訪問リハビリテーションとは?対象者や費用・選ぶ際の注意点まで解説
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「訪問リハビリってどんなサービスなの?」
「訪問リハビリに医療保険や介護保険は使えるの?」
訪問リハビリを使ってみたいと思っていても、このように内容がよくわからず、戸惑っている方もいらっしゃるでしょう。
実際に訪問リハビリのメリットやデメリットはどのようなことがあるのか、どのように事業所を選んだらよいのかも気になりますね。
今回は、訪問リハビリについて、どうのようなものなのか、対象者や費用、通所リハビリとの違い、選ぶ際の注意点まで、全ての基本的な情報を解説します。
この記事をご覧になれば、訪問リハビリのことがよくわかり、また自分に合った使い方ができるようになるでしょう。
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅に来てリハビリを行ってくれる
- 利用できるのは要介護認定を受けているか主治医が必要と診断した場合
- 利用者個々人の状況に合わせて最適なリハビリを受けられる
訪問リハビリテーションとは
最初に訪問リハビリテーションとは、どのようなものなのか、概要を説明します。
訪問リハビリテーションとは、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士などのリハビリの専門職の方が、自宅に訪問して来て、在宅でリハビリを行ってくれる、というものです。
訪問リハビリを利用できるのは、高齢者などで、リハビリテーション施設や病院への通院が困難な方、あるいはこれらの施設からの退所・退院後の日常生活がまだ不安な方などです。
ただし、訪問リハビリテーションを使うためには、主治医に訪問リハビリテーションの必要があると認めてもらわなければならない、という点を覚えておきましょう。
訪問リハビリの場合、日常生活の自立の支援に向けて、在宅で病状の観察をするだけでなく、身体機能の維持・向上に関する助言や、環境整備の提案、介護している家族へのアドバイスなども行ってくれます。
通所リハビリテーションでなく在宅でリハビリを行うことで、実際の生活環境に添った訓練ができ、しかも、リラックスしてリハビリが行えるのです。
さらに、個別の利用者のニーズに合わせたカスタマイズされたプログラムを提供することも特徴的です。専門職のリハビリテーションスタッフは、利用者の状態や目標に基づいて、個別のリハビリプランを作成・改善を行ってくれます。
最近は高齢者のQOLを高めるために、リハビリが注目されています。社会参加や健康寿命の延伸、予防医療などの視点も重視されるようになっている背景もあり、こういったサービスが徐々に人気を帯び始めています。
近くの介護施設を探してみる!訪問リハビリの対象となる場合
ここでは、訪問リハビリの対象となる場合について具体的に見ていきます。
簡単に使える「通所リハビリテーション」と違い、訪問リハビリテーションは、次の2つの場合に該当するときにだけ対象となります。
介護保険証の認定を受けた場合
まず、介護保険証の認定を受けている場合です。
要介護1以上の方、すなわち要介護認定を受けている方はすべてが対象となります。病気やケガの種類や原因は問いません。
ただし、40~64歳までの方の場合は、「がん」や関節リウマチなどの16種類の特定疾病が原因で要介護認定を受けた場合に限ります。
なお、要支援の方は介護予防のため、「介護予防訪問リハビリテーション」を受けることができます。
主治医から必要だと診断された場合
次に、主治医から訪問リハビリテーションが必要だと診断された場合でなければ、基本的に利用することができません。
たとえば、以下のような症状や状態があると主治医が認めた場合に対象になります。
- 筋力が低下して歩きにくくなった
- 食べ物を飲み込むのが難しくなった
- 言葉をはっきりと発せられなくなった
- 体の一部に麻痺や拘縮の症状が見られる
- リハビリのやり方がよくわからない
- 体の動きが良くなく思うように動けない
- 福祉用具の使い方がわからない
- 日常生活に不安がある
訪問リハビリのサービス内容
ここでは、訪問リハビリのサービス内容を紹介します。訪問リハビリのサービスは、利用者の生活環境に合わせた個別プログラムを提供し、リハビリテーションの専門家が利用者の健康や生活機能の向上を支援します。
具体的には以下のようなサービスです。
- 計画的な運動プログラムの作成と指導
- 症状や健康状態の観察・管理・助言
- 歩行や起き上がりなどの機能訓練
- 食事・排泄・入浴などの生活動作訓練
- 会話や嚥下の訓練
- 麻痺や褥瘡を解消するためのマッサージ
- 福祉用具選定・活用方法の助言
- 介護する家族へのアドバイス
- 住宅改修の助言
