世田谷区の老人ホームの特徴
世田谷区の老人ホームの特徴と動向について紹介します。
世田谷区の地理的特徴と介護施設の特徴
世田谷区は23区の中で最大の財政規模を誇り、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの高齢者施設は今後増設が期待されています。
世田谷区は地価が高く、高級住宅地が立ち並ぶ地域のため、介護施設の入居金及び月額費用は全国平均よりも高めです。東京の他の区と比較しても高額になっています。
他にも、1932年の町村合併までの農村地帯の名残から自然が多いという特徴があり、雰囲気、環境共に非常に魅力的な地域となっています。
世田谷区の人口は2021年11月時点では91万7,297人で、そのうち高齢者の人口は約18万人です。
出典:世田谷区ホームページ
世田谷区には高齢者住宅があるため、静かで住みやすい場所で生活することができます。
さらに地域の中の身近な風景を遺産として遺していくための「風景づくり条例」という制度により、のぞかな風景を楽しむことも可能です。
また、自治体で要支援・要介護率に合わせた介護サービスを提供しており、居宅サービスの計画書を作成してもらうこともできます。
自治体で実施されている介護・医療制度には、後期高齢者医療制度の限度額適用・標準負担減額、後期高齢者医療の高額療養費、自己負担減額などがあります。
世田谷区の介護施設価格概観
世田谷区に展開しているココファンの介護施設の入居金・月額費用それぞれの平均値及び中央値をまとめると以下のようになります。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
世田谷区 |
411,000円 |
411,000円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
世田谷区 |
271,250円 |
271,250円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
世田谷区の地価は高く、東京の区の中でも施設利用料が高くなっています。
上記の表からも、入居金・月額費用ともに全国平均よりも高額であることが分かります。
世田谷区の高齢者人口
高齢者人口は年々増加しており、2025年には団塊の世代と呼ばれる人たちが75歳以上の後期高齢者となることで、介護サービスの需要は今よりもさらに増加すると予想されています。
そして、高齢化の波は世田谷区にも押し寄せており、世田谷区のここ10年の高齢者人口の増加率は1.1倍、高齢化率は1.2倍にも昇ります。
高齢者に伴い介護を必要とする人口も増えるため、要介護認定者は1.4倍となっているのです。
また、2020年の高齢者人口20万5,752人、高齢化率22.5%は、2040年には高齢者人口27万9,323人、高齢化率30.2%まで進むと予想されています。
上記のような課題を抱える世田谷区は、「新たな世田谷区基本構想」の策定に着手しました。
高齢者の増加という問題を、「社会の第一線で活躍された人の経験や知恵を地域の課題解決に活かすチャンスにする」という考え方です。
このように世田谷区は、高齢者の方が積極的に地域社会と接点を持てるよう、高齢者が活躍できる場の提供や、高齢者単独世帯に伴う孤立化防止対策に力を入れています。
なお、上記の図に記した高齢者人口及び高齢化率は以下のサイトから引用しています。
出典:日本医師会 地域医療情報システム
世田谷区の介護保険事業者・施設の状況
以下の表は、世田谷区の介護保険事業所数をまとめたものです。
<世田谷区の種類別施設数>
施設種別 |
施設数 |
75歳以上1千人あたり施設数(世田谷区) |
75歳以上1千人あたり施設数(全国平均) |
訪問型介護施設数 |
338 |
3.50 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
257 |
2.67 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
94 |
0.97 |
2.17 |
特定施設数 |
69 |
0.72 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
215 |
2.23 |
2.41 |
福祉用具事業 |
56 |
0.58 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
1,029 |
10.67 |
12.40 |
表を見ると、世田谷区の75歳以上1千人当たりの施設数のうち全国平均を上回っているのは特定施設数のみです。
全体的に全国平均よりも少なく、介護施設が全国と比較して介護施設が多いとは言えない地域であることが分かります。
特に入所型介護施設と通所型介護施設の数が全国平均よりも少ないという点が、地域の特徴と言えるでしょう。
なお、上記の表は以下の出典を参考にしています。
出典:日本医師会 地域医療情報システム
世田谷区の要介護・要支援認定者数
高齢者数の増加に伴い、要介護・要支援認定者数及び介護保険サービスの利用者数も増加傾向にあります。
2017年と2021年の要介護認定者数を比べると、3万8,213人から4万1,033人と、約3,000人近く増えていることが分かります。
世田谷区では、必要に応じて医師や看護師が訪問してくれる環境を求めている人が多いため、訪問看護や訪問介護が人気です。
さらに、世田谷区が独自展開している24時間対応の随時訪問サービスにより、利用者・家族共に安心して介護サービスを利用することが可能です。
出典:世田谷区 月別要介護認定者数
世田谷区の高齢者相談窓口(委員会)は?
