大田区の老人ホームの特徴
大田区の老人ホームの特徴や動向について解説します。
大田区に住んでいる方や近隣に住んでいる方など、大田区の老人ホームの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
大田区の地理的特徴と介護施設の特徴
大田区は23区で最も面積の広い区であり、田園調布などの高級住宅街から蒲田などの町工場地域まで様々な顔を持つエリアでもあります。
人口は2021年11月1日現在で73万217人となっており、多くの区民が生活を営んでいます。
都心の喧騒とは離れている点も特徴で、図書館・美術館・博物館などの芸術を楽しむ施設が多く、落ち着いた雰囲気の場所も多くあります。
また、区として「交通安全都市」を宣言しており、日々の生活を充実させながら安全な生活が送れるので、比較的高齢者の方にとって住みやすい環境と言えるでしょう。
大田区内に点在する町工場は小規模企業で、職人の方々によって営まれています。
職人の方々の中には高齢者も多く、引退後に備えるべく老人ホームの整備が進んでおり、近年は介護施設数や定員も増加傾向です。
有料老人ホームの費用について見てみると、高級住宅街を有するエリアであることから料金は高めに設定されており、特に月額費用は都内でも高めの水準になります。
地域包括システムなどに力を入れている地域であり、主要道路も走っていて交通の便も発達していることから、施設入居者・そのご家族両者にとって便利な地域と言えるでしょう。
大田区の介護施設価格概観
大田区にあるココファンの介護施設の入居金・月額費用の平均値と中央値は、下記の表の通りです。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
大田区 |
276,450円 |
248,400円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
大田区 |
229,731円 |
222,112円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
大田区のココファンの施設は、全国の施設の費用の中央値・平均値と比較すると入居金・月額費用ともに高めであることが分かります。
大田区の高齢者人口
2015年から2020年までの、大田区の高齢者人口・高齢化率推移は上の画像の通りです。
大田区の発表によると、2020年の高齢者人口は167,626人、高齢化率は22.6%となっています。高齢者人口は緩やかに上昇していますが、高齢化率に大きな変化はありません。
出典:大田区の高齢者をとりまく状況
2040年には、65歳以上の高齢者人口は20万人以上となり、高齢者率は25%以上に達する見込みです。
近年の高齢化率はほぼ横ばいではありますが、やはり日本は全国各地で少子高齢化が進んでいきます。
大田区の介護保険事業者・施設の状況
それでは、大田区の介護保険事業者・施設の状況について見ていきましょう。
<大田区の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(大田区) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
225 |
2.98 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
232 |
3.08 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
70 |
0.93 |
2.17 |
特定施設数 |
50 |
0.66 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
159 |
2.11 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
59 |
0.78 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
795 |
10.55 |
12.40 |
出典:日本医師会 大田区
上記のように、75歳以上千人あたり施設数は全国平均をやや下回っているのが現状です。
特に入所型介護施設数や訪問型介護施設数は全国よりも少なめとなっています。
大田区の要介護認定者数
大田区の発表によると、区内の要介護認定者数の推移は上記の画像のようになっており、令和2年度の時点で30,866人、認定率は18.4%となっています。
出典:大田区ホームページ
なお、認定率とは第1号被保険者に占める要支援・要介護認定者数の割合を指しています。この数字は平成30年1月からの区独自基準による新しい総合事業の実施に伴って減少傾向にあります。
その背景としては、地域包括支援センターにおけるチェックリストを活用した介護予防ケアマネジメントが進んだ点が挙げられます。
これにより、要支援者から総合事業対象に移行したことで認定率が減少傾向にあるわけですが、今後の動向については要チェックと言えるでしょう。
大田区の高齢者相談制度は?
