経管栄養とは|詳しい特徴・手順から胃ろう・経鼻経管栄養の概要まで徹底解説!
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「経管栄養って何?」
「経鼻経管栄養や胃ろうって?各方法の特徴や手順は?」
などと疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
高齢者の方などが食事を取るのが難しくなった場合、経管栄養という方法によって栄養を摂取することが可能です。
経管栄養には、経鼻経管栄養や胃ろう、腸ろうなど、色々な種類があり、それぞれで特徴や手順、メリット・デメリットなどが異なります。
今回はそんな経管栄養について、介護施設への入居という観点も踏まえながら詳しく解説するので参考にしてください。
- 腸に栄養剤を投与する方法
- 短期間では経鼻経管栄養
- 4週間以上なら胃ろうなど(こちらが主流)
- 胃ろうなら入居可能な介護施設が多い
経管栄養は経腸栄養の一種
経腸栄養は、必要な栄養素を経腸的に、言い換えれば腸を通して投与する方法で、「経管栄養」もその一種です。
経管栄養では、食べることが難しい人の鼻や口から胃までチューブを挿入し、そこから胃や腸に栄養剤が送られます。
なお、経腸栄養には、経管栄養以外に「経口栄養」というのもあります。
経管栄養は様々な方法がある
経腸栄養の一種である経管栄養は、さらに複数の種類に分岐します。具体的には、経鼻経管栄養、経瘻孔法、間歇的口腔食道経管栄養法の3種類が挙げられます。
短期間の栄養管理には経鼻経管栄養が、4週間以上の長期に及ぶと考えられる栄養管理には経瘻孔法が採用されるのが一般的です。
経鼻経管栄養
経鼻経管栄養は、鼻からカテーテルを挿入し、そこから胃や十二指腸、空腸などに栄養剤を注入するという方法です。
比較的容易に行うことができ、口や喉の手術の後、脳や神経の疾患、食べることが難しいが消化機能に異常がない場合などに選択されます。
経鼻経管栄養は、カテーテルを挿入した部位の違いや、カテーテルの種類・径、注入速度や栄養剤の選択などを適切に管理することが重要です。
胃ろう・腸ろうなどの経瘻孔法
経瘻孔法(けいろうこうほう)とは、頸部や腹部に小さい穴を開け、そこからカテーテルを挿入して栄養剤を送る方法のことを指します。頚部にカテーテルを通すのは頚部食道瘻(ろう)という方法です。
腹部に穴を開ける方法の場合、開ける場所が胃なら「胃ろう」、腸なら「腸ろう」に分類されます。
ただし、経瘻孔法は手術的な方法であり、リスクや合併症もあるため、必要性をよく検討した上で行われるものです。
間歇的口腔食道経管栄養法
「第三の経管栄養」と呼ばれる間歇的(かんけつてき)口腔食道経管栄養法は、食事のときのみチューブを飲み込んで食道までその先端を通す方法です。
この方法では、食事が終わればチューブは抜去されます。
なお、これ以降は経鼻経管栄養、胃ろう、腸ろう、間歇的口腔食道経管栄養法についてそれぞれ解説していきますので参考にしてください。


経鼻経管栄養(鼻腔経管栄養)の目的とメリット・デメリット
経鼻経管栄養とは、鼻の穴から胃に至るまでの経鼻チューブを挿入し、そこから栄養素を送る方法のことを指します。
経鼻経管栄養を行う場合と目的
経鼻経管栄養の対象は、嚥下障害を抱えており、なおかつ消化管の機能に問題のない人です。
長期的なスパンで行われる胃ろうや腸ろうに対して、経鼻経管栄養は短期間で口からの栄養摂取に戻れることが見込まれる場合に実施されます。
経鼻経管栄養は、一時的な嚥下障害に対する治療法としても利用されます。例えば、手術後の食事摂取不能期間や、口腔や喉頭の疾患による摂食困難などがその例です。
