介護医療院とは|費用や施設基準・サービス内容から介護療養型医療施設との違いまで解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「介護医療院とは、一体どのような施設なの?」

「介護医療院では、どのようなサービスを提供しているの?」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

介護医療院とは、医療ケアが充実しており、さらにはレクリエーションなどの催しも豊富に行っている施設です。

2018年から創設された新型介護施設で、今後ますます数が増えていくことが予想されています。

こちらの記事では、介護医療院の特徴や設けられている施設基準、また利用にあたってのメリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。

介護施設を探している方や、介護医療院の利用を検討している方にとって非常に有益な情報をお届けしますので、是非最後までご覧ください。

介護医療院についてざっくり説明すると
  • 要介護1~5の方が利用対象となる
  • 介護保険が適用されるので、自己負担額は抑えることが可能
  • 人員基準や施設基準が設けられているので、誰でも安心して利用できる
  • 入居する際には、ケアマネジャーや施設担当者に相談してみよう

介護医療院はどんな施設?

介護医療院の特徴

介護医療院とは、以上のイラストのように医療的ケアが充実しており、長期に渡る療養にも対応することのできる施設です。

基本的に要介護者向けの介護施設で、日常生活の身体介助に加えて医療ケアや生活支援も重視しているので、多くの高齢者の生活をサポートすることができます。

2017年度に廃止することが決定した「介護療養型医療施設」の主な転換先として機能しており、介護療養型医療施設で行われていた日常的な医学管理看取りやターミナルケアなどの医療ケアも行う点が特徴です。

介護医療院が作られた意義

以前まで、家族の介護や在宅介護が難しいので仕方なく入院させている状態の社会的入院が問題視されていました。

この問題を解決すべく国を挙げての対策がスタートし、2000年には介護保険制度の施行と、介護療養型医療施設の創設がなされ、介護医療院の運営が決定しました。

また厚生労働省は、介護療養型医療施設に対して介護療養型老健への転換を推進したものの、実際にはなかなか転換が進まずに今に至っています。

介護療養型医療施設は2012年度末で廃止予定でしたが、様々な障壁もあり「2023年度末までに廃止する」こととなりました。

廃止される介護療養型医療施設の受け皿として介護医療院は2018年に創設され、施設数も今後徐々に増えていくでしょう。

介護医療院はⅠ型・Ⅱ型・医療外付け型がある

介護医療院にはⅠ型・Ⅱ型・医療外付け型の3種類が存在します。

Ⅰ型は比較的重度の要介護者を対象にしており、医療ケアを提供する介護療養型医療施設と同等の扱いとされています。

一方で、Ⅱ型は入居者の家庭復帰をリハビリなどを通してサポートする介護老人保健施設と同等の扱いとなっており、Ⅰ型の方がⅡ型よりも重い疾患を抱えている患者が対象と言えるでしょう。

また医療外付け型の施設は、利用者が居住する部分と医療機関を併設している特徴があります。

これは「比較的容体が安定した者」を主な利用者としており、居住部分は個室で13㎡以上なので有料老人ホームと同じ程度のプライベート空間を有していることになります。

Ⅰ型、Ⅱ型の比較

それでは、介護医療院Ⅰ型・Ⅱ型について、特徴を比較してみましょう。

比較項目 介護医療院Ⅰ 介護医療院Ⅱ
基本的性格 要介護高齢者の⻑期療養・⽣活施設 要介護高齢者の⻑期療養・⽣活施設
主な利用者像 重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者等 Ⅰに比べて容体は比較的安定した者
施設基準(人員配置) 介護療養型医療施設相当 老健相当
居住面積 ⽼健施設相当(8.0 ㎡/床) ⽼健施設相当(8.0 ㎡/床)

以上のように、Ⅰ型は要介護高齢者が生活するための場として機能しており、Ⅱ型は様態が比較的安定している高齢者を対象としています。

施設基準もそれぞれ介護療養型医療施設と老健を承継しているので、微妙に違いがあることが分かるでしょう。

Ⅰ型は療養機能強化型A・Bにも分かれる

Ⅰ型は、さらに強化型A・強化型Bに分かれており、それぞれの特徴は以下の通りです。

比較項目 強化型A 強化型B
重症度割合 50%超 50%超
医療措置 50%超 30%超
ターミナルケア 10%超 5%超
リハビリ 要件あり 要件あり
地域貢献活動 要件あり 要件あり