世田谷区では、保健福祉サービスに対する不満や苦情を申し立てることができる「保健福祉サービス苦情審査会制度」が設けられています。
保健福祉サービス苦情審査会制度では、申し立てのあった意見を尊重しながら区長がサービスの改善に努めます。
審査は公正に行われるように、保険・医療・福祉・法律などの5分野から専門家を招き、苦情に対する意見をまとめます。
苦情審査会の主な特徴は以下の通りです。
- 保健・医療・福祉・法律など5分野の専門家によって意見がまとめられ、その意見を基にサービス改善が行われる
- 申し立てを行えるのは、区が行う保健福祉サービスや介護保険サービス、障害福祉等サービス
- 本人への個別のサービス適用または提供に関することのみ
- 審査が終わっている苦情や保健福祉サービスの個別適用・提供以外のサービスに関する苦情は申し立てすることができない
審査内容は「保育園入園非内定について」「障碍者就労支援センターの対応について」など様々で、保育福祉サービス苦情審査会の制度が開始されて以降70件以上の申し立てについて審査会の場が設けられています。
このように世田谷区では、制度を設けることで高齢者サービスに関する苦情に対して向き合っています。
世田谷区独自の介護サービスについて
世田谷区では独自の取組として、「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」を設置しています。
あんしんすこやかセンターは、高齢者が住み慣れた地域で生き生きと暮らせる支援を行うことを目的として、5地域27箇所に設置されています。
世田谷区の地域包括支援センターでは、地域の自治組織や住民などと関係づくりを行うことで介護予防を行っています。
介護予防の取組に対して区の保健師が積極的に関わっているというのが世田谷区における介護予防の特徴です。
世田谷区では、介護予防の段階から自立支援という視点を重要視しており、地域の資源を活用して個々の状態に応じたサポートを行っています。
地域の資源を活用した取り組みには以下のようなものがあります。
- 大学を活用した通所サービス
- 喫茶店での集いの場
- 都営住宅の外出支援 など
世田谷区の地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者を支えるサービスを地域で一体的に提供するシステムのことです。
2025年には、団塊の世代と呼ばれる人たちが75歳以上となります。
高齢者の急増に向けて、要介護状態となっても住み慣れた地域で最期まで自分らしい生活を送り続けられるような、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括システムを構築すべく、国を挙げた取り組みが進められています。
世田谷区では区内の5地域・27箇所の日常生活県地域を中心に、出張所・まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会の3つの窓口を設置することで地域包括ケアシステムが展開されています。
地域包括ケアシステムには、福祉相談の充実の地域の人材、社会資源の開発としての役割も担っており、まちづくりセンターを中心に福祉的な課題の把握・共有・解決が行われています。
また、上昇する高齢化率に対する取り組みとして、「せたがや生涯現役ネットワーク」も実施されています。
せたがや生涯現役ネットワークは、NPOや事業者、大学、行政などの約70団体が連携・協力を行うことにより、高齢者の社会参加の場や機械を設けて応援する取り組みです。
世田谷区は、このように独自の取り組みを実施することにより地域に根差したケアシステムの構築を進めています。
インスリン注射とは
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
健康な人であれば、体内では常に必要な量のブドウ糖が調整され、血糖値が安定しています。
食事により血中に取り込まれたブドウ糖に対して、膵臓からインスリンが分泌されることで、血糖値が正常な状態に保たれますが、この血糖値のコントロールにインスリンが必要な患者に対して、外部から注射でインスリンを補う治療法がインスリン注射です。
インスリン療法と呼ばれることもあり、注射でインスリンを補うことで、健康な人のインスリン分泌パターンを再現します。
インスリンを注射するペースは個々の状態で異なり、1日1~4回注射が必要になります。
インスリン注射が必要な疾患の種類
インスリン注射が必要になる疾患で代表的なものは糖尿病です。
糖尿病には、下記の2種類あります。
疾患名 |
主な症状 |
1型糖尿病(インスリン依存型) |
インスリンの分泌が絶対的に不足・欠乏 |
2型糖尿病(インスリン非依存型) |
遺伝的素因と生活習慣によりインスリンの効きが悪くなる |
1型糖尿病
1型糖尿病は、子供や若い方に多く見られる糖尿病です。
インスリンを分泌するβ細胞が破壊され、膵臓でインスリンが生成できない状態になり、高血糖状態が続きます。