導入しやすいことが魅力である一方、トラブルが起こりやすいという難点もあるため、栄養管理が4週間以上に及ぶケースでは胃ろうが検討されます。
経鼻経管栄養のメリット
- 管の挿入が容易である
- 穴を開ける手術を要しない
- ほとんどの人に適用可能
- 栄養を安定して摂取することができる
- 口からの栄養摂取が可能になれば、すぐにストップすることができる
- 消化管の機能を維持しながら続けられる
- 自宅での生活も可能(在宅で始められる)
- 後述する経静脈栄養よりも栄養摂取の方法としては優秀である(体への負担が少なくて血糖値の急変動も起きにくい、腸の免疫も維持される)
経鼻経管栄養のデメリット
- チューブが誤って肺に入ってしまう恐れがある
- かぶれなどの皮膚トラブルが起こる危険性もある
- チューブの装着時や交換時(1〜4週間おき)に不快感や苦痛を伴う
- 鼻から胃までにかけて違和感や異物感がある
- 認知症患者は、自ら引き抜いてしまうことがある
- 装着したときのビジュアルは良いとは言えない(鼻や頬にチューブや固定テープがあるので目立つ)
- 管理が難しく、対応していない施設もある
- 嚥下訓練をするのが難しい
在宅時に経鼻経管栄養を行う方法
以下では経鼻経管栄養を在宅で実施する方法を紹介します。
経鼻チューブを入れるタイミング
経鼻チューブは、経鼻経管栄養が必要であると判断された時点で挿入します。必要性がないのに、任意で入れられることはありません。
例えば、誤嚥性肺炎を頻発して入院したり、脳や神経の疾患を患ったりしたときなどに入れられることが多いです。
また放射線治療や化学療法などで食欲が減退し、口からの食事摂取だけでは必要な栄養素を取りきれない場合に挿入されることもあります。
また、経鼻チューブの挿入タイミングは、患者さんの病態や病状の変化に合わせて調整されることがあります。
例えば、経鼻経管栄養による栄養管理を始めてから、患者さんの食欲や嚥下機能が改善した場合には、経口摂取に切り替えることも考慮されます。
栄養剤の種類
経鼻経管栄養で用いられる栄養剤には、「食品タイプ」と「医療品タイプ」の2種類があります。どちらを選択するかは医師の判断次第です。
食品タイプの場合は、ドラックストア等で売られているので、本人または家族で調達できます。医療品タイプの場合は、医師の処方箋が必要です。
なお、経鼻経管栄養では、胃ろうや腸ろうで用いられるようなミキサー食や半固形化栄養剤は使用されません。
栄養剤の注入前の確認事項
栄養剤の注入は毎日複数回行います。その際は以下の確認事項に留意して、事故を防止することが重要です。
- チューブが口内でわだかまっていないか(とぐろを巻いていないか)
- 呼吸が苦しそうな様子はないか
- 酸素飽和度の値が低下していないか(※モニターが付いている場合)
- カテーテルチップと呼ばれる注射器などで吸引すれば、胃の内容物が引けるか
- 引けない場合、空気を注入すれば気泡音が聞かれるか
栄養剤を注入する手順
経鼻経管栄養の手順は以下の通りです。
- 患者を半座位(上半身を45度起こした姿勢)にし、チューブが胃の中に挿入できているかをカテーテルチップで確かめる
- 事前に常温に戻しておいた栄養剤をイリゲーターに移し入れ、イリゲーターと鼻のチューブを繋げる
- ゆっくりとイリゲーターのストッパーを緩め、栄養剤を注入する
- 白湯で溶かすなどした内服薬をチューブから注入する
- チューブに白湯を流し、栄養剤および内服薬を洗浄する
- 逆流や嘔吐を防ぐため、30分〜1時間程度は半座位のままにしておく
清潔に保つためのケア方法
経鼻チューブを挿入した状態でも入浴することは可能です。ただし、固定テープが濡れると剥がれやすくなってしまうので、洗顔は避けたほうが良いと言えます。
顔の汚れは、濡れタオルなどを使って落とすようにしましょう。
