【イラストで解説】徘徊とは|ご老人に多い原因・理由や予防・対策法まで紹介!

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「徘徊が起こる原因って何?」

「徘徊の対策法が知りたい!」

認知症の方の中には徘徊をする方がいます。認知症のご家族の方が徘徊をしてお困りの方や、利用者さんの徘徊にどのような対応をすればよいのか悩んでいる介護職の方は多いでしょう。

そこで、この記事では徘徊について徹底解説します。 徘徊・夜間徘徊とは何か、徘徊が起こる理由・原因、徘徊を予防する対策法、実際に徘徊が起きたときの対処法など、徘徊について知りたい情報をご紹介します。

現在、徘徊についてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください!

徘徊についてざっくり説明すると
  • 徘徊とは、あてもなくうろうろ歩き回ること
  • 徘徊が起こる原因はさまざまある
  • 認知症のご老人が行方不明になったときは、速やかに警察に通報する

徘徊・夜間徘徊とは

徘徊するおじいさん

「徘徊」とは、認知症の「周辺症状」と呼ばれる症状の一つで、家から外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る行動のことを指します。

認知症の方の徘徊は、事故やケガなどさまざまな危険が伴います。例えば、

  • 行方不明
  • 転倒によるケガ
  • 夏場の脱水症状や熱中症
  • 冬場の低体温症

などが考えられます。特に転倒や熱中症は、家の中でも起こり得ることなので、常に注意が必要です。

また、徘徊や、夜間に徘徊することを指す夜間徘徊は、介護者の心身に大きな負担がかかり、介護者の体調にも影響を及ぼすという意味でも危険な症状です。

徘徊・夜間徘徊を抑えようとされればされるほどご本人は出かけようとしてしまうため、やみくもに押さえつけるのではなく、原因と対策をしっかり把握する必要があります。

徘徊が起こる原因や対策については、後ほど詳しく解説します。

社会問題化する徘徊

徘徊はトラブルや混乱を引き起こし、社会問題化しています。 認知症が原因の徘徊で自宅に戻れなくなり、警察などに保護されるケースは多いです。

そして、徘徊していた本人はケガをしていることがあり、最悪の場合は死亡してしまう場合もあります。

また、保護された先で名前や住所が言えず、行方不明者のまま医療機関や施設で長期間過ごす人もいるのが現状です。

平成26年度の厚生労働省による全国調査でも、身元不明者346人のうち、35人が認知症との結果が出ています。

認知症の方の徘徊は、社会で何らかの対応をする必要があるでしょう。あとで述べるように、近年は認知症の方の徘徊に対応する訓練を行う自治体も出てきました。

【イラストで原因を解説】徘徊が起こる理由とは?

周辺症状

認知症の症状は、大きく分けて 「中核症状」「周辺症状」 があります。中核症状は全ての人に現れる症状のことで「記憶障害」「見当識障害」などが当てはまります。

人によって程度の差はありますが、中核症状は次第に進行していくものです。

また、周辺症状は「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」ともいいます。周辺症状は、本人の性格や体調、生活環境などに起因して現れる症状です。

具体的には「抑うつ」や「妄想」などがあります。徘徊も周辺症状の一つです。周辺症状は、不安やストレスなどが原因となって起こると考えられています。

身体的な原因

徘徊する理由の一つに、身体的違和感があります。例えば「胃の調子が悪くてトイレに行きたい」「何か食べたい・飲みたい」など、身体的なことが理由で動きだすのです。

しかし、ご本人は身体的違和感の理由や行こうとしていた場所を忘れてしまうので、身体的違和感を抱えたまま徘徊してしまうケースがあります。

このように、身体的な原因で徘徊している場合、飲食や排泄をすることで気持ちが落ち着くことがあります。

また、排泄状態が原因の場合は、主治医と相談の上で排泄に関する服薬を見直すと状態が改善して徘徊が落ち着く場合もあるため、徘徊があった場合には、便秘、下痢、頻尿といった排泄状態を確認することが大切です。定期的な体調チェックや健康管理を行うことも重要です。