さらに、以下のような要件も定められています。

  • 入院患者のなかで、重篤な身体疾患がある方、および身体合併症がある認知症高齢者が既定の割合(上記の表の数値)以上であること
  • 入院患者のなかで、基準以上の医療処置を受けている人数が既定の割合(上記の表の数値)以上であること
  • 入院患者のなかで、ターミナルケアを受けている患者が既定の割合(上記の表の数値)以上であること
  • リハビリテーションを生活機能を維持・改善することを目的として行っていること
  • 地域貢献していること

以上のように、様々な形態に分かれていることで介護医療院の運営が複雑になっていますが、基本的に「Ⅰ型は重篤な人のための施設」であることを押さえておきましょう。

介護医療院のサービス内容

それでは、介護医療院で提供しているサービス内容について確認していきます。

自分が必要としているサービスを受けられるかどうか、意識しながら読んでみてください。

どのサービスが自分やご家族に必要であるかを理解することは、介護の計画や選択において重要な一歩です。

医療ケア

介護医療院では充実した医療ケアを行っており、喀痰吸引・経管栄養や人生の最終段階における看取りも行われています。

投薬や処置、検査なども必要に応じて行われているので、誰でも安心して利用できる施設と言えるでしょう。

入院するほどではないものの、老人ホームではカバーできないような、専門的な医療ケアを受けたいと考えている人にはピッタリです。

他の施設よりも医療ケアは充実している点が大きな強みと言えます。

介護サービス

介護医療院では、医療ケアのみならず他の介護施設と同じレベルの介護サービスが受けられます。

入浴・排泄・食事などの生活介助や健康管理、リハビリテーションも含まれているので、自立した生活を送るためのサポートも万全です。

安心した生活を送れるだけでなく、必要に応じて様々な介護を受けられる点も考慮すると、今後ますます介護医療院の需要は高まっていくでしょう。

日常での生活サポート

医療ケアや介護サービスに加えて、日常生活のサポートも提供している点も特徴です。

具体的には、掃除や洗濯などの加齢や病気の進行に伴って自力で行うのは難しくなる、日常生活の支援サービスが行われています。

個室を整備するなどのプライバシーの確保にも力を入れており、地域住民やボランティアとの交流機会も設けられています。

これらのサポートを受けることで少しでも自立した生活を送れるようになるので、ありがたいサービスと言えるでしょう。

ケア充実につながる人員配置

続いて、介護医療院に定められている人員配置について見てみましょう。

人員 介護医療院Ⅰ型 介護医療院Ⅱ型
医師 入所者48人ごとに1名配置(48:1) 入所者100人ごとに1名配置(100:1)
薬剤師 入所者150人ごとに1名配置(150:1) 入所者300人ごとに1名配置(300:1)
看護職員 入所者6人ごとに1名配置(6:1) 入所者6人ごとに1名配置(6:1)
介護職員 入所者5人ごとに1名配置(5:1) 入所者6人ごとに1名配置(6:1)
リハビリ専門職 必要に応じて 必要に応じて
栄養士 入所定員100人以上で1名配置 入所定員100人以上で1名配置
介護支援専門員 入所者100人ごとに1名配置(100:1) 入所者100人ごとに1名配置(100:1)
放射線技師 必要に応じて 必要に応じて
調理員・事務員など 必要に応じて 必要に応じて
医師の当直 あり なし

以上のように、定められている人員基準はⅠ型とⅡ型で異なります。

Ⅰ型介護医療院は介護療養型医療施設(療養機能強化型)と同等で、Ⅱ型介護医療院は介護老人保健施設と同等の規定となっています。

サービス充実のための設備基準

続いて、介護医療院に定められている施設基準について見てみましょう。

<施設設備>

内容 基準
診察室 指定基準
療養室 定員4名以下、床面積8.0㎡/人以上 ※転換の場合、大規模改修まで6.4㎡/人以上で可
機能訓練室 40㎡以上
浴室 身体の不自由な者が入浴するに適したもの
レクリエーションルーム 十分な広さ
そのほか医療設備 処置室、臨床検査施設、エックス線装置、調剤所
そのほか 洗面所、便所、サービスステーション、調理室、洗面所、洗濯室又は洗濯所、汚物処理室
談話室 談話を楽しむことができる広さ
食堂 入所定員1人に対して1㎡以上

