八尾市の老人ホームの特徴と動向
大阪府八尾市の老人ホーム事情についての特徴と動向や、市の高齢者支援について解説していきます。
八尾市の地理的特徴と介護施設の特徴
大阪の中心地に近い中河内地域に位置する八尾市は、製造業が盛んな地域として活気がある一方、豊かな自然が多く残る場所もある都市です。
八尾市の人口は、令和3年11月1日現在で263,878人ですが、人口は現在減少傾向にあり高齢化は徐々に進んでいます。
八尾市の高齢化率は1990年時点で10%だったのが、2000年代では15%、2005年では20%を超えており現在も増加中です。
近年の高齢化の波を受けて八尾市では、「高齢者クラブ」など高齢者向け福祉事業を設置し、高齢者が住みよい街づくりを進めています。
介護施設に関して八尾市は、数が充実していて、費用も安く利用できるケースも多い地域で、少ない予算でも老人ホームや高齢者住宅を利用できる都市と言われています。
八尾市の介護施設価格概観
八尾市のココファン介護施設の入居金・月額費用について、それぞれの平均値・中央値は以下のようになります。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
八尾市 |
166,772円 |
166,772円 |
全国平均 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
八尾市 |
152,918円 |
152,918円 |
全国平均 |
169,518円 |
158,250円 |
介護の予算が多く取れない家庭にとって、八尾市は魅力的な地域です。
表をみてわかるように八尾市での介護利用料は、全国のココファンの施設の中でも入居金・月額費用共に安めの費用で済む傾向にあります。
八尾市の高齢者人口
グラフを見てわかるように、八尾市の高齢者は年々増加傾向です。
高齢化率は28%と高い水準で推移し、4人に1人が高齢者という状況の八尾市は、令和3年度11月時点では高齢者人口75,319人と発表されました。
また、子供の人口や65歳以下の働き盛り世代の人口は減少傾向にあり、死亡率についても大阪府全体の平均値を上回っている状況です。
このことから、八尾市の高齢化率は今後も増加していくことが予想されます。
八尾市全体の年齢層を見てみると、高齢者のなかでもとくに75歳以上の後期高齢者が増加しており、一方で65歳以下の前期高齢者や0~14歳までの年少層は減少傾向です。
若い世代が減ることで今後の出生率低下・死亡率上昇などが予想され、今後も高齢者数・高齢化率ともに高くなることが見込まれています。
出典:八尾市統計書 2020年版(令和元年度統計) 八尾市公式ホームページ
八尾市の介護施設の状況
八尾市の介護施設状況について、令和2年9月時点の情報を下記で示します。
<八尾市の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(八尾市) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
175 |
5.21 |
3.25 |
入所型介護施設数 |
54 |
1.61 |
2.17 |
通所型介護施設数 |
118 |
3.51 |
3.43 |
特定施設数 |
12 |
0.36 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
99 |
2.95 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
25 |
0.74 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
484 |
14.41 |
12.40 |
出典:日本医師会 八尾市
表の通り、八尾市の75際以上千人あたりの介護施設数は、全国よりも多くなっています。
訪問型介護施設や通所型介護施設が多く、一方で老人ホームなどの入所型介護施設は全国平均を下回っています。
とくに自宅に介護事業者が訪問して介護する訪問型介護事業が多く、このことから八尾市では「自宅に暮らしながら介護を受けたい」と考えている方に適した地域だと言えます。
老人ホームに関しては、幅広いジャンルの施設が安い予算で利用できる一方で、全国平均と比較して設数が少なく「老人ホーム数が十分足りている」とは言えない状況です。
八尾市の要介護認定者数
令和2年時点で、八尾市の要介護・要支援認定者数は16,859人と発表されており、要介護認定者数・認定率ともに年々増加傾向です。
実際、要介護認定率は2014年度に20%を超え、2016年度には21.0%まで達しています。
八尾市では現在、出生率などの低下により全体の人口は減少の推測が出ていますが、一方で要介護認定率はさらなる増加となる見込みです。
出典:GD Freak八尾市(令和2年)
要介護認定率増加の背景には、人口減少に伴う75歳以上の後期高齢者増加が関係しています。
後期高齢者が増えることで、介護が必要な人が増え、また若い世代が減ることで介護する側の人も少なくなるなど状況は深刻です。
それを受けて八尾市では、今後さらに増加する介護サービス需要に対する市の体制づくりを急いでいます。
八尾市では、要支援1・2の介護度が低い方が特に多く、
- 訪問介護・訪問看護などの居宅サービス
- 特別養護老人ホーム
- 夜間対応型訪問介護看護
など地域密着型サービスの供給体制を整えることが今後の課題となるでしょう。
八尾市の高齢者相談窓口は?
