また、入居可能な施設があっても、入居まで時間がかかることがあります。思い立ったらすぐにケースワーカーに相談するなど、実行に移しましょう。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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