【イラストで解説】有料老人ホームとは|種類・問題点から特養との違いまで解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「有料老人ホームにはどのような種類があるの?」

「有料老人ホームと、特別養護老人ホームなどの他の施設との違いは?」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

有料老人ホームには、住宅型有料老人ホーム・介護付き有料老人ホーム・健康型有料老人ホームといった種類があります。

有料老人ホームの利用を検討している方の中には、各老人ホームの違いや特徴について知りたいと思っている人も少なくないでしょう。

こちらの記事では、いまいち分かりづらい有料老人ホームの種類の違いや特徴、問題点について、詳しく解説していきます。

これらの施設の利用を考えている人にとって有益な情報となっているので、ぜひ参考にしてください。

有料老人ホームの種類や特徴についてざっくり説明すると
  • 住宅型有料老人ホーム・介護付き有料老人ホーム・健康型有料老人ホームの3種類がある
  • 入居一時金や月額利用料(家賃)の負担に要注意
  • 介護保険制度や補助金などの制度はフル活用しよう
  • 各施設でサービスや設備の充実度は違うので、資料請求やパンフレットを見て情報を集めよう

【イラストで解説】有料老人ホームとは

有料老人ホームの種類

有料老人ホームには、以上のイラストのように介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホームがあります。

そもそも、有料老人ホームとは高齢者が暮らしやすいように様々な配慮がされている「住まい」を指しており、介護サービスや家事援助、健康管理など希望のサービスを受けられる点が特徴です。

これらの施設は主に民間の企業が運営しており、入居対象者は施設によって異なるものの、65歳以上であれば健康状態に関係なく幅広く入居可能です。

また、空室があればすぐに入居することができる点も大きな魅力で、特別養護老人ホーム(特養)などのように入居待ちが発生することもほとんどありません。

肝心の居住環境に関してですが、日々の生活を快適に過ごすためのサービスが充実しており、居室は基本的に個室なのでプライバシーが守れる点や設備が充実しているホームが多くあります。

また、レストランやシアタールームを設けているなど快適性を高めている施設もある一方で、最近では月額利用料が安価な施設や医療ケアが充実している施設など、幅広いニーズに対応している施設も増えています。

つまり、自分のライフスタイルや希望している介護サービスに合わせて多種多様な種類から選ぶことができるので、内容をしっかり吟味することが重要と言えるでしょう。

有料老人ホームの種類

有料老人ホームは「介護付」「住宅型」「健康型」の3つのタイプに分かれています。

「介護付き有料老人ホーム」は、その名の通り介護サービスが充実している施設で、スタッフによって介護サービスが提供される高齢者向けの居住施設です。

要介護状態でもサービスを受けられるので、介護度が高い人でも安心して利用できます。

「住宅型有料老人ホーム」は、主に自立度の高い高齢者の方を対象としている施設で、入居後に介護が必要になった場合は外部の介護サービス事業者との契約が別途必要になります。

「健康型有料老人ホーム」は、介護サービスが無くても生活できる自立した高齢者に特化した施設で、「一人暮らしでは万一の時に不安がある」と考えている高齢者の方のニーズを満たしています。

介護が必要な状況になると退去する必要があり、施設数も全国でかなり少ない点が特徴です。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームの特徴

介護付き有料老人ホームは、主に要介護1以上の認定を受けている方が対象の施設です。

基本的に65歳以上で要介護度1~5の方が対象ですが、自立した高齢者の方でも利用できる混合型の施設も存在するため、興味がある施設があれば問い合わせてみましょう。

介護付き有料老人ホームは入居の待ち期間が短く、低額で事前に予算を立てやすい点が大きなメリットです。

手厚い介護サービス・生活支援サービス・リハビリ・機能訓練・レクリエーションなどのサービスを受けられるので、充実した生活を送れるでしょう。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームの特徴