- 認知機能の訓練
- 心理的なサポート
- その他日常生活の指導・助言
理学療法士などの訪問リハビリ専門職が派遣
訪問リハビリの場合は、国家資格である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門職が、病院や介護老人保健施設から派遣されて、自宅に訪問を行います。
各専門職の方が行うリハビリの内容は、下の表のとおりです。
職業 | 内容 |
---|---|
理学療法士 | 運動・体操、マッサージなどによって、歩く・立ち上がるなど、日常生活に必要な体の基本動作の維持・回復を目指す |
作業療法士 | 家事・手芸などの作業や動作を通じて、認知機能などの心身機能や日常生活機能の維持・回復を図る |
言語聴覚士 | 発声や発語、会話などの訓練、コミュニケーション能力のリハビリ、嚥下機能の訓練などを行う |


訪問リハビリのメリット
ここでは、訪問リハビリのメリットを紹介します。 自宅でのリハビリは、以下のとおりメリットが大きいものです。
リハビリ施設に通う時間や費用を節約できる
訪問リハビリですから、リハビリ施設まで通所する必要がありません。通院時間や交通費用がかからないのは何よりのメリットです。
移動する必要がなく、身体的な負担を軽減することもできます。
マンツーマンでしっかりリハビリしてもらえる
リハビリの専門家と、マンツーマンでリハビリを行うことができます。
リハビリの専門家が利用者の身体的な状態や生活環境を把握し、個々に合わせたリハビリプログラムを提供することで、利用者がより効果的なリハビリに取り組むことができます。
自宅でリラックスしてリハビリを受けられる
普段の生活と変わらない環境下でリハビリを行うことができます。まわりの目を気にする必要がありません。落ち着いて安心してリハビリをできます。
通所が困難な方や自宅の近くに適当なリハビリ施設がない方、見ず知らずの方々との接触が苦手な方などは、通所リハビリよりも訪問リハビリが向いていると言えるでしょう。
訪問リハビリのデメリット
一方で、在宅ならではのデメリットもあります。
使用できるリハビリ機器が限られる
自宅でのリハビリですから、病院や施設にあるような立派で高性能なリハビリ機器などは使えません。
代わりに、日常生活で使用する身の回りの道具や家具を活用して訓練を行います。例えば、椅子やテーブルを使ったバランス訓練や筋力トレーニング、壁や手すりを利用した歩行訓練などがあります。
使用可能な機器が限られれば、リハビリの内容・レベルにも当然違いが出てきます。
プライバシーが侵害される可能性も
自宅のプライベートな空間でのリハビリですから、どうしてもプライバシーが露出されてしまうリスクもあります。
というのも、家族や知人がリハビリを見てしまうことで、リハビリ施設と比べて利用者が集中力を欠いたりする可能性があります。
何か問題が起きた時の不安がある
通所と違い医師などが近くにいませんので、異常時などの不安があります。危機管理への配慮・対策も必要です。
他のリハビリ利用者との交流ができない
自宅にこもってのリハビリになりますので、他の方々との交流を希望する方にとっては、開放感がなく、息苦しく感じるかもしれません。
訪問リハビリテーションの利用方法
ここでは、訪問リハビリテーションの利用方法を見ておきましょう。
訪問リハビリを利用すべきタイミング、介護保険・医療保険の利用の可否、それに訪問リハビリの申し込み手順まで全て解説します。
訪問リハビリを利用すべきタイミング
まず、訪問リハビリを利用すべきタイミングです。
訪問リハビリは、リハビリテーションの専門職に自宅に来てもらうことに意味があります。それは、たとえば下記のような場合です。
- 寝たきりで病院やリハビリ施設に通うのが難しいとき
- 専門の担当者からマンツーマンでリハビリを受けたいとき
- 身体介助の方法を自宅で教えてもらいたいとき
- リハビリが必要だが、本人が通所リハビリに行きたがらないとき
- 自宅でリハビリを安全に行いたいとき
このような場合には、訪問リハビリの利用を検討してみると良いでしょう。
介護保険または医療保険を利用できる
要介護の高齢者が利用する訪問リハビリは、介護保険の適用対象になります。
また、状況によって医療保険も利用可能です。医療保険は、病気やケガの治療費用を保障してもらえる仕組みです。
要介護認定を受けている方は原則として介護保険を優先させます。ただし、65歳以下や65歳以上でも要介護認定を受けていない方は、医療保険を利用することになります。
なお、原則として、介護保険と医療保険の併用は認められません。
しかし、どちらの保険を利用するにせよ、訪問リハビリの費用は利用者の負担を大きく軽減してくれるため、比較的低額で済むことが多いといえるでしょう。
訪問リハビリの申し込み手順
訪問リハビリの申し込み手順も見ておきましょう。利用手順は下記のとおりです。