<構造設備>

内容 基準
医療の構造設備 診療の用に供する電気、光線、熱、蒸気又はガスに関する構造設備、放射線に関する構造設備
老化 廊下幅: 1.8m、中廊下の場合は2.7m ※転換の場合廊下幅1.2m、中廊下1.6m
耐火構造 原則、耐火建築物(2階建て又は平屋のうち特別な場合は準耐火建築物) ※転換の場合は特例あり

介護医療院の施設基準は、介護療養型医療施設(療養機能強化型)と老健との中間程度となっています。

医療設備の設置の他にも、診察室・療養室・機能訓練室・談話室・食堂・浴室・レクリエーションルームなどの設置が設けられています。

厳格な施設基準があるので、長期療養のしやすい施設と言えるでしょう。

療養病院は廃止となり介護医療院の新設が進む

厚生労働省は、介護療養型医療施設を「介護療養型老人保健施設」や「介護医療院」に転換させ、最終的に廃止する方針です。

2017年で廃止することが決定しましたが、2024年3月までは移行期間として介護療養型医療施設は残ることになります。

このような動きがある背景として、介護療養型医療施設は「医療と介護の境目が曖昧」「医療施設であるのに介護保険が適用される」などの制度上の問題が指摘されていることが挙げられます。

その結果、厚生労働省は介護療養型医療施設の廃止と介護医療院の新設を決定し、介護医療院の新設を進めているわけです。

なお、介護医療院の特徴は以下の3点です。

  • 長期療養のための医療ケアが常時必要な要介護者を対象とする
  • 終末期医療(看取りやターミナルケア)を提供
  • 生活の場としての機能が重要視されている

以上のように、終末期医療を提供しながらも生活の場としての機能を重視しているので、症状が重い方でも安心して利用できる施設と言えるでしょう。

介護医療院は生活施設

介護療養型医療施設は医療機関の扱いですが、介護医療院は介護が必要な高齢者の生活や長期療養施設という位置づけになっています。

また、介護医療院ではプライバシーの確保を目的として、カーテンではなくパーティションや家具によるしっかりとした間仕切りが必要とされています。

部屋の面積についても、介護療養型医療施設は

  • 1部屋4人以下(ただし1人あたりの面積は6.4㎡/人以上)

介護医療院では、Ⅰ型Ⅱ型いずれも

  • 1部屋4人以下(1人あたりの面積が8㎡以上)

という違いがあります。

このように、介護医療院は生活施設なので、利用者のプライバシーや快適な生活を送るための必要な措置が取られているのです。

医療区分による入院のしやすさも異なる

医療区分とは患者の医療の必要性を評価するための指標で、医療区分3が最も重い疾患を抱えている方を指します。

医療区分は3段階に分かれていますが、医療区分2・3に該当しない場合は医療区分1として扱います。

介護医療院は医療区分1の方でも入院しやすいですが、療養病棟では医療区分2・3の方の入院が中心です。

療養病棟は医療保険を活用して入院する病院である性格上、医療的ケアが必要な方が対象となっている点が背景として挙げられます。

なお、医療区分の規定については以下の通りです。

医療区分3 <疾患・状態>
  • スモン
  • 医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態
  • 中心静脈栄養
  • 24時間持続点滴
  • 人工呼吸器使用
  • ドレーン法・胸腹腔洗浄
  • 発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管
  • 感染隔離室におけるケア
  • 酸素療法(酸素を必要とする状態かを毎月確認
医療区分2
  • 筋ジストロフィー・多発性硬化症
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • パーキンソン病 関連疾患
  • その他難病※(スモンを除く)
  • 脊髄損傷(頸髄損傷)・慢性閉 塞性肺疾(COPD)
  • 疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍・肺炎・尿路感染症
  • リハビリテーションが必要な疾患が発症してから 30 日以内
  • 脱水かつ 発熱を伴う状態・体内出血
  • 頻回の嘔吐かつ発熱を伴う状態
  • 褥瘡
  • せん妄
  • うつ状態
  • 末梢循環障害による下肢末端開放創
  • 暴行が毎日みられる状態(原因・治療方針を医師を含め検討)
  • 透析・発熱又は嘔吐を伴う場合の経腸栄養・喀痰吸引(1日8回以上)
  • 気管切開・気管内挿管のケア
  • 頻回の血糖検査・創傷(皮膚潰瘍・手術創・ 創傷処置)