住宅型有料老人ホームは、要介護者・要支援者・自立者など幅広い高齢者の方が入居できる施設です。

主に食事サービス・生活支援サービスを提供しており、さらに医療機関と提携しているので、緊急時の対応や健康管理サービスも受けられる点が大きな強みと言えるでしょう。

なお、住宅型有料老人ホームの魅力はレクリエーション・イベント・サークル活動が充実している施設が多い点が挙げられ、これによりコミュニティに参加しながら日々の生活を楽しめるようになるでしょう。

入居後に介護が必要になった場合は、逐一外部サービスと契約して利用することになるので、融通も利きやすいと言えます。

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健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームの特徴

健康型有料老人ホームは、健康で介護の必要が無い高齢者を対象としており、自立生活が可能な高齢者向けの施設です。

健康を維持しているアクティブシニアが、いきいきとした生活を送るための設備やサービスが充実している点が大きな魅力で、住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームよりも娯楽設備が多い、という特徴があります。

なお、入居後は食事・掃除・洗濯などの生活上必要な家事は全て施設側が行ってくれるので、自分のやりたいことや趣味に没頭できます。

一方で、介護が必要な状態になったり、認知症を発症してしまった場合は退去しなければならないので、この点は注意しましょう。

有料老人ホームの費用を比較

老人ホームの費用内訳

続いて、有料老人ホームを利用する際の費用について見てみましょう。

健康型有料老人ホームについては全国的に非常に数が少ないので、以下では「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の2種類の「入居一時金」と「月額利用料」を比較していきます。

なお一般的には、住宅型の方が入居一時金・月額利用料共に安い傾向にあります。

入居一時金に注目

入居一時金とは、入居者が施設に入居する際に発生する費用で、施設の設備・サービスを利用するための権利を入手するための出費と考えてください。

なお、介護付き有料老人ホームの平均額は351.6万円、住宅型有料老人ホームの平均額が84万円となっています。

入居一時金の額は施設によってまちまちで、数千万円以上必要となるケースもあれば、0円の施設もあるので施設ごとに確認しましょう。

「一時金0円プラン」を用意している施設の場合、初期費用をかなり抑えることができますが、月額費用はやや高めの傾向にありますので、一長一短だと言えます。

「初期費用を抑えたいか」「月々の負担を抑えたいか」など、自身の希望を踏まえた上で予算を組んでみてください。

月額利用料

老人ホームの月額利用料

月額利用料とは、入居一時金とは別に毎月負担していく費用のことで、一般的な賃貸物件の家賃だと考えてください。

月額利用料には、施設の居住費である賃料・食費・水道光熱費・管理費などが含まれているので、基本的な生活コストはすべて賄うことができます。

通院費用や薬代など、医療関連の費用は各自が別途で支払うことになる点には注意しましょう。

賃料

有料老人ホームの賃料の基準についてですが、国によってルールが定められているわけではありません。

民間施設なのでサービスの充実具合や質に差があるのは当然で、賃料は施設ごとに大きく異なっています。

施設の立地場所や医療面などのサービス体制、部屋のグレードなどの様々な影響を加味されているので施設によって賃料が異なるのです。

例えば、「東京都心部」「地価の高い場所に立地」「看護師が24時間常駐」など、グレードの高い施設であれば月額利用料が高額になるので、入居後の基本コストは重くなりがちです。