心理的な原因

徘徊の原因には、心理的なストレスも挙げられます。夕方から夜になると、要介護者がそわそわと落ち着かなくなり、やたらと外に出かけようとすることがよくあります。

これは、認知障害という大元の原因に加えて、不安・焦燥感などの心理的要因が加わるためです。

例えば、以前夕飯の支度やお迎えなどをしていたことの記憶から 「何かしなくてはならないと感じるストレス」 が生まれ、その衝動に駆られて外に出かけてしまうことなどが挙げられます。

普段からご本人の様子をよく観察し、ご本人にストレスがかからないように気を付けながら、徘徊の理由を聞き出しておくことが重要です。

ストレスの原因がわかったら、そのストレスを軽減させると夜間徘徊の症状が改善できることがあります。

昔の習慣の再現や誤認

過去の自分の習慣を再現しようとすることにより徘徊してしまうこともあります。

記憶障害で現状を忘れて昔の生活をしているつもりになり、過去に習慣として行っていた外出をしようとして徘徊になってしまうのです。

例えば、定年退職した会社に出社しようとしたり、自分には幼い子供がいると認識し、子供を迎えに行こうとしたりすることが挙げられます。

これは「回帰型」と呼ばれるものです。現在の自分が受け入れられないことから、若くて活躍出来ていた時代の自分に戻ってしまうためにこのような言動が出ます。

このようなときには「会社は定年退職しましたよ」「お子さんはもう大人ですよ」などと事実を述べてご本人を否定してはいけません。

否定してしまうとご本人を怒らせて、外に出て行ってしまう可能性があります。

「今日はお休みの日ですよ」「まだお子さんを迎えに行く時間じゃないですよ」など、ご本人に話を合わせ、ご本人に落ち着いた状態でその場にいてもらうようにすることが大切です。