八尾市では、高齢者が抱える不安を取り除くため、生活・資金繰り・健康などについて相談できるさまざまな窓口を設置しています。
八尾市の福祉協議会内に設置された権利擁護センターでは、高齢者の生活や資金繰りなどについて相談可能です。
例えば、認知症などで金銭管理が難しいと感じている人は多く、ハンコや預金通帳の管理などの代行についても相談を受け付けています。
また、病気や怪我で介護保険料金の捻出が一時的に難しい・介護サービスを利用したいが資金繰りが難しいという相談も可能です。
また心と体の健康についての相談は、福祉協議会やいくつかの出張所で受け付けており、市の保健師が対応してくれます。
その他にも、法的専門知識が必要な相談ができる窓口を区役所・市役所に設置するなど、八尾市では多様な内容の相談ができる体制となっています。
八尾市独自の介護サービスについて
八尾市では、市独自の介護福祉事業を行っており、高齢者の介護予防・重度化防止を目標に掲げ、さまざまな活動を行っています。
八尾市で行っている事業は以下の通りです。
- 健康診断・がん検診
- 予防接種
- サポーターなどの人材育成
- 運動や介護に関する知識の教室
八尾市では、心疾患や肺炎を患う高齢者がほかの都市と比べても多く、生活習慣病も含めた病気の早期発見・早期治療が課題です。
そのため、市独自で健康診断・がん検診・予防接種などを行い、病気が重度化して介護が必要となる高齢者を少しでも減らしていくよう働きかけています。
また、地元民に対して介護予防知識などを伝えることによって地域ごとの介護サポーター・シルバーリーダーを育成し、地域ごとの自主的な介護予防活動を促すというのは八尾市の特徴的な活動です。
その他、市内の伝統文化である河内音頭をアレンジした体操教室や介護予防運動や認知症予防に関する教室を開催しています。
コミュニティー施設やデイハウスなどを利用して開催されるこれらの教室は、高齢者の運動習慣化・引きこもり防止が目的として行われ、高齢者が無理せずに社会参加できる場です。
八尾市の地域包括ケアシステム
八尾市では、要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができるよう住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進中です。
地域包括ケアシステムとは、高齢者を支えるサービスを地域で一体的に提供するシステムで、団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に現在国を挙げて推進されています。
システムは、市町村・都道府県が地域の自主性に基づいて地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされており、高齢者の孤立化が深刻になっている八尾市でも重要なポイントです。
八尾市では、高齢者見守りサポーターやおを設立して地域での見守り体制を強化しており、病院・訪問看護・福祉委員会・高齢クラブ連合会・配食サービス事業者など高齢者の生活にかかわるさまざまな施設やグループが提携して市民の見守り意識を高めています。
また、金銭面などの生活自立支援・福祉サービスに関する相談窓口・介護高齢者やその家族の会の活動支援・災害時の高齢者サポートなど行い、高齢者が社会の中で孤立しないよう多方面からのサポート体制を構築中です。
胃ろうの方の老人ホーム選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
胃ろうを行っている方が、老人ホームを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
そもそも胃ろうでも老人ホームに入れるの?