月額利用料が100万円以上の施設もあれば10万円以下の施設もありますが、平均すると15~30万程度です。

求めている生活レベルだけでなく、予算との折り合いをつけることが非常に重要と言えるでしょう。

食費

食費の設定は各施設が独自に行っており、統一されている基準は設けられていません。

1日3食分の食費を定額で定めている施設もあれば、1食ごとに費用を細かく決めている施設もあるので、計算方法も含めて事前に確認しましょう。

食事は日々の生活の楽しみにもなる重要なポイントなので、安さを追求しすぎてしまうとストレスになってしまう恐れがあります。

水道光熱費

水道代・電気代・電話代などは入居者が各自で負担するのが基本ですが、支払い方法は施設ごとに異なります。

例えば、水道光熱費を「管理費」にすべて含めて徴収している施設もあるので、施設を比較する際には必ず確認しましょう。

これらの固定費は、全て込み込みで支払った方が予算の計画を立てやすいです。

管理費

管理費とは、施設の設備や居住環境を維持していく上で毎月必要となる費用を指します。

管理費には、水道光熱費・燃料費・レクリエーション用品費などが含まれますが、どのような費用項目が管理費に含まれているかは施設によって異なります。

特に、住宅型や健康型はレクリエーションやイベントも多く、思ったよりも管理費が重くなってしまうケースが有り得るので注意しましょう。

介護保険料の自己負担額【支援度別に紹介】

有料老人ホームで介護サービスを受ける場合、「介護付き有料老人ホーム」も「住宅型有料老人ホーム」も利用者の負担額割合は1~3割負担となあります。(所得に応じて割合は異なります。)

また、それぞれの施設では支払い方法が異なっており、介護付き有料老人ホームの場合、要介護認定を受けている入居者であれば要支援1~2、要介護1~5の段階ごとに規定されている「定額」の自己負担額を毎月支払います。

住宅型有料老人ホームの場合、入居者が個別に契約した訪問介護事業所やデイサービスなどの居宅系介護サービス事業者に対して自己負担額を支払うことになります。

なお、自己負担額の目安は以下の表を参考にしてください。

要介護度 介護保険単位数(30日) 介護保険報酬(30日) 自己負担額(30日)
要支援1 5,460単位 54,600円 5,460円
要支援2 9,330単位 93,330円 9,330円
要介護1 16,140単位 161,400円 16,140円
要介護2 18,120単位 181,200円 18,120円
要介護3 20,220単位 202,200円 20,220円
要介護4 22,140単位 221,400円 22,140円
要介護5 24,210単位 242,100円 24,210円

補助金で自己負担額は減らせる?

介護保険制度には、利用者の金銭的負担を軽減する仕組みが設けられてます。

有料老人ホームの費用を軽減する方法の1つに「高額介護サービス費」がありますが、これを使えば費用負担を軽減できる可能性があります。

毎月支払う介護サービスの費用が一定の基準額を超えた際に、超過分が介護保険から支給されるので、制度について知りたい場合は市区町村や地域包括ケアセンターなどに相談しましょう。

また、有料老人ホームの入居費用については医療費控除の対象にははなりませんが、おむつ代や訪問診療など医療機関にかかった費用については医療費控除の対象になります。

判断に迷った場合は国税庁ホームページや税務署に問い合わせて確認しましょう。

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有料老人ホームの人員基準を比較

有料老人ホームの看護体制・医療体制には大きな差があるので、特に持病を持っている人は必ずチェックするべき重要なポイントと言えます。

体調面に不安がある人であれば、夜間も看護職員が常駐して医師や医療機関と連携が取れている施設の方が安心して利用できるでしょう。

なお、施設に看護職員が配置されていると「医療ケアは問題ない」と考えてしまいがちですが、すべての医療ケアを看護職員が行えるわけではないので要注意です。

また、施設内にクリニックを併設したり、医療機関と「入院の際は優先的に扱う」などの協力関係を構築している施設もあるので、これらの人員配置をはじめとした医療に関する事柄は入居前に必ず確認してください。