介護医療院には介護保険が適用

介護医療院では利用者の経済的負担を減らす介護保険が適用されるので、制度について知っておくことも重要です。

介護保険制度とは2000年から始まった国の制度で、心身の障害から日常生活で自立できなくなった高齢者を支援するために整備されました。

2000年の制度開始以来、65歳以上の被保険者は2018年までに約1.6倍に増加し、サービス全体の利用者は3.2倍に増加しており、高齢者の介護利用に必要不可欠な存在であることが分かるでしょう。

介護施設の利用者に関して見てみても、2000年4月は52万人でしたが2018年4月には93万人と、約1.8倍になっています。

今後はますます高齢化が進んでいくことになりますが、試算では65歳以上の高齢者数は2025年には3,677万人、2042年には3,935万人と今後も増え続ける見込みです。

こういったことから、より効率的に介護サービスを行う必要があり、そのニーズを満たすために介護医療院の創設が進められているのです。

介護医療院の費用

それでは、介護医療院を利用する際の費用について見てみましょう。

なお、以下で紹介するデータは、厚生労働省の公表するデータより一部内容を引用しています。

具体的な費用

それでは、具体的な費用について見ていきましょう。

なお、「看護6:1」は入居者6人毎に看護師が1人、「介護4:1」とあるのは入居者4人毎に介護士が1人配置されていることを意味しています。

<Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)多床室、療養機能強化型A相当、看護6:1、介護4:1>

要介護度 費用
要介護1 825円/日
要介護2 934円/日
要介護3 1,171円/日
要介護4 1,271円/日
要介護5 1,362円/日

<Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅱ)療養機能強化型B相当、看護6:1、介護4:1>

要介護度 費用
要介護1 791円/日
要介護2 898円/日
要介護3 1,127円/日
要介護4 1,224円/日
要介護5 1,312円/日

<Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅲ)多床室、療養機能強化型B相当、看護6:1、介護5:1>

要介護度 費用
要介護1 813円/日
要介護2 921円/日
要介護3 1,154円/日
要介護4 1,252円/日
要介護5 1,342円/日

<Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ)多床室、介護療養型老健相当、看護6:、介護4:1>

要介護度 費用
要介護1 779円/日
要介護2 875円/日
要介護3 1,082円/日
要介護4 1,170円/日
要介護5 1,249円/日

<Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅱ)多床室、介護療養型老健相当、看護6:1、介護5:1>

要介護度 費用
要介護1 763円/日
要介護2 859円/日
要介護3 1,065円/日
要介護4 1,154円/日
要介護5 1,233円/日

<Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅲ)多床室、介護療養型老健相当、看護6:1、介護6:1>

要介護度 費用
要介護1 752円/日
要介護2 847円/日
要介護3 1,054円/日
要介護4 1,143円/日
要介護5 1,222円/日

参考:厚生労働省の「介護医療院の報酬及び算定要件」

加算項目も確認

加算項目とは、とある条件に該当するサービスを受けた際に加算される制度です。

基本的な介護サービスに加えて、加算対象のサービスを受けた場合には以下の料金が必要となります。

初期加算

介護保険施設などを利用した当初は、新しい環境での生活に慣れるために様々な支援が必要となります。

そこで、初期加算は利用開始に行う取り組みを評価する加算として導入されています。

なお、金額にすると30円/日で、入所した日から起算して30日以内の期間が対象となります。

栄養マネジメント加算

栄養マネジメント加算とは、管理栄養士による栄養マネジメントや栄養改善サービスが実施された際に加算されるもので、入居者の栄養状態を良好に保つ目的があります。

基準に適合している介護医療院の管理栄養士が、継続的に入所者ごとの栄養管理をしている施設が対象となります。

なお、金額は11円/日です。

緊急時施設診療費(緊急時治療管理)

入所者の体調悪化で病状が重篤になり、救命救急医療が必要になった際には速やかに医療機関へ通院・入院する必要があります。

緊急時施設療養費は、緊急の事情で体調悪化等の入所者に対して、特定治療の医療行為や緊急時治療管理を入所施設が実施することを評価するために設けられている加算です。

なお、金額は518円/日となっています。

経口移行加算

医師・歯科医師・栄養管理士・看護師・介護支援専門員などの専門職は、共同して入所者が経口での食事に移行できる計画を作成・実施します。

経口移行加算は入所者が口で食事楽むための支援を目的としており、多職種共同による経口移行計画の作成が行われる点が特徴です。

金額は28円/日です。

重度認知症疾患療養体制加算(Ⅱ)

