老健(介護老人保健施設)の仕事がきついのは本当?業務内容や向いている人なども解説
更新日時 2023/09/11
「老健の仕事はきついって本当?」
「老健はどんな人に向いている?」
老健は入居者の在宅復帰を目指す中間施設として位置づけられており、介護職だけでなく、医療スタッフなど様々な職種が勤務する施設です。
他の介護施設とは異なり、特殊な環境下での勤務となるため、辛いと感じる人もいます。
しかし、老健だからこそ感じるやりがいも多い職場です。
この記事では老健がきついと言われる理由や、詳しい仕事内容など、老健について解説していきます。
- 老健は在宅復帰を目指す中間施設
- 介護職だけでなく医療職、リハビリ職など様々な業種が従事する
- 施設の特色から求められるスキルが他の介護施設とは異なる
老健(介護老人保健施設)とは?
介護老人保健施設は、通称「老健」と略される介護施設です。
医療法人や社会福祉法人などの公的機関が運営している施設の1つです。
厚生労働省が行った「介護給付費等実態調査 月報2020年5月」によると、全国の老健の施設数は4,269となっています。
老健の特徴
老健は、入居者を在宅復帰させるための支援を行い、介護サービスを提供する以外に、医療ケアやリハビリ、栄養管理などを提供する施設です。
病院から在宅に戻るための中間施設としての役割を担っている施設で、特別養護老人ホームなどの他の介護施設とは特色が異なります。
入居期間は原則3ヵ月と定められているため、他の介護施設よりも利用者が変わる頻度が高く、多くの入居者にサービス提供が出来る施設です。
老健に入居出来る対象となるのは、主に要介護1以上の認定が下りている高齢の方です。
入居者の割合では、「病院に長期入院をしていて、退院後自宅に戻るため一時的に老健を利用している方」や、「特養の入居待ち」という方が多い傾向にあります。
老健で働いている人の職業一覧
老健では、決められた介護サービスを十分に提供するため、決められた職種が施設ごとの入所者数に応じて配置されています。
以下は、配置されている職業の一覧です。
職種 | 人員配置基準 |
---|---|
医師 | 常勤1人以上 |
薬剤師 | 実情に応じた適当数 |
看護職員 | 介護職員と合わせて、入所者3人に対して1人以上 |
介護職員 | 看護職員と合わせて、入所者3人に対して1人以上 |
支援相談員 | 常勤1人以上 |
リハビリ専門員 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など) |
常勤換算で入所者数の数を100で除した数以上 |
栄養士 | 入所定員100以上の施設は1人以上 |
介護支援専門員 | 常勤1人以上 |
調理師 | 実情に応じた適当数 |
事務員 | 実情に応じた適当数 |
上記の表からもわかるように、老健で働いている職種は多岐に渡ります。
多種の介護職が同じ現場で働くことが特徴的であり、他の施設との違いでもあります。
老健の職員の平均給料
老健で働く人の平均給料は、無資格では約27万円、介護福祉士は33万円、介護支援専門員は37万円ほどになります。
平均給料は特養より低い傾向にありますが、他の介護施設と比較すると老健は高い傾向があります。
資格を持っている職員のほうが平均給料は高いため、資格取得がおすすめです。
また、老健は夜勤がある施設であるため、夜勤手当の有無でも収入に違いが出てきます。
施設の入居者数によっても収入が異なり、60人以下の施設であれば約31万円、101人以上の施設なら約33万円と、若干の差が出る場合が多いです。
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老健の仕事内容
この見出しでは老健の仕事内容を解説します。
食事介助・食事の準備
食事介助は、入居者の食事の準備を行い、入居者が安全に食事が出来るように食事を食べさせたり、一人で食べるサポートを実施することです。
入居者の嚥下機能の状態は個々で異なるため、きざみ食やトロミ食といった、入居者の状態に合わせた食事を運ぶことが重要です。
また、食事の前後には入居者の口腔環境を整えることを目的に、口腔ケアが実践されます。
口腔ケアは、歯磨きなどの清潔を保つこと以外に、口腔体操や嚥下体操などを実施し、身体面のサポートを行います。
口腔ケアの実施により、入居者の食事を楽しむことができる状態を維持できるだけでなく、食事介助の一環として全体的な健康と生活の質を向上させるお手伝いが行われているのです。
入浴介助
1人で入浴することが困難な利用者に対して、入浴のサポートを行うのが入浴介助です。
入居者の中には、病院に長期入院をしていた方も多くおり、1人での入浴に不安がある方もいます。 そのため、入浴の手助けは非常に重要な支援です。
