老人ホーム・介護施設の入居条件は?年齢や介護度・収入など確認事項を全て紹介
更新日時 2023/08/07
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「老人ホームってどんな施設なの?」
「老人ホームってグループホームとの違いはあるの?」
老人ホーム・介護施設とはどんな施設なのか、わからない点がある方は多いでしょう。
特に、親や親族などが実際に老人ホーム・介護施設へ入居を検討することになったとき、入居条件など気になる点がたくさん出てくるのではないでしょうか。
そこで、この記事では老人ホーム・介護施設の入居条件についてお伝えします。
希望の施設に入るには、どのようなポイントに注意すればよいのか詳しく解説します。
これから施設を検討する必要のある方や、実際にどの施設にすればよいかわからずお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 介護保険法により、 介護保険施設は基本的に65歳以上が利用可能
- 老人ホームの入居条件には、年齢、介護度、収入などさまざまある
- 介護付き有料老人ホームに入るには要介護度1以上の認定が必要
老人ホームの入居条件は5つ
老人ホームは無条件で入居できるわけではありません。老人ホームの入居条件5つについてご紹介します。
なお、この記事での老人ホームとは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの公的施設と、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅といった民間施設です。
入居条件については、これらの施設が設けている条件をご紹介します。
年齢
介護保険法が65歳以上を対象としていることから、介護保険施設を利用できるのは、基本的には65歳以上の方です。
ただ、介護保険施設ではない住宅型有料老人ホームや健康型老人ホームは、介護サービスを利用していない人が入居することも可能です。
そのため、住宅型有料老人ホームや健康型老人ホームでは、65歳以下でも入居できることがあります。
特定疾病の人は40歳以上から入居可能
がん、パーキンソン病など、特定疾病を持っている40歳以上の方は、例外として以下の施設に入居することが可能です。
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 介護老人保健施設(要介護1以上)
- 特別養護老人ホーム(要介護3以上)
- 介護医療院(要介護1以上)
介護度(自立・要支援1〜要介護5)
介護保険制度により要介護認定がされ、その認定による要介護度に合わせてサービスが提供されます。
そのため、要介護度(要介護状態等区分)によっても、入居できる施設は違います。
公的施設である介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院に入居できる介護度は 「要介護度1以上」 です。また、特別養護老人ホームは基本的に 「要介護度3以上」 です。
詳しい内容については、次の大見出しの表でまとめています。
有料老人ホームは施設で異なる
有料老人ホームの場合、施設によって介護度の条件はさまざまです。例えば、介護付き有料老人ホームは 「要介護度1以上」 が条件です。
また、住宅型有料老人ホームは、要介護認定をされていない、自立した生活ができる人も入居が可能となっています。
支払い能力(貯金や収入など)
老人ホームを経営する側にとってみると、利用者からの支払いが滞るのは困るため、入居前に利用者の支払い能力について確認します。具体的には、利用者本人か保証人の通帳の写しを提出します。
しかし、仮に支払いが滞った場合でも即退去させられることはありません。3ヶ月ほどの猶予期間があることが一般的です。
猶予期間については入居する際の契約書に記載されていますので、事前に確認しておくことが重要です。
介護施設へ入居すると、長期にわたって費用を支払うことになります。入居費用を支払う余裕があるかは、短期的ではなく長期的な目線で考えて施設を選ぶようにしましょう。
生活保護を受けている人が入るには
生活保護受給者でも入居できる介護施設があります。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅など
公的施設である特養と、民間施設である有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などでは、生活保護受給者でも入居することが可能です。
どの施設でも、入居後にかかる家賃、医療費、雑費などは生活保護費でまかなわれます。
ただし、受け入れに制限を設けているケースもありますので、生活保護受給者の方の入居が可能かどうかは、施設に直接問い合わせるのがよいでしょう。
医療行為
利用者の方ご本人がどの程度の医療的ケアを必要とするかも、入居の際は大切になってきます。
介護施設は医療機関ではありません。そのため、生活支援はあるものの医療的ケアはあまり想定されておらず、看護師の配置は最低限となっています。