大田区では、独自の高齢者相談制度として「大田区福祉オンブズマン制度」を設けています。
これは、福祉サービスの利用者がサービス事業者に対して疑問や不信感を持った際に区の「福祉オンブズマン」に苦情を申し立てることができる仕組みです。
何らかの悩みがある方に対して、行政が介入して適切なサポートをしてくれる非常に有意義な制度と言えるでしょう。
基本的には幅広い苦情に対応していますが、
- 事実の発生日から1年以上経過したもの
- 裁判沙汰になっているもの
- 医療行為に関するものの
上記のような3点は専門家の対応が適切なので、対象外です。
なお、オンブズマンに任命されているのは大学の教員2名および弁護士2名で、客観的かつ専門的な視点から問題解決に向けて動いてくれます。
苦情を受けると、オンブズマンは区や当事者に事情を聴きた上で詳細な調査を行いますが、苦情を申し立てた日から45日以内に報告される仕組みとなっています。
サービスを受ける側の立場にある高齢者は不利益を被ってしまう機会がありますが、このように専門的な視点から解決に向けて動いてくれる機関の存在は非常にありがたいでしょう。
大田区の「健康長寿お役立ちガイド」について
大田区では、区民向けに「健康長寿お役立ちガイド」を発行して健康寿命の伸ばし方に関する情報や取り組みの周知を行っています。
これまでに行われてきた事例を紹介すると、
- 認知症予防
- 低栄養改善
- 口腔機能改善
- 運動講座
- 体力測定会
- 介護の活動支援
上記のものが挙げられます。
これらの介護予防への取り組みは、区内のシニアステーションや高齢者センター、区民センターなどで実施されているため積極的に参加すると良いでしょう。
広報やホームページ、また地域包括支援センターである「さわやかサポート」で情報収集ができるので、気軽に相談してみてください。
大田区の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に完成を目指しているシステムで、高齢者の方を支えるサービスを地域で一体的に提供する仕組みを構築するための取り組みです。
要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることは大きな心の安寧に繋がります。
そこで、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築が国を挙げて進められており、大田区でも地域の特性に応じてシステムの構築が進められています。
なお、大田区が特に重要視しているのは下記の5つです。
- 在宅医療と介護連携の推進
- 地域ケア会議の開催
- 生活支援・介護予防サービスの基盤整備
- 行政による高齢者の居住安定施策との連携
- 認知症施策
大田区では、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援のサービスを円滑に提供するべく「地域包括ケア体制」を目指していますが、「さわやかサポート」と呼ばれる地域包括支援センターが施策の中心的存在です。
さわやかサポートは区内に21ヵ所設置されており、介護保険や福祉サービスをはじめとして、高齢者福祉に関するあらゆる相談に応じているため、疑問や不安があれば気軽に利用すると良いでしょう。
また、高齢者の就労支援や社会参加を推進するため「太田区いきいきしごとステーション(高齢者等就労・社会参加支援センター)」の拡大を目指すなど、高齢者の方が活き活きと老後の生活を送るためのサポートが充実しています。
認知症施策の推進においては、認知症サポーター養成講座事業・認知症支援コーディネーター事業・認知症ケアパスの作成・認知症高齢者支援事業などを実施しており、認知症になっても安心して暮らせる環境整備を進めていることが分かるでしょう。
高齢者の方が暮らしやすい環境の整備は着々と進んでいるので、自身でも情報収集を行うなど自助努力をしていきましょう。
ALSの方の施設選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
ALSの基本情報をおさらいしながら、施設選びで重視すべき点について解説します。
そもそもALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?
