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通所介護の人員基準とは?必要な資格や設備・運営基準などについてもまとめて解説

2024年07月31日
その他

この記事は専門家に監修されています

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介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「通所介護の人員基準ってどんな決まりがあるの?」

「小規模デイサービスを運営したいけど、人員や設備などの基準がわからない・・・」

通所介護については、人員などの基準が定められています。その基準を守らなければ通所介護(デイサービスを)を運営することができません。

そこで、今回は通所介護(デイサービス)の人員基準に焦点を当てて詳しく解説する他、設備、運営の基準についても説明します。

また、通常の通所介護に加え、現在注目されている地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の基準についても併せてご紹介します。

通所介護で勤務したい方、運営に興味がある方はぜひ参考にしてみてください!

通所介護の人員基準についてざっくり説明すると
  • 通所介護を運営するためには、厚生労働省の「通所介護の指定基準」を満たすことが必要
  • 人員基準で指定された職員を配置しなければならない
  • 利用定員数についても人員基準がある
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通所介護を開設・運営するための指定基準は?

デイサービスとは、通所介護のことを指します。デイサービスでは、在宅で生活している要介護者を対象に、食事・入浴・排泄の介助を行ったり、機能訓練を行ったりします。

また、デイサービスでは、介助や機能訓練だけではなく、さまざまなレクリエーションを実施して利用者が楽しめる工夫もされています。

通所介護とは、施設に宿泊や入居をするのではなく日帰りで通所して行うものです。そのため、職員が利用者の自宅から施設まで毎日送迎を行います。

この通所介護を開設して運営していくためには、厚生労働省が定めている「通所介護の指定基準」を満たしていることが必須です。

他にも、通所介護を行うにあたっては、利用者のニーズに合わせた適切なプログラムの提供や、質の高い介護サービスの提供に向けたスタッフの研修・教育などが欠かせません。

また、通所介護の運営は個人で出来るものではなく、社会福祉法人や株式会社などの「法人」であることが前提であることにも注意が必要です。

さらに、登記事項証明書(登記簿謄本)の事業目的に「実施事業」の文言が必要となることも必ず覚えておきましょう。

通所介護の人員基準とは

明るい介護職員

通所介護の人員はどのように定められているのでしょうか。

基本的な人員基準について

通所介護の運営をするためには、人員の基準を守らなければなりません。

厚生労働省が定めている人員基準では、

  • 管理者
  • 生活相談員
  • 看護職員
  • 介護職員
  • 機能訓練相談員

の配置が必要です。また、通所介護の利用者数によって、これら職員の人数が定められています。

なお、人員基準は通所介護のサービスを提供するための最低限の人数を示したものなので、スタッフが突然欠勤した時などにもサービス提供が滞りなくできるような体制の構築が必要です

管理者

管理者は、デイサービスの一般的な業務を管理者としてアシストすること以外に、職員のシフト管理、稼働率の管理、サービス担当者介護の実施など、さまざまな管理業務を行います。

管理者は常勤で1名の配置が必要です。管理者になるための資格要件は特にありません。

ただし、管理者としての業務を適切に遂行するためには、介護や福祉に関する知識や経験が求められます。

また、自治体によっては独自の要件を設けている場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

人員基準を満たす範囲であれば、同一敷地内の他の事業所の職種と兼務することが可能です。

生活相談員

生活相談員は、社会福祉士・社会福祉主事の資格を持つ人が務めることができ、事業所1カ所に1人以上配置することが必要です。自治体によっては他の資格要件が存在する場合もあります。