道に迷うなど思考・判断力の障害

認知症の中核症状である記憶障害や見当識障害により徘徊してしまうこともあります。

記憶障害によって道順や目印を忘れたり、見当識障害によって自分のいる場所がわからなくなったりすると、慣れている場所でも道に迷ってしまいます。

例えば、屋内の施設でトイレに行こうとして場所がわからなくなり、迷い続けてしまうといったケースです。

認知症の症状により周囲の状況が判断できないと、どのように行動すればよいのかわからなくなり、混乱してしまいます。

適切な判断ができないため、混乱した結果その場から立ち去ってしまい、「徘徊」とみなされてしまうのです。

現状を理解しようとして外に出る

病室の待合室やデイサービスなどの外出先で、記憶障害によりなぜここにいるのか忘れてしまうことがあります。

そのため、現状を理解しようと外に出たり、探索しようとしたりした結果、「徘徊」になることがあります。

不満・不安・ストレスによる徘徊

中核症状の認知機能障害に不安やストレスが重なった結果、行動・心理症状として徘徊が起こることがあります。

例えば、以前は当たり前に出来ていたことが出来なくなると 「自分はなぜ何も出来なくなったのだろう」 と不安になります。

また、介護者の対応や環境の変化があると不満が生じ、それがストレスとなります。このようなことが認知機能障害に影響し、結果として徘徊に繋がります。

環境的な原因

徘徊には、環境が原因になることもあります。 例えば「今自分のいる場所に見覚えがない」「居心地が悪い」「落ち着かない」などが理由となり、徘徊に繋がります。

認知症の方にとって、環境が変わると混乱を招きやすい点には注意が必要です。

認知症の方を混乱させないようにするには、本人によって居心地がよい空間を作ることが効果的です。

介護が必要になったとしても、環境を大きく変えなければ徘徊を抑制できます。

居場所・持ち物を探している

家族や知人の顔が認識できず、家族や知人を知らない人だと思い不安が生じると、感情が抑制できず衝動的に外に出てしまうことがあります。

また、持ち物をどこに置いたのか忘れ、探すために外に出て徘徊になってしまうこともあります。

この場合、認知症の方本人にとっては 「より心地よい場所を探している」 状態です。

帰宅しようとする

見当識障害により、今いる自宅を自宅であると認識できず、帰宅しようとして外に出るため徘徊と捉えられることもあります。

また、記憶障害によって自己認識が突然若返り、実家や昔住んでいた家に帰ろうとする場合もあります。その場合、帰ろうとする過程で迷ってしまい、徘徊になってしまいます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症も徘徊の原因になります。これは脳全体が萎縮していく一般的な認知症とは少し異なるものです。

前頭側頭型認知症とは、人格や社会性をつかさどる前頭葉と、主に言語、記憶、聴覚をつかさどる側頭葉に萎縮が見られていく認知症です。

前頭側頭型認知症になると 「一目を気にしなくなる」「感情的で抑制が利かなくなる」「同じことを何度も繰り返す」 といったことが見られるようになります。

つまり、前頭側頭型認知症の場合は、前頭側頭型認知症自体が徘徊に繋がっているのです。

高齢者の徘徊を予防する6つの対策【見守り編】

徘徊の対策

このトピックでは、高齢者の徘徊を予防するため、特に見守りの際に注意したいポイントを6つ紹介します。

ストレスの原因と癖の把握

認知症の方が感じるストレスの原因が何なのか、日頃から観察することが大切です。

例えば、新しい環境になると、幻覚が見える人は「知らない人が家にいる」と恐怖を感じ、外に逃げてしまう場合もあります。そうならないために、環境に馴染めるような関わりが必要です。

また、認知症の方の癖を知っておくのも対策として効果的です。万が一行方がわからなくなっても、本人の行動パターンや立ち寄り場所などの癖を知っておくと、早期の発見に繋がります。

立ち寄る可能性のある店舗、駅などの交通機関、馴染みの場所、習慣的に行っていた行動、趣味などをあらかじめ確認しておきましょう。

地域コミュニティとの連携

夜間徘徊対策には地域との協力が欠かせません。最初のステップとしては、地域包括支援センターに相談することが効果的です。

認知症は恥ずかしいことではなく、住んでいる地域の他の家庭でも徘徊が起こっているという認識が大事です。

家族だけではなく、地域全体がこのような理解をすることで、徘徊した際に本人に話を聴いてくれる人、家まで送ってくれる人が現れるでしょう。

地域の住民や地域包括支援センターと連携し、徘徊リスクの高い認知症の方への支援体制を整えることも重要です。地域のボランティアや見守りグループを組織し、巡回や見守り活動を行うことで、夜間の徘徊リスクを軽減することができます。

趣味や仕事など役割を与える

認知症のご老人は、何もすることがなく話し相手もいなければ、現状が理解できないことで焦燥感にかられ「自分の居場所はない」「ここはどこだ」と疑い始め、外に出ようとしがちになります。

自分の居場所を認知してもらうには、集中できる手作業や楽しめる趣味が役立ちます。

特に、簡単な作業をしてもらうと自己肯定感が満たされ、落ち着いていられることが多いです。

外出など運動を積極的に

高齢者の夜間徘徊は、体内のエネルギーが有り余った結果起こってしまうことがあります。

対策としては、適度に運動をすることがよいでしょう。エネルギーが発散できますし、心地よい充実感や疲労感を味わえるので、外出衝動が改善する場合があります。

また、散歩など外出の機会を増やせば足腰が鍛えられます。正しい道を記憶するトレーニングにもなり、一石二鳥です。

運動は認知症の方の心身の健康維持にも貢献し、心地よい状態をキープする一助となるでしょう。ただし、運動の内容や強度は個々の能力や医師の指示に基づいて適切に行う必要があります。