ALSは、「筋萎縮性側索硬化症」とも呼ばれます。
介護施設の選び方を解説する前に、まずはこの病気がどのようなものなのか基礎知識を紹介します。
全身の筋肉が萎縮してしまう難病
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋肉が萎縮し、身体全体の自由がきかなくなってしまう難病で、10万人に7~11人が発症すると言われています。
ALSは、上位運動ニューロン·下位運動ニューロンの双方がともに変性することで筋肉に指令が伝わりにくく力が弱くなることまではわかっているのですが、原因・効果的な治療法については未だ解明されていません。
またALSは、短期間で急激に体が動かなくなる患者・10年以上かけて症状がゆっくり進行する患者など進行スピードには個人差が大きい病気です。
平均生存期間は発症後3~5年ですが、最近では医療技術の進歩・栄養状態の改善・感染症が減ったことなどにより、昔に比べて寿命が1年程長くなっています。
知覚神経や自律神経は障害されない
運動ニューロンが侵される病気・ALSは、自分の意思で体を動かす随意運動ができない一方、知覚神経・自律神経には障害が現れません。
そのためALS患者さんでは、熱さ・冷たさ・痛みなどは正常に感じるのにも関わらず、痛みを感じた時などに手を引っ込めたりといった動作はできないといったことが起こります。
また筋肉の働きによって動かす器官には心臓・消化器官などもありますが、これらは人が意識的に動かす随意運動ではなく自律神経の働きによるものなので、ALSによる影響はありません。
しかし、人の生命活動に欠かせない呼吸は、自律神経と随意筋である呼吸筋の両方を使うためALSによる影響を受けます。
ALSで運動ニューロンが侵されてしまうと、呼吸に使う筋肉が徐々に弱まりやがて呼吸も困難になるため、病気が進行すると呼吸の補助が必要です。
高齢化に伴い発症者が増加
ALSの発症には年齢が大きく関係していることが分かっており、ALSの発症数は50~70歳代に多いです。
そして、近年の高齢化に伴って患者数が増加しています。
昔は平均寿命が短かったために罹患する人が少なかったのですが、団塊世代が高齢者となり65歳以上の人口増加に伴ってALS患者さんが増えていると考えられるでしょう。
またアルツハイマー型認知症・パーキンソン病などほかの神経が損傷する疾患も、長寿化の影響により同様に増加しています。
以下の記事ではそれぞれの疾患について詳しく解説しているので興味がある方は一度目を通しておくのがおすすめです。
アルツハイマー型認知症とは?症状や原因・患者さんへの対応法をわかりやすく解説!
【医師監修】パーキンソン病の予防方法は?発症を抑えるために知るべきことを全て解説
ALSの原因について
ALSの原因は、未だ解明されていません。
しかし、ALSについての研究は多くの研究者によって続けられており、遺伝子異常・酸化ストレスやグルタミン酸過剰による神経障害といったさまざまな原因説が提唱されています。
食べ物が原因という仮説
一説によると、ALSの原因には食べ物が影響していると言われています。
化学調味料などに含まれるグルタミン酸の過剰摂取がALSを引き起こすのではないかという説が唱えられ、以来 グルタミン酸を多く含む化学調味料によってALSを患うと考える人が現れました。
しかし、グルタミン酸による影響説は、まだはっきりと解明されているわけではなくあくまで仮説の段階です。
グルタミン酸仮説とは?
グルタミン酸過剰説について、以下でもう少し詳しく解説しましょう。
グルタミン酸仮説では、グルタミン酸の再取り込みの障害によってシナプスの隙間に過剰に溜まってしまうことによって、運動ニューロンがダメージを受けることが発症の原因とされています。
そもそも人間が体を自由に動かせるのは、脳が指示を出しているからなのですが、運動ニューロンが正常に作動しているときはその指令が運動ニューロンを経由して各筋肉へと伝えられます。
運動ニューロンは、神経細胞体と樹状突起、そして軸索から構成されています。軸索と樹状突起には隙間が存在しており、その間の事をシナプスと言います。
脳から出た指令は、シナプス経由でニューロンが受け取ることによって電気信号に変わり、軸索に伝わります。そして軸索の末端からは神経伝達物質と呼ばれるグルタミン酸が放出されるのです。
この軸索の末端からは、神経伝達物質と呼ばれるグルタミン酸が放出されているのです。
ALS患者の場合、この取り込みが阻害され、グルタミン酸が過剰となってしまって運動ニューロンが死滅てしまうと考えられています。
紀伊半島などの環境要因
ALSは、環境による影響もあるのではないかと考えられています。