生活相談員は、利用者や利用者の家族が介護に関して抱える悩みについて相談に乗り、必要であれば介護の専門的なアドバイスを行います。

厚生労働省の人員基準では「生活相談員又は介護職員のうち1人以上は常勤」と定められていますので、生活相談員は、必ずしも常勤である必要はありません。

看護職員

看護職員(看護師、准看護師)も通所介護施設に必要です。利用者の服薬管理、バイタルチェック、事業所によっては入浴介助なども看護職員が行います。

看護職員は、利用定員10名以上のデイサービス事業所では1名以上配置することが定められています。ただし、常勤する必要はありません。

また、利用定員10名以下の地域密着型通所介護(小規模デイサービス)では「看護職員又は介護職員のいずれか1名の配置で可」となっているので、看護職員を配置しないことが認められています。

介護職員

デイサービス内で介護職員として働くには、事業所にもよりますが基本的には資格は必要ありません。

仕事内容は、介護の他、管理者や生活相談員と兼務することができます。また、事業所によっては利用者の送迎なども仕事内容に含まれる場合もあります。

介護職員の人員については、利用者数が15名の事業所では1名以上利用者数が16名以上の事業所では「(利用者数-15名)÷5+1」という計算式で算出できます。

例えば、利用者が20名の場合「(20名-15名)÷5+1」となりますので、必要な介護職員は2名以上です。

機能訓練指導員

デイサービス事業所は、自宅で生活ができるように生活機能を維持したり高めたりするために訓練を行います。

機能訓練指導員は、その生活機能の訓練を行う専門職です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの資格を持った人が利用定員には関係なくどのデイサービス事業所でも1名以上配置することが定められています。

利用定員が10名以上のデイサービスの基準

利用定員が10名以上のデイサービスの基準についてまとめると、常勤の管理者が1名必要です。生活相談員は1名以上ですが、必ずしも常勤である必要はありません。

また、介護職員は利用者数が15名までは1名以上、16名以上では計算式によって算出されます。

看護職員は1名以上必要ですが、常勤である必要はありません。機能訓練指導員は、指定の資格のいずれかを持った人を1名以上配置する必要があります。

利用定員が10名以下のデイサービスの基準

利用定員が10名以下の地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の基準についてまとめると、管理者は常勤で1名必要です。生活相談員は1名以上配置が必要ですが、常勤でなくとも問題はありません。

看護職員または介護職員は、いずれかが1名以上いれば良いことになっています。機能訓練指導員は、利用定員にかかわらず、指定された資格のいずれかを持った人を1名以上配置する必要があります。

地域密着型通所介護の人員基準

地域密着型通所介護(小規模デイサービス)は定員が18名以下です

職員の人員基準は、管理者、生活相談員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員となっており、通常の通所介護と必要な職員の種類は同じです。

2015年度より改正された人員基準

2015年に、厚生労働省は通所介護施設の人員についての基準を改正しました。どのような点が改正されたのか解説していきます。

看護職員の人員基準緩和

法改正前は、看護職員従事者のうち1人は配置しなければなりませんでした。

法改正後は、配置できない場合には、病院、訪問看護ステーション、診療所と、通所介護の提供時間帯に連携して、看護職員が利用者のバイタルチェックなどの健康状態をできる状態であれば、人員を満たしているとみなされるようになりました。

ただ、もし利用者の健康状態に異変があった際には、連携する医療機関がすぐに駆け付けられるようにするため、各機関と通所介護の看護職員は密接に繋がっている必要があります。

