八王子市の老人ホームの特徴
東京都内の市町村において最大の人口数となる八王子市は、政令指定都市を除く市区町村で全国第3位の人口数を誇ります。
特に若年層の人口が多く、約11万人もの学生が八王子市内で学んでおり、全国有数の学園都市として有名です。
しかし、若年層が多い一方で高齢化率も上昇傾向にあります。
高齢者の増加は今後も続くと予想されており、それに伴い老人ホームなどの高齢者施設も多く建設されています。
高齢者が多い分、老人ホームの入居待機者も多いのが現状ですが、高齢者社会に対応するための環境は着々と整えられています。
そのため、今後も老人ホームの増設が見込まれることを見越して早めに申し込みを済ませておくと良いでしょう。
費用面は、23区を除いた東京の他の市と比較して高めに設定されていますが、「駅前に大規模な商業施設が軒を連ねている」「路線バスが張り巡らされており、交通の便が良い」などのメリットも多く、快適な生活を送ることができるでしょう。
しかし、八王子市は標高が高い内陸部の盆地のため、寒暖差が激しい傾向がある、という点は把握しておきましょう。
八王子市の介護施設の数と価格相場の概要
八王子市に設置されているココファンの介護施設の入居金・月額費用の平均値と中央値は以下の通りです。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
八王子市 |
162,000円 |
162,000円 |
全国平均 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
八王子市 |
152,714円 |
152,714円 |
全国平均 |
169,518円 |
158,250円 |
それぞれの金額を全国平均と比較してみると、入居金は安く、月額費用はほぼ同額であることが分かります。
八王子市の高齢者人口
なお、2025年以降のデータは推定値となっています。
八王子市の発表によると2020年度の高齢者人口は15万2,830人、高齢化率は27.2%となっており、高齢者人口は年々増加傾向にあります。
2015年の高齢化率が24.8%、2018年の高齢化率が26.5%となっており、3年間の間で約1.7ポイントの増加がみられます。
認知症患者の方も少なくない地域で、高齢化率の上昇に伴って認知症の方も上昇していくと考えられます。
八王子市では4人に1人以上が高齢者という現状を受け、高齢化対策や認知症予防に力を入れています。
また、八王子市内でも地域によって高齢者の人口率に差があり、多い地域では3人に1人以上が高齢者という状況です。
この高齢化率の偏りに対応するため、八王子市では地域に合わせた介護支援サービスを行っています。
出典:八王子市高齢者計画・第八期介護保険事業計画 令和3~5年度(2021~2023年度)
八王子市の介護保険事業所・施設の状況
<八王子市の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(八王子) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
172 |
2.63 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
193 |
2.95 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
79 |
1.21 |
2.17 |
特定施設数 |
23 |
0.35 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
126 |
1.92 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
40 |
0.61 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
633 |
9.67 |
12.40 |
出典:日本医師会 八王子市
※2020年9月時点の情報です。
八王子市には、種類ごとに上記の施設数が存在しており、その合計は633棟です。
75歳以上千人あたりの施設数を全国と比較すると、施設数全体で見ても少なめであることがわかるでしょう。
特定施設数は全国平均よりも少し多めですが、それ以外の介護施設についてはどれも全国平均よりも少ないデータとなっています。
八王子市の要介護認定者数
高齢者の増加に伴い、八王子市の要介護認定者数及び介護サービス利用者は年々増加傾向にあります。