入浴前には、利用者のバイタルチェックを実施し、健康状態に留意してサポートを行います。
お湯の温度などを確認して、入居者が安全に入浴できるように適宜支援をします。
お風呂で入居者が転倒しないように身体を支えたり、身体を清潔に保つことも仕事です。
入浴介助は安全面での影響も大きいだけでなく、入居者のプライバシーに関わることで、気遣いや体力が求められる仕事です。
排泄介助
排泄介助は、入居者の身体状況や排泄機能に応じて行います。
主な仕事はトイレまでの誘導になりますが、排泄の手伝いが必要な場合や、オムツの交換、陰部の清拭などをサポートすることもあります。
清潔を保つ上で重要な支援ではありますが、羞恥を伴う行為であるため、入居者の尊厳を気づ付けない言葉かけや、態度が重要になる介助です。
入居者とのコミュニケーションを通じて、彼らが快適で安心感を持てるよう、尊重と思いやりを基本にした配慮が欠かせない介助となっているのです。
起床、就寝介助
入居者の起床や就寝時の支援を行うのも業務に含まれます。
起床介助では、決まった起床時間に声かけを実施したり、着替えや体調確認を行います。
また、朝の支度が完了するまでが介助に含まれます。
就寝介助は、決められた就寝時間に合わせて就寝の声かけを実施したり、入居者をベッドに誘導します。
就寝にあたっての着替えや体調確認なども、起床介助と同様に実施します。
入居者の起床と就寝の支援は、日々の生活において穏やかで快適なスタートと終了を提供する重要な役割を果たしているのです。
移動介助
座る・歩く・起き上がるといった日常動作が困難な方の移動を手伝うことを、移動介助と言います。
入居者の移動には、身体状況に合わせて車椅子を使用したり、杖や歩行器を使って歩くなど、一人ひとりに最適な方法を使い分けて生活を支援します。
車椅子に移たり、ベッドから起き上がったりする動作を支援するのも、移動介助に含まれるため、怪我なく安全に動作を行うために、入居者の身体を支える必要があり、体力が求められる仕事です。
運動機能を低下させないように、入居者の身体状況や健康状態、筋肉力などを正しく認識することが重要で、一人ひとりの状態にあった支援を行うことが大切です。
レクリエーションの実施動介助
老健では、入居者の身体機能の維持や、コミュニケーションを図ることを目的に、歌やゲーム、体操などのレクリエーションが実施されます。
レクリエーションの企画や準備、実施も介護職員の仕事になります。
レクリエーションは身体機能の維持だけでなく、職員や入居者同士のコミュニケーションの場にもなり、生活にメリハリをつけて適度な刺激を与える目的もあります。
身体状態が異なる人同士が集まる場なので、全員が無理なく参加出来るようなレクリエーションを企画、実施し、介護職員も楽しめるよう開催することが重要です。
介護記録の作成
入居者に行った医療ケアや介護ケア、リハビリの記録などを残すことも、老健の仕事です。
老健では、他の介護施設よりも多くの業種が一緒に働くため、入居者の記録を正確に記録することが、円滑な介護を行う上で重要になります。
この記録は入居者のご家族に入居者の現状や、日々の様子を伝える役目もあります。
ご家族を安心させるためにも、客観的な事実を記録することが求められます。
老健ではコミュニケーション能力が大切
老健は介護ケアだけを行う施設とは異なり、在宅復帰を目指すための施設であることから、医療やリハビリに関わる職員も多く従事しています。
また、入居期間が限られていることから、入居者の入れ替わりも多く、常に他業種間での連携が求められる職場です。
しかし、介護業界での人材不足は老健にも該当し、人手不足に悩む施設もあるでしょう。
こうした大変な部分をカバーするために、職員同士のチームワークが求められます。
介護職、医療職、その他の業種と多様な業種が集まる施設だからこそ、お互いの職種を尊重してフォローし合うことが大切です。
老健のシフト制について
老健は対象となる入居者が暮らしの中で、必要なケアを受ける入居施設であるため、24時間体制での介護ケアが必要になります。
そのため、老健は2交替制や3交替制のシフトを採用し、24時間体制での勤務を行う施設が多いです。
2交替制の場合は、日勤と夜勤で勤務をします。 日勤と夜勤の職員は朝と夕方に交替をします。
3交替制の場合は、早番・遅番(準夜勤)・夜勤(深夜勤)として勤務をします。
早番は朝から夕方まで、遅番は昼前後から夜まで、夜勤は夕方から翌朝までとなっています。
シフトを選ぶことが出来る施設では、勤務時間帯を変更して柔軟な働き方が可能になる施設といえます。
老健の仕事のやりがい
老健は他の介護施設とは異なり、基本的に「入所者の在宅復帰を目指す」という目標を支援する施設です。