また口腔内が汚れていると肺炎のリスクが高まるため、口の中を歯ブラシなどで毎日きれいにすることが大切です。


経鼻経管栄養で注意すべき点
以下では経鼻経管栄養についてさらに詳しく解説していきます。
外出の可否と介護の方法
経鼻チューブを入れたまま外出することは可能です。外出の時間に合わせて、栄養剤の注入時間を調整すると良いでしょう。
なお、必要がある場合は外出中に注入しても問題ありません。
また栄養剤を注入して良いのは、家族や医師、看護師、研修を受けた介護福祉士などです。研修を受けていない介護職員には、注入が認められていません。
食事と比べた栄養と空腹感
経鼻チューブは細いことから、一度に多量を注入することはできません。栄養剤は少量でも十分な栄養素を摂取できるように作られていますが、場合によっては注入回数を増やす必要があります。
なお、胃に栄養剤を注入すると血糖値が上昇するため、経鼻経管栄養によって空腹感をある程度解消することは可能です。
ただし、食事のように味わうことはできないので、食べたときと同じように満足感を得られるかというと、そうではありません。
喉が渇いた場合
ある程度飲み込むことができるならば、とろみ剤を使えば口から水分を得られます。
また毎日歯磨きを実施して、口内を潤し、喉の渇きを和らげることも可能です。
さらにワセリンやうがい薬、保湿剤などを使用して口内の乾燥を予防することにも効果が期待できます。
なお、口腔ケアを行う場合、栄養剤注入直後は避けましょう。口腔ケアの刺激によって、嘔吐や嘔吐物の誤嚥を引き起こす恐れがあるからです。
経鼻経管栄養に伴うミスと対処方法
続いては経鼻経管栄養で起こり得るトラブルとその予防方法について解説します。
栄養剤を肺に誤って注入する
栄養剤が間違って肺に入ってしまうと、肺炎や窒息などを引き起こすことがあり、そうなると重篤な事態に発展する恐れがあります。
そのため、経鼻チューブの交換時や栄養剤の注入時には、管が正しく胃に挿入されているかを毎度確かめなければなりません。
なお、これは主に医師や看護師に関係する話ですが、栄養剤の注入以前に、経鼻チューブが肺や気管に挿入されてしまうケースも見られます。チューブが肺や気管を突き破って死亡事故に至る場合もあるため、チューブの挿入・交換後に異常があれば、ただちに医師や看護師に相談しましょう。
管が詰まってしまう
チューブが詰まった状態で無理に注入を続けると、過度な内圧によってチューブの途中が破裂し、破片の一部が胃に残ってしまう恐れがあります。
そのため、チューブに詰まりを感じたら、医師や看護師に連絡して新しいものと交換してもらいましょう。
また内服薬はきちんと溶かしてから注入する、白湯を使ってチューブ内部を洗い流す、酢水をチューブ内部に満たすなどして、詰まりを予防することも重要です。
管を誤って自己抜去してしまう
経鼻チューブを本人が誤って抜いてしまう「自己抜去」が起きないようにも注意しなければなりません。特に認知症高齢者の場合、鼻の不快感から自己抜去をしてしまうことがそれなりにあるので気をつけましょう。
また誤って管に指が引っかかり、抜けてしまうこともあるため、入念にテープ固定をしたり、注入時以外はヘアピンで髪に留めたりするのもおすすめです。
皮膚トラブルが起こる
経鼻経管栄養では、常時チューブを挿入し、テープで留めることになるので、腫れや赤み、痛み、熱感、滲出(しんしゅつ)液などの皮膚トラブルに見舞われる恐れがあります。
そのようなトラブルが起きていないかを日々確認し、経鼻チューブや固定テープが同じ箇所ばかりに当たることを避けるために時々テープを交換するなど、予防策を講じることが大切です。
万が一皮膚トラブルが起きてしまった場合は、医師や看護師に相談するようにしてください。
下痢などの消化器症状が起こる
