ユニットケアとは?理念・メリットやデメリットから介護職員の勤務内容まで解説
更新日時 2023/06/15
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「ユニットケア型介護施設ってどんなところ?」
「ユニットケアのメリット・デメリットを教えて!」
このようにお思いの方も多いのではないでしょうか。
ユニットケア型介護施設とは、入居者・スタッフともに少人数制の介護施設で、入居者にとっての「普段の暮らし」の中でスタッフがともに生活しながらサポートしていくという入居者1人1人に寄り添った介護施設です。
しかし、ユニットケアには、従来型と異なるいくつかの要素があるため、どちらを利用しようか迷っている方も多くいるでしょう。
今回は、ユニットケア型介護施設の理念や利用のメリット・デメリットを紹介しましょう。
また、ユニットケア型介護施設のスタッフとして働きたいと考えている方に向けて、介護職員の業務内容・働く際に注意したいポイントも紹介しているので最後までご覧ください。
- 入居者・スタッフが共同生活する介護施設
- 家にいるような普段の暮らしぶりの実現
- スタッフは1人1人に合わせた適切なサポートを
- プライバシーを守り尊厳を大切にする介護
ユニットケアとは
まずは、「ユニットケア」とは何かについて、定義やユニットケアに大切な3つの要素など基本的な情報を紹介します。
ユニットケアの定義
ユニットケアの定義は、施設内に入居者とスタッフが共同生活をしながら1人1人の生活リズムにあった生活が送れるようにサポートする介護ケアを行っていることです。
2001年から本格的に始まったユニットケアは、10人程度の少人数のメンバーを1つのユニットとして、固定されたメンバーとスタッフでケアが行われるという新しい介護スタイルです。
ユニットケアが取り入れられている施設は、特別養護老人ホーム(特養)がほとんどですが、現在は介護老人保健施設(老健)をはじめとしたさまざまな施設においてユニットケアの導入が進められています。
3つの要素がある
施設内でスタッフ・入居者がともに生活しながら、普段通りの暮らしの中で、利用者1人1人の生活リズムに合わせてケア・サポートを行うユニットケア型介護。
そんなユニットケアの実現には、以下の3つの要素が必要です。
要素 | 説明文 |
---|---|
ハード(環境) | 入居者とスタッフとがともに生活を送る施設の環境。 入居者にとっての「普通の暮らしぶり」でなくてはならない。 |
ソフト(サポート) | 利用者のそれまでの暮らしを理解し、それまでの暮らし方を継続するためのサポート。 |
システム | 施設運営の中で、職員1人1人が役割として自立し一丸となって機能する仕組み作り。 |
ユニットケアの実現には、高齢者が快適に生活できる環境作りと家にいるような暮らしを実現するサポートの2つがうまくかみ合うことが必要です。
また、ハードとソフトがうまく機能するために、適切な運営をしていくためのシステムを作ることが大切になります。
個別ケアを実現するという理念
1人1人のプライバシーや尊厳を大切にするといった理念の下、ユニットケアは作られました。
従来の集団ケアの介護とは異なり、ユニットケアは、入居者には個室が用意されます。そのためできるだけ自宅に近い環境で、各利用者の希望に沿った個別ケアを実現することができます。
こう言った点にも配慮をしているため、一人一人が快適に暮らすことが可能となっています。
ユニットケアのメリット・デメリットは?
