薬の使用期限はどのぐらい?種類ごとの期限の違いや正しい保管方法を紹介
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「薬の使用期限が分からない」
「期限切れはどう判断すれば良いの?」
「薬の正しい管理方法について知りたい!」
このようなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?薬に使用期限があるということを知っていても、正確な期限や確認方法については分からないという人も多いでしょう。
そこで今回は、薬の使用期限の正しい判断方法や、種類による期限の違いについて詳しく解説します。
この記事を読めば、自分が持っている薬の期限の調べ方、そして適切な保管方法について分かるでしょう。
- 一般的に、薬の使用期限は「未開封の状態」かつ「適切な保管方法」の場合で3~5年程度
- 薬の種類によって使用期限は異なる
- 薬を保管する際は直射日光を避け、湿気の少ない涼しいところに置いておく
- 飲み忘れたり余ったりした薬がある場合、自己判断で服用回数や量を変えてはいけない
そもそも薬の使用期限とは?
市販されている薬は食品と同じように、品質が保証される「使用期限」が定められています。もちろん薬は、食品のように明確に見た目の劣化で使用期限がわかるわけではありません。しかし、薬も時間の経過とともに以下のような変化が起こり、効果を示さなくなる可能性があります。
- 有効成分が分解される
- 気温や湿度、紫外線などの影響により化学変化を起こす など
このような状態にならないように、市販薬には安心して使える「使用期限」が各メーカーによって決められているのです。一般的に、市販薬の使用期限の目安は製造から3年とされています。なお、使用期限は「未開封の状態」で「適切な条件下で保管」した場合に限ります。
ただし、未開封の状態で3年以上品質や効き目を保つことができる市販薬に関しては、使用期限を明記する義務はありません。そのため、中には使用期限が明記されていない市販薬も存在しています。
抗生物質やワクチンなど、厚生大臣が基準を定めたものには、有効期限を記載することが義務付けられています。これとは別に、性状や品質が不安定なものには、使用期限の表示が必要です。これ以外の性状や品質が3年以上安定なものには、使用期限の表示は義務づけられていません。
国益社団法人 東京都薬剤師会 医薬品の有効期間について
引用にもあるように、全ての薬に対して必ずしも使用期限の明記が義務付けられているわけではありません。現在、ほとんどの市販薬には使用期限が記載されていますが、中には記載がないものもあります。
また、市販薬の使用期限は基本的に製造から3年間が目安となっています。
薬の使用期限が分かる方法
処方薬などの場合、処方された薬局で調べてもらうのが一般的です。市販薬の場合、薬局の薬剤師に相談することで限られた情報から使用期限を判断できる可能性も高いです。
では、市販薬の使用期限を調べる2通りの方法について見ていきましょう。
記載された情報やデータから判別する
市販薬の使用期限が分からない場合、まずは薬局の薬剤師に相談してください。
薬局では、薬剤師の方が薬のシートに記載された製品番号やLOT番号、在庫管理システムのデータなどから使用期限を調べることが可能です。
ただし、上記の方法で使用期限を調べる場合、「その市販薬を購入した薬局」で、「シートが1錠ずつ切り離されていないこと」という条件が必要になります。
薬の色・形などの情報から判断する
購入した薬局や処方された薬局が確実な場合は、それぞれ該当する薬局へ確認してください。
どの店舗で購入したか分からない場合や、パッケージを覚えていない場合でも、薬剤師を通すことで薬の種類や色・形などの情報から判断できる可能性があります。
自己判断で調べてもわからないことが多いので、専門家を頼ることが適切と言えるでしょう。
薬の種類ごとの使用期限の違い
薬の使用期限は製造から3~5年程度が目安です。なお、この期限は未開封かつ適切な保管状態の場合の使用期限となります。そのため、開封済みの薬は使用期限に限らず早めに使いきることが大切です。
また、一口に薬と言っても、様々な形状や種類が存在します。ここでは、薬ごとの使用期限の目安について見ていきましょう。
病院から処方された薬
医師から処方された薬は、特別な指示がない限り処方された期間で利用し切るようにしましょう。
診察時の患者の状態に合わせて処方されている薬のため、飲み忘れた薬をしばらく経ってから使ったり、他の人に渡したりしてはいけません。
また、医師から処方された薬の使用期間はあくまでも目安です。保存状態によって使用期限が短くなる場合があるため注意しましょう。
飲み薬
飲み薬には、紛薬や錠剤などの様々な形状が存在します。粉薬や顆粒は3~6ヵ月程度、カプセルや錠剤などは6ヶ月~1年程度がおおよその目安です。
また、シロップ剤などの水薬は時間が経つと細菌などが繁殖してしまう恐れもあります。そのため、処方日数がそのまま使用期限になると考えて、早めに使い切りましょう。
細菌が繁殖するのを防ぐためには、シロップをスポイトやカップなどで取り分けます。そして、子供が飲めなかった場合に、残りを容器に再び戻さないように注意しましょう。
目薬や点鼻薬、インスリンなどの自己注射剤
目薬を使用する際は、点眼容器の先端に触れないように注意しましょう。点眼容器の先に触れてしまうと、その部分からほこりや目やにが吸い込まれてしまいます。ほこりなどが混入すると細菌が繁殖してしまい、そのまま使用すると感染を起こす恐れがあります。
ほとんどの医療用目薬は、開封後1ヶ月程度で使い切るように想定されているため、1ヶ月で使い切れなっかた分は処分してください。市販の目薬の場合は、期限内かつ開封後数ヶ月が期限切れの目安です。
また、インスリンなどの自己注射剤も、目薬同様1ヶ月程度が期限切れの目安となります。