経鼻経管栄養をしていると、下痢や嘔吐、腹部膨満感、悪心などの消化器症状が起こるリスクが高まります。
それらは栄養剤の濃度や温度、注入の速度などが原因となって起こることが多いので、注入の際は医師の指示を正しく守るようにしましょう。
また医師の方法に従っていても消化器症状が続く場合は、医師に相談の上、方法を変更することも必要です。相談の際に便利なので、消化器症状が出た場合はその内容を記録しておくと役に立ちます。


胃ろうとは
胃ろうとは、腹部から胃に穴を開けて、そこから栄養を送り込む方法を指します。
胃ろうの目的と対象の患者
胃ろうの目的は、嚥下機能に異常がある人の栄養を管理することにあります。主な対象は嚥下機能に問題があるものの、消化管には異常がない人です。
胃ろうのカテーテルは、「体外固定板」、「胃内固定板」、「カテーテル」という3種類のパーツからなります。
体外固定板には「バンパー」と「バルーン」の2種類が、胃内固定板には「ボタン」と「チューブ」の2種類がそれぞれあるため、胃ろうのカテーテルは計4種類です。
胃ろうのメリット
- 肺炎や誤嚥のリスクを軽減できる
- 経鼻経管栄養に比べて、不快感や違和感、負担が少ない
- 栄養素の摂取が容易になる
- 経鼻経管栄養よりもカテーテルが抜けにくく、自己抜去が少ない
- カテーテルの接続部分は衣服で隠れるので目立たない
- 状態によって、口から食事を取ることもできる(嚥下訓練もしやすい)
- 運動やリハビリを行いやすい
- 入浴することも可能(特別な処置も要らない)
- 後述するように、経鼻経管栄養よりも対応する施設が多い
胃ろうのデメリット
- 胃に穴を開ける手術が必要になる(ただし、内視鏡を使った短時間・低負担の手術である)
- 口腔を清潔にするケアをしなければならない(口腔内が不潔になりやすく、ケアが不十分だと誤嚥につながってしまう)
- 定期的なカテーテルのメンテナンスにお金と手間がかかる
- 感染症や汎発性腹膜炎などに罹患する恐れがある
- 胃食道逆流のリスクもある
胃ろうの手順と必要なもの
以下では胃ろうに必要なものと手順について簡潔に解説します。
経管栄養に必要なもの
- 栄養剤
- 白湯
- 白湯を測るための計量カップ
- 注入に用いるボトルもしくはボトルとチューブが一体になったもの(半固形化栄養剤を使う場合は要らない)
- 接続用チューブ(必要な場合のみ)
- 注入用のフックもしくはスタンド
- ハサミ
- 手袋
- 時計
- 聴診器
- 指示箋
- シリンジ(カテーテルチップタイプ)
- 内服薬を溶かすためのカップと白湯(内服薬がある場合)
- 加圧バッグ(半固形化栄養剤を使う場合)
経管栄養の手順
胃ろうは、本人に声かけをして栄養剤注入の許可をもらい、手洗いおよび手袋装着をした上で行います。
体勢は座位もしくは半座位にして、チューブおよびチューブ周りを確認してからボトルからチューブ内に栄養剤を入れます。
チューブ内に栄養剤が行き渡ったら胃ろうチューブを開放し、空気抜きと胃内残量のチェックを、続いて注射器を使って胃の内容物がないかのチェックを行ってください。
続いて胃ろうカテーテルを接続し、問題がなければクレンメを開放して注入を始めます。注入時および注入後に異常がなければ、白湯を流し、胃ろうチューブ・接続チューブを外しましょう。
半固形化栄養剤を使った場合以外には、注入後1時間程度は体勢を変えず、問題が起きないかを確認します。


腸ろうとは
腸ろうは、腹部から腸に穴を開けて、栄養を送り込む方法を指します。胃ろうよりも実施がやや難しいです。
腸ろうの特徴と胃ろうとの比較
腸ろうは、嚥下障害を抱えている人のうち、胃が切除されているなどの理由で胃ろうが行えない人を対象に実施されます。
