武蔵野市の老人ホームの特徴と動向
最初に、武蔵野市の老人ホームの特徴と動向を紹介します。
武蔵野市の地理的特徴と介護施設の特徴
武蔵野市は、東京都のほぼ中央部にあたる多摩地域東部に位置する、人口14万8,142人(2021年11月1日現在)の緑豊かな都市です。
新宿から約12km・電車で20分の交通の至便性もあり、東京23区への通勤率が高い、ベッドタウン的な街として発展してきました。
現在では、教育・福祉・健康・文化・スポーツ・情報などの生活型産業、商業施設も集積する利便性の高さと環境の良さを兼ね備えた街として、さらに発展し、住んでみたい街として定評があります。
何よりも武蔵野市は、ユニークな福祉サービスの先進都市です。
100円で乗れるコミュニティバス「ムーバス」は、全国のコミュニティバスの先駆け的存在です。高齢者が自宅を担保にする「リバースモーゲッジ」も率先して行ってきました。
他にも「テンミリオン事業」など高齢者福祉の取り組み・先進的な対策に積極的で、超高齢化社会への準備をしています。
もちろん基本的な介護保険サービスにも力を入れています。介護施設への入居が厳しい東京都にあって、武蔵野市は介護施設数も充実しており、待機数もそこまで多くはありません。費用も安めの傾向にあります。
武蔵野市の介護施設価格概観
ここで、武蔵野市の介護施設の価格を概観しておきましょう。
武蔵野市の、ココファンの介護施設の入居金・月額費用の平均値・中央値は、以下の表の通りです。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
武蔵野市 |
301,800円 |
301,800円 |
全国平均 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
武蔵野市 |
200,350円 |
200,350円 |
全国平均 |
169,518円 |
158,250円 |
表をみてわかるように、武蔵野市のココファン介護施設の入居金・月額費用は、ココファン施設の全国平均と比べると、かなり高めです。
ですが、費用の高さに見合った充実の介護サービスを提供しており、その分だけ安心した暮らしを送ることができます。
武蔵野市の高齢者人口
武蔵野市の65歳以上の高齢者人口は、3万2,951人で、市の全人口の22.2%を占めています(2021年11月1日時点)。
ちなみに、全国の高齢化率は、28.8%(令和3年度時点)です。
全国の状況に比べれば、武蔵野市の高齢化率は比較的低めの数字で推移しています。
とは言え、ご覧のように高齢者数・高齢化率は年々徐々に増加しており、市の推計によれば、市の推計によると、2030年には高齢者人口が3万6,424人、高齢化率は24.1%になる予想です。
今後は団塊の世代も、65歳以上の高齢者となってしまうため、高齢化率が高くなる可能性は非常に高いでしょう。
出典:武蔵野市公式ホームページ(2021年11月N)
武蔵野市の介護施設の状況
武蔵野市の介護施設の状況は、次の表の通りです。
<武蔵野市の種類別施設数>
種類 |
事業所数 |
75歳以上千人あたりの施設数(武蔵野市) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
59 |
3.74 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
41 |
2.60 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
14 |
0.89 |
2.17 |
特定施設数 |
8 |
0.51 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
43 |
2.72 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
10 |
0.63 |
0.80 |
介護施設数75歳以上千人あたりの(合計) |
175 |
11.08 |
12.40 |
上の表の事業所数は、日本医師会の2020年9月時点の情報を基にしています。
武蔵野市の75歳以上千人あたりの介護施設数は、合計では11.08と、全国平均の12.40よりやや少なめです。特に、通所型介護施設数・入所型介護施設数が少なくなっています。
一方で、訪問型介護施設数・居宅介護支援事業所数・特定施設数は、全国平均を上回っています。
出典日本医師会 武蔵野市
武蔵野市の要介護認定者数
武蔵野市の要介護認定者数は、2020年の時点で6,450人です。要介護度の区分別に見ると、要介護1の認定を受けている方が25%以上と最も多いです。
武蔵野市の要介護認定者数は、2015年度末の6,230人を底に2016年度以降は増加傾向が続いており、2035年には6,800人弱になる見込みです。
高齢化の進展により、この増加傾向は今後も続くものと見込まれています。特に重度の要介護者割合が上昇する可能性が高い、という見込みです。
要介護認定者数の増加に伴い、介護サービスを利用される人数も、当然のことながら増加を続けています。介護対策の一層の充実・強化が求められます。
出典:武蔵野市「介護保険事業状況」(2021年11月末現在)
武蔵野市の高齢者相談窓口は?
