准看護師は注射ができない?やってはいけないこと・できることを解説
この記事は看護師に監修されています
看護師
城戸あき(しろと あき)
「准看護師は注射できないって本当?」
「准看護師がやってはいけないことを具体的に知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
准看護師は、看護師と比べて行える業務の幅が狭いです。しかし、「注射できない」というのは誤りで、医師か看護師の指示のもと静脈内注射を打つことは認められています。
こちらの記事では、准看護師がやってはいけないこと・できることや、キャリアアップする方法などを解説します。
准看護師の仕事内容や、具体的にできないことなどを知りたい方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
医師や看護師の指示があれば准看護師も注射を行える
実態として准看護師と看護師の仕事内容はほぼ同じ
准看護師はキャリアアップが難しいデメリットがある
准看護師は注射や採血はできない?
准看護師は、医師や看護師の指示のもとで注射を打つことができます。「准看護師は注射できない」という声も散見されますが、実際には注射などの医療行為も行うことが可能です。
厚生労働省も「看護師等(准看護師を含める)が行う静脈注射は、診療の補助行為の範疇として取り扱う」旨の通知を発出しています。
加えて「ただし、薬剤の血管注入による身体への影響が大きいことに変わりはないため、医師又は歯科医師の指示に基づいて」行うこととされています。
このように、医師が看護の指示を受けるという条件下で、准看護師は静脈注射を行うことは可能です。
准看護師ができないことは?
出典:保健師助産師看護師法
看護師と准看護師は「看護を行う」という仕事の本質は共通しているため、一見すると何も違いがないように思えます。
しかし、もともと准看護師は「戦後の医療従事者不足を解消するため」の一時的な制度でした。正看護師の補助要員を確保することが重要な課題だったため、准看護師は看護師よりも学歴要件が緩い特徴があります。
厚生労働省によると、看護師教育と准看護師教育の方針には以下のような違いがあります。
人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解する能力を養う
対象を中心とした看護を提供するために、看護師としての人間関係を形成するコミュニケーション能力を養う
看護師としての責務を自覚し、対象の立場に立った倫理に基づく看護を実践する基礎的能力を養う
科学的根拠に基づいた看護の実践に必要な臨床判断を行うための基礎的能力を養う
健康の保持・増進、疾病の予防及び健康の回復に関わる看護を、健康の状態やその変化に応じて実践する基礎的能力を養う
保健・医療・福祉システムにおける自らの役割及び他職種の役割を理解し、多職種と連携・協働しながら多様な場で生活する人々へ看護を提供する基礎的能力を養う
専門職業人として、最新知識・技術を自ら学び続け、看護の質の向上を図る基礎的能力を養う
人間を身体的・精神的・社会的側面から把握し、対象者を生活する人として理解する基礎的能力を養う
医師、歯科医師、又は看護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を、対象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力を養う
疾病をもった人々と家族のさまざまな考え方や人格を尊重し、倫理に基づいた看護が実践できる基礎的能力を養う
保健・医療・福祉チームにおける各職種の役割を理解し、准看護師としての役割を果たす基礎的能力を養う
看護実践における自らの課題に取り組み、継続的に自らの能力を維持・向上する基礎的能力を養う
また、「保健師助産師看護師法」において看護師と准看護師の定義が明記されており、それぞれ役割の違いが明確になっています。
看護師の定義この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。准看護師の定義この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう
出典:保健師助産師看護師法
また、准看護師と看護師は免許の発行主体が異なる点も押さえておきましょう。
准看護師:都道府県知事
看護師:厚生労働大臣
さらに大きな違いとして「療養上の世話又は診療の補助」の定められ方が挙げられます。
准看護師は、看護に関する行為を患者に行う際に「医師・歯科医師・看護師の指示」を受けなければなりません。つまり、准看護士は自分の判断に基づいて看護業務を提供することができないのです。
看護計画を立案することはできない
准看護師は、看護業務の中でも「看護計画の立案」を行うことができません。看護計画とは、患者の入院から退院まで「どのように過ごすか」の計画です。
看護師は、看護学校や大学において看護計画立案のイロハを学びます。一方で、准看護師養成学校の授業内容には、看護計画立案の教育やアセスメント能力に関する教育が含まれていません。
准看護師は、資格を取得する過程において「看護計画の立案」を学ばないことから、実務上においても行うことが認められていないのです。
自分で判断して看護業務を行うことはやってはいけない
准看護師は、自分で判断して看護業務を行うことができません。法令において「医師や看護師の指示を受けること」が前提となっているため、自分の判断で看護業務を行うことは許されていないのです。
