特定施設・特定施設入居者生活介護とは|サービス内容や指定基準・施設の選び方も解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「特定施設・特定施設入居者生活介護とはどういうこと?」

「特定施設入居者生活介護に介護保険は適用されるの?」

高齢者が入居できる介護施設を探しているが、このように特定施設・特定施設入居者生活介護などの用語の意味やサービス内容がよくわからず、実情を詳しく知りたいと思っている人も多いでしょう。

今回は、特定施設・特定施設入居者生活介護について、サービス内容や指定基準・施設の選び方などをていねいにわかりやすく解説します。

この記事をご覧になれば、特定施設・特定施設入居者生活介護のことがよくわかり、希望にあった施設選びができます。

特定施設・特定施設入居者生活介護についてざっくり説明すると
  • 特定施設は介護保険が適用される指定介護施設である
  • 特定施設入居者生活介護とは特定施設の入居者が受けられる介護保険サービスのこと
  • 特定施設入居者生活介護の指定を受けたサ高住もある

特定施設とは

介護施設のイメージ画像

特定施設」は、厚生労働省が決めた介護保険法の基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たすものとして都道府県や市区町村に届け出て、事業指定を受けた介護施設です。

特定施設では、以下で説明するとおり、入浴の介助やリハビリなどの特定施設入居者生活介護のサービスを受けることができます。各入居者に合わせた適度の介助や支援が行われるので安心です。

「特定施設入居者生活介護」とは

特定施設入居者生活介護とは、特定施設の入居者が受けることができる介護保険サービスです。入居者は介護サービスを受けるために、毎月決められた利用料を払わなければなりません。

特定施設入居者生活介護には、特定施設の事業者が介護サービスをすべて提供する「一般型」と、事業者はマネジメントだけ行い、介護は委託する「外部サービス利用型」の2つの形があります。

介護サービスの対象となる入居者は、要介護者と要支援者です。介護保険法では、入居者が要介護者の場合を「特定入居者生活介護」、要支援者の場合を「介護予防特定施設入居者生活介護」と呼んでいます。

入居者への具体的なサービス内容

特定施設入居者生活介護における入居者への具体的なサービス内容は、以下のとおりです。

介護サービス計画書(ケアプラン)の作成

まず、介護サービスをどのように利用するかを決めた介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してくれます。ケアプランは、利用者の個別の状況に応じた介護サービスの計画書です。

ケアプランは柔軟に見直しや変更が可能であり、利用者の状況やニーズに合わせて適宜修正されます。

介護保険を使ってサービスを利用するためには、このケアプランが必要です。ケアプラン作成について、利用者の自己負担はありません。

上記計画書に基づいた食事入浴排泄などの介助

介護サービス計画書に基づき、以下のような介助をしてくれます。

  • 食事介助:嚥下力などが低下している高齢者の誤嚥を防ぎ、安全に食事ができるように正しい姿勢を確保し、水分補給・口腔ケアにも注意します。
  • 入浴介助:浴室への移動・着替え・浴槽の出入りなどの介助です。特に転倒防止に注意が必要です。
  • 排泄介助:トイレ介助・オムツ介助などです。利用者の自尊心を傷つけない気配りが必要になります。

その他日常生活にかかわる身体的介助

日常生活での身体的な介助サービスは、他にもあります。たとえば、清拭、更衣、体位変換、移動、外出・歩行、服薬などの介助です。

介護者は利用者の声に耳を傾け、コミュニケーションをとりながら介助を行うという役割が求められます。

また、利用者の自立支援と重度化防止のために、必要な時だけ声かけをしながら手を差しのべる見守り的な介助も行います。

リハビリテーション(機能訓練)

リハビリテーションは、医師の指示に基づき理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが行う身体機能の維持・回復を目的とする訓練です。

機能訓練も同じ趣旨の訓練ですが、医師の指示に基づく条件はなく、介護職員も実施できます。

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入居対象者と介護度

特定施設は、要支援・要介護の度合いに応じて入居できる施設が決まっています。入居対象者と介護度の関係を見ておきましょう。

介護専用型と一般型の違い

特定施設には、下の表のとおり3つの種別があります。指定を受けた種別の違いによって、入居対象者が異なるのです。

都道府県の指定種別 入居対象者
特定施設入居者生活介護 介護専用型 要介護1~5
混合型 自立・要支援1~2・要介護1~5の方
※自立・要支援の定員数は都道府県が定める特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護 同市区町村に住民票がある要介護1以上の方
介護予防特定施設入居者生活介護 要支援1~2の方

「特定施設入居者生活介護」は、要介護1以上の方に限定した「介護専用型」と、それ以外の方も入居できる「混合型」があります。

また、先に説明したように特定施設の事業者が介護サービスを提供する「一般型」と、事業者はケアプラン作成などのマネジメントだけを行い、介護は委託する「外部サービス利用型」に分けられます。