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームでは看護師が配置されているものの、十分とは言えません。そのため、医療的ケアを希望する方には、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームはおすすめできません。
一方、介護医療院、介護療養型医療施設、介護老人保健施設は医師が配置されているため、医療的ケアを必要とする利用者に十分なサービスが期待できます。
保証人・身元引受人
全国有料老人ホーム協会の調査では、入居する際に保証人・身元引受人が必要な介護施設は約9割です。
保証人・身元引受人は、施設利用料の支払い、ケアプランや治療方針の承諾、緊急時の対応などをする必要があります。保証人・身元引受人は家族が務めることが一般的です。
身元引受人がいなくても入居できる場合もある
利用希望者の中には、単身者であり身元引受人がいない方もいます。その場合、入居を引き受けるとリスクが大きくなるため、入居できる施設はあまりありません。
しかし、最近では身元引受人を代行するサービスを行っている企業があります。
これらの企業では、以下のようなサービスを提供しています。
- 老人ホーム入居契約にかかわる身分保障
- 老人ホームの入居手続き
- 老人ホームの入居にかかる費用の連帯保証
- 緊急連絡先としての対応
- ケアプランの承認
- 入居・退去手続き
- 病院の入退院手続き
身元引受人がおらずお困りの方は、このような企業の利用がおすすめです。また、施設によっては、成年後見人などの法定代理人を定めることを条件としている施設もあります。
老人ホーム入所検討時の3つのポイント
ここまで解説したこととは別に、老人ホームへの入居を検討する際に知っておいた方がよいポイントがあります。
認知症の有無
認知症の有無によって、入居できる施設は異なります。例えば、有料老人ホームでは、認知症の軽度な場合は入居可能ですが、重度の場合には制限があることも少なくありません。一方で、介護付き有料老人ホームや介護医療院などでは、重度の認知症患者も受け入れることが可能です。
したがって、認知症の方にとっては、病状の進行に備えて、重度の認知症にも対応可能な施設の選定をあらかじめ考慮するとよいでしょう。
無条件には入居できない施設が多いため、慎重な選択が必要です。転居せずに済むよう、事前に検討することが推奨されます。
看取りを希望するか
看取りとは、何も治療しない状態ではお亡くなりになると判断されても、過度な延命治療をせず自然に亡くなられるまでの過程を見守るという手法です。無理な延命治療を避け、より自然な終末を迎えることを目指します。
しかし、看取りには医療ケアが必要であるため、全ての老人ホームが対応しているわけではありません。
したがって、看取りを希望する場合、入居を考えている施設が看取りに対応しているかどうかを事前に確認することが大切です。対応している施設とそうでない施設があるため、選択に際して注意が必要となります。
退去の条件
仮に入居できても、退去に追い込まれることになってしまっては意味がありません。
例えば、入居中に認知症を発症したり、持病が重症化したりすると新たな処置が必要になりますので、退去を求められる可能性があります。
退去条件については、施設側から説明があったり、契約書に明記されていたりしますので、入居前にしっかり確認しておく必要があります。
介護施設の種類別の入居基準一覧
介護施設の種類別に、入居基準を一覧表にまとめました。
種類 | 年齢 | 介護度 | 認知症 | 看取り | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
自立 | 要支援 | 要介護 | |||||
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 多くの場合、60歳以上などの年齢条件あり | △ | △ | ○ | ○ | △ |
住宅型有料老人ホーム | 多くの場合、60歳以上などの年齢条件あり | ○ | ○ | △ | △ | △ | |
健康型有料老人ホーム | 多くの場合、60歳以上などの年齢条件あり | ○ | × | × | × | × | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 多くの場合、60歳以上などの年齢条件あり | △ | ○ | ○ | △ | × | |
グループホーム | 65歳以上 | × | △ | ○ | ○ | △ | |
公的施設 | 特別養護老人ホーム(特養) | 65歳以上 | × | × | ○ | △ | △ |
介護老人保健施設(老健) | 65歳以上 | × | × | ○ | ○ | △ | |
軽費老人ホーム・ケアハウス | 60歳以上 | ○ | ○ | 一般型○ 介護専用型△ |
一般型× 介護専用型△ |
一般型× 介護専用型△ |
○:受け入れ可 △:要相談 ×受け入れ不可
年齢、介護度、認知症ケアの体制など、施設によって入居条件はさまざまです。
また、その利用希望者の方がどのくらい医療ケアを必要とするかや、収入といった面も考慮しなければなりません。利用者の方ご本人に合った介護施設を選ぶことが重要となります。
病気があっても入居可能なの?