紀伊半島南部は、グアム島・西ニューギニアと並んで筋萎縮性側索硬化症(ALS)の多発地区で、とくに発症が多い地区では全国平均の50~100倍の発症率です。
グアム島では近年、かつてのALS多発地区が消滅し発症頻度は激減していますが、紀伊半島南部におけるALSの頻度は数十年前とあまり変わっていません。
また、グアム島と紀伊半島では、パーキンソン認知症複合 (PDC)という特異な神経疾患が多発する点も共通していますが、ALSと環境の因果関係については未だに解明されておらず謎に包まれています。
ストレス顆粒
ストレス顆粒とALSにも関係があるのではないかと言われています。
ストレス顆粒とは、神経細胞の中に存在するRNA-タンパク質複合体を多く含んだ構造体で、細胞が感染や熱ショックなどのストレスを受けた際に形成される凝集体です。
何らかの原因でストレス顆粒が消失せず過剰に蓄積した場合、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や精神変異性疾患、がんなどの原因になると考えられています。
遺伝的要因
ALSは、約9割が遺伝と無関係に発症しますが、約1割は遺伝による家族性ALSだと考えられています。
活性酸素を解毒してくれるSOD1遺伝子が突然変異したためという説もあり、家族性ALSの約2割にこの症状が見られます。
他のALS患者も同じく活性酸素が影響して運動ニューロンが死滅しているものという研究もありますが、遺伝説はまだ未確定です。
神経栄養因子欠乏説
神経を成長させるために必要な栄養や、傷ついた細胞を回復させるために必要な栄養などが不足することにより、運動ニューロンが破壊され、ALSの発症に繋がったのではないかという説もあります。
以上がALSの原因として考えられている主な仮説ですが、上記に記したように明確な原因はいまだに解明されていません。
ALSの症状
ALSの主な症状について、以下で詳しく解説していきます。
ALSの原因としてはっきり分かっていることは、神経伝達を担う運動ニューロンが関係していることです。
運動ニューロンは脊髄の中にある組織で、脳からの司令を受けて、手・足・口腔内・呼吸に関係する全身の随意筋を動かしています。
どの部分の運動ニューロンが侵され、どの筋肉が弱くなるかによって発生する症状が異なるため、一言にALSと言っても症状の現れ方はさまざまです。
下記では、ALSの症状として起こりやすいものを紹介します。
呼吸困難
自律神経・随意筋両方の働きで機能している呼吸は、ALSによる筋力の低下にともなって呼吸筋も弱まることによって障害があらわれます。
ALSが進行すると、仰向けで寝ることが困難・横を向いたり角度をつけなければ息を吸えないという症状があらわれ、更に悪化した場合は呼吸補助装置・人工呼吸器の装着が必要です。
筋力の低下
ALSの初期から現れる症状として、手足の動かしにくさがあり、これらを総じた症状を四肢型といいます。
箸が持ちにくい・重いものを持ち上げられない・走るときに足が動きにくいなど、初期症状として手足の不自由さを感じる方は多いです。
その理由は、手足を動かす運動ニューロンが侵されたことによって麻痺が生じることで、さらに病気が進行していくと筋力の低下により手足が痩せ細ってしまいます。
また筋力低下に伴って、関節が動かなくなるなどの筋肉の萎縮も見られ、最終的には筋力の低下はが全身に及びます。
全身の筋力低下・萎縮が認められるようになると、寝たきりになって介助が必要です。
口腔内の症状
運動ニューロンが侵されると、口腔内の筋肉も低下などが認められます。
口腔内の筋肉低下によって起きる障害を球麻痺型といい、話す際にろれつが回らない・言葉の発音がうまくいかない・食べ物が飲み込みにくくなるなどが主な症状です。
特に、食べ物の飲み込みにくさには注意が必要で、嚥下力の低下はむせを引き起こし、誤嚥性肺炎を発症することもあります。
起こりにくい症状
筋肉の低下・呼吸困難・嚥下力の低下などALSの主な症状とは逆に、ALSで最後まで侵されない部分が視覚・聴覚などの感覚です。
例えば、眼球を動かすなどの目の運動はしばらくの間可能で、目の動きで操作できるコンピューターも開発されてALS患者のコミュニケーションにも役立っています。
また寝たきりの状態が続くと床ずれ(褥瘡)が起きるのですが、ALSの患者では起きにくい症状です。
ALS患者に床ずれが起きにくい原因は、ALS患者さんの皮膚に何らかの変化が起きるためだと言われていますが、詳しいことは解明されていません。
筋肉委縮による筋力低下は、リハビリを行うことによって進行を遅らせることが可能です。
そのため、発症が発覚したのちは筋力トレーニングが必要になります。
ALSの方でも施設に入所することができるの?