医療行為ができる職員

看護職員・介護職員・医者では、行うことができる医療行為が大きく異なります。

医療行為や医療ケアに関しては、看護師資格を持った看護職員が行うことになるので、基本的に介護職員は提供できません。

そのため、必要に応じた医療ケアが受けられるかどうかは各施設ごとに確認しておき、場合によっては自分の持病でも問題ないか相談してみましょう。

「看護師1名以上を配置する」という施設も多いですが、例えば日中・夜間の看護師数は充実した医療ケアを受けられるかどうかの重要な指標になります。

入居前に人員配置・人員基準について正確に情報を把握し、適切なケアが受けられるようにしましょう。

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有料老人ホームの契約形態を比較

有料老人ホームによって契約形態が大きく異なるので、こちらも併せて確認しましょう。

なお、契約方式の大きな違いは「いつ」「いくら」支払うかにあり、事前に契約書類を細かく確認する作業は欠かせません。

資金にゆとりがあるかどうか、終身住む予定があるかどうかで自分にとってベストな契約形態が大きく異なるので、自分の希望を整理しておくことも重要です。

なお、現在契約形態として多いのは利用権方式の有料老人ホームですが、一時的な住まいとして利用する場合は賃貸借方式の施設を選んだ方がベターです。

その後の人生に大きく影響する事項なので、面倒でもしっかりと考えましょう。

賃貸借方式

賃貸借方式とは、一般のマンションやアパートなどのようの賃貸住宅と同様に月々の家賃・管理費を支払う契約方式です。

居住部分と介護等のサービスは別契約となっているので、家賃に加えて出費が必要となる点に注意しましょう。

入居時に必要となるのは敷金・保証金等のみなので、初期費用を大きく抑えることが可能です。

終身建物賃貸借方式

終身建物賃貸借方式とは、賃貸借契約の内容に加えて契約者の死亡によって契約そのものが終了する方式です。

こちらも、居住部分と介護等のサービスは別契約となるので、家賃と介護サービス費用が毎月の固定コストとなります。

原則として、終身に渡って施設に住み続けることができる点が終身建物賃貸借方式の特徴です。

また、夫婦で利用する場合は契約者が死亡しても配偶者が引き続き住む権利を継承できるので、安心して利用できます。

利用権方式

現状、多くの施設が住まいやサービスを利用する権利が保障される「利用権方式」を採用しており、前払い金として入居一時金を支払うのが一般的です。

しかし、最近では初期費用の負担を減らしたい人向けに「入居一時金0円」としている施設も増えつつあります。

利用権方式とは、入居時に入居一時金を支払うことで終身利用権を得る契約方式で、利用権=所有権ではないため相続対象とはなりません。

入居時にまとまった資金が必要となりますが、終身に渡って利用が可能となり月々の利用料が抑えられるメリットがあります。

「入居後の生活コストを抑えたい」人にとって、利用権方式はベストな選択肢となり得るでしょう。

サービス内容と設備

続いて、各施設のサービス内容と施設の違いについて、以下の表で確認してみましょう。

比較項目 介護付 住宅型 健康型
自立の方
要支援の方
要介護の方 ×
入居金の目安 0~数百万円 0~数百万円 0~数億円
利用料金の目安 15~30万円+介護保険自己負担 15~30万円 10~40万円
安否確認
緊急時の対応
生活相談
食事
掃除・洗濯
介護サービス × ×
レクリエーション・イベントなど
健康管理
機能訓練(リハビリ)

以上のように、各施設によって提供しているサービスに差があります。

こちらのトピックでは、有料老人ホームのサービス内容と設備について詳しく解説していきます。

居室と設備

有料老人ホームの設備は、基本的にプライベート空間である「居室」と、共同で利用する食堂・ラウンジ・浴室などの「共有スペース」で構成されています。

館内は全てバリアフリー化されており、特に介護付き有料老人ホームは特定施設の指定を受けているので、介護サービスを提供するための介護・医療関連の設備も豊富に備えられています。

