認知症カフェとは?目的・運営者による種類の違いから介護面のメリットまで解説!
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「認知症カフェって何?」
「認知症カフェに行きたいんだけど、どうすればいい?」
近年、認知症カフェが広まってきています。しかし認知症カフェという存在を知らない人もいるでしょう。
また、認知症カフェに行きたいけれど、どうやって認知症カフェを探せばよいのかわからないとお困りの方もいるでしょう。
そこで、この記事では認知症カフェとは何かを徹底解説します。認知症カフェの目的、種類、メリット、探し方など、認知症カフェに関する情報をたっぷりお伝えします。
認知症カフェに興味を持った方は、ぜひ気軽に認知症カフェに行ってみてください!
- 認知症カフェとは、認知症当事者や家族などが集まる認知症サロンのようなもの
- 認知症当事者や家族の孤立を防ぎ、地域住民に認知症について理解を促す目的がある
- 主に家族会、社会福祉法人、自治体、NPO法人によって運営されている
認知症カフェとは
近年、介護サービスは非常に多様化しており、さまざまなサービスがあります。
認知症カフェとは介護サービスの一部です。認知症の当事者のみならず、家族や地域の人々が一緒になって集まることができるカフェとなっています。
それでは、認知症カフェの特徴を具体的に見ていきましょう。
高齢者が集まるいわゆる認知症サロン
認知症カフェは、認知症の認知症の当事者が集まるため認知症カフェと呼ばれています。認知症サロンと言うと、わかりやすいでしょう。
しかし、認知症カの当事者の方だけではなく、地域の住民や医療の専門職の人など、誰でも立ち寄ることができます。
最近ではオンラインで開催される認知症カフェも増えてきており、地理的な制約を超えて多くの人が参加し、情報交換を行うことが可能となっています。
そのため、認知症カフェは、さまざまな人が交流を深めることができる場となっています。
オレンジカフェと言われることも
認知症カフェは、オランダのアルツハイマーカフェから始まり世界に広がりました。
日本では、2015年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によって、認知症カフェが始まりました。
このオレンジプランは、認知症の当事者が住み慣れた住みやすい場所で、引き続き生活できることを目的としています。
この施策の名前から、認知症カフェはオレンジカフェとも呼ばれることがあります。
認知症カフェの目的
認知症の当事者は、家に閉じこもりになってしまう傾向があります。
認知症カフェは、認知症の当事者の方が通うことで認知症の当事者や家族の方が孤立してしまうリスクを減らせます。
また、認知症の当事者・家族にサービスを提供することで、普段の介護で感じている負担やストレスなどを減らせることもメリットです。
さらに、地域の人に認知症のことを理解してもらうことにより、地域全体で住みよい街づくりができることにも繋がります。
認知症カフェで行われること
認知症カフェでは、どのようなことが行われているのでしょうか。
自由なコミュニケーション
認知症カフェは、社会福祉法人、医療法人、NPOなど認知症カフェの主催者が提供してくれるお茶やお菓子を自由に飲食しながら、参加者同士で会話をして交流することを目的としています。
参加費は100円ほどであることが多く、一般的なカフェというよりも、認知症患者や家族、地元の人々などあらゆる人が集まり自由に交流する場所です。
また、家族が他の認知症患者の家族と介護についての情報を交換する場としての役割もあります。
専門家による講演会やワークショップが開催されることもあり、認知症の理解を深めたり、最新の介護情報を得ることができる貴重な機会ともなっています。
介護相談
認知証カフェでは、介護福祉士や看護師など、認知症の介護について相談できる専門家も参加していることがあります。
そのため、認知症の当事者や家族が抱える悩みの相談ができたり、アドバイスがもらえたりします。
また、このような専門家たちが認知症カフェで交流することによって、認知症に関して専門家たちの連携が深まる効果もあります。
多業種間で調整を図る必要があれば、認知症カフェでの交流をきっかけに、地域での認知症のサポート体制が改善することもあるでしょう。
アクティビティ
認知症カフェでは、アクティビティも行われています。
認知症カフェに参加できる専門家によって内容は異なりますが、脳トレ、筋肉や関節など運動器の機能低下を防ぐためのエクササイズ、手芸、料理、将棋、パソコン教室など趣味を深める活動が行われます。
また、認知症カフェでのアクティビティはデジタルツールを活用したものも増えてきており、タブレットでの絵描きや音楽鑑賞などを行うことで、デジタル技術と親しむ機会を提供しているところもあります。
