頓服薬とは|意味・効果から解熱剤等の薬の種類・副作用のリスクまで解説
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「頓服薬とは、一体どのような薬なの?」
「頓服薬の意味や種類について詳しく知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
病院から処方された薬で「頓服薬」という文言を目にすることは多いですが、正確な意味について知っている方は多くありません。
頓服薬とは薬を飲む際の用法の一つで、必要なタイミングでのみ使用することを指します。
様々な頓服薬が存在するので、種類や意味について知っておくことは非常に有意義です。
こちらの記事で、頓服薬の意味や効果、副作用の有無について解説していくので、参考にしてください。
- 発作時や、症状がひどいタイミングで使用するタイプの薬のことを指している
- 医師とコミュニケーションを密にして、正しく服用することが重要
- 「頓服」の意味を誤解している方が多いので、正確な意味や定義について知っておこう
- 飲み方や用法用量について少しでも疑問があれば、医師や薬剤師に相談しよう
頓服薬とは
病院で診察を受けた際には医師から処方箋をもらいますが、頓服薬を処方されたことがある方もいらっしゃるでしょう。
頓服薬とは、発作時や症状がひどい時などに必要なタイミングでだけ使用するタイプの薬を指しており、頓用と呼ばれることもあります。
つまり、服薬のタイミングは特段決められておらず、薬効成分に即効性のある点が特徴です。
一方で、症状の強弱に関係なく「決められた時間毎に使用する」薬を定期薬と呼びます。
頓服薬は病院で風邪と診断された際などに処方されるケースが多く、解熱剤だけ他の薬袋とは別の袋に入っていることも多いです。
一方で、咳止め薬などは「毎食後」など決められたタイミングで服用することが一般的なので、これは定期薬となります。
頓服薬は、病状が悪化した場合に備えて「常備薬」として持っておくことができますが、保管には注意が必要です。
必要な場合にしか使用しないようにし、過剰摂取や誤用を避けるため、必ず医師や薬剤師の指示に従い、使用量や使用期間を守るようにしましょう。
そもそも「頓服」の意味は
日本薬学会の薬学用語解説によると、頓服とは「患者の主訴を軽減・消失させる目的で、症状が出たときや激しいときなどに必要に応じて薬を服用(使用)する用法をいう」となっています。
つまり、必要に応じてピンポイントで使う薬全般を指しており、薬の種類ではなく用法の一種です。処方された薬が頓服薬であるか定期薬であるかも確認しておくとよいでしょう。
なお、飲み薬以外の座薬や貼付剤などの投与方法も、同様に頓服や頓用と呼びます。
頓服薬は、投与量が大きく、副作用や依存症のリスクを含む場合もあります。
頓服薬に関するよくある誤解
国立国語研究所によると、頓服のことを鎮痛剤や痛み止めと誤解している人が34.1%、解熱剤と誤解している人が33.4%、包装紙に包んだ薬と誤解している人が16.2%にも上りました。
他にも、粉薬や坐薬と勘違いしているケースや誤解が見られるので、頓服薬の定義がしっかりと定着しているとは言えません。
これらの原因としては、病院を受診した際に解熱鎮痛剤が頓服薬として処方されることが多いため、このような誤解が広がっていると考えられるでしょう。
誤解していると服用を間違えてしまうことも考えられるので、誤解していた方はこれを機に正しく理解してください。
頓服薬の用法には、症状が出た際に「必要に応じて使用する」という点がありますが、過度に使用すると副作用のリスクが高くなる場合があるため注意が必要です。
また、薬剤によっては、特定の疾患や症状に対してのみ使用が推奨されている場合もあります。自己判断での使用は避け、必要に応じて正しい使い方を守るようにしましょう。
主な頓服薬の種類と効果
頓服薬には様々な種類がありますが、代表的な頓服薬の種類と効果について解説していきます。
種類 | 効果 |
---|---|
解熱剤 | 高熱時に体温を平常に戻す。通常は38.5℃以上の時に服用するが、効かないからといって続けて服用しない。最低3~4時間の間隔が必要 |
鎮痛剤 | 体の各部位の痛みを軽減する。頭痛・腹痛・歯痛・その他の痛みのある時に服用するが、続けて服用する場合は3~4時間程度の間隔が必要 |
下剤 | 便通を促す。便秘の時に服用通常し、寝る前に服用すると翌朝便通がある |