また、比較的アクティブな入居者が多い健康型や住宅型では、カラオケルームや図書室などの娯楽・趣味を楽しめる場が整備されていることも多いです。

このように各施設によって設備の充実具合に差があるので、必ず確認しましょう。

介護サービス

介護付き有料老人ホームでは、要支援・要介護認定をされている人が必要な介護サービスを受けることができます。

具体的には、食事介助・入浴介助・排泄介助・部屋の清掃・衣服の洗濯などが挙げられますが、スタッフの経験やスキルによって介護サービスの質や料金に差があります。

質の高いサポートを受けるためにも、利用者からの評判や口コミなどを参考にして情報を集めることが重要です。

食事

近年は有料老人ホームにおいて食事の重要性が高まっており、入居者の身体状態に合わせて様々なメニューが提供されています。

なお、提供される食事は施設によって差があるので、どのような食事が提供されるかは事前に確認しておきましょう。

特に、現在重視されているのが介護食の充実化で「きざみ食」「ミキサー食」の他にも、食事中の誤嚥を予防できる「ソフト食」を提供する施設が増えています。

また、持病がある人であれば「糖尿病食」や「腎臓病食」などの治療食に対応しているかも確認しましょう。

食事は健康を維持する上で欠かせないポイントなので、こちらも細かい点までチェックすることをおすすめします。

入浴

住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホームでは、居室ごとに浴室が設けられている他にも、館内に大浴場が設置されていることが多いです。

大浴場を利用することで、万が一ヒートショックで倒れてしまった際にも、すぐに気付いてもらえる利点があります。

また、要介護状態の人を多く受け入れている施設であれば、車椅子や寝たきりの状態でも入浴できる機械浴の設備が用意されているところもあるので、必要に応じて調べてみましょう。

入浴時間のルールがが決られている施設も多く、ケースによっては別途料金が発生することもあるので、被介護者の方の好みに合わせて検討してみてください。

リハビリ・レクリエーション

介護付き有料老人ホームの場合、各施設が直接提供するリハビリやレクリエーションなどのサービスを受けることができます。

リハビリは理学療法士や作業療法士などの国家資格を保有しているリハビリの専門員が行ってくれるので、効果的な機能訓練を図ることが可能です。

また、定期的に各施設を巡回している専門員が担当する施設もあるので、顔なじみの専門員が担当することで安心感を得られるでしょう。

住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホーム利用者がリハビリの専門家によるサービスを受けたい場合、訪問リハビリや通所リハビリのサービスを利用するのが基本です。

ケアプランにリハビリを組み込む必要もあるので、自身のケアプランを作成しているケアマネジャーに相談しましょう。

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有料老人ホームで介護保険が適用されるサービス

こちらのトピックでは、有料老人ホームでの介護保険適用条件について解説していきます。

介護保険の適用可否次第で自己負担額は大きく変わってくるので、必ず確認しましょう。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームでは、介護を必要としている入居者に対して食事・入浴・排泄・移動時の介助などを行っており、これらの介護サービスに対して介護保険が適用されます。

以上のような介護サービスに対しては、所得に応じて自己負担が1~3割で使用可能ですが、その他の居住費や食費などの生活費に関しては全額自己負担となります。

発生する諸費用や月々の負担を把握しておき、老後破産を防ぐようにしましょう。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームでは、在宅で介護保険適用のサービスを利用するケースと同様に、訪問介護やデイサービスなどを利用した際に介護保険が適用されます。

つまり、自分が希望する介護サービスを自由にアレンジした上で計画的に選択できる点が「住宅型」の大きなメリットとなります。

また、自宅で受けていたサービスを施設入居後もそのまま継続して利用できるので、融通性の観点からすると住宅型有料老人ホームの優位性は高いと言えるでしょう。

有料老人ホームの入居のタイミングはいつ?