特定施設の費用

悩んでいる高齢者のイメージ

特定施設の費用は、介護保険の対象です。ただし、要介護・要支援の度合いによって金額は変わります。

等級区分ごとの自己負担額のおよその目途を以下の表に記載しておきます。地域やサービス内容によって金額は異なりますので、入居前に確認しておきましょう。

1日 1か月(30日あたり)
要介護1 538円 16,140円
要介護2 604円 18,120円
要介護3 674円 20,220円
要介護4 738円 22,140円
要介護5 807円 24,210円
1日 1か月(30日あたり)
要支援1 182円 5,460円
要支援2 311円 9,330円

(注)
・金額は2021年4月現在の情報です。
・表記金額は自己負担1割の場合で、所得に応じ2割または3割負担となることがあります。
・要介護の方は特定施設入居者生活介護、要支援の方は介護予防特定施設入居者生活介護になります。

利用者負担は、事業所が受け取る介護報酬の原則1割です。介護報酬は、介護保険のサービスごとに決まっている「単位」に地域ごとの単価をかけた額になります。単価は地域差はありますが、どこでも1単位あたりおよそ10円です。

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特定施設の種類

特定施設の対象となる施設の種類は、次のとおりです。介護施設は公営・民営などいろいろありますが、特定施設に指定される可能性があるのは、以下の4つに限られます。

  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに該当するものに限る)
  • ケアハウス(軽費老人ホーム)
  • 養護老人ホーム(要介護者は基本的に対象ではありません)

ケアハウスと養護老人ホームは、国や地方自治体が運営する公的施設です。有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、民間施設になります。

公的施設の方が、入居費用・月額費用が安い場合が多いです。一方、民間施設は、設備が綺麗で、サービスも充実しており、娯楽などを含めクオリティの高い生活を送ることができる施設が多くなっています。

公的施設と民間施設の長所を理解し、最適な選択をすることで、入居者がより快適で充実した生活を送ることができるでしょう。

人員配置基準

特定施設は、介護保険法の人員基準を満たす必要があります。

下の表は、特定施設の人員基準を職種ごとにまとめたものです。特定施設の介護職員は施設に所属している必要があります。

なお、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で介護サービスを提供する際は、外部の訪問介護事業所との契約が必要な外部サービス利用型になります。

職種 配置基準 備考
管理者 原則専従1名 専従
(管理上支障がない場合は、施設内、同一敷地内の施設の他職務と兼務可)
生活相談員 入居者:生活相談員
=100:1
1名以上は常勤
介護・看護職員 入居者:介護・看護職員
=3:1
要支援1の場合は10:1
介護職員 1名以上 1名以上は常勤
看護職員 1名以上
(入居者30名以下の場合)
1名以上は常勤
入居者50名ごとに1名
(入居者31名以上の場合)
1名以上は常勤
機能訓練指導員 1名以上 理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、
看護師、准看護師、はり師、灸師のいずれかの国家資格を持つ者。他職務と兼務可
計画作成担当者(ケアマネジャー) 1名以上(要介護者等:計画作成担当者=100:1) 専従
(管理上支障がない場合は、施設内の他職務と兼務可)

特定施設によっては、介護・看護職員の配置基準である、入居者3:介護・看護職員1の比率を上回る手厚い体制をとっているところもあります。

その場合、上乗せ介護費が追加されることがあるので、確認しておいた方が良いです。

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設備基準

特定施設は、入居者の安心安全な生活を守るための設備基準を満たす必要があります。

必要設備 条件
介護居室 ・個室(または4人部屋以下)
・プライバシーが保護できること
・介護を行える適切な広さがあること
・地階ではない
一時介護室 介護を行える適切な広さがあること
浴室 介護を要する者(身体が不自由な者)が入浴するのに適した浴室
トイレ ・居室のある階ごとの設置
・非常用設備を備える
食堂・機能訓練室 身体機能を十分に発揮できる適当な広さ
施設全体 車椅子でも円滑に移動ができる広や構造になっているか

多床室は減っており、介護居室の多くは個室になっています。手洗いや洗面を備えるため、居室は一般的に広め(18㎡以上)です。

運営基準

特定施設には、運営基準もあります。管理者は事業所を一元的に管理し、従業者に基準を遵守させなければなりません。

主な基準は、入居の際に、サービス内容・利用料等の重要事項を説明して同意を得る義務があること、などです。

入居後は、施設に属するケアマネがケアプランを立て、施設の介護スタッフが介護サービスを直接提供することになります。

主な基準
計画 利用者に合わせた特定施設サービス計画が作成されていること。
重要事項説明 重要事項説明書を交付して事前説明を行うこと。
契約 事前説明の同意を得て、文書で契約を締結すること。
入浴 自ら入浴が困難な利用者については、週2回以上の入浴又は清拭を行うこと。
教育 職員の資質向上のため、研修の機会を確保すること。
記録 提供したサービスの内容等を記録すること。
苦情 苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置すること。
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特定施設のメリット