生活のリズムを整える

体調や生活リズムを整え、日頃から気持ちを落ち着かせてもらうことが必要です。

体調が優れず夜眠れないなど、生活リズムが乱れているために、夜間徘徊に繋がることは多々あります。 夜目覚めてしまわないよう、日頃の生活リズムを整えることが大切です。

高齢者の方は、水分不足で意識が朦朧としていたり、便秘や腰痛などで不快感を感じたりすると、夜目覚めてしまい眠れなくなることがあります。

日頃の生活リズムや体調を整えることで、夜間徘徊の可能性を減らすことができます。

介護サービスの活用

デイサービスなどの介護サービスを利用することで、高齢者の日中の活動量が確保できます。

また、介護サービスでは、認知症を理解している専門スタッフから適切なケアがしてもらえます。

介護サービスを利用することで、介護者の負担が軽減できる点もメリットです。

介護サービスを利用することで無理のない介護を続けられ、介護者、要介護者両方のストレスを軽減させることができます。

特に老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居することで、介護スタッフが常に見守ってくれる環境で生活することが可能なので、非常に安心できます。

学研の介護施設を活用しよう

学研ココファンが運営するサービス付き高齢者向け住宅の利用もおすすめです。

ココファンのサービス付き高齢者向け住宅なら24時間365日ケアスタッフが常駐しているので、突然外出してしまう方でも安心してご入居いただくことが可能です。

緊急時の対応もバッチリなうえ、介護付き有料老人ホームと比べて入居金や月額費用もリーズナブルなので、金銭的な負担も軽減できるのもポイントです。

徘徊してしまう方の介護にお困りの方は、ぜひココファンへの入居を検討してみてください。

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高齢者の徘徊を予防する3つの対策【モノ編】

徘徊対策2

このトピックでは、高齢者の徘徊を予防するため、モノを使った対策を3つご紹介します。

徘徊に気づく仕組みづくり

徘徊を予防することも大事ですが、徘徊自体に気付ける仕組みづくりも必要です。

例えば、玄関にセンサーを付けたり、ドアベルを付けたりすることで、周りの人が認知症の高齢者の外出に気付けます。

また、玄関に鏡や人形など、本人が興味を持って足を止めるものを置いておけば、外出までの時間稼ぎにもなります。

位置情報を知らせてくれるGPS端末を利用するのも有効です。GPS端末は、ポケットに入れるタイプ、靴に付けられるタイプ、首から下げられるタイプがあるため、本人に合ったものを選びましょう。

持ち物や衣服に名前を書く

記憶障害により自分の名前を言えない状況を想定し、キーホルダーや財布、衣服などに名前や住所、介護者の連絡先を書いておくこともおすすめです。

名前などを身の回りのものに書いておくことで、徘徊してもすぐに本人を見つけられる確率が上がります。

キーホルダーや財布はなくしてしまう恐れもありますので、衣服など身に付けているものに最低一カ所は直接名前を書いたり、名札を縫い付けておいたりすることをおすすめします。

また、捜索するときの準備として、ご本人の顔写真を用意しておいたり、ご本人のその日の服装を記録しておいたりすることも役に立ちます。

これにより、認知症の方が迷子になった際に、周囲の人が迅速に連絡を取ることができ、迷子の時間を短縮することができます。

動線による転倒リスクの軽減

認知症の方で、身体的にも介護が必要な場合は、徘徊中に転倒してしまうリスクが高くなってしまいます。

認知症の方は、自分が安全に歩けないことを忘れて歩こうとしてしまいます。そのため、徘徊するときに通ると思われる動線上には物を置かないことは重要です。

また、動線上には手すりを設置することや、目の付きやすいところに杖を置いておくなどの工夫が必要です。

また、家の中でも、敷居などのちょっとした段差で転倒することがあります。 段差をなくしたり、ぶつかってケガをしそうな物を置かないようにしたりする工夫もしておきましょう。