また、このように急な事態に対応できる訪問看護ステーションとの連携は必須です。

改正によるメリット

看護職員1名の配置が専従できない場合に他事業所との連携が認められたことにより、看護職員の人材不足が解消されました。

また、非常勤の看護職員を配置することにより、一定の勤務時間分だけの給与を支払うことになるため、人件費を削減することも可能となりました。

これにより、デイサービス事業所が運営上抱える人件費や人材確保の課題が軽減され、経営的にもより効率的な運営が可能となりました。

また、利用者のニーズに合わせた看護サービスを提供することができるため、利用者満足度の向上にもつながっています。

常勤時間数の緩和

制度改正前は、常勤とは勤務時間数が事業所の規定する勤務時間に達していることと定められており、32時間が基準とされていました。

制度改正後は、育児をしている人や家族の介護者の方で、労働時間の短縮措置が取られている方に対しては、常勤の時間は30時間とします。

改正によるメリット

看護職員配置基準の改正で常勤時間数が緩和されたことにより、育児や介護を行う人が離職せずに済み、育児や介護と仕事を両立できるようになりました。

また、条件を満たした事業所には助成金が入るようにもなり、通所介護施設の運営に大きなメリットがもたらされています。

生活相談員の条件緩和

制度改正前は、通所介護事業所には常勤が1人必要で、業務は事業所内での相談業務のみが勤務時間として認められていました。

しかし、制度改正後は、サービス担当者会議への出席、利用者宅への訪問などの外出なども勤務時間数に含まれることになりました。

改正によるメリット

生活相談員の専従要件が緩和されたことにより、地域との連携、利用者の自宅での状態の把握や利用者家族への相談業務などが勤務時間に含まれるようになったことから、より生活相談員の役割が果たせるようになりました。

その結果、利用者のニーズに合わせた適切なサービス提供や利用者の生活環境の改善など、より一層の質の高いサービスを提供することが可能となり、利用者満足度の向上につながっています。

また、地域との連携がより密接になることで、地域のニーズや課題をより把握し、地域の福祉活動にも貢献することができます。

令和6(2024)年度報酬改定の影響

令和6(2024)年度報酬改定が行われ、人員基準にもいくらかの影響があるようです。ここではそれらについて3つ紹介します。

治療と職務を両立する職員の勤務時間数の緩和

治療と両立する時短職員の場合、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱えることになりました。常勤換算上も、週30時間以上の勤務で常勤換算1として取り扱えます。

治療と職務を両立する職員の勤務時間数の緩和により、職員の健康と業務パフォーマンスが向上し、離職率が予測できます。また週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱えるため、人件費の管理がしやすくなり、労務管理が簡素化されます。さらに、安定した人材確保が可能となり、施設のサービス品質向上に寄与します。常勤換算上も同様に取り扱えることで、運営コストの最適化が図れ、経営の効率化が図れるようになりました。

外国人介護人材についての見直し

ケアの習熟度が一定に達している外国人介護職員の人員配置基準上の取り扱いが見直されることとなりました。

現在、日本語能力試験N1またはN2に合格した人を除き、就労開始から6か月未満のEPA介護福祉士候補者と技能実習生(以下、外国人介護職員)には人員配置基準への算入が認められていません。

しかし、ケアの習熟度が一定に達している外国人がいることを考慮して、事業者が管理者や指導職員などの意見や、日本語・ケアの指導の実施状況を踏まえて、その外国人介護職員を人員配置基準に算入すると決定した場合には、就労開始直後から人員配置基準に算入できるようになります。

管理者の責務と兼務範囲の明確化

適切に介護サービスの質が担保さえれるように、管理者の責務と兼務できる事業所の範囲が明確化されました。

管理者の責務に関しては、サービス提供の際の問題や状況を適切に把握するとともに、職員と業務の一元的な管理・指揮命令を行うことなどが盛り込まれています。

また兼務範囲については、上記の責務を果たせる場合は同一敷地内の他の事業所・施設などでなくても兼務できることが示されています。

通所介護の人員基準を満たせない場合

看護職員・介護職員の人員が満たせない場合、介護報酬の減算の措置が必要となります。また人員基準を満たしていないにもかかわらず、人員基準を満たしているかのように虚偽の報告をすることは重大な不正行為となります。

通所介護の運営指導は、基本的に指定更新期間内の6年以内に1度行われますが、その際に人員基準違反があった場合指導されることがあります。

運営指導は事前に文書で通知され、文書に記載の日時に運営指導が行われます。

その際に人員基準違反が発覚すると、監査が入ることになりますが、その結果、

  • 事業所の指定取り消し
  • 減算
  • 新規利用者の受付停止
  • サービス停止(期限付き)