ユニットケアには、メリットが多いですが、いくつかデメリットも存在するのが事実です。
施設を利用するにあたって、また、ユニットケア型介護施設で働くにあたって知っておくべきメリット・デメリットを紹介します。
ユニットケアのメリット
ユニットケアのメリットは、認知症当事者・介護職員それぞれの立場から見て、以下のようなものが挙げられます。
認知症当事者にとってのメリット
認知症当事者にとって、ユニットケアのメリットは、
- プライベートの時間を確保することができる
- プライバシーを確保し、尊厳を守ることができる
- 自分の都合に合わせた生活ができる
- スタッフとの距離感が近くなる
- 個室であるので、家族が訪問しやすい
- 少人数のため、介護が行き届きやすい
- 共有スペースで他の入居者と交流ができる
- インフルエンザなどの室内感染のリスクが低い
- 家庭に近い環境で過ごすことができる
- スタッフとの距離感が近くなり、信頼関係やコミュニケーションがより築きやすくなる
などが挙げられます。
他の入居者と交流しながらも、プライベートの時間を確保できるのは、ユニットケアの大きな強みです。
また、従来のように、施設が決めたスケージュールにきっちり沿って動く必要がないため、より自由な生活が可能となります。
従来の介護施設よりも家庭に近い環境で過ごすことができるので、精神的にもメリットが大きいと考えられます。
介護職員にとってのメリット
介護職員にとって、ユニットケアのメリットとは、
- 入居者1人1人にあったケアが可能である
- 入居者との距離感が近い
- ユニットが少人数なのでスタッフの目が行き届く
などがあげられます。
ユニットケアは、スタッフ・利用者ともに少人数の中で介護が行われるため、入居者1人1人をしっかりと見ることができ、個々に合った丁寧なケアが可能です。
また、入居者との距離も近くなるため、信頼関係を築きやすいというのもメリットと言えるでしょう。
ユニットケアのデメリット
ユニットケア型介護には、メリットばかりでなく、いくつかのデメリットも存在しています。
ユニットケアのデメリットは、以下をご覧ください。
認知症当事者にとってのデメリット
認知症当事者におけるユニットケアのデメリットは、
- トラブルが起こると、入居者間で気まずい思いをする
- 1人が苦手な人は、孤独感を感じてしまうことも
- 居住費や光熱費といったコストが割高なため、利用者負担が大きい
少人数の中で生活を共にするユニットケアは、何かトラブルが起こると気まずい思いをすることがあり、ユニットケアのメリットである「スタッフとの距離の近さ」がデメリットにもなる可能性があります。
また、プライベートの時間が豊富にあるために、入居者が孤独を感じる場合もないとは言えません。
介護職員にとってのデメリット
介護職員にとってのデメリットは、
- 同時に様々なタスクをこなさなければならない
- 責任が問われることも
ユニットケアでは、スタッフは少人数であり、場合によっては1人の場合もあります。
そのため、責任感をもって判断しなければならない場面が多く、スタッフ1人1人の負担が大きいことがデメリットです。
ユニットケアでは、介護職員の負担を軽減し、働きやすい環境を整備することが重要です。適切なスタッフ配置や労働条件の改善、充実した研修やサポート体制の提供などが求められます。介護職員の働きやすさを確保することは、質の高いユニットケアの提供につながります。
また責任のある仕事だからこそ、やりがいを感じられる経験となるでしょう。
従来型とユニット型のメリット・デメリットを比較
従来型とユニットケア型介護施設のメリット・デメッリトをまとめると、以下のようになります。
ユニット型 | 従来型 | |
---|---|---|
メリット | プライベートな時間が確保できる プライバシーの確保ができる スタッフとの距離が近い 家族が訪問しやすい 介護が行き届きやすい 共有スペースで他の入居者と交流ができる インフルエンザなどの室内感染のリスクが低い |
孤独感を感じにくい 人間関係にわずらわしさがない 費用が安い |
デメリット | 人間関係トラブルが起こった時に気まずい 建築コストがかかっているため費用面で利用者負担が増える 人によっては個室に孤立感を感じる 従来型に比べて費用が高額 |
個別ケアがしにくく尊厳が損なわれる可能性も 担当スタッフがいないので、トラブルの際責任をとれる人がいない 大人数で過ごすため、特に認知症の方は気持ちに動揺が起こりやすい プライバシーが保ちにくい 施設内感染のリスクが高い |
ユニットケアと従来の施設の違い
ユニットケア型と従来型の大きな違いとして、部屋の構造が挙げられます。
従来型では複数人が利用する多床室を主流としていますが、ユニットケア型では個室です。
従来の施設
従来の介護施設は、1つの部屋に4人が集まって寝るという多床室で、廊下を挟んだ先に大きな食堂がある、という構造が一般的でした。
また従来の施設では、食事・入浴の時間などすべてが施設の決めたスケジュールによって管理されているため、スタッフが効率的に介護をすることが可能です。
その反面、利用者は、1人になる時間がなくプライベートを確保できず、自分に合わせたスケジューリングが難しいということが課題となっていました。
ユニット型施設
ユニットケア型は、1人1人に個室が用意されていることが一番の特徴です。共有スペースを囲むような配置で、それぞれの居室が設置されています。
利用者すべてに個室が用意されているため、プライベートな時間を自由にリラックスして使うことができ、一方で共有スペースもあるため、入居者同士での交流も自由に楽しむことが可能です。
ユニットケア施設では、食事や入浴などの時間や内容を自由に選べるようになっていて、利用者に決定権があることに大きなメリットがあります。
また、ユニットごとにスタッフが固定されているため、スタッフの移動が基本的にはなく、スタッフと入居者の距離感が近いことも魅力の一つです。
近くの介護施設を探してみる!ユニットケアの費用
ユニットケア型介護施設の利用にあたっての最大のデメリットは高額な利用料金です。
ユニットケア型介護の利用額は、利用者負担段階によって変動し、1~4段階によって金額が異なります。
<ユニットケア型と従来型の利用者負担>
ユニットケア型個室 | 従来型(多床室) | |
---|---|---|
第1段階 | 約4.9万円 | 約2.4万円 |
第2段階 | 約5.2万円 | 約3.8万円 |
第3段階 | 約8.4万円 | 約5.5万円 |
第4段階 | 約12.8万円 | 約9.2万円 |
従来型の介護施設であっても、利用者負担は段階によって異なりますが、もともとの利用者負担が大きいユニットケア型介護では、段階を踏むごとに差額が大きくなります。
ユニットケア入居をおすすめする人
メリットもデメリットもあるユニットケア型介護ですが、では、ユニットケアが合う人とはどんな人でしょうか?