老人の徘徊が発生したときの対処法4選

ここからは、認知症のご老人の徘徊が実際に起こったとき、徘徊しているのを見たときに注意したいポイントを4つご紹介します。

行動や言動を否定せず傾聴する

まず第一に、ご本人の言動を否定しないことが大切です。ご本人は徘徊の理由を理解することは難しいですが、徘徊を否定されたり怒られたりすると、負の感情だけが残ります。

その結果、相手に対して不信感を抱き、徘徊がエスカレートしてしまうケースが多いのです。

認知症のご老人が徘徊をしたときの対処法は、「なぜ歩いているのか」という理由を尋ねるなど、本人に寄り添って傾聴することです。

傾聴することで、ご本人は安心して徘徊をやめることがあります。また、安心させてから「帰りましょう」などと声がけすると、納得することもあります。

また、周囲には徘徊に思えても、ご本人はただトイレや部屋を探しているだけの場合も多いです。

日々の排泄の感覚などご本人の習慣を見ながら、トイレを探しているのがわかったら声をかけてトイレに誘導するなど、本人が困った状況にならないよう、事前に本人の言動を把握して対応することも有効です。

気をそらせる

徘徊しようとしているときに、他のことに気をそらさせることも対策として効果的です。

例えば、高齢者が自宅を自宅だと認識できず「早く家に帰らないと」と思い、自宅を出て行こうとしたケースで考えてみましょう。

そのときには 「それなら迎えが来るまでお茶を飲んで待ちましょうか」 とお茶や休憩に誘ったり、「暑いので外出するなら帽子をかぶりましょう」 と声をかけたりして、他の行為に気が向くようにします。

このように他のことを気をそらさせることで、徘徊しようとしていた理由を忘れて、落ち着ける場合があります。

無理に止めずに歩かせる

原因や目的がはっきりしない徘徊は、無理に止めようとせず、歩かせてあげることも大切です。

無理に止めようとすると、ご本人は邪魔をされたことに対して感情的になり、逃げようとして転倒してしまう恐れがあります。

徘徊・夜間徘徊を無理には止めずに介護者が一緒に外を歩けば、ご本人は適度な疲れが溜まってエネルギーの消費ができます。

すると、さらなる徘徊衝動が抑えられるので、介護者が付き添える範囲の徘徊だけで済むのです。

認知症のご老人にとっては、安全に歩けるように配慮してできるだけ付き添ってあげることは運動にもなり、徘徊も最低限に抑えられるのでよいことなのです。

速やかに警察に届け出を出す

認知症のご老人が行方不明になったときには、自力での捜索にこだわらず、速やかに警察に通報しましょう。

家族の徘徊が周囲に知られることに抵抗感を抱く人も多いですが、ためらわずに通報しましょう。

通報時間が早ければ早いほど捜索範囲が狭くて済み、発見される確率が高くなります。

連絡は、地域包括支援センター、担当ケアマネージャー、利用している介護サービス事業所にもしておきましょう。

これらのスタッフたちは認知症のご老人に慣れており、徘徊時の捜索のコツや対策法を心得ていることが多いからです。

また、通報時には認知症の方の特徴や身体的特徴、最後に見かけた場所や行動のパターンなど、可能な限り詳細な情報を提供することも重要です。

捜索の際に必要な情報を的確に伝えることができ、迅速な発見に繋がる可能性が高まります。

「徘徊」から「ひとり歩き」へ

近年、認知症のご老人の徘徊を 「ひとり歩き」 などの言葉に言い換える自治体が増えています。

「徘徊」という言葉は、認知症に対する誤解や偏見を招く恐れがあり、ご本人や家族に配慮する必要があるからです。

一方「徘徊」は、事故に繋がりかねない急を要するニュアンスが定着しており効果的だという理由で、言い換えはしていない自治体も多いです。

広辞苑によると、徘徊とは「どこともなく歩きまわること。ぶらつくこと」です。

辞書では悪い意味とはされていませんが、実際に使われる「徘徊」には、認知症の方に対する偏見が含まれている場合があります。

愛知県大府市の取り組み

愛知県大府市は、2018年に「徘徊」を「ひとり歩き」に言い換えることを決めました。その理由として、以下の説明をしています。

「徘徊」という言葉には、「目的もなく、うろうろと歩きまわること」という意味がありますが、認知症の方の外出の多くはご本人なりの目的や理由があるとされています。
「徘徊」という表現は、そうした認知症の方の外出の実態にそぐわないことや、「認知症になると何も分からなくなる」、「認知症の方の外出は危険」といった誤解や偏見につながる恐れがあります。