2015年の時点で要介護認定を受けている高齢者の数は2万1,280人でしたが、2020年には2万9,021人まで増加しています。
5年間で7,000人以上増えており、今後更に増加することが予想されています。
- 高齢者人口の増加
- 要介護1認定者のサービス利用者の増加
- 介護予防支援などの介護予防系サービスの利用の増加
上記に挙げる課題に対して八王子市は、介護予防系サービスの増設、介護保険サービス事業所やショートステイ等の高齢者施設の増設を進めています。
さらに、介護保険サービス提供事業所に対して指導監督を行うことで、介護保険サービスの質の維持と向上に力を入れています。
八王子市の介護予防施策「八王子版介護予防体操」
八王子市では、高齢者が自立した生活を送れるように「介護予防・日常生活支援総合事業」を導入しています。
介護予防・日常生活支援総合事業では、高齢者福祉課や高齢者あんしん相談センターが中心となった相談対応や、介護度が上がらないようなサポートを受けることが可能です。
上記事業では、65歳以上の高齢者が利用できる「一般介護予防事業」と、要支援認定を受けた人が利用できる「介護予防・生活支援サービス事業」の2種類が展開され、それぞれの対象者の状態に応じたサービスが提供されます。
また、事業の一環として開催される「八王子版介護予防体操」では椅子を使った筋トレなどを行います。
「介護予防教室」では、転倒予防や認知症予防、閉じこもり予防のための講座やレクリエーションを受けることが可能です。
さらに、自宅で生活する高齢者の健康維持を支援する活動も豊富です。
訪問リハビリや介護予防訪問リハビリ、デイサービスなどの通所サービスでの体操など、楽しく体を動かすことができるような活動が取り入れられています。
- NPOやボランティア団体による掃除・洗濯・ゴミ出し等の手伝い
- 家族介護者教室で、介護や病気に関する知識及び介護保険サービスの利用方法の普及
- 高齢者サロンやシニア元気塾、シニアクラブなどの活動支援
など、高齢者が自宅で生活できるような環境づくりに力を入れています。
八王子市の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、要介護状態でも住み慣れた地域で最期まで自分らしく生活できるように地域で支え合う体制のことを言います。
八王子でも高齢者の増加を受け、高齢者が暮らしやすい環境づくりが進められており、その一環としてより強固な地域包括ケアシステムを構築中です。
医療機関や介護サービス事業所、ボランティア団体などが連携することで、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、地域密着型サービス、そして先に述べた介護予防・日常生活支援総合事業などのサービスを推進し、増加する高齢者にケアが行き届くように配慮しています。
また、新オレンジプラン、認知症見守りネットワークなどにより認知症高齢者及びその家族の対策・相談にも対応しており、事業所や施設のみならず地域全体で高齢者を見守る環境の構築も進めています。
他にも
- 金銭管理の代行サービス
- 自立支援・重度化防止を目的とした健康維持サポート
- 家族及び地域住民の介護力を高めるための介護教室
- 予防接種や看取り・終末期ケアの普及
など、高齢者やその家族のケアや地域全体で高齢者を助け合うための取り組みが充実しています。
さらに八王子市では、高齢者のために設置された様々な相談窓口を無料で利用することが可能です。
相談窓口には、以下のようなものがあります。
- 高齢者福祉課:高齢者向け福祉サービスに関する相談、介護保険と高齢者生活支援事業に関する説明など
- 介護保険課:介護予防・日常生活支援総合事業に関する知識の普及
- ハローワーク八王子・八王子しごと情報館:求職中の高齢者の為の就労相談及び仕事の提供
- 八王子市シルバー見守り相談室(シルバーピア中野):65歳以上の一人暮らし・高齢者のみの世帯・日中一人で過ごす高齢者のための生活相談窓口
- 八王子シルバーふらっと相談室(高齢者あんしん相談センター):高齢者の全般的な悩みに対応 など
近年では、「東京都福祉サービス第三者評価」というシステムも導入されました。
これは、東京都で実施されているサービス利用者、サービス提供者を除く第三者が客観的にサービス状況に関する評価を行うというシステムです。
このように、幅広い相談窓口を設けることで高齢者が抱く不安や悩みを解消しています。