入居者の介護度合いは様々ですが、入居者の機能回復や維持を日々見守り、近くで支援することでその変化を実感することが出来るのが、他の介護施設では感じにくいやりがいです。
また、在宅復帰という目標にを持っているため、在宅復帰が叶ったときの喜びは大きいでしょう。
老健は介護職だけでなく、医療職ともチームとして関わるため、新たな分野の知見を深めたり、勉強になったりすることが多いところもやりがいに繋がります。
他の介護職と同様に、人の役に立つ仕事を行い、感謝されることにやりがいを感じることもあります。
老健に向いている人の特徴
老健での仕事に向いている人の特徴は、
- コミュニケーションを取ることが好き
- 自発的に行動できる
- 状況に応じた判断力がある
- スキルアップを目指したい
こんな特徴がある人に向いています。
老健は入居者の入れ替わりが多いため、次々に新しい入居者が加わります。 そのため、多くの人とコミュニケーションを取る必要があり、コミュニケーションスキルが高い人におすすめ出来ます。
また、医療分野の職員も多く勤務しているため、状況に応じて正しい判断が出来たり、自発的に行動できる人が活躍出来ます。
間近で医療やリハビリの知識や技術を見ることが出来るため、様々な視点から入居者の支援に対する見解を学ぶことが出来ます。
介護職としてさらにスキルアップをしたい人にもおすすめです。
老健に向いていない人の特徴
老健での勤務に向いていない人は、
- ひとりひとりに長く向き合いたい人
- コミュニケーションが苦手な人
- 多職種の考えを受け入れられない人
このような特徴がある方は、老健以外の施設を選んだほうが活躍できるかもしれません。
老健は入れ替わりのある施設なので、長期利用することはありません。
その代わり、入居者の機能維持や向上を近くで見届けることが出来ますが、長期に渡って携わりたい方には目的が異なる施設です。
入れ替わりがある分、信頼関係を築くペースも早めなければならず、すぐに新しい入居者が来るため、コミュニケーションスキルも求められます。
また、様々な業種が勤務している施設なので、他の業種の考え方が合わない場合に、それが受け入れられるかも働きやすさに関係していきます。
老健をきついと感じる理由は?
老健の仕事をきついと感じる理由を紹介します。
他業種の職員との見解の相違
老健は、医療スタッフやリハビリスタッフといった、多くの業種が働いています。
それぞれの立場で、入居者に必要な支援を行っていくため、どうしても考え方の相違が出てくる可能性もあります。
このような考えの不和において、仕事をスムーズに行い、適切な支援を行うためには、考えの相違はどうしても避けられない部分でもあります。
こうした考えの違いでも、お互い意見をすり合わせて勤務することが求められます。
他業種間での連携が苦手な場合、人間関係が辛く思う可能性もあります。
介護職員の人手不足
老健は24時間体制での勤務が求められる施設です。
24時間体制で充分な支援を行うためには、人手が必要です。
しかし、介護業界は全体的に慢性的な人手不足の状態が続いています。 老健も例外ではなく、人手不足に悩まされている施設があります。
令和2年度の介護労働実態調査では、介護事業所全体での人材不足感は約6割と発表されています。
改善傾向にはあるものの、依然高い水準であることは間違いありません。
人手が足らないことで、1人あたりの業務量が増えたり、思っていた働き方が出来なかったりするため、仕事がきついと感じてしまうこともあります。
入居者が頻繁に入れ替わる
入居者の在宅復帰を目指すための中間施設という位置づけがされている老健では、他の介護施設に比べると、入居者の入れ替わりが短いスパンで行われています。
新しい入居者に変わるたびに、入居者の新たな情報を覚えて、臨機応変にサービス提供をしていかなければなりません。
入居者を長期的に支えたいと考えている人の場合、入居者が短いスパンで入れ替わる老健では、そのたびに寂しい思いをすることになり、仕事のモチベーション低下に繋がる可能性もあります。
こうした入れ替わりが早い老健の特徴が、老健での勤務が辛いと感じる理由になることもあります。
培ってきた接遇スキルを十分に活かせない
老健は身体面のサポートや機能回復や維持に向けた支援を重点的に行う施設です。
入居者の介護度は様々ですが、比較的介護度が高い方も多い施設であるため、どちらかといえば丁寧な対応ととるよりも、テキパキとこなす対応力が重視される傾向にあります。
接遇に対するスキルが生かせないことが多いですが、その分体力が必要になる仕事も多く、老健での勤務の辛さに繋がることもあります。
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