2012年頃までは、老人ホームの約70%で胃ろうの方の受け入れを制限していました。
その要因は、胃ろう対応出来る環境が整っている老人ホームが少なかったためです。
しかし、2012年に行われた介護保険法の改正により、現在は胃ろう対応が出来る老人ホームが増加してきています。
とはいえ、胃ろうのケアは看護師や医師が行う医療行為であるため、どこの老人ホームでも受け入れられるわけではないのです。
胃ろうの方の老人ホームへの入居は、近隣の医療機関との連携や、介護職員の人員体制、看護師等医療職員の配置、老人ホームの設備といった、老人ホームの受け入れ体制が整っていることが条件になります。
胃ろうの方や、体調に不安がある方は、希望する老人ホームの医療の連携、介護体制について十分に確認した上で入居を検討しましょう。
胃ろうの基本情報
胃ろうについて、詳しく解説していきます。
胃ろうが必要な状態
胃ろうが必要になるには、下記のような状態にあることが考えられます。
寝たきりの状態で起こる床ずれの原因の1つとなるのが、栄養不足があります。
胃ろうで足りない栄養を補うことで、床ずれの悪化を防いだり、場合によっては体の機能回復に繋がることがあります。
認知症や意識障害、脳血管疾患や神経筋疾患などの影響で口から食べることが難しい場合や、点滴では栄養が不足するときに胃ろうで対応することがあります。
加齢や病気の影響で、嚥下機能が低下した場合に、誤嚥を防ぐ目的の1つとして胃ろうで対応することがあります。
腸ろうの場合
腸ろうは、お腹に小さな穴を開けて、そこから小腸まで栄養を通す管(カテーテル)を通し、直接小腸まで栄養を送る処置です。
本来は胃ろうで対応することが多いですが、胃がんなどの理由で胃ろうを作ることが出来ない患者さんへの処置として、腸ろうを作ることが多いです。
介護的なケアは胃ろうと同じように行うことが多いですが、腸ろうの場合は胃ろうよりゆっくりと栄養を流さなくてはならず、時間と手間がかかります。
人員確保の面で、受け入れが難しい施設が多いのが現状です。
その他の経管栄養の場合
経管栄養は、口からの食事が難しくなった場合、胃までカテーテルを通して栄養を送る方法です。
胃ろうも経管栄養の1つです。
胃ろう以外では、鼻から胃までカテーテルを通す、経鼻経管栄養などが代表的です。
経鼻経管栄養の場合は、手術をすることなく行えるので、身体機能の回復により取り除くことも可能です。
胃ろうも経管栄養の1つですが、経管栄養の方の受け入れを容認している施設でも、胃ろうの方の受け入れをしていない場合があるため、注意が必要です。
胃ろうの方の在宅介護は非常に大変
胃ろうは誤嚥の心配がなくなり、介護が楽になると言われることがあります。
楽になる部分ももちろんありますが、家族による胃ろうの管理は、非常に大変です。
管理が不十分だと、感染症などのリスクもあります。
本人の状態を悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのため、介護サービスを利用するなどして、プロに任せることも必要です。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
栄養素の確保がしやすい
胃ろうの最大のメリットともいえるのが、栄養素の確保がしやすいという点です。
口から食べることが困難になると、必要な栄養素が不足しがちです。
胃ろうの場合は、胃に直接送り込むことが出来るため、必要な栄養素を確保したり、必要なカロリーを摂取することに役立ちます。
口から食事もできる
口から食べることが困難になった方が胃ろうの処置をすることが多いですが、胃ろうの方も口から食事をすることが出来ます。
胃ろうは腹部にあるため、喉や食道にカテーテルが通っていない分、経鼻経管栄養などと比べると口からの食事はしやすいと言えます。
また、嚥下訓練もしやすい特徴があります。
洋服で隠すことができる
胃ろうは腹部についているため、洋服を着てしまえば見た目では胃ろうがあるかどうか分からない点がメリットといえます。
鼻からカテーテルを通す経鼻経管栄養は、隠すことが難しく、違和感などから引き抜いてしまう方もいますが、胃ろうは目立ちにくく、引き抜く心配が少ないというところがメリットです。
運動やリハビリへの影響が小さい
胃ろうがあっても、基本的な運動やリハビリで体を動かすことは可能です。
胃ろうは洋服で隠すことが出来る点や、カテーテルが見えていないことからも、運動やリハビリに支障が少ないことも特徴です。
また、口からも食べることが出来るため、嚥下訓練を行うことも可能です。
入浴可能
医師の許可があれば、入浴することも可能です。
入浴の際は特別な処置をすることなく、普段通り入浴をすることが出来ます。
カバーをすることなく入浴が出来るため、介護する人の負担軽減にも繋がります。
清潔を保つことは皮膚トラブルの防止にもなりますし、胃ろうが付いている周辺の化膿防止にも繋がります。
誤嚥性肺炎の予防に効果がある
胃ろうは胃に直接栄養を送るため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