持病があり医療ケアを必要とする方は、入居を希望する施設が医療ケアに対応しているかどうか知っておく必要があります。
そこで、各医療ケアに必要な医療・看護体制と、対応施設の状況について一覧にしました。
医療・看護体制 | 対応施設の状況 | |
---|---|---|
在宅酸素療法 | - | 対応している施設は多い |
夜間たん吸引 | 24時間体制でのケアが必要 | 施設により異なる |
気管切開 | 看護師が24時間施設に常駐している必要があり、医療機関との連携も必須 | 施設により異なる |
尿バーン カテーテル |
- | 対応している施設は多い |
胃ろう | 看護師が施設に常駐している必要がある | 対応している施設は多い |
ストマ(人工肛門) | 排泄のケアが必要 | 対応している施設は多い |
中心静脈栄養 | 護師が24時間施設に常駐している必要があり、医療機関との連携も必須 | 対応している施設は少ない |
人工透析 | 施設の近くに透析対応の医療機関があることが必要 | 対応している施設は多い |
インスリン対応 | 利用者本人が注射するか、看護師が注射する体制が必要 | 対応している施設は多い |
看護師の配置をチェック
上記の医療ケアが必要な方は、入居を希望する施設に看護師が常駐しているか必ずチェックしましょう。
最近は、医療法人が運営しているため医療ケアに対応している施設や、医療依存度が高い方でも入居できる施設が増えています。
病気が悪化したときや、いざというときのことまで考えて施設選びをしましょう。
なお、病気があっても入居しやすい施設として、以下の4つがあります。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームでは、認知症や特別疾病により要介護認定を受けた人の入居を受け入れています。
特別養護老人ホームは、病気の影響により身体に障害が出たため介護が必要になった方が入居する施設です。
ただ、特別養護老人ホームは人気の施設であり入居待ちの方も多いため、必ず入居できるわけではない点には注意が必要です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)とは、病気や怪我により入院生活を送っていた方が、退院後に入居し、医療ケアやリハビリを受けることによって、自宅での生活に復帰することを目指すための施設です。
医療ケア・リハビリに特化した施設であるため、医療設備やリハビリ設備が充実しています。
しかし、3ヶ月に一回継続入居の対象かどうか審査が行われ、長くても半年程度で退所しなければならない点は注意が必要です。
有料老人ホーム
有料老人ホームとは、民間企業が運営している介護施設です。施設によって看護師の配置状況は異なりますが、看護師が夜間にも常駐していたり、医療機関と提携していたりする施設もあります。
そのような施設では医療ケア体制が整っているため、持病がある方でも入居が可能です。
しかし、全ての病気に対応しているわけではないため、病気の内容によっては入居ができない場合もあります。
介護療養型医療施設
要介護認定を受けた人の中でも、重度の介護度である方が入居する施設です。医療ケア・リハビリ体制が整っているため、他の施設には入居できない病気をお持ちでも入居が可能です。
しかし、医療ケア・リハビリ・介護に特化した施設であるため、生活援助やレクリエーションなどのイベントごとはあまりありません。
また、介護療養型医療施設は2023年に廃止されることが決定しています。主な転居先としては介護医療院がありますので、今から介護療養型医療施設への入居を検討するよりも、介護医療院へ入居するのがよいでしょう。
寝たきりでも入居できる?
老人ホーム・介護施設には、寝たきりの方でも入居できるのでしょうか。寝たきりの状態とは、一般的に要介護4~5の状態を指します。
有料老人ホームなどさまざまな介護施設では、寝たきりの状態でも入居は可能です。
寝たきりという状態だからといって、入居できないと諦める必要はありません。重要なのは 「必要な介護はどのようなものか」 といったことです。
「寝たきりだから入居できる施設が少ない」のではなく、「必要な介護の内容によって入居できる施設が異なる」という考え方をすればよいと言えます。
必要な介護の種類が多い方でも、介護医療院など医療ケアに特化した施設もありますので、介護施設への入居を諦める必要はありません。
寝たきりの状態でもケアをしてくれる施設はあります。必要な介護の度合いから入居したい施設を選びましょう。
施設の探し方・選び方
老人ホーム・介護施設へ入居したいと思ったとき、施設をどのように探し、選べばよいのでしょうか。
ここからは、入居したい施設を見つけるために役立つ方法をご紹介します。
希望をまとめておく
入居のタイミングや目的も、施設を選ぶ際には重要になります。例えば、入居したいと思っても、空室がなく別の施設を検討しなければならない場合もあります。
また、入居の目的としては、
- 終身入居を希望する
- リハビリを希望する
- 医療ケアを受けながら入居したい
など、施設への入居を希望する理由はさまざまです。
このような入居理由の他、入居費用の予算、施設のサービス内容、設備なと希望する内容をまとめておきましょう。
情報収集をしっかりする
入居を決める前に情報収集をしっかりしておくと、入居後にギャップを感じることがなくなります。
施設のパンフレットなどの資料については、HPから請求したり、施設に直接問い合わせの電話をしたりすることで手に入れることができます。
プロに相談する
どの施設に入居すればよいのか迷っている場合には、プロに相談することをおすすめします。
プロは施設の内部事情をくわしく知っているため、求める条件に合っている施設を提案してくれます。
すでに担当のケアマネージャーがいる方は、まずケアマネージャーに相談してみましょう。
まだ介護認定を受けていない方や、要支援認定をされている方は、お住まいの地域にある地域包括支援センターで相談を受け付けていますので、気軽に利用しましょう。
また、民間の企業でも、介護施設選びの相談を受け付けているところがあります。中には、一緒に施設の見学に行ってくれたり、入居契約のサポートをしてくれたりするところもあります。
老人ホームの入居条件についてまとめ
- 介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を目指す人が入居する施設
- 要支援施設とグループホームとの違いは、認知症支援に特化しているかどうか
- 要支援1・2の方でも入居できる要支援施設はサービス付き高齢者向け住宅などいくつかある
老人ホーム・介護施設への入居条件は、年齢・介護度・収入・医療ケアがどれくらい必要かなどさまざまあります。
まずは、気になる施設の資料請求をして、その施設に入居が可能かどうか調べてみましょう。
しかし、条件に当てはまるか判断できないことや、複数の施設の中でどれが一番合っているのかなどわからないことがあるでしょう。
その際には、ケアマネージャーや地域包括支援センターなど、プロに相談すれば、利用者の方が過ごしやすい施設が見つかるでしょう。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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