ユニットケアをおすすめできる人は、以下のような特徴を持つ方々だと言えるでしょう。
- 家に近い環境で自由度が高く生活したい人
- 介護度が重い人
- プライバシーを守れる空間が欲しい人
- 介護にかかる費用に余裕がある人
- 濃い人間関係を求める人
家庭環境に近く自由度の高いサービスを強く望む方や、スタッフとの信頼関係をしっかり築きたい方は、ユニットケア型介護をおすすめします。
逆に、スタッフの世話が煩わしく感じていたり、人間関係で揉めるのが嫌という人は、従来型の方があっていると言えるでしょう。
もしも、どちらを利用しようか迷う場合や利用施設が決まらない場合は、まずはショートステイを利用してみてください。
近くのショートステイ対応事業所を探してみる!ユニットケアのスタッフの仕事は?
スタッフ1人1人が責任ある仕事を受け持つユニットケア型介護施設のスタッフは、非常にやりがいがあり魅力的な職業です。
しかし、ユニットケア型介護施設は、特有の業務はややあるものの、基本的に従来型の施設での仕事内容と大きな差はありません。
以下では、ユニットケア型介護施設で働きたい方に向けて、実際に働く際に抑えておきたい情報を紹介します。
入居者の身の回りのサポート
ユニットケア型介護施設スタッフの主な業務は、入居者の身の回りのサポートです。
パジャマへの着替え・食事・入浴介助といった日常生活におけるサポートがメインですが、シーツの交換・掃除・家族の対応など介助以外の仕事も請け負います。
ユニットケア業務として特徴的なポイントが、1日のスケジュールが入居者主体となって決まることです。
とくに食事に関するスタッフ業務は特殊で、入居者は起きた人から好きな時間に食べられ、洋食か和食か選ぶこともできるため、個別に合わせて食事を配膳するのが従来柄の施設とは異なります。
食事のほかに、入浴の際もスタッフが1人1人に合わせて対応するので、スケジュールに沿って業務を行う従来型とは異なるのがポイントです。
ユニットケアの定義は「家にいるような暮らしぶりの中で利用者1人1人に合わせた細やかなサポートをする介護施設」なので、スタッフは利用者の意思をよく汲み取ってスケジュールに反映させます。
介護職員の1日のタイムスケジュール
以下は、ユニットケア型介護施設の職員が行う1日の業務のタイムスケジュールです。
あくまで一例ですので、参考程度にご覧ください。
時刻 | 内容 |
---|---|
7:30 | 出勤・入居者の様子の見回り |
8:00 | 朝食準備(1人1人の起床時間、食事内容に合わせて配膳、ケア) |
9:30 | 入浴(1人1人に合わせて介助) |
11:30 | 昼食準備、食事介助 |
12:30 | 職員の休憩、情報共有 |
15:00 | 軽食(おやつ) |
16:00 | 入居者の通院のサポート |
16:30 | 各利用者の介護記録をつける・チームミーティング |
17:00 | 業務終了 |
介護施設では、上記の流れで食事や入浴の介助を行っていきますが、入居者の希望によっては、スケジュールが前後したり業務内容に変更があったりする可能性もあるでしょう。
なお、多くの介護施設では上記の流れが一般的ですが、施設によっては始業・就業時間が前後したり、スケジュールの内容が異なったりする場合もあります。
ユニットケアの勤務にあたっての注意点
従来型と異なる部分も多いユニットケア型介護施設では、スタッフとして勤務する際に気を付けたてほしいポイントがあります。
以下では、実際にユニットケア型介護施設でスタッフとして働く際、注意したいことを解説しましょう。
ユニットリーダーにすぐ相談する
ユニット型施設では、配属されるスタッフが少人数で、場合によっては入居者10人に対して1人の可能性もあり、自分1人で判断しなければいけない場面が出てくることもあります。
経験が浅いスタッフにとっては、自分1人で判断行動するのは荷が重いかもしれませんが、困ったときにはユニットのリーダーに相談ができるので完全に業務の責任を1人で背負う必要はありません。
ユニットリーダーに相談することで、経験の浅いスタッフでも正しく適切な判断ができます。
業務で不安なことがある際には、すぐにユニットリーダーに相談しましょう。
体調管理を徹底する
ユニットケアだけに限定されたものではありませんが、介護職員として働く際には体調管理を徹底しましょう。