パーキンソン病の方の施設選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
そもそもパーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳内のドパミン神経細胞の減少によりドパミンという成分が減少して起こる病気で手の震えなどが代表的な症状です。
人口10万人あたり約150人の方が発症すると言われており、発症すると要介護認定を受けるのが一般的ですが、まずはパーキンソン病の症状について確認しましょう。
パーキンソン病の症状
重症度は症状によって5段階に分けられていますが、具体的な症状は下記の通りです。
安静時振戦(ふるえ)
安静時振戦とは「ふるえ」のことで、じっとしている時にふるえが止まらなくなる症状です。
なお、ペンや箸を使う時などの動作時にはふるえが消えるという特徴があります。
初期段階であれば体の左右のどちらかにふるえ症状が出ますが、2~3年後には反対側にもふるえの症状が出るようになります。
親指と人差し指で丸薬をまるめるような「丸薬丸め運動」や、踵で床を小刻みに打つような「タッピング様振戦」が代表的です。
無動
無動とは、日常生活での動きが少なくなり、動作が遅くなってしまうことです。
顔の筋肉に無動症状が出ると「仮面様顔貌」と呼ばれる、顔の筋肉がこわばり表情が乏しくなります。
他にも、字を書く際にだんだん文字が小さくなっていく「小字症」や、声が小さくなる「小声症」などの症状が代表的です。
筋強剛
筋強剛は、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れて、筋肉の緊張が進んでしまう症状を指します。
関節のこわばりや脱力感の症状が代表的ですが、抵抗が一定に感じられる「鉛管現象」や、歯車のように引っかかるような抵抗が断続的に見られる「歯車現象」が代表的です。
このような、パーキンソン病による筋肉の硬直を「筋固縮」とも呼びます。
姿勢保持障害
姿勢保持障害が起きるとバランスが取りにくくなり、体が傾き転びやすくなります。
また、歩行時にどんどん加速して小走りになってしまい、自分では止まれない「突進歩行」も特徴です。
転倒のリスクがかなり高まることから、転倒しないように支えたり見守ることが重要です。
パーキンソン病の方の入居の条件
パーキンソン病を患っている方でも、基本的には老人ホームへの入居が可能です。
本来であれば「65歳以上、介護認定あり」が老人ホームに入居する条件となっていますが、パーキンソン病は厚生労働省が指定する特定疾病に含まれているため、介護認定を受けているパーキンソン病患者であれば40歳~65歳未満でも入居可能です。
ただし、入居する方が要介護認定を受けている40歳~65歳未満の男性の場合、女性スタッフが多い老人ホームへの入居は難しい場合があるので注意しましょう。
施設に入らず一人暮らしはできるのか
老人ホームなどの施設にはできるだけ頼らず、一人暮らしを続けたいという方も多いでしょう。
パーキンソン病が進んでしまうと、薬の服用タイミングが分からなくなってしまい症状が悪化して危険な状態に陥る恐れもあります。
そのため、もしパーキンソン病を発症したら施設に入るのが無難と言えるでしょう。
施設に入らことに抵抗を覚える方であれば、ショートステイの利用でも構わないため、誰かに頼ることをおすすめします。
パーキンソン病の方の補助金について
介護保険給付の他にも、パーキンソン病に罹患すると生活を支えるための補助金が出ます。
パーキンソン病の重症度の分類は、以下のように5段階に分けられていますが、Ⅱ度以下または生活機能障害度Ⅰ度以下でも、医療費の支払金額が一定以上となると医療費助成の対象となります。
なお、医療費助成制度を利用するためには、住居地の保健所に申請書や診断書などを提出して行うことになります。
介護保険制度や補助金は介護をする上で重要な役割を果たしているので、しっかり情報を集めましょう。
パーキンソン病の方が老人ホーム選びで重視すべき点
パーキンソン病は、病状の進行と共に身体の自由が無くなってしまうので、常に転倒事故の危険があります。
また、食事や着替えなどの日常動作をこなす際にも時間がかかってしまうため、適切なサポートを受けられる施設を探しましょう。
また、身体が思い通りに動かないことで気持ちが落ち込んでしまい鬱状態に陥ってしまうこともあるため要注意です。
住環境に配慮されている
老人ホームを選ぶ際には、パーキンソン病患者でも安心して移動できるかどうかをチェックしましょう。