- まず担当のケアマネジャーに相談して、訪問リハビリを依頼する事業所を決める
- 主治医に訪問リハビリが必要な旨の指示書を書いてもらう(介護保険を使う場合は3カ月に1回、医療保険を使う場合は1カ月に1回の発行が必要)、ケアマネージャーを通すことも可能
- 訪問リハビリ事業所と正式に契約する
- 訪問リハビリ事業所の理学療法士などが実施計画書を作成する
- 実施計画書に基づきリハビリテーションを受ける
実施計画書は、進捗状況を初回はおおむね2週間以内に、その後は3月ごとを目途に評価し、必要に応じて見直されます。
まずは、担当のケアマネージャーを見つけることが必要ですので、近くの居宅介護支援事業所に相談をしてみましょう。
近くの居宅介護支援事業所を探してみる!頻度や所要時間・自己負担額の目安
ここでは、訪問リハビリの頻度や所要時間・自己負担額の目安を見ていきます。
訪問リハビリの利用頻度は、ケアマネジャーが作るケアプランで日数が決まります。ただし、1回20分・週6回以内が限度とされています。1回40分であれば週3回までです。
自己負担は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある場合は2割または3割となります。1割負担の場合は、1回につき自己負担額はおよそ292円になります。
訪問リハビリ費用の目安(1割負担)
訪問リハビリ費用(1割負担の場合)の目安は、下の表のとおりです。
内訳 | 金額 | |
---|---|---|
基本報酬 | 訪問リハビリテーション | 334円/回 |
加算 | リハビリテーションマネジメント加算 | (A)イ 196円/月 (A)ロ 232円/月 (B)イ 490円/月 (B)ロ 526円/月 |
加算 | 短期集中リハビリテーション実施加算 | 218円/3月 |
加算 | サービス提供体制強化加算 | 7円/回 |
加算 | 移行支援加算 | 19円/日 |
費用は基本的にサービス利用時の単位で計算されますが、1単位ごとの料金は地域によって異なります。
そのため、お住まいの地域によって、同じサービスでも料金が異なる場合が考えられます。
介護予防訪問リハビリ費用の目安(1割負担)
介護予防訪問リハビリ費用(1割負担の場合)の目安は、下の表のとおりです。
内訳 | 金額 | |
---|---|---|
基本報酬 | 介護予防訪問リハビリテーション | 334円/回 |
加算 | 短期集中リハビリテーション実施加算 | 218円/3月 |
加算 | サービス提供体制強化加算 | 7円/回 |
ここに記載した金額は、あくまでも目安です。こちらについても実際に支払う金額は、利用するサービス内容や地域により変化します。
訪問リハビリの職員配置
訪問リハビリの職員配置については、厚生労働省の基準で次のとおりとされています。
- 医師
専任の常勤医師1以上(病院等と併設されている事業所・施設では、病院等の常勤医師との兼務で差し支えない)
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
適当な数を配置する
医師については、従来の基準では必置ではありませんでしたが、2018年の改正により配置が義務付けられています。
参考:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生省令第37号)第76条、社会保障審議会介護給付分科会(2020年8月19日資料4)
事業所の職員の専門性に注目
訪問リハビリのサービス内容については、事業所による違いはそれほど見られません。しかし、職員の配置状況については違いが見られます。
たとえば、理学療法士や作業療法士は大抵の事業所にいますが、中には言語聴覚士を配置していない事業所もあります。
そのような事業所では、失語症や嚥下障害のリハビリには、適切な対応が困難です。
ですから、希望するリハビリに対応可能な専門職員の配置の有無など、事業所の特徴をしっかりと見極めることが必要です。
訪問リハビリの事業所の選び方
ここでは、訪問リハビリの事業所の選び方を解説します。事業所を選ぶポイントとして、まず以下の点を確認しましょう。
- リハビリ職員の経験年数は十分であるか
- 必要な理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが配置されているか
- 認知症ケアの研修を行っているなど認知症に十分対応できるか
- 緊急事態(担当職員が訪問できなくなったとき、病状が急変したときなど)の対応が決まっているか
- ケアマネジャーや福祉用具の事業所と連携しているか
- 土日や祝日にも営業しているか
- 訪問リハビリ終了時に他の介護サービスのアドバイスを行っているか
最後は利用者や家族で決めよう