認知症患者や、将来認知症になる可能性がある高齢者は、ずっと家で過ごす人が多い傾向があります。
アクティビティを行うことにより、自主的に外出し、運動や趣味を楽しめる機会を提供するのも認知症カフェの大切な役目です。
認知症カフェに参加するには
認知症カフェは毎日開いているわけではなく、月に1~2回、約2時間ほどであるケースが大半です。
参加費用は、利用料・飲み物代を含めて無料もしくは数百円程度で、金銭的負担はほとんどありません。
事前申し込みする必要がないカフェがほとんどですが、中には事前申し込みが必須なカフェもあります。
認知症カフェに参加してみたい方は、あらかじめ確認するようにしてください。
認知症カフェの種類
認知症カフェは一種類だけではなく、運営者の違いによりいくつかのタイプに分けられます。
家族会による運営
家族会による運営の場合、昼食・飲み物がセットになっており、参加費は500円ほどのところが一般的です。
月に1回ほど、家族会のメンバーの一人の自宅で開催され、20人ほどの参加者が集まります。
認知症の人が楽しく参加できる場所の提供や、認知症本人、家族の心理面をケアすることを目的としています。
スタッフは、家族会のメンバー、市民のボランティア、専門職の人が務めます。
社会福祉法人による運営
社会福祉法人が運営する認知症カフェでは、参加費は100円ほどで大変安くなっています。
週に1度ほどの頻度で、社会福祉法人の施設の一室を利用して開催されます。参加者は10~20人ほどです。
ゲームや料理などのアクティビティが行われることが多く、認知症の当事者も楽しく過ごすことができます。
参加者は認知症初期の人が多く、スタッフは施設の職員です。
市町村による運営
市町村による運営の場合、市町村の施設を利用し、週に1度ほどの頻度で開かれます。参加料は無料です。
認知症の軽度の方へ支援をすることや、支援制度の情報を当事者や家族に周知することを目的に開催しています。
スタッフは介護の専門職や医療の関係者が務めています。
市町村のHPで認知症カフェの開催スケジュールが掲載されていることもありますので、市町村の認知症カフェに行きたい方は、HPで確認してみてください。
NPO法人による運営
NPO法人が運営する場合には、一般の家や空いている店舗を利用して開催します。
参加費は、飲み物が100円、食べ物は500円というように、選べる形であることが多いです。参加者は10~20人ほどで、その多くは地域の高齢者たちです。
地域の高齢者たちが自由に集まって活動できる場であり、集まった人たちで会話をしたり、ときには手芸などの趣味のサークル活動をしたりして楽しみます。
スタッフはNPO法人の職員や、ボランティアが勤めています。
認知症カフェの探し方は?
認知症カフェに行きたいと思ったら、どうやって探せばよいのでしょうか。認知症カフェの探し方は、以下の二通りがあります。
ネットで調べる
インターネットで最寄りの認知症カフェについて調べる方法もあります。
認知症カフェの多くはHPを作成していますので、検索すれば調べることができます。
さらに、ソーシャルメディアを活用して情報発信を行っている認知症カフェも増えてきており、FacebookやTwitterなどで最新の活動情報やイベントの予定を確認することも可能です。
また、多くの市区町村では、市区町村のHPで認知症カフェの紹介ページを設けています。
問い合わせ窓口も掲載されていますので、詳しい情報が知りたい場合は市区町村の担当窓口に問い合わせてみてください。
地域包括支援センターに直接問い合わせる
お住まいの地域にある地域包括支援センターに問い合わせるとすぐにわかります。
地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしを地域でサポートするための機関で、自治体が設置しているものです。
地域包括支援センターでは、認知症カフェだけではなく、介護全般についてさまざまな情報を得ることができます。介護で困ったときは利用することをおすすめします。
また、地域包括支援センターの他には、市役所や区役所に問い合わせても教えてくれます。
認知症カフェのメリット
認知症カフェを利用するメリットはさまざまあります。
認知症の患者と、患者を支える介護者それぞれのメリットについて解説します。
認知症の患者にとって
認知症になってしまった人は、自宅でひきこもりがちになってしまう人が多いですが、認知症カフェは、認知症の人が外に出かける目的になるため、ひきこもりを防止することができます。
また、認知症カフェに行くことで、社会に参加しているという意識も生まれます。このような意識は、認知症になりふさぎ込みがちになってしまった方にとっては非常に重要です。