睡眠剤 | 不安や緊張を和らげて寝つきを良くする効果が期待できる。眠れない時に服用し、医師の指示に従い、1回量を厳守して服用する。乱用は危険 |
血管拡張薬(硝酸薬など) | 狭心症の発作が起こった時に服用 |
発作止めの薬(舌下錠) | 舌下錠は舌の下か歯ぐきと頬の間に錠剤を入れて服用する薬で、口腔内の粘膜から直接吸収される。服用後1分以内に効果が現れる。噛み砕いたり、飲みこんだりしないように注意 |
以上のように、様々な種類の頓服薬があることが分かるでしょう。
解熱剤や鎮痛剤などの頓服薬を服用した経験がある方も多いと思いますが、医師の指示に従って用法用量を守ることが重要です。
また、薬を飲むことが苦手という方であれば、飲み方に関しても医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。
さらに、頓服薬には即効性があるため、過剰に服用すると副作用が現れる可能性があります。服用に際しては必ず医師から指示された用法用量を守り、薬の飲み合わせにも十分注意しましょう。
ココファンの介護施設を探してみる!頓服薬の飲用指示は医者が行う
薬の用法の最終決定をするのは医師であり、上記のイラストのように頓服薬は医師から適切な指示を受けて服用する必要があります。
医師は診察時に患者の状態や病状の見通しを把握し、それに合わせた用法で処方箋を作っています。
そのため、一人一人の患者で薬の量が違うのはもちろん、薬によって「1日何回まで飲むか」「次の服用までにどの程度間隔を空ければいいか」も異なります。
副作用の発症を避けるためにも、薬を受け取る際に医師や薬剤師からの説明をしっかり把握しておきましょう。
また、診療の際に自身の悩まされている症状や具体的な辛さについて説明し、積極的にコミュニケーションを取ることも重要です。
薬の飲み方についても相談しておきましょう。
一定の時間に渡って発熱や痛みが続きそうな場合であれば、解熱剤のような頓服薬でも飲み忘れや飲み間違いを防ぐために、他の薬と一緒に定期的な飲用指示が出されることもあります。
つまり、先ほどの表で紹介した種類の薬が必ずしも頓服薬であるとは限らないので、先入観を持つことなくしっかり医師や薬剤師の説明を受けましょう。
症状なし・健康な状態では薬の服用は不必要
「薬を服用しておけば薬は効くので、わざわざ頓服薬にする必要はないだろう」と思う人も少なくありません。
しかし、薬は人体に負荷をかけてしまうものなので、過剰に使用すれば副作用を発症するリスクは高まってしまいます。
薬は「身体に異常が発生した時に服用するものである」という前提をまずは押さえておき、できる限り薬に頼らないようにすることも大切なのです。
また、薬が不必要な際に服用すると「本当にその薬が必要な際に十分な効果が得られない」という問題にも繋がるので、症状が無い場合や健康の状態であれば薬は不要です。
つまり、薬を使用しなくても健康な状態を維持できるのであれば、副作用などのリスクを避けるという意味でも薬を使用しない方が良いでしょう。
ただし、病状が進行している場合や緊急を要する場合には、薬を使用することが必要不可欠です。その際には、医師や薬剤師の指示に従い、正しい使い方を守りましょう。
このように、薬全般や頓服薬に関する知識を持っておくことで、医師や薬剤師からの説明も理解しやすくなるので、用語の意味をはじめとして様々な知識を学んでおきましょう。
ココファンの介護施設を探してみる!頓服にすることで副作用を防ぐ
薬には様々な副作用が伴いますが、頓服という指示には実は「副作用のリスクを下げる」一面があります。
例えば、発熱した際に解熱剤が処方された場合、薬袋に「最低5時間以上間隔をあけること」といった注意書きがされていることは多くあります。
これは「この薬は5時間効果が持続するので、追加で飲むときには前回の服用から5時間以上経ってからにしてください」という意味を含んでいます。
つまり、用法用量を守って正しく服用することが何よりも重要なので、効果が出ないからと言って医師からの指示を無視するのは絶対にやめましょう。
一般的に副作用は軽微であることが多いですが、人によってはひどい副作用に悩まされてしまいこともあるので要注意です。
各薬や身体の状態によって頓服薬を使用する場合でも指示内容が変化するので、病院を受診する際にはお薬手帳を持参することを忘れず、薬の説明書類には必ず目を通しましょう。
また、副作用が発生した場合には、すみやかに医師や薬剤師に相談し、適切な対処を受けるようにしましょう。副作用が軽微な場合でも、放置しておくと症状が悪化することがあるため、早めの対応が必要です。
