介護老人保健施設(老健)の費用は?介護度別の料金表や減免制度まで全て紹介

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「老健って費用はどのくらいかかるの?」

「老健って自分に合っているのかな?」

介護老人保健施設(老健)は公的介護施設なので人気が高く、入居したい方や、ご家族の入居施設に老健を選びたい方は多いでしょう。

そこで、この記事では老健の費用の内訳や介護度別の料金表、減免制度など、老健でかかる費用を詳しくお伝えします。

老健に興味をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください!

老健の費用についてざっくり説明すると
  • 介護老人保健施設(老健)とは、介護が必要な高齢者が在宅復帰を目指す施設
  • 要介護度が高いほど介護サービス費は高くなる
  • 介護サービス費や医療費の減免制度がある

老健の費用の内訳

老健の費用内訳

初期費用不要で月額利用料は定額

老健の利用にかかる費用は、おおよそ以下のようになります。

初期費用 月額費用
0 8万〜14万円

介護老人保健施設は、公的な施設です。そのため、入居一時金などの初期費用が不要といったメリットがあります。

また、月額利用料は基本的なサービスについては定額となっていますが、医療サービスなどの利用状況によっては、人によって変化します。

以下では、それぞれの費用の内訳について、より詳細に解説していきます。

介護サービス費

介護サービス費とは、それぞれの利用者の状態に合わせて立案された介護・リハビリテーション計画に基づいて提供されるサービスにかかる費用を指します。

日常生活での自立や機能回復、機能維持のための計画が作られ、それに基づいて利用する介護・リハビリテーションのサービスが決定します。

介護サービス費には、食事介助や入浴介助などが含まれ、要介護度が高くなるほど負担額が増加します。

介護サービス費は介護保険適用であり、要介護度が上がるほど保険による費用負担の上限額も高くなります。

また、介護サービス費は、職員の配置や体制、サービスの内容などその施設の特徴に応じて、「サービス提供体制強化加算」などの加算料金がかかる場合もあります。

滞在費

滞在費は、施設によって、また居室のタイプによって変わります。

また、ベッドが多い高床室、従来型個室、一部屋が少人数制のユニット型個室の順番で料金が高くなります。

滞在費については、介護保険給付の対象外となり、原則として利用者が支払います。

ただし、医療費控除が適用されるため、莫大な費用がかかることはなく、利用者の負担は軽減されることになります。

食費

食費は、施設で提供される食事の料金です。食材費、調理費なども含まれます。

食費についても、居住費同様に介護保険給付の適用外となり、原則的には利用者が支払う仕組みです。

ただ、居住費同様、食費も医療費控除が適用されます。 医療費控除の仕組みとして、年収200万円未満の場合と年収200万円以上の場合では医療費控除の区分が異なりますので注意してください。