武蔵野市では、高齢者の方の様々な悩みに応えるために以下のような相談窓口を設けています。
専門職の相談員が24時間365日、高齢者の方の日常生活や介護に関する悩み・不安・疑問などを聞いて、市のサービスや窓口を案内します。
高齢者福祉及び介護保険制度に関する相談に対応しています。
ボランティアが必要な方に登録しているボランティアを紹介します。
東京社会福祉士会が、毎日(土・日・祝日・年末年始を問わず)午後7時30分から午後10時30分まで電話での相談に対応しています。
武蔵野市独自の介護サービスについて
武蔵野市では、市独自の介護サービスを行っています。
たとえば、以下のような事業があります。
高齢の方などが住み慣れた地域で健康に暮らし続けていくための支援のため、地域の人材・建物を有効活用するテンミリオンハウス事業を展開しています。
地域の福祉団体や住民グループなどの運営団体に年間1千万円を上限とする補助を行う「近・小・軽」の家です。
バスやタクシーなどの公共交通機関の単独利用が困難な高齢の方や障がいのある方の外出支援サービス事業です。
指定した高齢者福祉施設などで65歳以上の方が行った活動にポイントを付与し、獲得ポイント数に応じてギフト券などを還元する事業です。
登録制の事業で、登録する際は説明会兼研修会への参加が必要になります。
武蔵野市の地域包括ケアシステム
武蔵野市の地域包括ケアシステムを紹介します。
武蔵野市では市役所内に基幹型地域包括支援センター1カ所、市内6カ所に在宅介護・地域包括支援センターを開設して、地域の高齢者の方々に対し総合的な支援をて無料で行っています。
地域包括ケアシステムは、高齢者の支援を目的として、住まいや介護・福祉・医療・生活支援・介護予防などのサービスを一体として地域で包括的に提供する仕組みです。
国の推奨のもと、戦後のベビーブーム時代に生まれた団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、全国的に構築を目指しています。
地域包括ケアシステムがしっかりでき上っていれば、高齢の方が介護を必要とした時にも、それまで住み慣れた地域で落ち着いた自分らしい生活を継続できます。
ただ、都市部と地方では、高齢化の状況は異なりますので、地域の状況・特性に応じた対応を進めていくことが必要です。
高齢化が進む中で特に重要なのは、介護予防です。武蔵野市では、次のような介護予防事業を行っています。
- おいしく元気アップ!教室(低栄養予防・筋肉量アップを目指す)
- 歯つらつ健康教室(口腔ケアプログラム)
- 健康やわら体操(運動機能の維持を目指す)
また、武蔵野市には、高齢者の社会活動の場として、市内26地区の単位老人クラブと、各老人クラブで組織される老人クラブ連合会があります。おおむね60歳以上の方の自主的な団体で、健康の増進等を活動の中心にしています。
パーキンソン病の方の施設選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
そもそもパーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳内のドパミン神経細胞の減少によりドパミンという成分が減少して起こる病気で手の震えなどが代表的な症状です。
人口10万人あたり約150人の方が発症すると言われており、発症すると要介護認定を受けるのが一般的ですが、まずはパーキンソン病の症状について確認しましょう。
パーキンソン病の症状
重症度は症状によって5段階に分けられていますが、具体的な症状は下記の通りです。
安静時振戦(ふるえ)
安静時振戦とは「ふるえ」のことで、じっとしている時にふるえが止まらなくなる症状です。
なお、ペンや箸を使う時などの動作時にはふるえが消えるという特徴があります。
初期段階であれば体の左右のどちらかにふるえ症状が出ますが、2~3年後には反対側にもふるえの症状が出るようになります。