また胃ろうをしたものの嘔吐や誤嚥が続く場合、流動食が漏れてしまう場合などに、胃ろうから腸ろうに切り替えられる場合もあります。
胃ろうの場合と同様、胃内固定板には「ボタン」と「チューブ」の2種類が、体外固定版には「バンパー」と「バルーン」の2種類があるため、カテーテルは計4種類です。
苦痛が少ないといったメリット
- 肺炎や誤嚥のリスクを低減できる
- 栄養剤が逆流してしまう危険性が胃ろうよりも低い
- 栄養素を安定的に摂取することができる
- 腸で直接栄養を吸収することが、健康状態の回復につながる
- 胃ろうと同様、洋服で隠れるので目立たない
- 経鼻経管栄養よりもチューブが抜けにくいことも胃ろうに同じ
- 口からの食事と並行して行うことも可能
- 苦痛や不快感があまりない
注入速度などのデメリットも存在
- 手術やカテーテルの交換のために通院を要する
- 自宅で交換・挿入できるカテーテルはない(受診が必要)
- 胃ろうのものよりもチューブが細くて詰まりやすい
- 穴を開けた箇所が皮膚トラブルを起こす恐れがある
- 胃ろうと同様、口腔ケアをしなければならない
- 胃ろうよりも栄養剤の注入速度を遅くしなければならない(速度が速いと下痢やダンピング症候群に似た症状、血糖値の急変動を引き起こす恐れがある)
間歇的口腔食道経管栄養法とは
間歇的口腔食道経管栄養法は、注入時のみ口からチューブを挿入し、注入が終われば抜去するという方法です。
これまで長期的な経管栄養の方法として胃ろうが一般的でしたが、昨今はそれに変わる方法として、この間歇的口腔食道経管栄養法が注目されつつあります。
以下で紹介するように間歇的口腔食道経管栄養法にもメリット・デメリットがあるので、それぞれの状況を踏まえ、慎重に導入のぜひを判断するのが望ましいと言えます。
メリット
- 経管チューブを気にすることなく、嚥下訓練が行える
- 栄養剤注入時に経管チューブを挿入することが、すなわち嚥下訓練になるという側面も
- 方法によっては、消化管の働きの活発化および下痢・胃食道逆流の減少につながることも
- 注入したらすぐにチューブを抜くため、平時には違和感がない
- 訓練すれば患者本人や介護者にでもチューブの挿入は可能(そうなれば在宅でも行える)
デメリット
- 毎回チューブを挿入しなければならないので、医療従事者にとっては手間がかかる
- チューブを飲む際に強い反射が見られる場合、チューブを舌で押し出してしまう場合、チューブを噛んでしまう場合などには適用できない
- 発声が不可能な場合にも適用は難しい
- 食道や胃の手術歴など、既往歴によっては施行の是非を慎重に検討しなければならない


経静脈栄養と経腸栄養の違い
経腸栄養と経静脈栄養は、どちらも人工的な栄養補給法です。経腸栄養が不可能な場合、もしくは一時的に中止すべきだと判断された場合、経静脈栄養に切り替えられます。
そもそも経静脈栄養とは
経静脈栄養は、静脈の血管から栄養を注入する方法です。経腸栄養とは違い、消化機能に関わらず安定的に栄養を投与できます。つまり消化機能が低下していたとしても適用可能ということです。
ただし、経腸栄養に比べると、実現できる栄養状態の質は劣ります。
なお、経静脈栄養の種類は、主に「末梢静脈栄養」と「中心静脈栄養」の2種類です。それぞれの詳細については以下をご覧ください。
末梢静脈栄養
末梢静脈栄養は、腕や足の末梢静脈に短いカテーテルを通し、そこから直接栄養を注入する方法です。この方法には以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
- 消化管が機能していなくとも、栄養の注入が可能である
- カテーテル装着の際に手術の必要がなく、後述の中心静脈栄養よりも管理しやすい(特別な手技を要しない)
- 体タンパクが消耗するのを抑制できる
- 合併症や感染症のリスクが低い