その他日常生活費

その他の日常生活費とは、施設ごとに設定されている通信費、理美容代、新聞・雑誌などの日用品の料金です。

入所者は、利用した分だけ実費を負担することになっています。

これらの日常生活費は、介護サービスとは関係ない要素であるため、介護保険も医療費控除も適用することができず、かかった費用は全額自己負担となります。

特別室料

特別室料とは、2人部屋や個室などの特別室に対して加算される居室の利用料金です。

特に、夫婦で2人部屋を使いたいなどの希望がある方が特別室を使いたいケースがありますが、料金が加算されるため注意が必要です。

なお、特別室料とは、病院における差額ベッド代に該当する項目で、料金は施設の設備充実度などに応じて変わります。

医療費

介護老人保健施設では、入所中に必要な医療ケアや薬代は施設側が負担します。

そのため、高額な薬を継続的に利用している方は、施設の負担が大きすぎるため入居を断られることが多い傾向にあります。

老健では、基本的に医療保険と介護保険を同時利用できないため、高額な薬を負担することができないのです。

また、老健では、治療や受診に関しては老健の医師が認めたものでなければなりません。

そのため、医師の許可なく他の医療機関を受診した場合、その医療機関での治療費は自己負担になってしまうので注意が必要です。

入所一時金は不要

有料老人ホームなどでは、入居時に入所一時金を支払うのが一般的ですが、老健では入所一時金はありません。

入居したあと、毎月の介護サービス費など月額でかかる費用を支払っていく仕組みになっています。

有料法人ホームでは入居一時金が数千万~数億円に上ることもあります。しかし、老健は初期費用が0円であることから、多くの人にとって利用しやすい施設です。

【イラストで解説】介護老人保健施設とは

介護老人保健施設とは

介護老人保健施設(老健)は、介護が必要な高齢者の自立を支援する施設です。

厚生労働省では、介護老人保健施設(老健)とは

○在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点となる施設

○リハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設

出典:厚生労働省

としています。

介護老人保健施設(老健)は、医師の管理のもと、看護・介護による医療ケア、作業療法士や理学療法士などによるリハビリテーション、栄養管理・食事・入浴などの日常生活を支援するサービスまで、包括的に提供している施設です。

在宅復帰を目指す施設なので、再び自宅に住むことが可能な環境を整えるため、住宅や福祉用具などの準備などに関するアドバイスも行ってくれます。

また、居宅ケアマネージャーとも密に連携を取って介護サービスを提供しています。

また、現在の老健の区分は 「基本型」「加算型」「在宅強化型」「超強化型」「その他」 の5つに分かれています。

このうち、在宅復帰率や重介護者の割合の要件で在宅復帰に貢献しているのは 「超強化型老健」 です。

超強化型老健は、利用者が自宅での生活を再開できるように、住宅や福祉用具の準備に関するアドバイスやサポートも行っています。

また、居宅ケアマネージャーとの緊密な連携により、利用者の在宅復帰をサポートするための適切なケアプランの策定や必要な支援サービスの提供を行っています。

老健施設のタイプをそれぞれ紹介

老健の居室タイプ

老健施設の居室タイプには、さまざまな種類があります。「従来型個室」「ユニット型個室」「多床室」「ユニット型個室的多床室」の4種類です。

なお、ユニット型とは、少人数のグループを一つの生活単位としてケアする「ユニットケア」を実現するための構造を指します。

ユニットはフロアなどで分けられており、居室とリビング、キッチンなど共用部もあることが特徴です。

同じ施設でも、居室タイプによって費用が異なりますので、居室タイプそれぞれの特徴だけでなく、費用面でもよく検討する必要があります。

下記ではこのタイプごとに費用について解説していきます。

従来型個室の老健の費用

従来型個室とは、一つの部屋にシングルベッドが一つ置かれ、一名だけで生活する個室です。「従来型」とあるように、古くからあるスタイルの個室となっています。

従来型個室は、他の部屋とは壁で仕切られているためプライバシーを守ることができる点は大きなメリットです。また、面積は10.65㎡以上との指定があります。

この見出しでは、在宅強化型の従来型個室の月額費用を紹介します。従来型個室の場合、月額11.6~12.1万円の費用負担が想定されます。

介護度別料金表

従来型個室・在宅強化型の老健では、一般的な料金例は以下のようになっています。

<従来型個室【在宅強化型】>

介護度 施設介護サービス費 居住費 食費 合計
要介護1 22,680円 50,040円 43,350円 116,070円
要介護2 24,840円 50,040円 43,350円 118,230円
要介護3 26,700円 50,040円 43,350円 120,090円
要介護4 28,380円 50,040円 43,350円 121,770円
要介護5 30,090円 50,040円 43,350円 123,480円

参考:LIFULL介護(2022年4月1日時点)

多床室の老健の費用

多床室は病院の病室に近い形態で、多数の介護スタッフが多数の入居者のケアを行っています。集団ケアを採用することによって、より効率的な生活のサポートができます。

部屋は、1つの部屋に2~4台のベッドが配置され、入居している方々が一緒に寝起きする大部屋タイプです。

メリットとしては、賃料が安いことが挙げられます。

これは、入居者がスペースを共有することによって、部屋単位の費用を抑えることができるためです。デメリットとしては、周りをカーテンで仕切っているもののプライバシーの確保が難しいことが挙げられます。

