夏の住替え応援サポート開始!
夏になると熱中症に関するニュースが多く、ご高齢の方やご家族らも気にされていることと思います。
ご高齢者は脱水症状や熱中症になりやすいとよく耳にしますが、一体どういうことなのでしょうか。
そこで在宅での対策も含めて、学研グループで訪問看護事業を行っている「学研ココファン・ナーシング」の看護師さんに、詳しいお話を聞いてみました。
お話を聞いた看護師
椎名美貴(学研ココファンナーシング横浜)
特定看護師、公認心理師、プライマリケア認定看護師
【プロフィール】
介護職として養護老人ホーム、老健、障害児学童保育等を経て、2010年に看護師資格を取得。総合病院での病棟、ICUを経験後2014年から在宅看護の領域へ。訪問看護ステーションの立ち上げ・管理者、診療同行、看護小規模多機能、コロナ禍では在宅療養者の遠隔と訪問のハイブリット看護などを経験。北陸先端科学技術大学院大学の修士過程在学中。
ここ数年、酷暑が繰り返されています。関東でも5月からすでに夏の気温。
高齢者は脱水・熱中症になりやすいと耳にしますが、どういう理由でしょうか?
ご高齢者の身体的な特徴としては、体内水分量の低下(成人60%、高齢者55~50%)。体温調整機能の低下、発汗機能の低下によって、外気温に合わせて38度程度まで体温が上昇することが知られています。
更に、「その日が暑かったから脱水になった」という認識をお持ちの方もおられると思いますが、食事が摂れているご高齢者であれば、数日にわたって徐々に脱水症状が進行しています。しかし、「熱いと感じにくい」「のどが渇きにくい」「汗をかきにくい」ことから、最終的に脱水になり救急搬送という構図になっています。
(高齢者の熱中症、数日にわたる無自覚の脱水に注意 名古屋工業大など2021.07.19)
他にも頻尿を懸念して水分摂取を控える、身体の動きの低下から準備・片付け・購入が億劫、嚥下機能の低下から摂取に消極的などの加齢性変化から水分摂取減少も見受けられます。
また心理的な面からは一般的にご高齢者は「熱中症への意識」は非常に高いことも知られていますが、「自分は大丈夫」と思う傾向も強いです。エアコンや扇風機の使用は徐々に進んでいますが、「冷房は体に悪い」「冷えすぎる」というご高齢者の発言も多く、その背景としては冷房機器の設置年代によっては冷気が直接肌に当たる感覚を抱き、使用に対して不快感を抱く人もおられるようです。(高齢者の夏季室内温熱環境実態と熱中症対策―体感温度の認知(見える化)による行動変容の可能性―柴田,北村,松原. 日生気誌55(1):33‐50/2018年5月8日)
最近のエアコンは非常に性能も良く、多くの機能が整い、省エネと言われていますが、複雑すぎる設定やリモコンの操作ミス、変わらない節約思考などの影響で効果的な使用ができない方もいるのではないでしょうか?
一軒家、古いマンションなどに長く居住してる場合、空調の不十分さから居室ごとの気温差も大きく、時には外気温よりも室内の方が熱くなることもあります。こうした居室間の温度格差も温度感覚を鈍らせたり、冷房のない居室での熱中症の発生なども起こってしまうのです。
---ご高齢者には加齢による体の変化や心理面に加え、住環境によっても熱中症になるリスクがあるということですね。
はい。これらの複合的な要因から、「暑い日に熱中症になる」「屋外・昼間の暑さ」の影響はもちろんですが、気温の下がる室内・夜間でも徐々に進行して寝る前は動けていても「夜間に脱水になって動けない」ことも起こり得ると言えます。
実際に訪問看護で在宅ケアをされている中で、あった出来事はありますか?
80代のおひとり暮らしの女性のケースですが、連日気温38度を超える猛暑日となり、ご本人の携帯に電話がつながらないことを不安に思ったご親族が来訪したところ、室内が蒸し暑く、居室でこたつに足を入れて、ぐったりしているところを発見されたという事がありました。
その後、訪問看護を利用することとなり私が訪問したのですが、エアコンは故障していて1年前から新聞紙で覆われた状態。隣が工事をしているため窓を開けず、換気もままならない。お部屋の中や冷蔵庫など衛生的にも問題のある状況でした。
その方は不動産の経営を長くされていたのですが、礼節が保たれていて、昔から行ってきた不動産の業務は問題なく出来ていたことで、認知機能の低下について集合住宅の住人や管理会社の人は気が付きませんでした。
もうひとつ印象に残っているのが、90代のご夫婦のケースです。お二人とも認知機能低下は年相応。ご主人は心不全と前立腺がんのホルモン療法中で、月1回の訪問診療と週1回の訪問看護を利用されていました。
夏場に便秘と風邪症状が出て薬を処方されていたのですが、1週間後に定期訪問で伺うとお2人ともぐったりしており、室内は蒸し暑く、体温上昇・浮腫の増加、血圧の低下などがあったことから救急搬送。脱水と心不全の増悪の診断で入院となりました。
その後わかったことですが、薬剤の影響による心不全と下痢症状があったということでした。風邪薬の「頓用」(つらい時・必要時のみ)という指示を正しく理解できず、きちんとした性格が逆に災いして毎日服用されていたことが分かりました。便が緩くなり、足のむくみが出てきたものの他は特に症状もないので敢えて相談もしなかったそうです。
いつも看護師や医師が訪問するときは冷房が効き涼しく、お茶も冷えたものがあるのを確認していましたが、来客がない時は節約のために冷房は使っておらず、寝室には扇風機しかありませんでした。
また私たちが訪問する午前中は日陰で涼しかったお部屋も、夕方になると西日が当たり、かなり気温が上がることも後から分かりました。お二人ともトイレの回数が多いと疲れてしまうので、水分摂取は控えめ。「1L以上は飲んでますか?体のためですよ」と指導してくれる医師や看護師の期待に応えようと「飲んでますよ」と返事をされていたようです。
---2ケースとも親族が遠方で簡単に会う事が難しく、普段の様子が分かりにくいという点が共通していますが、訪問看護でも気づきにくいケースがあるというのは、見落とされがちな盲点かもしれませんね。
先ほどのお話しから、どんな対策が有効ですか?
ご高齢者特有の身体的な特徴や基礎疾患や服薬の影響などで、脱水になりやすい(そもそも脱水傾向)、脱水状態に気が付きにくいことから、温度計や湿度計の設置して数値として目に見えるようにする、体感温度に頼らず数値を基にエアコンの利用を検討するのが良いでしょう。
長く住み慣れた環境は今の気候に十分に適応できていない住環境ともいえるため、家電の見直しや移動動線の工夫を検討するのも良いでしょう。
また訪問時は「お客様対応」で冷暖房を入れたり配慮されている可能性があったり、訪問時間以外で気温の変化はどうかということまでの確認が必要です。特に寝室や夜間の居室など滞在時間の長い環境は確認が大切ですね。
それでも金銭面への懸念や、長年培ってきた「節約」思考や、冷房機器への捉え方、水分摂取による排泄への不安などもあるので、ご本人と相談しながら進めるのが良いでしょう。
---年齢問わず注意が必要な熱中症ですが、ご高齢者は特に様々な注意が必要なことがよく分かりました。お話いただき、ありがとうございました。
学研の高齢者住宅”ココファン”は、24時間スタッフが常駐。
安否確認や緊急時対応、必要な方は介護も受けられます。
熱中症リスクが高まる夏に備えて、お早めの入居検討をお勧めします。