特定施設のメリット・デメリット

特定施設のメリットは、次のようなことがあります。

  • 職員が24時間常駐:特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設には、介護職員か看護職員が24時間365日常駐しています。深夜の見回りなどもあり、安心感が持てるポイントです。
  • 介護体制が手厚い:施設人員配置などの介護体制を法定基準よりも手厚くしている施設も多くあります。定期的な評価や相談を通じて、利用者の状況や希望に合わせた適切なサービスを提供します。
  • 介護サービスが定額:介護保険の自己負担額は介護度に応じて定額です。費用面の目途を付けやすく安心感があります。
  • 将来転居しなくてよい:将来的により高い介護度になったり、認知症などの発症があっても転居せずに入居を継続できます。入居者が安定した環境の中で介護を受けられ、身体的な安心だけでなく心理的な安定にも繋がります。

特定施設のデメリット

一方で、特定施設には次のようなデメリットもあります。

  • 介護が必要ない場合は自己負担が割高になる:介護サービスを受けるために介護保険の満額を入居施設に支払う仕組です。介護がそれほど必要ない人は、住宅型有料老人ホームなど、利用したサービス分の費用だけ支払う施設の方が、自己負担が安くなる可能性があります。
  • 介護保険を使って他のサービスを利用できない:介護保険を満額入居先に払いますので、他に利用したいサービスがあっても、介護保険での利用はできません。今まで通っていたデイサービスにも、全額自費負担でなければ、行けなくなってしまいます。
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施設の選び方

施設選びのイメージ画像

高齢者向け施設は、いくつかの種類があります。施設によって、入居できる人の条件も違い、費用・サービスなどの違いも大きいです。

施設の選び方は、費用、立地、サービス内容などいくつかのポイントがあります。

大事なことは、施設を利用する方が介護サポートをどの程度必要としているかです。

また、サポートを1カ所で受けたいか、それとも外部サービス利用も希望するかも、考えておくべき大事なポイントです。

前提として、介護用語の意味・内容を正しく理解しておくことも大切です。

利用者本人だけでなく、家族も一緒になってきちんと確認しておきましょう。

そのうえで本人・家族で必要とする条件を整理して、優先順位を決めておくことが大切です。

特定施設入居者生活介護の指定を受けたサ高住も

サービス付き高齢者向け住宅サ高住)は、高齢者住まい法に基づくバリアフリー構造の高齢者住宅です。

施設に義務付けられているのは、安否確認サービスと生活相談サービスだけで、基本的には介護の必要がない比較的元気な高齢者のための施設です。

このサ高住で有料老人ホームに該当するものは、特定施設入居者生活介護の指定を受けることができます。そして、利用者の希望や、要介護度に合わせてサービス内容を決めることができます。

サ高住は国の補助が入っており、介護付き有料老人ホームより初期費用をかなり低く抑えることができます。

また、入居希望者が多く即入居が難しい特養老人ホームよりも入居しやすいのもポイントです。

ですから、特定施設としてのサ高住がおすすめです。ココファンでは、このような施設を全国に保有しております。

また、ココファンの施設は入居一時金が0円であったりと、お客様思いの様々なサービスを展開しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

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特定施設に入るのがおすすめの人

生活に困っている高齢者

特定施設に入るのがおすすめな人は、次のような人です。

  • 食事、入浴、歩行について介助の必要性が高まっている人

特定施設の入居者生活介護であれば、ケアプランに基づき、入居者の状況に応じて食事・入浴・排泄などの介助を行ってもらえます。

  • 日常生活を一人で過ごすことに難しさはあるが、できるだけ人の手を借りずに自立して過ごしたい人

特定施設では、可能な限り自立した生活ができるよう、一人ひとりの身体状態にあわせた適度な介助や支援が行われます。

移動、外出・歩行などの日常生活について、必要な時だけ声かけをして援助する見守り的な介助です。

  • 介在宅で護サービスを受けているが、費用が高額になってきたので、できるだけ費用を抑えられる施設に移りたい人

特定施設の利用費用は、地域やサービス内容によって金額は異なりますが、介護保険の対象になるので、自己負担額を軽減できます。安心して毎日を過ごすことができます。

特定施設・特定施設入居者生活介護についてまとめ

特定施設・特定施設入居者生活介護についてまとめ
  • 入居者は、ケアプラン作成や身体的介助・リハビリテーションを受けられる
  • 施設の選び方は、介助の必要度がポイント
  • メリットは、職員24時間常駐・手厚い介護・費用が定額・将来転居しなくてよいこと
  • 身体介助が必要な人・できるだけ自立したい人・介護費用を抑えたい人におすすめ

特定施設・特定施設入居者生活介護について、サービス内容や指定基準・施設の選び方などを解説しました。

特定施設・特定施設入居者生活介護は、介護を必要としている高齢者にとってメリットのあるサービスです。特に特定施設であるサ高住がおすすめですので、ぜひ入居を検討してみてください。

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この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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