ALS患者の施設選びについて以下で解説していきます。
50代の若年齢者向けの老人ホームは少ない
若い年齢でのALSは、施設選びが難航する場合があります。
高齢者と呼ばれる65歳以下でもALSを発症する方は多くいますが、老人ホームの多くは「60~65歳以上」と入居者を限定している施設が多く、若年齢者を受け入れる老人ホームは非常に数が少ないです。
その理由として、
- 施設側の若年者受け入れ態勢がない
- 他入居者とコミュニケーションがとりにくい
などがあげられます。
50代からの施設入居者は全体の割合からみると非常に少なく、そのため若年者の受け入れを想定している施設は限られるでしょう。
60・70・80代などの高齢者が多い施設内で、他入所者と年齢差があることからコミュニケーションがとりにくいとも考えられます。
中高年の入居は高額になるケースも
有料老人ホームの入居金は、年齢が若いほど高くなる傾向があり、中高年層の入居は費用も高額になるというケースが多いです。
入居金は通常、想定入居期間をもとに額が計算され「前払い家賃」として受け取られます。
若い年齢での入居では、その分入居期間も長く想定されるため入居金が高額になる仕組みです。
介護療養型医療施設は対応可能
病院に併設された介護療養型医療施設なら、ALSで必要とされるさまざまな医療行為に対応可能です。
介護療養型医療施設は、病院の医師・看護スタッフもおり、医療的な理由で老人ホーム入居をあきらめる人におすすめの施設と言われています。
ただし、介護療養型医療施設は近年廃止される病院が増えており、新規受け入れを断っている施設も多いです。
特養での受け入れは難しい
ALS患者さんのケアは、吸引・人工呼吸が必要な場合や筋力低下が原因で胃ろうが必要になる場合があり、病気の状態次第では医療処さまざまな置が必要になります。
特養は、胃ろう・吸引などの処置に対応してくれる施設もありますが、人工呼吸器など高度な医療処置が必要となる患者さんの場合には、看護師が少ない特養は不向きです。
また病気の症状が次第に進行していくALSは、入居時には対応可能でも病気が進行して施設が対応しきれなくなる場合があり、病気がある程度進行したら退院を求められることもあります。
病院には入れない場合も多い
そもそも、ALSの患者を受け入れられる専門病院は少ないです。
人工呼吸器の患者を受け入れ可能な病院は数が少なく、多くの病院は高度な措置が必要なALS患者を受け入れられません。
ALSでは、医者や看護師など専門スタッフが施設にいることが好ましいのですが、上記の理由で病院への長期入院ができない場合も多いです。
有料老人ホームでは対応をしてくれるケースもある
特養施設の受け入れが困難な場合には、有料老人ホームを選択しましょう。
有料老人ホームの中には、医療スタッフが多く医療機器もそろえているといういわゆる医療系老人ホームがあります。
このような施設なら、病気の進行状況が進んでも対応できるので、いずれ退院を求められることも少ないでしょう。
ただし、有料老人ホームは特養より費用が高い場合が多いのである程度の予算が必要です。
ALSの方が施設に入居する際の注意点
ALSでの施設入居について注意しておきたいポイントを紹介します。
医療措置がある施設への入居が安心
ALSの場合は、医療措置が可能な施設への入居が好ましいでしょう。
呼吸機能の低下・筋力の低下などでさまざまな医療行為が必要なALSは、症状の進行度によっては高度医療を必要とする場合もあり、医師・看護師が常勤している施設・専門知識のあるスタッフがいる施設を選ぶ必要があります。
施設選びに迷った際は、ケアマネージャーや施設の社会福祉士に相談すると、スタッフの揃った適切な施設を紹介してもらうことが可能です。
スタッフが該当の疾病に対する知識・理解・経験があるか確認
痰の吸引・人工呼吸器など24時間体制の医療が必要な場合も多いALSでは、スタッフが疾病に対する知識・理解・経験がある施設を選ぶことが重要です。