また、多床室の場合、月額7.9~8.7万円の費用負担が想定されます。

介護度別料金表

多床室・在宅強化型の老健での一般的な料金例は以下のようになっています。

<多床室【在宅強化型】>

介護度 施設介護サービス費 居住費 食費 合計
要介護1 25,080円 11,310円 43,350円 79,740円
要介護2 27,330円 11,310円 43,350円 81,960円
要介護3 29,220円 11,310円 43,350円 83,880円
要介護4 30,900円 11,310円 43,350円 85,560円
要介護5 32,550円 11,310円 43,350円 87,210円

参考:LIFULL介護(2022年4月1日時点)

ユニット型個室の老健の費用

ユニット型個室とは、入居者10人ほどで「ユニット」を作ることで、一つの生活単位とするものです。

共用設備をメンバーで共有し、家庭的な雰囲気の中で生活できることが特徴です。

今後、新規で施設を作るときには「ユニット型」での建設が義務付けられています。

ユニット型個室の場合、月額12.8~13.6万円程度の費用負担が想定されます。

介護度別料金表

ユニット型個室・在宅強化型の老健での一般的な料金例は以下のようになっています。

<ユニット型個室【在宅強化型】>

介護度 施設介護サービス費 居住費 食費 合計
要介護1 25,230円 60,180円 43,350円 128,760円
要介護2 27,450円 60,180円 43,350円 130,970円
要介護3 29,340円 60,180円 43,350円 132,870円
要介護4 31,050円 60,180円 43,350円 134,580円
要介護5 32,700円 60,180円 43,350円 136,230円

参考:LIFULL介護(2022年4月1日時点)

ユニット型個室的多床室の老健の費用

ユニット型個室的多床室は、サービスや設備はユニット型個室と同じです。

ユニット型個室タイプと異なっている点は、居室の大部屋を間仕切りで区切り、それによって個人用のスペースを確保している点です。

また、ユニット型個室よりも、ユニット型個室的多床室の方が、料金が安いこともメリットだと言えます。

ユニット型個室的多床室の場合、月額11.8~12.6万円程度の費用が想定されます。

介護度別料金表

ユニット型個室的多床室タイプの老健での、一般的な料金例は以下のとおりです。

介護度 施設介護サービス費 居住費 食費 合計
要介護1 25,230円 50,040円 43,350円 118,620円
要介護2 27,450円 50,040円 43,350円 120,840円
要介護3 29,340円 50,040円 43,350円 122,730円
要介護4 31,050円 50,040円 43,350円 124,440円
要介護5 32,700円 50,040円 43,350円 126,090円

参考:LIFULL介護(2022年4月1日時点)

ショートステイの場合の費用は?

ショートステイを利用することで、短期間だけ老健に入所してサービスを受けられます。

家族の方が病気、冠婚葬祭、旅行などさまざまな理由で、一時的に介護ができない場合に利用したいサービスです。

ショートステイには、比較的状態が安定している方を入居対象とする 「短期入所生活介護」 と、医療の必要性が高い方を入居対象とする 「短期入所療養介護」 の2種類があります。

「短期入所生活介護」は特別養護老人ホーム(特養)でも提供できますが、「短期入所療養介護」を提供できる介護施設は老健だけです。

ショートステイは介護保険の給付対象のサービスであり、ショートステイで受けられるサービスは、入所で受けられるサービスとほぼ変わりません。

例えば、リハビリや介護・看護のサービスを、他の入所者と同じように受けられます。

介護度別料金表

従来型個室、多床型、ユニット型個室の要介護度別の料金は、以下のようになっています。

要介護度 従来型個室 多床型 ユニット型個室
要介護度1 752円 827円 833円
要介護度2 799円 876円 879円
要介護度3 861円 939円 943円
要介護度4 914円 991円 997円
要介護度5 966円 1,045円 1,049円