いざ有料老人ホームを利用したいと考えても、入居のタイミングなどを決めるのは難しいものです。

こちらのトピックでは、有料老人ホームの入居のタイミングなどについて解説していきます。

1:まだまだ健康なときに

今現在は心身ともに健康で自立できている人であっても、将来に備えて有料老人ホームに入ることを検討するケースが増えています。

「転ばぬ先の杖」ではありませんが、早い段階から施設を探しておくことで、本人の好みやライフスタイルに合った施設を見つけやすくなるメリットがあります。

何より、もし本人が入院したり認知症を発症すると選択肢が狭まってしまうので、健康な内から検討することは非常に重要なのです。

早く準備しておくことで、予算に合わせて貯蓄を増やしたり引っ越しをするなどして、良い条件の施設への入居の可能性を高められるメリットも期待できます。

2:退院する際

高齢になってから病気や怪我で長期に渡って入院してしまうと、退院時に要介護状態になっていることが多々あります。

退院後に自宅において在宅介護ができる環境が整わない場合、有料老人ホームに入居するという選択肢が有力になります。

そのため、高齢者が入院する前には、退院後にそのまま有料老人ホームへ入居するケースを想定しておき、その前提で準備することがおすすめです。

実際には、退院した後に期限付きの老健に入居し、老健を退去した後に有料老人ホームに入居するケースが多いです。

3:在宅介護に限界が来たら

在宅介護を行う場合、家族への負担はどうしても大きくなってしまい、肉体的にも精神的にも疲弊してしまうでしょう。

特に、要介護度が高まるにつれて介護者の肉体的・精神的負担は大きくなるので、共倒れを防ぐためにも有料老人ホームに入居することを検討するべきです。

心身に限界を感じてから施設を探し始めても、本人に合った施設をすぐに見つけられるとは限らない上に、施設を探すことそのものがストレスになり得ます。

冷静に判断するためにも、精神的・肉体的に余裕がある内から施設への入居に向けて準備を進め、介護者・要介護者にメリットがあるように工夫しましょう。

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有料老人ホームの入居までの流れ

有料老人ホーム入居までの流れ

以上のイラストのように、実際に老人ホームに入所するまでには1~2ヶ月ほどの期間が必要になります。

こちらのトピックで、有料老人ホームの入居までの具体的な流れについて説明していきます。

希望条件を整える

有料老人ホームを選ぶ際にまずやるべきことは、自分が老人ホームに対してどのような希望を持っているのかを明確にすることです。

考えるだけでなく、紙に書き出すなどして自分の価値観や求めているものを整理してみてください。

予算・希望のサービス・入居期間など、価値観や好みによって優先項目は異なるため、ネットの情報などを参考に入居にあたっての軸を決めましょう。

ミスマッチを防ぐ上で重要なポイントなので、細かく確認してください。

情報収集と施設の種類を検討

希望する条件が整理できたら、次のステップとして施設の種類について検討しましょう。

先述したように、住宅型有料老人ホーム・介護付き有料老人ホーム・健康型有料老人ホームがあるので、要介護度や健康状態によって選択肢も変わってきます。

要介護状態であれば「介護付き」、自立した生活ができるのであれば「住宅型」が基本的な選択肢となりますが、施設によって設備の充実具合は異なるので、個々の施設の設備やサービス状況にも着目してみましょう。

断片的な情報だけで判断するのではなく、総合的に評価・検討することが非常に重要です。

施設の種類が絞れてきたら、実際に候補に挙がっている施設にはどのようなものがあるのか、雑誌やインターネットなどで情報を集めましょう。

実際に資料を取り寄せ比較

入居を検討する老人ホームがある程度決まったきたら、細かい情報を得るためにもインターネットや口コミを見てみましょう。

候補となっている施設の中から、特に気になる老人ホームに対して資料請求を行いパンフレットを取り寄せてみてください。

なお、この段階では1つの施設に絞り込む必要はありません。

複数の施設から資料やパンフレットを取り寄せ、各施設のメリットやデメリット、また自分との相性をイメージしてみましょう。

施設見学(設置基準など満たしているか確認)

資料請求を行いパンフレットもチェックし、それらの中から条件に合う施設を見つけたら、実際に現地に足を運んで見学してましょう。

パンフレットや資料などの文字情報だけで判断するのは危険なので、資料との印象のギャップや職員との相性も確かめることが非常に重要です。

施設見学を通して実際の利用者の表情や雰囲気などを体感できるので、大きな判断材料となるでしょう。

特に、有料老人ホームには人員基準・設備基準・運営基準という3つの設置基準が定められているので、安心して利用するためにも各施設が基準を満たしているかどうかを併せてチェックしてみてください。