デメリット
- 1日に1,000kcalまでしか投与することができない(これでは大人が必要なエネルギー量をまかなえない)
- カテーテルの針や栄養輸液の浸透圧などの影響で、静脈に炎症が起こるリスクがある
- 栄養輸液の注入時に血管痛を伴うことがある
中心静脈栄養
中心静脈栄養は、鎖骨下の中心静脈にカテーテルを入れて、そこから直接栄養を注入する方法です。
メリット
- 1日に投与できる栄養量の限界が2,500kcal程度と多い(末梢静脈栄養よりも多くのエネルギーを摂取でき、栄養状態が悪い場合にも適用可能)
- 末梢静脈栄養よりも長期間の実施に耐えられる(10日以上の期間が見込まれる場合、末梢静脈栄養ではなく、中心静脈栄養が選択される)
デメリット
- カテーテルの挿入部から菌が入り込み、感染症を引き起こす恐れがある(これを予防するために、カテーテルの清潔に気を配らなければならない)
- カテーテルの挿入が血胸や気胸などの合併症につながるリスクもある
- 高濃度・高カロリーの栄養を使うため、投与の速度によっては血糖値を急激に上昇させてしまう(投与のやめ方によって低血糖を引き起こす恐れもある)
- 医療処置を要するため、対応していない施設もある
経管栄養の方が介護施設を選ぶ方法
以下では、経管栄養を要る方が介護施設を選ぶ場合のポイントについて解説します。
経鼻経管栄養なら看護師常駐施設を
経鼻経管栄養ができるのは、基本的に家族と医師・看護師だけです。
介護福祉士は所定の研修を修了すれば注入は行えますが、経鼻チューブが抜けた場合の再挿入はできません。
そのため、介護施設で経鼻経管栄養を行うには、24時間看護師が勤務している施設、もしくは訪問看護サービスによって看護体制が強化されている施設でないと困難だと言えます。
胃ろうなら選択肢が増える
昨今は経鼻経管栄養よりも胃ろうのほうが主流であり、胃ろうだとチューブが経鼻経管栄養よりも抜けにくいため、胃ろうを選択したほうが入居先の選択肢は増えます。
経鼻経管栄養についても同様のことは言えますが、介護保険法の改正で経管栄養の一部が研修を受けた介護職員にも認められたことで、胃ろうの人を受け入れる施設やデイサービスが多くなってきています。
ただし、介護福祉士等の資格を持った職員のいない施設や看護師が24時間常駐していない施設では、受け入れてもらえない場合もあるので注意してください。
ココファンの介護施設もチェック
ココファンのサービス付き高齢者向け住宅や介護付き有料老人ホームでは、24時間ケアスタッフが常駐しているなど介護サービスの水準が高いです。
そのため、胃ろうなど経管栄養をされている方が入居可能な施設も多いです。
また、施設数が多く特養などのように入居待ちで長期間待たされることもほとんどないので介護施設の利用を検討されている方はぜひお近くのココファンを確認してみてください。
近くのココファンの介護施設を探す!経管栄養についてまとめ
- 胃ろうに対応する介護施設・デイサービスが増えてきている
- 経鼻経管栄養の場合は看護体制の整った施設でないと厳しい
- 経管栄養に対応可能なココファンの施設が存在
経管栄養について、各方法の特徴や手順も含めて解説しました。
食事による栄養摂取が困難になった場合、それが一時的なら経鼻経管栄養が、長期に及ぶなら胃ろうや腸ろうが導入されるのが一般的です。
経鼻経管栄養と胃ろう・腸ろうを比較した場合、後者のほうが抜去のトラブルの可能性が低いこともあって、入居できる介護施設の数は増えます。
以上を参考に、経管栄養が必要になった際、介護施設の入居を検討する際の参考にしてください。
近くのココファンの介護施設を探す!この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)