手すりの設置や段差解消がされており、浴室などが安全に配慮された設計になっている住環境であれば、安心して暮らせるでしょう。
また、運動機能の衰えを防ぐためにも手すりの設置や家具類の配置が調整されている施設を選び、少しでも自立した生活を送れるようにしましょう。
パーキンソン病に熟知したスタッフがいるか
パーキンソン病の症状や対応を熟知しているスタッフがいれば、充実したケアを受けられるでしょう。
薬物効果に合わせて生活リズムを作るサポートもしてくれるので、患者にとって非常に頼れる存在となります。
また、病状を熟知していれば起こりやすい事故を予防するために細心の注意が払ってくれるので、安心して生活できるでしょう。
しっかりとしたリハビリを行えるか
パーキンソン病の症状を遅らせるためには、リハビリを適度に行うことが重要です。
自力でできることに関しては、時間がかかっても自力で行うようにサポートしてくれる施設を選びましょう。
なお、施設の人手や人員配備の体制が不十分だと対応が遅れてしまう場合があるためスタッフの人数もチェックしてみてください。
実際に、スタッフの介助が待ちきれずに、パーキンソン病の方が1人でトイレに向かい転倒してしまったと事例もあります。
医療連携が緊密に取れている24時間体制で看護スタッフが常駐している老人ホームを選ぶと、より安心でしょう。
選ぶ際の優先順位を決めよう
老人ホーム選びで困らないためにも、重視するべきポイントを整理して比較項目に優先順位を付けることをおすすめします。
具体的には、下記のポイントを意識してみてください。
特に、パーキンソン病の方は日常的な見守りや介護が必要不可欠なので介護体制の充実度に関しては重要度が高いです。
安心して暮らせるかどうかを最優先に考えて、施設選びを進めていきましょう。
おすすめの有料老人ホームの種類
有料老人ホームは、主に「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」の2種類に分かれます。
介護体制やサービスを提供するための人員体制が整備されている介護付き有料老人ホームの方が、パーキンソン病の方には適していると言えるでしょう。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも介護体制が充実している施設はあるので、必ずしも選択肢が介護付き有料老人ホームに限られるわけではありません。
様々な施設を比較検討した上で、ベストな施設を選んでいきましょう。
パーキンソン病の方が施設入居するリスク
パーキンソン病の方がさらに認知症を併発してしまうと、残念ながら問題行動が増えるため介護者の負担が重くなります。
また、嚥下障害も抱えてしまうと恒常的に食事介助が必要となるので、食事内容にも配慮しなければなりません。
このような症状を併発してしまっている場合、サポートを提供する余力がない施設からは入居を断られてしまうケースもあります。
また、入居後にパーキンソン病と認知症を併発した状況になるケースもあるため、入居前に退去要件に関しては必ず確認してください。
認知症を併発しても入居を継続できるか、必要な介護や支援を受けられる契約か否かは重要なポイントなので、漏れなくチェックしましょう。
室内での転倒にも注意
パーキンソン病を患ってしまうと運動機能や感覚機能が低下してしまうので転倒のリスクが高まります。
特に、コロナ禍において在宅時間が増えたことで室内での転倒事故も増えているので要注意といえるでしょう。
もし階段で転倒してしまうと大怪我にも繋がるので、同居家族のサポートや気配りが欠かせません。
予防するための運動・食事
パーキンソン病患者の方が室内での転倒を予防したり、大怪我のリスクを低減するためにも日ごろからリハビリを行う必要があります。
無理のない範囲で適度な運動やストレッチを行って筋力と柔軟性を維持したり、階段昇降やウオーキングなどを行い下半身の筋力を動かすことを意識しましょう。
また、全身の筋肉や関節を使かす動作を行えるラジオ体操も効果的なので、ぜひ実践してみてください。
食生活に関しても工夫を凝らす必要があります。
特に乳製品や、果物・肉などの摂取が少ないと、パーキンソン病になりやすいと言われています。また、チロシンは、大豆製品に多く含まれておりタンパク質の一種で、ドパミンなどの神経伝達物質の原料となる栄養素でなので積極的に摂取すると良いでしょう。
好き嫌いを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。