塗り薬や軟膏などのチューブ
軟膏などの塗り薬は、錠剤の飲み薬や目薬などと比べて長期間の使用が可能になっています。しかし、薬を塗る際にチューブの先端が直接幹部に触れてしまうと、そこからほこりなどが侵入して細菌が繁殖してしまう恐れがあります。
長期間の使用を可能にするためには、しっかり手を洗って清潔にしたあと、指に必要な分量を絞り出してから幹部に塗るのがポイントです。また、絞り出す際に綿棒を使うとより衛生的です。
一包化や分包散剤
本来の薬の使用期限は「未開封」の場合を示しています。一方で、服用するタイミングが同じ薬などを1回分ずつパックに包む「一包化」や、薬局内の機械によって包まれた粉薬「分包散剤」の場合、本来の保存シートから薬を取り出しているため、作業をすることでパッケージ内に空気が入り、密閉していても湿気が含まれた状態になってしまいます。
そのため、薬の質や効き目を長期間保つことが難しくなり、使用期限に制限がかかります。一包化や分包散剤を服用する場合は、処方された期間を大きく過ぎて服用することは避けましょう。
遮光保存が必要な薬
薬の中には、遮光保存が必要と言われる種類があります。その場合、保存状態によっては効果が薄れてしまう恐れもあるため、注意が必要です。
有効成分が安定して保存されるための条件には以下のものがあります。
- 25℃
- 湿度60%
- 遮光保存
薬を処方される際には薬剤師から保管方法についてしっかりと説明を受けることが大切です。
保存期間が短い薬
薬の使用期限は、3~5年程度が一般的ですが、種類によってはもともと使用期限が短いものや、薬局で保管している段階で使用期限が短くなっているものなどが存在します。
保存期限が短い薬には以下のものが挙げられます。
- 経管栄養剤など、患者の様態によって処方内容が変わる薬
- 珍しい病気のため、備蓄数の少ない薬
- 抗がん剤などの高額な薬
- インフルエンザの薬など、特定の時期に多く処方される薬
これらに当てはまる薬や一部の先発医薬品は使用期限が短い場合が多いです。前述したように、すでに使用期限が迫ってきているケースもあるため注意しましょう。
正しい薬の管理方法
薬は「温度・湿度・光」の三要素に影響を受けやすいため、保管の際は直射日光を避け、なるべく湿気の少ない涼しいところに置いておくことが重要です。
その他にも、保管する際の注意点として次の3つが挙げられます。
- 密閉された容器で保存する
- 保管する場所は一か所にまとめる
- 同じ薬を処方された日付で区別する
以下の見出しで詳しく見ていきましょう。
密閉された容器で保存する
前述したように、薬は「温度・湿度・光」の三要素に影響を受けやすいという特徴があり、湿度の少ない場所に保管することが重要です。
そのため、錠剤や粉薬などは薬箱や缶詰などの密閉された容器に、乾燥剤と一緒に入れて保管しておくことをおすすめします。密閉容器であれば、「直射日光を避ける」という条件もクリアすることができます。
薬を入れた容器は涼しい場所に置いておきましょう。
保管する場所は一か所にまとめる
薬を保管する場所を決め、同じ場所にまとめておきましょう。
袋ごとに保管場所を変えてしまうと、飲み忘れていた薬が重複していても気づかない恐れがあります。
また、保管の際には薬袋から出し、透明な袋に薬剤情報提供書(処方される際に薬剤師から貰う薬の説明書きのこと)や薬袋、薬をそれぞれ見える形で保管すると、飲み忘れの防止に効果的です。
同じ薬を処方された日付で区別する
先ほどの見出しで述べたように、薬は一か所に保存することをおすすめします。ただし、同じ保存場所の中でも、「処方された薬」や「効能」などを記載して区別しておくことが大切です。
区別しないまま「ひとまとめ」にしてしまうと、同じ薬の中でも使用期限が過ぎているものとそうでないものが混在し、期限切れの薬を服用してしまう可能性があります。
処方された薬が余ったとき
処方された薬が余った場合は医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。場合によっては、無駄な薬を減らしてもらうことができ、その分の薬代が節約できる可能性があります。
また、相談して薬が余る原因を確かめてもらうことで、無理なく薬を服用することができるようになります。例えば飲み忘れが多い場合などは、1日3回服用するタイプの薬から1日2回服用するタイプ、もしくは1回服用するタイプの薬への変更を提案してくれることがあります。
医師や薬剤師への相談なく、自己判断で薬の量や服用回数を変えることは決してしないください。効果が得られない・副作用が出るなどのリスクが発生するだけではなく、最悪の場合は死に至ることもあります。
医師や薬剤師から処方された用法・用量や使用期限は必ず守りましょう。
薬の使用期限についてまとめ
- 使用期限に限らず、開封後の薬は化学変化によって効果を示さなくなる可能性がある
- 処方された薬の場合、飲み忘れた薬をしばらく経ってから使ったり、他の人に渡したりしてはいけない
- 適切な保管方法、使用方法により長期間効き目を保つことができる
- 処方された薬が余った場合は医師や薬剤師に相談する
薬の使用期限について解説しました。
食品の消費期限と同様に、薬には使用期限が存在します。使用期限は薬の品質・効果を保つために設けられているものであり、3~5年程度の期間が一般的です。時間が経過しても薬の品質や効果が変わらないものには使用期限が記載されていない場合もありますが、開封後はなるべく早く使い切ることが大切です。
また、薬の中には適切な保管方法・使用方法でない場合に細菌が繁殖し、感染症を起こす恐れのあるものもあります。薬剤師からの説明をしっかりと聞き、用法・用量を守って使用することが大切です。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)