医療機関で、准看護師と看護師の業務内容はほとんど変わらないのが実情ですが、准看護師が自身で判断して看護業務を遂行すると看護師と差別化できないため、准看護師は自分の判断に基づく看護業務は行えません。
例えば、患者から入浴介助や清拭介助を頼まれたケースで考えてみましょう。看護師であれば、そのまま介助の準備をして看護・介助業務を行えますが、准看護師は看護師からの指示を受けなければ業務を行えません。
すべて医師か看護師の指示を受けてから業務を行うため、看護師と比較して、准看護師は看護の提供まで「ワンクッション多い」ことになります。
つまり、准看護師は業務のスピードや効率が看護師よりも劣ってしまうため、相対的に評価されにくいと言えるでしょう。
他の看護師へ業務の指示をすることはやってはいけない
准看護師は、看護師に指示を出すことができません。准看護師は、実態として看護師の下位資格にあたるため、准看護師から看護師への指示を出すのは「バランスがおかしい」ことになります。
ベテラン准看護師と、年齢の離れた後輩看護師の関係でも同じです。あくまでも准看護師は医師か看護師の指示に基づいて業務を行う存在なので、准看護師に指示出しの権限はありません。
ただし、実務上は「准看護師が指示を出した方が良い」と考えられるケースもあります。例えば、新人の看護師が受け持っている患者に緊急対応をする際には、ベテランの准看護師のほうが頼れるでしょう。
このように、緊急性を要しており、准看護師のほうが知識も経験も上である場合は、新人看護師が准看護師の指示に従うのが自然です。
とはいえ、あくまでも准看護師は看護師よりも行える業務範囲が狭いため、さまざまな制約を感じる点は押さえておきましょう。
管理職へ昇進する事はできない
准看護師は、一般的に管理職への昇進が難しいです。看護師としてキャリアを積めば看護師長など管理職への昇進が見込めますが、准看護師は一般的に昇進やキャリアアップが見込めません。
そのため、准看護師として働き続ける以上は、主に医療現場における補助業務を受け持つことになります。
年齢を医療現場での業務は体力を要することから、年齢を重ねていくにつれて「現場の仕事が辛い」と感じる准看護師も少なくありません。
准看護師が管理職へ昇進することが難しい理由は、以下の記事で紹介しています。
訪問看護で准看護師がやってはいけないことは?
准看護師は、訪問看護でも業務を行うことができます。しかし、病院やクリニックなどの医療機関と同様に、准看護師にはやってはいけないことがあります。
訪問看護ステーションの管理者になることができない
准看護師は、訪問看護ステーションの管理者になれません。施設の管理者となれるのは「保健師または看護師のみ」なので、准看護師は看護業務に従事することになります。
介護施設では、准看護師でも管理職になれる可能性があります。しかし、訪問看護ステーションで勤務する場合、法令上の制限から管理職になれる見込みはありません。
訪問看護計画書・報告書の作成を作成することができない
准看護師は、訪問看護計画書・報告書の作成ができません。作成者の欄は「看護師もしくは保健師」である必要があるため、准看護師は作成者としてサインすることも認められていません。
訪問看護計画書・報告書は、訪問看護で患者をサポートするうえで大切な書類です。しかし、准看護士は「医療補助」をするスタッフという立ち位置なので、書類作成ができません。
オンコールを対応することができない
准看護師は、オンコールの対応が認められていません。24時間体制で対応するオンコールを行えるのは、原則として保健師または看護師に限られます。
訪問看護において、オンコールは患者の様態急変に対応するために重要な業務です。しかし、准看護師はオンコール対応ができないため、肩身の狭い思いをする可能性があります。
准看護師の資格で何ができる?
「准看護師ができないこと・やってはいけないこと」を紹介してきました。しかし、実際には医療現場において准看護師はさまざまな業務を行えます。
具体的に、以下の医療行為は准看護師でも行うことが可能です。
血圧、脈拍、体温の測定
採血、点滴路の確保
排泄介助
シーツ交換
手術、処置の補助
夜勤巡回、夜間患者対応
患者さんの送迎
点滴の作成、投与
食事介助
入浴介助
配薬、セット
体位変換
カンファレンス参加
カルテ入力業務
准看護師でも、医療機関において重要な仕事を任せられていることがわかります。
基本的に看護師と同じ業務(注射・採血含む)ができる
「准看護士は注射ができない」と思われがちですが、准看護師は看護師と同様に医師の指示のもと、静脈内注射を打つことが可能です。
実際に、厚生労働省では看護師等による静脈注射の実施について、以下のように規定しています。
医師又は歯科医師の指示の下に保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)が行う静脈注射は、保健師助産師看護師法第5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする。
出典:看護師等による静脈注射の実施について
准看護師は看護師と比べて業務範囲が狭いことから、「注射ができない」という印象を持たれていると考えられます。
実際には、医師や看護師の指示のもとで注射を行うことは認められているため、多くの医療機関で活躍できるでしょう。
准看護師をめざすなら正看護師を目指す方がいい?