重度認知症疾患療養体制加算とは、介護医療院において認知症の入所者に手厚いケアを提供する体制の整備を評価する加算です。

入所者のすべてが認知症で、精神保健福祉士や看護職員を一定数以上配置し、精神科病院との連携などの要件を満たすことでこちらの加算の対象となります。

なお、要介護5の方の場合、加算される金額は100円/日です。

排泄ケアや口腔ケアに対する加算も

排泄ケアや口腔ケアに関する加算もあるので、事前に入所を希望している介護医療院の基準を聞いておくことをおすすめします。

また、居住費・食費・介護サービス費以外にもテレビカード代などの雑費が発生するケースもあるので、細かい出費についても想定しておくと安心です。

なお、介護保険の自己負担分が高額になった場合は「高額介護サービス費」が市町村から支給される場合もあるため、自己負担を軽減できる措置が適用されるかどうか施設の生活相談員に相談すると良いでしょう。

介護医療院と特養や老健の比較

介護医療院は、基本的に日常生活を送る中で高度な医療ケアを必要とする高齢者を入居対象としており、他の施設よりも高度な医学的な管理を必要とする高齢者の利用を想定しています。

介護医療院と介護老人保健施設(老健)は混同されがちですが、異なる点もあるのでしっかりと知っておきましょう。

老健はリハビリを目的としており、最大で6ヵ月程度の期限付きの入居施設あるのに対して、介護医療院は看取りも視野に入れた長期入居が前提となっています。

つまり、老健は期間限定の住まい、介護医療院は終の棲家として利用できるのです。

老健は回復するまでの期間限定の生活の場なので、在宅復帰を目指してリハビリに取り組み、リハビリの成果によって症状の回復が見られた時点で退去しなければなりません。

一方で、介護医療院は高度な医療サポートを必要としている方々を入居対象として、長期に渡り療養生活を送ることを前提としている施設なので、根本的に存在意義が異なっていることが分かるでしょう。

家族や本人の状態に応じて、適切な施設を選ぶことが大切です。

介護医療院のメリット

アクティビティを楽しむ高齢者

それでは、介護医療院を利用するメリットについてみていきましょう。

以上のように、介護医療院ではレクリエーションなどが行わるので生活の中での認知機能の維持も期待できます。

他の入居者との交流ができるようアクティビティが豊富に用意されているので、健康的で活発な生活を送ることが可能です。

また、介護医療院は医療替えが充実している特徴があるので医師が配置されており、介護と同時に充実した医療ケアを受けられる点が大きなメリットと言えます。

喀痰吸引・経管栄養などが必要な重篤な症状を抱えている利用者が対象で、長期療養にも対応しているので誰でも安心して生活できる場でもあります。

さらに、看取りやターミナルケアも行っているため、最期の瞬間まで安心して過ごせる点は介護医療院の大きな魅力です。

介護医療院のデメリット

基本的にメリットが多い介護医療院ですが、デメリットについても知っておきましょう。

介護医療院は他の施設よりも生活するための費用が高い傾向にある点がデメリットとして挙げられ、介護保険サービスの利用者負担金に加えて食費や居住費が発生します。

入所が長引いてしまえば、当然支払う総額が高額になってしまうため、前もって余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

もし、入居後に支払い状況の見通しが怪しくなってきたら、滞納してしまう前に生活相談員やケアマネージャーに相談し、適切なアドバイスをもらいましょう。

また、複数人数の病床のため、プライバシーが保護されるかどうかの不安が完璧に拭えない点も指摘されています。

他の居住者の生活音などが気になってしまい不眠になるケースも考えられるので、デリケートな人は気を付けましょう。

介護医療院の施設数

介護医療院の施設数

厚生労働省によると、以上のグラフのように2018(平成30)年4月の制度創設以降、介護医療院の施設数は増加し続けています。

2021年3月末で572施設(35,442床)まで増加していることから、受け皿として確実に広がりを見せています。

2021年3月末の都道府県別の施設数について見てみると、1都道府県当たり平均12.2施設で、最多が福岡県の39施設、次いで熊本県が32施設、北海道が31施設となっています。

2018年度からの3年間は、既存の介護療養型医療施設・介護療養型老人保健施設からの転換が進められており、介護医療院はそれぞれの施設からの転換で開設されたものがほとんどです。