設置基準を満たしていない施設は介護付き有料老人ホームと認定されないため、注意しましょう。

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有料老人ホームの問題点・デメリット

こちらのトピックでは、有料老人ホームのデメリットや問題点について解説していきます。

実際に起きている問題点などを把握しておくことで、いざというときに冷静に対処できるようになります。

高額になりうる費用

民間介護施設の費用比較

以上のイラストのように、民間の介護施設を利用する場合は決して安くはないコストがかかります。

有料老人ホームの費用は、各施設によって大きく異なるものの月額20~30万円程度かかるのが一般的なので、長期的な支払能力の有無はしっかりと確認しておきましょう。

入居金に関しても、幅が大きいものの高額な施設の場合は数百万に及ぶケースがあるので、事前に備えておく必要があります。

また、要介護度が高い場合や24時間体制で介護を受ける場合は入居費用や介護に関する出費が高額になってしまうので、費用に関して不安がある場合は施設の担当者やケアマネージャーなどとしっかりと相談しましょう。

介護サービス利用を増やす度に毎月の費用は高くなり、老後資産が枯渇する問題点に直面する高齢者は多いため、利用契約の際には注意してください。

入居者に多くのストレスがかかる

入居する高齢者は、排泄や入浴などを赤の他人に介護されることに対してストレスを感じてしまうことが多いです。

また、施設に入居している高齢者は家族と離れて暮らすことで疎外感を感じたり、慣れない集団生活を送ることでストレスを抱えがちです。

特に、介護度が低い人は比較的自立した生活ができるにもかかわらず制約の多い生活を強いられるため、精神的負担が大きくなってしまいます。

要介護者が協力的でなければスムーズに介護サービスを提供できないばかりか、施設の人にも迷惑をかけてしまうので、入居者本人が大きなストレスを抱えてしまう点には留意しましょう。

ストレス耐性には個人差があるので、各被介護者の性格や特性に合わせてサービスや施設を選ぶことが重要です。

最期の住む場所になり得ないことも(看取り)

有料老人ホームの約半分が「希望があれば看取りに対応している」とのデータがありますが、2018年の全国有料老人ホーム協会が行った調査によると、介護付き有料老人ホームの看取り率は全体の23.3%でした。

このパーセンテージは住宅型有料老人ホームの24.1%とほぼ同じ水準であるため、看取りは行っていない有料老人ホームが主流と言えるでしょう。

終身に渡って施設を利用することを前提としている場合、看取りの体制がどのように整備されているのかは必ずチェックしておく必要があります。

出来る限り自分の希望に近い施設を探し、安心して生活を送れる施設を選びましょう。

重度要介護度・長期入院となった場合は退去も

多くの有料老人ホームでは、重度の介護度に達してしまった場合や3ヶ月以上の長期入院を強いられてしまった場合、退去しなければなりません。

いきなり退去するように求められると冷静に対処することができなくなってしまうので、予めどれくらいの医療依存度まで入居可能なのか、入居契約前にしっかりと確認しておくことが重要です。

一般的に、3ヶ月以上の長期に渡って入院したままの状態が続いてしまうと、施設側から「ホームへの復帰である」が困難と判断され、退去を求められてしまうでしょう。

その結果、「本当はホームへ戻りたいのに、病状が回復せず病院から出られない」といった悩みを抱えてしまう高齢が後を絶たないので、要注意です。

生活保護や年金だけでも入居可能?

「生活保護を受けている人でも老人ホームは利用できるのか?」という疑問をお持ちの方もいるでしょうが、結論から述べると「日本の制度上、生活保護受給者でも有料老人ホームへの入居は可能」です。

しかし、老人ホームの家賃が生活保護の「住宅扶助」に規定される上限額に納まっており、さらに生活費が「生活扶助」の上限額に納まる施設であることが入居の条件となっており、可能ではありますが実際にはかなり厳しいでしょう。

気になる方は、生活保護を受けている自治体の窓口や施設職員に質問してみることをおすすめしますが、一般的に「生活保護受給者で有料老人ホームに入るのはかなり難しい」ことを押さえておきましょう。

また、年金だけでも入居できる老人ホームは存在するものの、「国民年金のみ」「会社員期間がほとんどなく、厚生年金はほとんど受給できない」高齢者も、かなり選択肢が少ないと言わざるを得ません。