訪問リハビリの事業所の選び方に迷うときは、ケアマネージャーに相談してみるとよいです。また、ケアマネジャーから特定の事業所をすすめられることもあるでしょう。
その場合、ケアマネージャーは、紹介料をもらうわけでもないので、中立な立場で事業所を提案してくれているはずです。ただ、だからといって紹介された事業所を必ず利用しなければならないわけではありません。
ケアマネージャーが事業所をすすめる理由を聞いてみて、最終的には利用者と家族が納得した上で決定することが重要です。
近所の散歩が難しくなったら
近所を散歩したり、近くのスーパーやコンビニまで出かけるのが難しくなった方は、訪問リハビリを利用した方が良いです。
できるだけ実際の生活環境におけるリハビリが望ましいので、自宅のまわりで歩行訓練をしましょう。
その場合、筋力がついて、歩行が安定しても足の筋肉が落ちないようリハビリを継続する必要があります。ですから、訪問リハビリ卒業後までをきちんと考えてくれる事業所を選ぶようにしましょう。
寝たきりなら訪問看護リハビリがおすすめ
寝たきりなら訪問看護リハビリをおすすめします。寝たきりの状態ですと、施設に通うことは難しく、褥瘡(とこずれ)を防ぐ対応が必要になります。
訪問看護リハビリは、病気や障害を持った方が住み慣れた自宅で、療養しながらリハビリを支援するサービスです。通常の訪問リハビリですと、褥瘡の処置は難しいですが、訪問看護師であれば医療ケアもできます。
なお、訪問看護の一部をホームヘルパーが行う訪問介護リハビリもあります。訪問介護リハビリでは食事や入浴の手伝いなどのケアはできますが、医療行為はできません。
病気や障害がある方が在宅療養するときは、介護保険か医療保険を使用して、訪問看護を利用できます。
近くの介護施設を探してみる!

訪問リハビリと通所リハビリの違い
ここでは、訪問リハビリと通所リハビリの違いをまとめておきます。
端的に言えば、通所リハビリは施設に通ってリハビリを行いますが、訪問リハビリは在宅でリハビリを行うものです。
訪問リハビリは、自宅でのリハビリですから、利用者は自分一人だけです。他方、通所リハビリの場合は、他の高齢者や要介護者などとと一緒に集団でリハビリが行われることもあります。
下の表は、訪問リハビリと通所リハビリのメリット・デメリットを比較したものです。
訪問リハビリ | 通所リハビリ | |
---|---|---|
メリット | ・通院時間や費用の節約 ・マンツーマンのきめ細かいリハビリ ・在宅でリラックスしてのリハビリ | ・専用機器などリハビリ環境が整っている ・食事・入浴などのサービスを受けられる ・他の利用者と交流する機会がある ・家族や介護者とのコミュニケーションや連携が容易 |
デメリット | ・リハビリの機器や手段が限られる ・プライバシーの管理が必要 ・他の利用者との交流の機会がない | ・利用者の肉体的な負担が大きい ・個々の利用者への配慮や個別対応に限界がある ・日常生活に即したリハビリを受けられない |
それぞれメリット・デメリットがありますので、利用者の状態を考えて適切なサービスを選びましょう。
訪問リハビリと通所リハビリは併用可能
訪問リハビリと通所リハビリは併用可能です。訪問リハビリは、かっては自宅で活動的に過ごせることを支援するサービスでした。しかし、現在では、本人のやりたいことができることを目標にして、自立支援をして、さらに社会参加を目指しています。
そのためには、まずは在宅でマンツーマンの訪問リハビリを受けながら、徐々に他者との交流の機会を増やすようにしていくことも大切です。
例えば、訪問リハビリの初期段階では、利用者が自宅で個別にリハビリを行いながら、リハビリスタッフとのコミュニケーションを通じて信頼関係を築いていきます。
その後、利用者の状態や希望に応じて、訪問リハビリのセッションを施設内で行うこともできます。このように、訪問リハビリと通所リハビリを併用することで、個別のニーズに合わせた継続的なサポートを提供し、自立支援と社会参加の目標を達成することが可能です。
訪問リハビリテーションについてまとめ
- 訪問リハビリの利用頻度は、1回20分・週6回以内が限度
- 事業所の選び方は確認すべきポイントがあるが、利用者と家族が納得して決めることが大事
- 訪問リハビリと通所リハビリはそれぞれメリット・デメリットがあり、併用も可能
訪問リハビリについて、対象者や費用、通所リハビリとの違い、選ぶ際の注意点など全ての基本的情報を解説してきました。
訪問リハビリは、かっては自宅で活動的に過ごせるようになることを目的に支援するものでしたが、現在では自立支援だけでなく、社会参加も目指しています。
この記事を参考にして、自分に合った訪問リハビリテーションの使い方を見つけてください。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)