また病気の進行を抑える方法としてリハビリも重要なポイントとなりますが、老人ホームではリハビリの体制がない施設も多く車いすに座っているだけの状態を強いられることも。
ALSでは、車いす生活によって症状が悪化していく一方となるため注意しましょう。
ただし、老人ホームにはさまざまな特色があるため、リハビリスタッフがいる施設もあります。
病気が進行した時にも対応してもらえるか
ALSは進行性の病気で、医療措置が整っていない施設に入居すると、症状が進行した際に転居を求められる場合もあると前述しました。
そのため、入居施設を選ぶ際には病気が進行した時にも対応してもらえるかを事前に確認しておくことが重要です。
やむを得ず最後まで看てもらえない施設に入居する際には、どこまで対応可能なのかをしっかり確認しておきましょう。
リハビリの充実度をチェックしよう
進行性のALS治療として効果的な方法がリハビリとされ、ALSのケアには医師や看護師だけでなく、作業療法士や理学療法士などのリハビリ専門スタッフも必要です。
そのため、施設のリハビリが充実度は重要なので、しっかり確認しておきましょう。
リハビリの専門スタッフがいるか・希望する内容でケアプランが立てられるかなどについてしっかり確認してください。
家族側とホーム側がコミュニケーションを十分に取れるか
入居者本人へのケアも大切ですが、本人が病気を受け入れて前向きに治療を受けていくためには家族への精神的なケアも大切です。
家族側とホーム側がコミュニケーションを取りやすく、さまざまな相談ができる雰囲気であるかどうかも施設を選ぶ際の大切なポイントとしましょう。
また、面会や相談に赴きやすい距離であるかどうかも重要です。
最終的にはご本人が楽しく暮らせそうな施設にしよう
医療措置が可能か・専門スタッフの充実度・リハビリの有無など、ALSの施設選びについての注意点を挙げましたが、最終的には患者本人が楽しく暮らせそうな施設を選ぶことが重要です。
とくに第2号被保険者の場合は、周りとの年齢にも差が大きく孤立することもしばしばあります。
それでも、同年代のスタッフなど話し相手がいたり、趣味の話ができる人がいたりすると本人の精神面での支えとなり楽しく生活することが可能となるでしょう。
ご本人が抵抗なく介護を受け入れられる施設を選ぼう
日に日にできないことが増えてくることによって、精神的に参ってしまう患者さんも多いです。
そんな状況でも、患者さんを明るく励まし、前向きに介護を受け入れられる施設を選びましょう
心理士などによるメンタルケアや、同じ病気を持つ患者との交流がもてる施設を選ぶのがおすすめです。
ALSの治療法について
最期に、病院などで行われるALSの主な治療方法について紹介します。
医学的な治療
ALS治療で使われる薬には現在、飲み薬と注射薬の2種類があります。
中でも有名なのがリルゾールという飲み薬で、ALSの起因となるグルタミン酸による毒性を抑え、運動ニューロンを保護するのに有効です。
リルゾールは、患者の生存期間や人工呼吸器に頼る期間を数ヶ月伸ばしてくれるという結果もでており、グルタミン酸過剰説を裏付けました。
さらに2015年には、ALSに有効な注射薬(エダラボン)が承認され、治療の幅が広がりました。
これらの薬剤は、ALSの進行を抑える効果はありますが、ALSを完全に治す薬ではありません。
しかし、ALSの効果的な治療薬については、現在さらに研究が続けられておりALSが難病と言われなくなる日もいずれ来るでしょう。
リハビリによる治療
進行性で筋肉が萎縮していくALSには、リハビリによって進行を遅らせる効果が得られます。
ALSに効果的なリハビリの内容とは、
などです。
これらは病院の医師の指示によって、作業療法士・理学療法士などが行います。
精神面での治療
初期段階では自殺する人もいるくらいALSは精神面での落ち込みが大きく、精神面での治療が欠かせません。
ALSは脳の病気ではないので患者は最後まで意識がしっかりしていますが、自分の体が次第に侵されて不自由になっていくことで精神的に参ってしまうことも多いです。
メンタルケアは、前向きにリハビリや治療に取り組むきっかけにもなります。