料金は、短期入所療養介護を自己負担1割で利用した場合です。

老健の介護サービス加算の種類

介護サービス加算とは、サービス内容によってかかる追加料金のことです。

同じ老健でも、より手厚いサービスを提供しているところではサービス加算が増えるので、入居者の負担も増えます。

自己負担は、収入に応じて1割、2割、3割のどれかになります。

介護サービス加算は、具体的にどのくらいの料金なのか、重要な加算について抜粋しました。

加算名 算定要件 特筆事項 単位(金額)
夜間職員配置加算 夜勤を行う看護職員又は介護職員の数が、20対1以上でかつ2超(利用者等の数が41以上の場合) 24単位/日日
短期集中リハビリテーション実施加算 医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、20分以上の個別リハを1週に月概ね3日以上行った場合(所定の要件を満たす例外を除き、入所の日から起算して3月以内に限る) 240単位/日
認知症短期集中リハビリテーション実施加算 精神科医師等によって、認知症であってリハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断された入所者に対して、医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が週に3日を標準として20分以上の個別リハを行った場合(入所の日から起算して3月以内に限り、1週に3日を限度とする 240単位/日
認知症ケア加算 日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められる認知症の入所者に対して、認知症専門棟において認知症に対応した介護保険施設サービスを行った場合 76単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅰ) 日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者に対し、専門的な認知症ケアを子なった場合 入所者総数のうち、対象者の割合が50%以上
認証介護実践リーダー研修修了者を、対象者が20人未満の場合は1人、20人以上の場合は10人ごとに1人以上配置
3単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅱ) (Ⅰ)の要件を満たし、かつ認知症介護指導者研修修了者を1人以上配置
介護職員、介護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定
4単位/日
療養体制維持特別加算 転換前に4対1の介護職員配置を施設基準上の要件とする介護療養施設サービス費又は医療保険の療養病棟入院基本料1の施設基準に適合する病棟であったものの占める割合が2分の1以上である場合であって、転換後も看護・介護職員の4対1配置を維持していること(療養型老健のみ、平成30年3月31日までの間に限る) 27単位/日
初期加算 入所日から起算して30日以内に限る 30単位/日
入所前後訪問指導加算(Ⅰ) 入所期間が1月を超えると見込まれる者の入所予定日前30日以内又は入所後7日以内に退所後生活する居宅を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合(1回を限度) 施設サービス計画の策定及び診療方針を決定を行った場合 450単位/日
入所前後訪問指導加算(Ⅱ) 入所期間が1月を超えると見込まれる者の入所予定日前30日以内又は入所後7日以内に退所後生活する居宅を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合(1回を限度) 施設サービス計画の策定及び診療方針の決定にあたり、医師、看護職員、支援相談員等が会議を行い、生活機能の改善目標を定め、退所後の生活にかかる支援計画を策定した場合 480単位/日
栄養マネジメント加算 常勤の管理栄養士を1名以上配置
入所時に栄養状態を把握し、医師、管理栄養士その他の職種が共同して栄養ケア計画を作成
14単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ 介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が60%以上 18単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ 介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が50%以上 12単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 看護・介護職員のうち、常勤職員の占める割合が75%以上 6単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅲ) 短期入所療養介護又は介護老人保健施設の利用者等を直接処遇する職員の総数のうち、勤務年数3割以上の者の占める割合が30%以上 6単位/日

参考:厚生労働省

老健の減免制度

低所得者の方も施設利用ができるよう、世帯の所得に応じて居住費や食費を減免する制度がさまざま設けられています。

老健の費用減免制度には、国や地方自治体によって異なる規定があります。例えば、特定の所得基準を満たす世帯に対して一定割合の負担軽減や減免が行われる場合もあります。

ただ、老健の費用減免制度については、手続きをしない限り支給や減免はされないため注意が必要です。

特定入所者介護サービス費

低所得者の方を対象にした介護サービス費は、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、短期入所療養介護では、日額でどのくらいの費用がかかるのかまとめました。

費用の種類 居室タイプ 基準費用額(日額) 負担限度額(日額)
第1段階
負担限度額(日額)
第2段階
負担限度額(日額)
第3段階
食費 1,380円 300円 390円 650円
居室費 ユニット型個室 1,970円 820円 820円 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,640円 490円 490円 1,310円
従来型個室 1,640円 490円 490円 1,310円
多床室 370円 0円 370円 370円