などの処分を受けることがあります。

可能な対策

通所介護の人員基準を満たせない場合、対策として考えられるのは、例えば看護師の場合、病院、訪問看護ステーション、診療所といつでも連携を取れるようにしておくことです。

この3つのいずれかの医療機関と連携していると、看護職員に関しては通所介護の職員でなくとも看護職員の人員は「配置しているものとみなす」とされています。

ただし、通所介護の看護職員が配置できない場合、病院等の看護師が実際に事業所で必要な業務を行う必要があります。

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通所介護の設備基準

通所介護では、設備基準もあります。それぞれの設備について、どのような基準があるのかまとめました。

設備配置基準
機能訓練室食堂との合計面積が定められており、食堂との合計で、利用者1人あたり3㎡以上になるよう機能訓練室の広さを設計する必要があります。
事務室事務室の面積について基準はありません。ただし、個人情報の管理のため、書庫を設置することが必要です。
相談室相談室については特に基準はありません。プライバシーを守れるようにするため、パーテーションなどを設置するのがよいでしょう。
静養室利用者が体調不良の場合に静養できるよう、ベッドがある部屋を用意する必要があります。カーテン等を使用し、利用者のプライバシーに配慮する必要があります。
食堂機能訓練室との合計面積が、利用者1人あたり3㎡以上にする必要があります。
トイレ車いすを使用しての利用ができるトイレを設置する必要があります。
浴室入浴介助を行う場合、浴室がなければなりません。
送迎車利用者の自宅から事業所まで送迎するための送迎車が必要です。車いすに乗った状態でそのまま乗れる福祉車両が必要な場合もあります。
備品緊急時に職員を呼び出しできるボタンや、機能訓練用の道具などが必要です。

このようにデイサービスの事業所では、機能訓練室や静養室はもちろん、食堂やトイレについても、具体的に設備基準が設けられています。

こういった設備基準を見ることで、デイサービスで働く場合の、仕事内容がどういうものなのか、どういった介助が必要になるのか参考になるかもしれません。

また、デイサービスの利用を検討されている方は、どういう設備が整っているか、どういう介護が期待できるのかを知るきっかけにもなるでしょう。

通所介護の運営基準

通所介護には人員、設備に関して基準がありますが、運営に関しても基準があります。

まず、通所介護計画書の作成は必須です。通所介護計画書とは、ケアプランをもとに、デイサービスでの利用者の目標、家族の希望プログラムや支援内容などを記載するものです。

また、職員の勤務表も作成が必須であり、その日の出勤者が誰なのかを記録しておく必要があります。

デイサービスでは利用定員が決まっていますが、利用定員以上の人数の利用者を受け入れることは禁止されています。

その他、利用者がデイサービスを利用申し込みする際には、運営規程、緊急時の施設での対応についてなどを利用者やご家族に文書で説明することも必要です。

説明と文書の内容に本人やご家族が同意し、文書にサインをしたあとサービスが開始できます。

おむつの費用、食事・おやつ代、利用時間の超過分など、介護保険サービス以外のサービスについては、料金が設定されていることも必要です。

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通所介護の人員基準についてまとめ

通所介護の人員基準についてまとめ
  • 2015年から人員基準が緩和された
  • 人員基準を満たせない場合、事業所の指定取り消し、減算などの処分を受けることがある
  • 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の人員基準は18名以下である

デイサービスを運営するためには、厚生労働省の定める基準を満たす必要があります。

人員基準では、デイサービスに必要な職員である管理者、生活相談員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員について、必要な人数も含めて規定されています。

もし人員基準を満たしておらず監査が入った場合、事業所の指定取り消し、減算、サービス停止(期限付き)などの処分を受けることがありますので、基準はしっかり守らなければなりません。

また、設備や運営に関する基準も定められており、これら全てをクリアしなければ、デイサービスを開設できません。

利用定員や当日の利用者数によっても職員の配置人数は変わってきますので、基準についてはしっかり理解しておく必要があります。


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介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)