少人数のスタッフで現場を回しているユニットケアでは、スタッフの体調不良によって急な欠勤になると、スタッフが足らなかったり迷惑をかけてしまうことになります。
現場の円滑な運営とスタッフ全員が適切に機能するためには、体調をしっかりと整えることが重要です。十分な睡眠や栄養を摂り、適度な運動やリラックス方法を取り入れることで、健康な状態を維持しましょう。
また、定期的な健康チェックや予防接種の受け取り、手洗いやマスクの着用などの感染予防対策も欠かせません。自身の体調管理に加え、他のスタッフや入居者の安全を守るためにも、感染症などへの予防対策を徹底しましょう。
入居者とこまめにコミュニケーション
スタッフと入居者の繋がりが強いユニットケア型介護では、入居者とのこまめなコミュニケーションがかかせません。
ユニットケアでは、入居者のわずかな変化にも気付いてサポート・ケアするため、専任のスタッフを配置しています。
スタッフは、1人1人の些細な変化にも気付けるように入居者をよく観察し、しっかりとコミュニケーションをとることが大切です。
個人個人をよく観察する
前述の通り、ユニットケアのスタッフは、入居者の些細な変化にも気付いて対応していくことが大切なので、個人個人をよく観察しましょう。
普段から入居者をよく観察し、好きな食べ物・テレビ番組・趣味・やりたい事まで細かく把握してことで、入居者の些細な変化にも気付けますし、スタッフと入居者との信頼関係を深めるきっかけにもなります。
入居者のプロフィールを把握しておくことは、入居者主体でスケジュールが進むユニット型の業務をスムーズに行う上でも大切になるでしょう。
ユニットケアの問題点・課題点
国が推奨もしているユニットケア型介護施設ですが、実はまだまだ多くの問題点・課題点があります。
その中でも利用者に大きくかかわってくるのが、費用面での問題点です。
下記では、ユニットケア型介護施設の抱える問題点について解説します。
従来型の特養の改修が大変
現在、介護施設のユニットケア化が国を挙げて推進されていますが、従来の特別養護老人ホーム(特養)がユニットケアに移行するとなった場合には、多くの修繕費がかかることが予想されます。
中には、一度取り壊さなければならない施設もあるため、建設に高額な費用が必要です。
この高額な修繕費用・建設費用は、入居者家族の支払う利用料に乗せられてくるため、ユニットケア型介護施設の利用料は高額になってしまいます。
割高である
そもそも、ユニットケアの利用料は、全ての部屋が個室になるため従来型に比べて割高です。
従来型施設では、複数人で光熱費を割ることが出来たものの、すべて個室の利用になるため、光熱費が多くかかります。
月々の出費が増加することは、利用する家族にとって大きな負担となるでしょう。
現在、一部保険適用ができる場合もありますが、基本的には介護保険の適用範囲外なので費用が自己負担となります。
介護費用の面で検討する際には、家族や本人の経済状況や予算に合わせて検討する必要があります。十分な調査や相談を行い、財政面の負担を踏まえた上で最適な選択をすることが重要です。
費用をより抑えられる介護施設は?
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- 入居者の生活リズムに合わせて食事・入浴時間など自由に選択可能
- 個室のためプライバシーが守れるが、中には孤独を感じる人も
- 光熱費・修繕費(施設利用料)などの負担が大きい
専任スタッフと少人数の入居者というユニットの中、家にいるような穏やかな環境で1人1人に寄り添ったきめ細やかなサービス・ケアが受けられるというユニットケア型介護施設の魅力を紹介しました。
光熱費などの家族の負担・高額な修繕費用など、まだまだ問題点も多いユニットケア型介護施設ですが、プライバシーを守りながら人とのつながりを作り上げていくユニットケア型の介護は、今後さらに需要が高まっていくでしょう。
また、ユニットケアには従来型と異なるポイントがいくつかあり、向く人・向かない人があります。
ユニットケア型介護の利用を検討している方は、まずショートステイを利用して、施設を試してみるのもおすすめです。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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