このようなケースで有力な選択肢となるのは、公的施設である特別養護老人ホーム(特養)です。

特養であれば所得に応じた負担軽減措置も受けられるため、生活保護受給者や低年金者でも費用負担を大きく減らせる可能性があります。

年金額が心もとない人や生活保護に頼らざるを得ない状況の人は、特養の利用を検討すると良いでしょう。

特養と有料老人ホームの違いは?【介護保険施設との違い】

特別養護老人ホームは社会福祉法人や自治体が運営する「公的施設」であるのに対して、有料老人ホームは主に民間企業が運営している「民間施設」です。

特養は社会福祉の観点から介護度の重い人や低所得者の保護・支援に重点を置いているのに対し、有料老人ホームは経営の観点から高齢者のニーズを満たすことに重点を置き、多種多様なサービスを提供している点が特徴です。

このように、そもそもの前提条件が両者で異なるので、入居できる条件や費用、居室やサービス内容が大きく異なっているのです。

「経済的な不安がある場合や特養の利用がおすすめ」と先述しましたが、特養は運営している社会福祉法人などが国から助成金を受けたり税金面での優遇があるため、入居者の費用負担が安い点が大きな魅力です。

とはいえ、その反面人気が高く、入居にあたって待機期間が生じるケースが多い点に留意しましょう。

そのため、どちらかだけでなく、両者とも利用を検討し、あらかじめ施設を探すようにしておくと安心です。

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サービス付き高齢者向け住宅との違いは?

「サ高住」とも呼ばれることもあるサービス付き高齢者向け住宅とは、基本的に充実した介護の必要が無い、比較的元気な高齢者のための住宅です。

サ高住は、一般の賃貸住宅と同様に賃貸借方式で入居契約を結び、生活支援サービスを受ける場合は必要に応じて別途サービスの利用契約を行う仕組みとなっています。

一方で、有料老人ホームの多くは入居の際に一時金を支払って介護や生活支援サービスを含めた施設を利用する権利を得る利用権方式を採用しているので、契約方式に大きな違いがあると言えるでしょう。

サ高住は近年人気を集めており、自分で必要なサービスを選んで利用できることから、安価でありながら安心して暮らすことができる点が大きな魅力です。

施設数も増加しており、さらに民間施設ですので入居待機をする必要がないことも特徴として挙げられるでしょう。

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民間の介護保険や共済も検討の価値あり

有料老人ホームでは介護保険が適用されますが、人によっては支出が膨らんでしまうケースがあるため、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

介護費用は貯蓄と年金収入で賄うのが基本となりますが、貯蓄だけで不十分な場合は民間介護保険を利用することも選択肢の一つになります。

民間介護保険は、公的介護保険で要介護認定を受けた際に保険金を受け取る商品が多く、まとめて受給する一時金型と毎年決まった額を受給する年金型に分かれています。

最近は民間介護保険の需要や注目度が高まっている影響もあり、保険料が低めで保障対象を広げた商品が増えているので、ぜひチェックしてみましょう。

なお、保険料を抑えるには共済も有力な選択肢となるので、併せて確認してみることをおすすめします。

有料老人ホームの種類や特徴まとめ

有料老人ホームの種類や特徴まとめ
  • 3種類が存在し、それぞれに対象としている人や提供するサービスが異なる
  • 安心して利用するためにも、入居前に人員配置・人員基準を確認することがおすすめ
  • 元気な内から有料ホームに関する情報を集め、いざというときに動ける様に備えよう
  • 場合によっては、民間介護保険や共済を活用することも検討しよう

有料老人ホームは3つの種類に分かれていますが、病状や要介護度によって利用するべき施設が分かれます。

また、契約形態も賃貸借方式や利用権方式など様々なので、こちらも併せて確認するべきです。

入居にあたっては様々な費用が発生するので、長期に渡って入居できるかなど総合的にチェックした上で判断することが重要です。

こちらの記事で紹介した内容を参考に、読者の皆様が最適な施設を選択することができれば幸いです。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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