出典:愛知県大府市HP

上記の理由から、愛知県大府市は「徘徊」を以下のように言い換えています。

言い換え
徘徊 ひとり歩き
徘徊する 外出中に行方不明になる
徘徊高齢者 ひとり歩き高齢者
行方不明になる恐れのある認知症高齢者
認知症徘徊捜索模擬訓練 認知症行方不明者捜索模擬訓練
徘徊高齢者家族支援サービス 認知症高齢者見守り・捜索支援サービス

このように、愛知県大府市では、「徘徊」は「ひとり歩き」「行方不明者」「認知症」などのように言い換えています。

「徘徊」を言い換えている自治体は他にも

その他にも「徘徊」を言い換えている自治体はあります。

福岡県大牟田市兵庫県は2015年、東京都国立市鳥取県米子市は2016年、兵庫県川西市は2018年に、「徘徊」という言葉を使わず、「ひとり歩き」「外出」など他の言葉に言い換えることを決定しました。

また、このような自治体では、ただ言葉を言い換えるだけではなく、認知症の方を保護する訓練も積極的に行っています。

福岡県大牟田市の取り組み

福岡県大牟田市では、

認知症の人が出かけた先で道に迷い、自宅に帰れなくなった(認知症による行方不明)

という、「徘徊」を使わない設定の元、認知症の方を捜索・保護する訓練である「認知症SOSネットワーク模擬訓練」を行っています。

鳥取県鳥取市の取り組み

また、鳥取市は2018年に、全庁で公文書には「徘徊」という言葉を使わないことを決めました。

また、「徘徊」が使われていた事業「鳥取市徘徊高齢者位置検索システム」の名前を「鳥取市認知症高齢者等位置検索システム」に変更しました。

鳥取市の場合は、ある保健師が

認知症の人には散歩や買い物など外出の目的があり、記憶違いで迷ってしまうだけである。徘徊では意味が違い、誤解や偏見を招く

と問題提起をしたことがきっかけとのことです。

その一方で、他の自治体では、

『徘徊』の方が行方不明だと市民に緊急性が伝わる

『ひとり歩き』では、本人の状況を軽くとらえている感じで、かえって危険にさらすことになるのでは

との声が上がっています。このように、「徘徊」という言葉に対する印象は自治体にもよって違うため、全国一律で「徘徊」という言葉を言い換えるという流れにはまだなっていません。

今後、「徘徊」という言葉の是非がさらに議論されていくことでしょう。

徘徊についてまとめ

徘徊についてまとめ
  • 普段から認知症の方の外出の機会を増やすことは、外出衝動が減ったり、正しい道を記憶できたりするので徘徊の対策になる
  • よく寄るお店や使用する交通機関など、その人の癖を知っておくと、徘徊が起きたときに見つけやすい
  • 認知症の高齢者の夜間徘徊対策には、地域の協力が必要

認知症の方が徘徊する理由は、人によってさまざまです。普段から、その人がストレスを感じる原因を把握し、なるべくストレスを感じる環境にしないよう心がけることが大切です。

また、何か集中できる作業をしてもらう、ご本人に介護者が付き添い外出して適度に体力を使うなどの方法により、外出衝動が抑えられることもあります。

また、普段よく行くお店やよく使用する交通機関など、生活習慣の癖を把握しておくと、徘徊が起きてご本人を探すときに役立ちます。

徘徊に対応することは簡単ではありませんが、ぜひ今回ご紹介した対策法を実践してみてください!

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この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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