嘔吐物などの胃酸による化学性肺炎の防止にも効果があります。
ただし、唾液等の誤嚥による細菌性肺炎はリスクが上がる可能性がありますが、口腔ケアを行ったり、口から少量でも食事を摂ることで細菌性肺炎のリスクを予防することに繋がります。
胃ろうのデメリット
一方で、胃ろうには以下のようなデメリットも存在します。
手術の必要がある
胃ろうは腹部に小さな穴を開けて設置するため、穴をあける外科手術が必要です。
手術には抵抗がある人も多く、その点がデメリットといえます。
ただ、胃ろうの手術は内視鏡を使って行うため、30分程度の短い時間で終わります。
合併症のリスクも
胃ろうで起こる可能性がある合併症には、汎発性腹膜炎や創部感染症などのリスクがあります。
合併症に関しては胃ろうに限らず、他の経管栄養法でも発生する可能性はあります。
むしろ、胃ろうの場合には合併症のリスクが他の経管栄養法よりも少ないとされています。
口腔ケアが必要
口から食べる機会が減少することで、口臭や細菌の増加など、口腔トラブルが発生しやすくなります。
こうした口腔トラブルは、食べる機会が減ることで唾液の分泌が減り、自浄作用が低下することで起こります。
口腔内のトラブルを防ぐためにも、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
逆流することがある
胃に注入する栄養剤は液体のため、逆流する可能性があります。
逆流してしまうと誤嚥に繋がることもあるので、栄養剤を注入している最中と、注入後は30度以上上半身を起こしておく必要があります。
また、体質的に胃に入れたものが逆流しやすい症状を持っている人もいます。
このような場合は、とろみのついた栄養剤で症状が抑えられる場合があります。
胃ろうの設置は本人の意思確認も重要
日本の胃ろう利用者は25万人以上とも言われており、世界的に見ても日本は胃ろう患者が多いことが知られています。
ただ、日本では胃ろうを望まないとする人が8割以下と少ない傾向があり、本人の意思と尊厳の重視に注目されています。
胃ろう設置の最大の目的は生命維持であることが大半ですが、決して胃ろうが延命治療とは断言できません。
胃ろう患者の介護施設受け入れも増えてきたため、介護施設入居にあたって胃ろうの選択肢を辞めるという必要性はほぼ無くなりました。
そのため、本人の意思をしっかり確認し、家族も納得した上で検討することが大切です。
胃ろうが必要な方の介護施設の入居条件
胃ろうは医療行為のひとつで、2012年までは主に看護師が行うケアでした。
現在は、看護師などの医療従事者以外に、家族や所定の研修を受けた介護職員が胃ろうの対応が出来るようになりました。
とはいえ、どの介護施設でも受け入れられるわけではありません。
胃ろう患者が断られる理由には、
- 看護師が日中、もしくは24時間常駐がない
- 介護職員への研修が進んでいない
- 胃ろう患者のための設備が整っていない
このような理由から断られることがあります。
胃ろうの方が施設を探す場合には、検討段階から胃ろうを使用していることを伝え、入居後安心して暮らせる環境かどうかをしっかり確認することが大切です。
胃ろう対応可能な介護施設選びで重視する点
それでは実際に、胃ろうの方が施設選びをする場合、どのような施設を選ぶべきか紹介していきます。
口腔ケアに精通している
胃ろうの方で、口から食べる機会が減ると、口腔内の状態が悪くなりがちです。
口から食べる機会が減ることで、口の中を清潔に保つ重要な役割を持っている唾液の分泌が減るためです。
口の中に細菌が繁殖すると、虫歯や口内炎になったり、口臭の原因になったりします。
肺炎にかかる可能性などもあります。
そのため、口腔ケアによって口腔内を清潔な状態に保つ必要があります。
口腔ケアをしっかり行っている施設を選ぶ基準にしましょう。
入居者の体を清潔に保とうとしている
胃ろうを設置していると、入浴が出来ないイメージがあります。
実際には胃ろうに特別な保護をしなくても、普段通り入浴をすることが出来ます。
入浴後も、胃ろうを入れ替えたり、消毒をしたりすることなく、普段通りのケアで充分です。
むしろ、胃ろうが不潔な状態になると、感染症などの心配もあります。
そのため、身体を清潔な状態に保つ必要があり、入浴や清拭によって体を清潔に保とうとしているかどうかは、必ず確認が必要です。
栄養剤にこだわっている
胃ろうで使われる栄養素には、タンパク質が分解された状態で含まれる「消化態栄養剤」と、分解前のタンパク質がそのまま含まれている「半化態栄養剤」の2種類あります。
この2種類の栄養剤から、胃ろうを設置している方の消化能力などを見て、どの栄養剤を使用するか、医師や看護師と連携をとりながら選択してくれる施設が望ましいです。
また、胃ろうの方にとって栄養剤等の補給は健常者の食事と同じです。
胃ろうのチューブに詰まらないように注意して調理されたものであれば、医師の診断の元、何を入れても大丈夫です。
普通の食事を作るように調理したものや、野菜ジュース、スポーツドリンクなども入れることが出来ます。
こうした胃ろうの方の"食事"にも気を配っている施設であれば、安心することが出来ます。