ただし、既に廃止が決定している介護療養型医療施設は2023年度末までの移行期間が定められており、転換に前向きではない施設もあることも事実です。

高齢者人口の多い東京都・神奈川県・大阪府での開設はまだまだ進んでいないので、今後の伸びに期待しましょう。

移行支援も行われている

福祉医療機構では、介護医療院への移行を支援するための政策を行っています。

介護医療院への転換に必要な建築費用などを融資する制度や、病院又は診療所から介護医療院等への移行を行う際に必要となる運転資金の融資や既往貸付金の償還期間延長などの支援策も設けられています。

このように、国を挙げた政策を進めるために様々な支援策も存在するので、介護医療院の数は今後ますます増えていくでしょう。

介護医療院を利用するには?

それでは、実際に介護医療院を利用するにあたっての流れについて見ていきましょう。

いざというときに慌てずに手続きなどを進めるためにも、事前に知っておくことは非常に重要です。

ただし、詳細は施設や地域の要件に合わせて確認することが大切です。

利用対象

介護医療院は「要介護1~5」までの介護認定を受けている方が対象です。

要介護認定は、基本的に65歳以上を対象としていますが特定疾病を抱えている64歳以下の方でも要介護認定の申請が可能です。

介護認定を受けていない方は、まずはケアマネジャーや地域包括ケアセンターに相談した上で市区町村役場へ介護認定の申請を行いましょう。

市町村からの裁定が来た結果、要介護1~5の結果が出た場合は介護医療院を利用することが可能となります。

利用手続き・施設の探し方

医療機関に入院中の方は、自力で諸手続きを行うことが難しいので、入院先のソーシャルワーカーに相談することをおすすめします。

入院中ではない場合は、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」などを活用して介護医療院を探し、施設へ直接相談しましょう。

しかし、介護医療院は移行期間中なので、住んでいる地域に存在しないケースも考えられます。

そのため、隣接する市区町村も含めて範囲を広げて検索し、また必要に応じて地域の市区町村役場に問い合わせましょう。

入居にあたっては、診療情報提供書や健康診断書を提出を求められるケースもあるので、前もって手続きしておくとスムーズです。

介護医療院を選ぶポイント

それでは、介護医療院を選ぶ際のポイントについて紹介していきます。

入所の際には医師などと相談を

介護施設の入所相談

入所をする際には、本人や家族、普段からお世話になっている医療機関などから介護医療院の入所担当者に連絡してもらうと良いでしょう。

入所担当者は地域連携室であることが多く、入所担当者が入所の日程を調整した上でいよいよ入所する運びとなります。

入所希望者の症状次第では入所担当者が担当医に相談するケースもあり、症状確認のためにかかりつけ医や入院担当医師からの紹介状や担当ケアマネージャーからの情報提供書が必要になることもあります。

入所にあたっては、以上のイラストのように周囲の方々に協力してもらうことが必要なので、担当の医師やケアマネージャーと相談した上で判断していきましょう。

他の介護施設の利用検討をする選択肢も

介護施設で暮らす高齢者

介護医療院も優れた施設ですが、手厚い医療ケアを受けることができる施設は他にも多数存在します。

要介護3以上の方のみが利用できる「特別養護老人ホーム(特養)」などの公的施設はもちろんのこと、民間の介護付き有料老人ホームなどでも、要介護5の方まで対応可能なケアを受けることができます。

また、認知症のケアに特化したグループホームも、認知症の症状に悩む方には是非ともチェックしていただきたい施設です。

学研ココファンでは、これらの充実のサービスを擁する施設を全国各地に設置しておりますので、こちらからお近くの施設を探してみてください。

介護付き有料老人ホーム・グループホームを探す!

介護医療院まとめ

介護医療院まとめ
  • 今後ますます施設は増えていくので、選択肢として考えておくことは有意義
  • 老健とは違い、生活の場としての機能も持っている
  • 安心して医療を受けられる施設基準が設けられている
  • メリットとデメリットをしっかりと把握し、相談した上で入所を判断しよう

介護医療院とは、紹介してきたように新たに創設された新型の介護施設です。

高度な医療を受けながら最期まで生活を送れるので、今後ますます需要は高まっていくでしょう。

施設は増えていくことが予想されているので、介護施設の利用を検討している方は介護医療院の選択肢の一つとして持っておくことをおすすめします。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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