親指と人差し指で丸薬をまるめるような「丸薬丸め運動」や、踵で床を小刻みに打つような「タッピング様振戦」が代表的です。
無動
無動とは、日常生活での動きが少なくなり、動作が遅くなってしまうことです。
顔の筋肉に無動症状が出ると「仮面様顔貌」と呼ばれる、顔の筋肉がこわばり表情が乏しくなります。
他にも、字を書く際にだんだん文字が小さくなっていく「小字症」や、声が小さくなる「小声症」などの症状が代表的です。
筋強剛
筋強剛は、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れて、筋肉の緊張が進んでしまう症状を指します。
関節のこわばりや脱力感の症状が代表的ですが、抵抗が一定に感じられる「鉛管現象」や、歯車のように引っかかるような抵抗が断続的に見られる「歯車現象」が代表的です。
このような、パーキンソン病による筋肉の硬直を「筋固縮」とも呼びます。
姿勢保持障害
姿勢保持障害が起きるとバランスが取りにくくなり、体が傾き転びやすくなります。
また、歩行時にどんどん加速して小走りになってしまい、自分では止まれない「突進歩行」も特徴です。
転倒のリスクがかなり高まることから、転倒しないように支えたり見守ることが重要です。
パーキンソン病の方の入居の条件
パーキンソン病を患っている方でも、基本的には老人ホームへの入居が可能です。
本来であれば「65歳以上、介護認定あり」が老人ホームに入居する条件となっていますが、パーキンソン病は厚生労働省が指定する特定疾病に含まれているため、介護認定を受けているパーキンソン病患者であれば40歳~65歳未満でも入居可能です。
ただし、入居する方が要介護認定を受けている40歳~65歳未満の男性の場合、女性スタッフが多い老人ホームへの入居は難しい場合があるので注意しましょう。
施設に入らず一人暮らしはできるのか
老人ホームなどの施設にはできるだけ頼らず、一人暮らしを続けたいという方も多いでしょう。
パーキンソン病が進んでしまうと、薬の服用タイミングが分からなくなってしまい症状が悪化して危険な状態に陥る恐れもあります。
そのため、もしパーキンソン病を発症したら施設に入るのが無難と言えるでしょう。
施設に入らことに抵抗を覚える方であれば、ショートステイの利用でも構わないため、誰かに頼ることをおすすめします。
パーキンソン病の方の補助金について
介護保険給付の他にも、パーキンソン病に罹患すると生活を支えるための補助金が出ます。
パーキンソン病の重症度の分類は、以下のように5段階に分けられていますが、Ⅱ度以下または生活機能障害度Ⅰ度以下でも、医療費の支払金額が一定以上となると医療費助成の対象となります。
なお、医療費助成制度を利用するためには、住居地の保健所に申請書や診断書などを提出して行うことになります。
介護保険制度や補助金は介護をする上で重要な役割を果たしているので、しっかり情報を集めましょう。
パーキンソン病の方が老人ホーム選びで重視すべき点
パーキンソン病は、病状の進行と共に身体の自由が無くなってしまうので、常に転倒事故の危険があります。
また、食事や着替えなどの日常動作をこなす際にも時間がかかってしまうため、適切なサポートを受けられる施設を探しましょう。
また、身体が思い通りに動かないことで気持ちが落ち込んでしまい鬱状態に陥ってしまうこともあるため要注意です。
住環境に配慮されている
老人ホームを選ぶ際には、パーキンソン病患者でも安心して移動できるかどうかをチェックしましょう。
手すりの設置や段差解消がされており、浴室などが安全に配慮された設計になっている住環境であれば、安心して暮らせるでしょう。
また、運動機能の衰えを防ぐためにも手すりの設置や家具類の配置が調整されている施設を選び、少しでも自立した生活を送れるようにしましょう。
パーキンソン病に熟知したスタッフがいるか
パーキンソン病の症状や対応を熟知しているスタッフがいれば、充実したケアを受けられるでしょう。
薬物効果に合わせて生活リズムを作るサポートもしてくれるので、患者にとって非常に頼れる存在となります。