出典:厚生労働省

特定入居者介護サービスは、介護保険施設入所者を対象にしています。世帯全員が住民税非課税であり預貯金等が1,000万円以下(夫婦は2,000万円以下)の入居者に対し、負担限度額を超えた額があれば、介護保険から支給されます。

なお、特定入所者介護サービス費の制度を利用するには、負担限度額認定が必要です。この制度を利用したい場合は、市区町村に申し込んでください。

また負担限度額は、所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって異なります。

介護保険料で設定されている所得段階の第4段階の方(本人が住民税非課税で、かつ前年の合計所得金額と課税年金額の合計が80万円以下)の方には、負担限度額はありません。

高額介護サービス費

高額介護サービス費の対象者と上限額は、以下の通りになっています。

対象者 上限額
生活保護を受給している方等 1万5,000円(世帯)
世帯全員が市区町村民税を課税されておらず、前年合計所得金額+公的年金収入額80万円以下 2万4,600円(世帯)
1万5,000円(個人)
世帯全員が市区町村民税非課税 2万4,600円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 4万4,400円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 9万3,000円(世帯)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 14万0,100円(世帯)

出典:厚生労働省

高額介護サービスとは、一ヶ月に支払った介護サービス費の合計が負担限度額を超えた場合に利用できます。

世帯(個人)が使用した介護サービス費の合計額が、所得に応じて分けられた区分ごとの上限額を超えたとき、超えた分の額が介護保険から支給されるという仕組みです。

住民税の世帯課税を受けている、年収約770万円ほどの世帯でも、介護サービス費の上限は一ヶ月あたり4万4,400円ということで、多くの世帯にとって便利なサービスです。

なお、2021年8月から高額介護サービス費の基準が改訂され、上限額が変更になっています。新しい上限額をご存知ない方は、厚生労働省のHPでチェックしてみてください。

自治体ごとの地域支援事業

各自治体では、老健を含む介護施設の利用において、地域支援事業として減免制度を実施していることがあります。

具体的には、交通費助成、紙おむつの支給やリハビリ用の福祉用具の貸し出し、購入代金の助成など自治体によって独自のサービスがあります。

お住まいの地域でどのようなサービスが提供されているのか、担当窓口に問い合わせて確認することをおすすめします。

高額医療高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度の仕組み

高額医療・高額介護合算療養費とは、1年間の介護サービス費と医療費の各自己負担額が高額になったときに適用される制度です。

所得に応じて定められた自己負担限度額を介護サービス費・医療費が超えてしまった場合、超えた分の金額が戻ってきます。

なお、介護サービス費、医療費の片方だけが高額であってもこの制度は利用することができます。

老健のメリット・デメリットは?

老健を利用することにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでは、老健のメリット・デメリットを各3点ずつご紹介します。

老健のメリット

  1. 民間の介護施設よりも安い
  2. リハビリサービスの質が高い
  3. 要介護度が低くても入居可能

老健のメリットは、まず民間の介護施設よりも安い点が挙げられます。公的な施設なので、入所一時金などの初期費用は掛かりません。

その他の費用についても、介護保険が適用されるので、介護サービス費の自己負担額は1~3割負担で済みます。

また、質の高いリハビリサービスが受けられるのも老健の特徴です。理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職スタッフが常勤しているので、各利用者向けに作られた計画書に基づき、機能訓練が受けられます。

さらに、老健は要介護度1や2の方でもあっても入所できる点が魅力です。特別養護老人ホームは入居条件が要介護度3以上の方となっていますので、それに比べると老健は多くの方が入居しやすいと言えます。

老健のデメリット

  1. 入所期間が限られている
  2. 内服薬の制限がある
  3. イベントやレクリエーションが不十分

老健は在宅復帰を目的とした施設であるため、入所は3~6ヶ月の期間限定でであり、終身利用ができない点はデメリットだと言えます。

また、入居中は内服薬の制限があります。老健では医療費は施設負担です。そのため、内服薬が多い方、抗認知症薬など高額な薬を利用している方は、入所できない可能性が高いと言えます。