准看護師は、注射をはじめとする基本的な看護業務を行えます。実際に、看護師と准看護師の仕事内容は「ほとんど同じである」ケースが多いです。
ただし、准看護師の教育課程だけでは、現在の複雑化する医療に対応しきれない点も否めません。「准看護師を廃止する」という議論も行われているため、これから准看護師を目指す人は注意するべきでしょう。
そのため、医療業界や看護の世界でキャリアを築いていきたいと考えている方は、准看護師から正看護師へのキャリアアップを検討するのがおすすめです。
准看護師から正看護師になるための詳細な情報は、以下の記事で紹介しています。
准看護師として転職することも視野に入れる
准看護師としての就労を検討している場合は、准看護師のキャリアアップに協力的な病院への転職を検討しましょう。
研修やフォローが充実している医療機関であれば、働きながら正看護師を目指すことが十分に可能です。
以下で、准看護師におすすめの転職サイトを紹介するので、キャリアアップを目指している方は利用を検討してみてください。
准看護師におすすめの転職サイト
准看護師として管理職を目指す場合や、正看護師を目指す際、キャリアアップに協力的な職場で働くことも重要です。
ここでは、准看護師のキャリアアップにおすすめの転職サイトをいくつかご紹介します。
レバウェル看護(旧:看護のお仕事)
求人数15万件以上(2024年10月時点)
職場訪問による詳細な情報
LINEで相談可能
レバウェル看護(旧:看護のお仕事)は、評価が非常に高い看護系転職サイトです。
レバウェル看護では、職場訪問を多く繰り返しているため、自分が転職しようとしている職場が、今後のキャリアアップに協力的かどうかなど、判断できるでしょう。
またLINEでの相談することもできるため、多忙な業務の合間や、看護師資格を目指している時も転職活動をすることが可能です。
ナース専科 転職(※旧ナース人材バンク)
引用元:ナース専科 転職(※旧ナース人材バンク)公式サイト
累計100万人以上の看護師が利用
求人数は20万件以上(2024年10月時点)
看護師専門、地域専任のキャリアパートナーが徹底支援
ナース専科 転職(※旧ナース人材バンク)は、2005年の創設以来、累計100万人以上の看護師に活用されている人気のサービスです。
顧客満足度も3年連続No.1(※)を誇り、提供するサービスのクオリティが非常に高い点も大きな魅力となっています。
転職サポートを行ってくれるキャリアパートナーが、専門知識を生かした的確なアドバイスを行ってくれるため、転職で失敗したくない方や、信頼できる転職サービスを利用したい方に非常に適しているでしょう。
またナース専科 転職(※旧ナース人材バンク)では、看護師専門・地域専任のキャリアパートナーが条件交渉もしてくれるので、できるだけ好条件で転職したい方にもおすすめです。
※2025年 オリコン顧客満足度®調査 看護師転職
マイナビ看護師
引用元:マイナビ看護師公式サイト
認知度No.1の転職サイト(※)
看護転職サイトで圧倒的な求人数
幅広い求人
マイナビ看護師は、大手人材紹介会社のマイナビが手がける看護師転職サイトです。
大手というだけあって、独占求人・非公開求人を含めて80,000件以上(2024年10月現在)という豊富な求人数を誇ります。
また病院に限らず、美容クリニックや一般企業、トラベルナースなど、多種多様な求人が掲載されていることも魅力的です。
なお、マイナビ看護師は、医療機関や企業へ直接訪問し、情報収集を行なっています。そのため、それぞれの職場の雰囲気など、外からは見えないような詳しい情報まで入手可能です。
※看護師を対象とした人材紹介サービス14ブランドにおける調査結果(GMOリサーチ株式会社)(2021年7月)
准看護師は注射ができない?まとめ
准看護師でも、医師か看護師から指示があれば注射を行える
准看護師は自己判断による看護業務ができない
看護業界でキャリアアップを目指すなら転職エージェントの活用がおすすめ
「准看護師は注射ができない」というのは誤りです。准看護師でも、医師や看護師の指示のもとで注射を行うことは認められています。
ただし、准看護師はやってはいけないことがあるのも事実です。医療機関でのキャリアアップを目指している方は、看護師資格の取得を目指しましょう。
また、職場を変えることもキャリアアップを狙ううえで効果的です。こちらの記事で紹介した転職エージェントはいずれも安心して利用できるため、興味がある方は登録してみてはいかがでしょうか。
この記事は看護師に監修されています
看護師
城戸あき(しろと あき)
国立病院・大学病院で消化器内科、整形外科、内分泌内科を経験。現在は子育てと両立できるようフリーランスに転身し、医療ライターとして活動中。