また、病状を熟知していれば起こりやすい事故を予防するために細心の注意が払ってくれるので、安心して生活できるでしょう。
しっかりとしたリハビリを行えるか
パーキンソン病の症状を遅らせるためには、リハビリを適度に行うことが重要です。
自力でできることに関しては、時間がかかっても自力で行うようにサポートしてくれる施設を選びましょう。
なお、施設の人手や人員配備の体制が不十分だと対応が遅れてしまう場合があるためスタッフの人数もチェックしてみてください。
実際に、スタッフの介助が待ちきれずに、パーキンソン病の方が1人でトイレに向かい転倒してしまったと事例もあります。
医療連携が緊密に取れている24時間体制で看護スタッフが常駐している老人ホームを選ぶと、より安心でしょう。
選ぶ際の優先順位を決めよう
老人ホーム選びで困らないためにも、重視するべきポイントを整理して比較項目に優先順位を付けることをおすすめします。
具体的には、下記のポイントを意識してみてください。
特に、パーキンソン病の方は日常的な見守りや介護が必要不可欠なので介護体制の充実度に関しては重要度が高いです。
安心して暮らせるかどうかを最優先に考えて、施設選びを進めていきましょう。
おすすめの有料老人ホームの種類
有料老人ホームは、主に「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」の2種類に分かれます。
介護体制やサービスを提供するための人員体制が整備されている介護付き有料老人ホームの方が、パーキンソン病の方には適していると言えるでしょう。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも介護体制が充実している施設はあるので、必ずしも選択肢が介護付き有料老人ホームに限られるわけではありません。
様々な施設を比較検討した上で、ベストな施設を選んでいきましょう。
パーキンソン病の方が施設入居するリスク
パーキンソン病の方がさらに認知症を併発してしまうと、残念ながら問題行動が増えるため介護者の負担が重くなります。
また、嚥下障害も抱えてしまうと恒常的に食事介助が必要となるので、食事内容にも配慮しなければなりません。
このような症状を併発してしまっている場合、サポートを提供する余力がない施設からは入居を断られてしまうケースもあります。
また、入居後にパーキンソン病と認知症を併発した状況になるケースもあるため、入居前に退去要件に関しては必ず確認してください。
認知症を併発しても入居を継続できるか、必要な介護や支援を受けられる契約か否かは重要なポイントなので、漏れなくチェックしましょう。
室内での転倒にも注意
パーキンソン病を患ってしまうと運動機能や感覚機能が低下してしまうので転倒のリスクが高まります。
特に、コロナ禍において在宅時間が増えたことで室内での転倒事故も増えているので要注意といえるでしょう。
もし階段で転倒してしまうと大怪我にも繋がるので、同居家族のサポートや気配りが欠かせません。
予防するための運動・食事
パーキンソン病患者の方が室内での転倒を予防したり、大怪我のリスクを低減するためにも日ごろからリハビリを行う必要があります。
無理のない範囲で適度な運動やストレッチを行って筋力と柔軟性を維持したり、階段昇降やウオーキングなどを行い下半身の筋力を動かすことを意識しましょう。
また、全身の筋肉や関節を使かす動作を行えるラジオ体操も効果的なので、ぜひ実践してみてください。
食生活に関しても工夫を凝らす必要があります。
特に乳製品や、果物・肉などの摂取が少ないと、パーキンソン病になりやすいと言われています。また、チロシンは、大豆製品に多く含まれておりタンパク質の一種で、ドパミンなどの神経伝達物質の原料となる栄養素でなので積極的に摂取すると良いでしょう。
好き嫌いを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。