老健のイベントやレクリエーションは、他の施設と比べて内容が充実しているとは言えない点もデメリットでしょう。

老健のレクリエーションはあくまでも機能訓練のための内容であることが多いため、楽しさを追求したレクリエーションやイベントは充実していません。

老健と他の介護施設の費用を比較

老健と他の介護施設の費用をまとめると、以下のようになります。

種類 費用(初期費用) 費用(月額費用)
特別養護老人ホーム 0 5〜15万円
介護老人保健施設 0 8万〜14万円
介護療養型施設 0 9万〜17万円
軽費老人ホーム 0〜数十万円 10〜30万円
ケアハウス 数十万〜数百万円 10〜30万円
介護付き有料老人ホーム 0〜数百万円 15〜30万円
住宅型有料老人ホーム 0〜数百万円 15〜30万円
サービス付き高齢者向け住宅 0〜数十万円 10〜30万円

以下のトピックで、それぞれの施設と比較した詳細な内容について、以降で解説していきます。

特養と老健の費用を比較

特養と老健の費用比較

種類 費用(初期費用) 費用(月額費用)
特別療養老人ホーム 0 5〜15万円
介護老人保健施設 0 8万〜14万円

介護老人保健施設と特別養護老人ホーム(特養)は、どちらも入居して介護サービスを受けられる公的施設です。

特別養護老人ホーム(特養)は、寝たきりなど重度の介護にも対応しています。 また、入所期間に制限はなく、終身利用が可能です。

特養の方が、老健よりも月額費用がやや安い点も特徴です。しかし、特養と老健はそれぞれ施設としての目的が異なりますので、費用の面だけで選ぶのではなく、要介護者の状態や家庭状況に合った施設を選ぶようにしましょう。

特養の費用に関する詳細な情報は、以下の記事で紹介しています。

【料金表で解説】特養の費用はどれくらい?自己負担額や介護保険外の費用まで解説

老健と民間介護施設の費用を比較

老健のような公的施設と比べると、民間介護施設の費用の方が高いと言えます。

ただ、民間介護施設は施設数が多いので、入居待ちの必要がなくすぐに入居しやすいことや、施設の設備やレクリエーションなどの娯楽が充実している点がメリットです。

QOL(Quality of Life:生活の質)を高く維持できる施設で暮らしたいということであれば、民間介護施設への入居も検討してみてはいかがでしょうか。

また、学研ココファンの施設であれば、老健等の公的施設と同様、入居金0円で施設を利用することができます。できる限り費用を抑えたい方に特におすすめです。

全国各地に、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を構えていますので、お近くの施設をぜひ探してみてください。

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入居期間後に民間施設に入居する人も

老健は在宅復帰のための施設なので、入居期間は原則3~6ヶ月です。そのため、老健を退去したあとに民間介護施設への入居を検討する人は多くいます。

先ほども述べたように、民間介護施設は自由度が高く、従事した生活を送りやすい環境が整っているので、老健のあとの施設に民間介護施設を選択する人も多いのです。

ただし、老健から民間介護施設への移行には、施設の選定や手続き、費用の見積もりなど多くの要素が関わるため、入居者や家族は移行方法について事前に情報収集し、検討を進めておくと良いでしょう。

老健の費用についてまとめ

老健の費用についてまとめ
  • 初期費用0円であり、概ね月額8〜14万円の費用がかかる
  • 老健施設の居室タイプは、「従来型個室」「ユニット型個室」「多床室」「ユニット型個室的多床室」の4種類で、居室タイプによっても料金は異なる
  • 在宅復帰を目指す施設なので、入所期間は3~6ヶ月
  • 老健を退所後は、民間介護施設に入居する人も多い

老健の費用について、詳細に解説しました。

老健は公的施設なので入居したい方は多いですが、入居期間は3~6ヶ月であり、また、機能訓練がメインであるため、デメリットもあります。

退去する必要がある面も踏まえ、退去後はより娯楽性が充実している民間介護施設に入居する方も多く見られます。

民間介護施設でも、比較的安い費用で利用できるところもありますので、さまざまな選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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