また、認知症カフェでは他の認知症当事者と知り合えるため、同じ境遇の仲間と楽しく会話できます。
認知症カフェで行われるアクティビティに参加する中で、新しい趣味や熱中できるものを見つけられることもあります。
認知症の予防につながる
上述したように、認知症カフェではさまざまな人とコミュニケーションを取ったり、熱中できるものを見つけたりできます。
認知症カフェの参加者は高齢者が多いですが、認知症ではない高齢者が認知症カフェで活動することは認知症の予防にも繋がります。
介護者にとって
認知症カフェには、介護者にとっても大きなメリットがあります。
認知症カフェには介護者も集まりますので、同じ介護者同士で出会い、悩みや気持ちを共有することができます。
介護者同士で悩み相談をする中で介護についての情報交換をすることができ、負担や不安が解消されていきます。
また、スタッフとして参加している介護や医療の専門家から、介護のアドバイスを受けることも可能です。
認知症カフェの現在の課題点
このように、さまざまなメリットがある認知症カフェですが、現在まだいくつかの課題があります。
収益化が難しい
認知症カフェの中には個人が運営しているものもありますが、その場合利益には繋がりにくいため、赤字になるリスクが高くなってしまいます。
市区町村からの助成金があっても、なかなか継続的な運営をすることは難しいのです。
認知症カフェの収益化が難しい理由としては、利用者の負担額がかなり安く設定されていることや、日本ではまだ認知症カフェの経営についてノウハウが確立されていないことなどが挙げられます。
自治体ごとに温度差がある
高齢者救済のための介護・福祉サービスは数多くあることや、認知症カフェというものへの理解が乏しいことから、自治体によっては、認知症カフェに補助金を投入できない場合もあります。
収益化が難しく、参加者が集まることも不透明な認知症カフェを運営する上で、役所の担当者を用意することや、専門スタッフを見つけるにも費用がかかるため、市区町村が認知症カフェを運営することに対して抵抗感があるのが現状です。
サービスの充実度にも自治体によって差が生まれてしまっています。
「認知症カフェ」という名前自体への偏見
「認知症カフェ」という名前がついていることで「認知症の人しか入れない」という誤解や偏見がもたれ、市民が利用しにくくなっているケースが多くなっています。
認知症カフェとは何をするところなのかが知られていないことで、誤解や偏見を持たれてしまっており、認知症患者の家族や、地域住民の参加が促されていないのが現状です。
地域住民に対し認知症カフェをもっと知ってもらい、より多くの地域住民に参加してもらうことが今後重要になってくるでしょう。
認知症カフェの今後
認知症患者は今後どんどん増えてくると予想されています。そのため、国では2020年度末までに、全市町村で認知症カフェを設置しようという計画を立てました。
そんな中、認知症カフェには先に述べたような課題があるのが現状です。しかし、認知症カフェは認知症の人やその家族、地域住民にとって欠かせないものであり、とても重要なスペースです。
最近では、若い世代に身近なカフェでも認知症カフェへの取り組みをする動きが出てきています。
例えば、東京都町田市のスターバックスでは、店内に「Dカフェ」というコーナーを設け、認知症カフェとして場を提供する活動を始めました。
また、新たな取り組みとして、大学や研究機関が認知症カフェに関わる活動を行う例も見られ、研究成果を生かしたプログラムを提供したり、学生が参加して相互理解を深める機会を作るなど、学術と地域が連携して認知症への理解を広める動きが広がっています。
このように、地域全体に認知症カフェの理解を促し、地域全体が一つになり認知症カフェに取り組む必要があります。
認知症カフェについてまとめ
- 認知症カフェは、他の当事者家族と交流したり介護相談ができたりするので、介護する家族にもメリットがある
- 認知症カフェは、高齢者たちが集まりコミュニケーションやアクティビティを楽しめるため、認知症予防にもなる
- 日本では「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に基づいて認知症カフェが始まったため、オレンジカフェとも呼ばれる
認知症カフェは国の政策により年々増えてはいますが、知らなかったという方もいるでしょう。しかし、お住まいの地域にも認知症カフェはあるはずです。
認知症当事者やご家族の方で「どうしても家から出る機会が減ってしまった」「介護で行き詰っている」といった悩みを抱えている方は多いでしょう。
ぜひ認知症カフェに行き、同じような仲間や専門家に相談してみてください!
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)