睡眠薬や発作に対する薬が頓服薬に多い
高血圧や糖尿病などの症状を緩和・改善する薬は、毎日決まった時間に服用することで安定した効果を得られます。
しかし、もしこれらの薬を頓服にしてしまうと、血圧や血糖が高すぎる時間帯や低すぎる時間帯などのようにバラつきが出てしまい、身体への負担が大きくなってしまいます。
不眠などに悩まされている多々に対しては睡眠薬が利用されますが、毎日寝つきが悪くなってしまう方や週のうち3分の1程度だけ眠れない方など、症状の差は様々です。
不眠に毎日のように悩まされている方の場合、睡眠薬を就寝前に毎日飲むことによって安定した効果を得ることができるので、医師と相談しながら服用方法を決めましょう。
一方で、毎日ではないがしばしば眠れない日があるという方であれば毎日睡眠薬を服用する必要は無く、眠れないときだけ服用する「不眠時」という頓服使用指示が出ることが多いです。
睡眠薬が体中に残ってしまうと、朝方や日中などの本来は活動するべき時間帯にも眠気を感じてしまう副作用が出てしまうので、逐一医師と相談することが重要です。
睡眠薬を飲まなくても生活に支障が出ないのであれば、頓服として不眠時のみの使用でも十分なので、これにより身体への負担を軽減できるでしょう。
なお、これは睡眠薬以外の他の薬でも同様です。
痛み止めを頓服で服用する理由としては「胃腸障がいの副作用が出るリスクを軽減するため」であり、下剤を頓服として服用する理由は「下痢などの副作用リスクを軽減するため」です。
また、狭心症による発作が起きた際に使用する薬には心臓の血管を広げる作用があるので、発作が出ていないタイミングで使用すると頭痛・眩暈・血圧の低下・立ちくらみなどの副作用が出てしまいます。
つまり、効用と副作用のバランスなどをトータルで考慮した上で頓服薬にすることが多いことので、医師の判断に従うことが重要と言えるでしょう。
飲み方がわからない場合は医師・薬剤師に必ず聞こう
頓服薬は一般的に処方される薬と比べると果たしている役割や用法が異なるため、以上で解説してきた内容をしっかりと理解した上で適切に利用することが非常に重要です。
飲み忘れが無いように注意するのはもちろん、誤って2回分服用しないように注意しましょう。
頓服薬に関する知識がなく、理解不足の状態で服用してしまうと副作用のリスクが高まってしまい、体に悪影響が起こりかねません。
症状を改善し辛さを軽減するためにも、服薬に関して不安がある場合は医師・薬剤師に相談するようにしましょう。
また「何となく」服用するよりも、薬に関する知識を身に着けた上で服薬することで安心感を得られるので、自分自身でも疑問を調べる意識を持ちましょう。
なお、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師など、自分を担当してくれる医師・薬剤師を決めておくことも有意義です。
これらのかかりつけ医やかかりつけ薬剤師は自身の健康状態や服薬記録を管理してくれる医療のエキスパートなので、頼りにならないわけがありません。
いざというときに頼ることができ、また気軽に医療や薬に関する相談ができる非常にありがたい存在なので、ぜひかかりつけ医やかかりつけ薬剤師を決めておきましょう。
近年はかかりつけ対応をしてくれるところも増えているので、ぜひ探してみてください。
ココファンの介護施設を探してみる!頓服薬の効果や意味まとめ
- 症状が強いタイミングで服用するのが頓服薬で、決められたタイミングで服用するのが定期薬
- 受診の際には自身の症状や困りごとを正確に伝え、コミュニケーションを取ることが大切
- 副作用を防ぐためにも、用法と用量を守ることは非常に重要
- かかりつけ医やかかりつけ薬剤師を決めて、担当してくれる人を設けておくことも有意義
頓服薬は症状が強い時や発作が出た時に服用するものなので、しっかりと医師と使うタイミングについて相談しておくことが重要です。
意味について知っておくことで適切に服薬することができるので、漫然と医師や薬剤師の話を聞くのではなく薬効や用語の意味についても意識してみてください。
また、医師は患者の様態や症状を鑑みた上で薬を処方しているので、医師からの指示は的確に守って指示通り服薬するようにしましょう。
副作用を防ぐことにも繋がるので、今後医師の診察を受ける際には頓服薬の意味や効用について把握しておくことをおすすめします。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)