そのため、インスリン注射によってインスリンを補う必要があります。
2型糖尿病
2型糖尿病は、インスリンの分泌はありますが、正常な量が分泌されていなかったり、働きが悪かったりして血糖値が下がらない状態になります。
遺伝的な要因の他、生活習慣によって発症することがあり、主に中高年での発症が中心です。
注射によってインスリンを補うこともありますが、生活習慣の改善が治療の中心になります。
糖尿病患者は増加傾向にある
日本で糖尿病にかかっている患者は1990年代後半には、厚生労働省調査によると690万人でしたが、年々増加傾向にあり、2016年の糖尿病人口は糖尿病予備群と呼ばれる人も含めると2,000万人以上になるともいわれ、日本人の5~6人に1人が糖尿病予備群以上の状態と推察されます。
年齢別に見ると、60歳以上の患者が多く、70代以上では糖尿病患者は400万人以上となり、高齢になるほど発症確率が上がる疾患でもあります。
そのため、老人ホームなどの介護施設でも、インスリン注射が必要な方の受け入れが増加傾向にあります。
インスリン注射が必要な方の介護施設選びのポイント
インスリン注射が必要な方でも、介護施設に入居することが出来ます。
入居する場合の施設選びのポイントを紹介します。
血糖値を適切に保とう
糖尿病の方にとって、低血糖状態は命にかかわる事態になります。
患者本人による、運動や生活習慣の改善などで血糖値を適切に保つ努力も重要ですが、施設に入居する場合には、
- インスリン注射をしっかり継続出来ること
- 食事療法が行えたり、適切な摂取が出来ること
- 低血糖による急変時に対応がしっかりしていること
こうした対応で、血糖値を正常に保つための管理をしている施設や、低血糖による緊急時の対応がしっかり出来る施設を入居条件にしましょう。
自己注射できる状態か念入りに確認しよう
インスリン注射は医療行為になるため、接種出来るのは医師か看護師、もしくは本人、病院で指導を受けた家族になります。
介護施設に入居後も本人が継続して自己注射が出来れば問題はないのですが、身体に麻痺が出たり、認知症になったりして、本人による自己注射が出来なくなった場合の介護施設の対応は十分に確認する必要があります。
老人ホームなどの入居施設でも、接種出来るのは医療従事者のみなので、介護職員は摂取することが禁止されています。
そのため、施設に入居する場合は、看護師が常駐しており、インスリン注射の対応が可能なことが絶対条件になります。
また、糖尿病と認知症には、実は深い関わりがあります。
高血糖状態が長く続くと、認知機能が低下しやすくなることが分かっています。
糖尿病の方と、そうではない方を比べると、
- アルツハイマー型認知症には約1.5倍
- 脳血管性認知症には約2.5倍
糖尿病の方のほうが認知症を発症しやすいという報告があります。
また、軽度の認知障害がある場合は、認知症へと発展する可能性があります。
高血糖状態だけが認知症に直結しているわけではなく、実は重症な低血糖状態でも、認知症になるリスクが高くなると言われています。
認知機能の低下によって、糖尿病の治療の必要な内服やインスリン注射、食事の管理などが出来なくなると、糖尿病の悪化にも繋がるため、施設に入居する際は十分な確認が必要になります。
インスリン注射の頻度も施設選びに重要
インスリン注射を行う回数は、患者それぞれで異なり、1日複数回必要な方もいます。
1日の中で接種するタイミングも異なります。
本人による自己注射が出来ない場合には、看護師に接種してもらう必要があるため、自分が接種するタイミングに看護スタッフが勤務していることが入居条件になります。
たとえば、1日2~3回接種が必要なら、24時間看護師が常駐している施設や、看護師が常時勤務している施設を選びましょう。
1日4回接種が必要なら、24時間看護師が常駐している施設を選ぶようにします。
治療も兼ねてくれる施設を選ぼう
単に糖尿病患者でも受け入れてくれる、という施設ではなく、食事、運動療法にも力を入れている施設を選ぶことが望ましいです。
糖尿病の治療には、インスリン注射や服薬を行っていても、運動療法や食事療法も継続して行うことが大切です。
食事療法のために、糖質の管理やカロリー制限などに対応している施設や、運動も出来る施設を検討しましょう。
また、糖尿病によって起こる、潰瘍や感染、壊疽など糖尿病足病変を予防するフットケアなどを行っている施設も魅力的です。
インスリン注射が出来る介護施設の費用のポイント
インスリン注射に対応可能な、ココファンの介護施設の入居金・月額費用それぞれの平均値・中央値は以下のようになります。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
city |
267,567円 |
194,250円 |
全国 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
city |
162,088円 |
156,578円 |
全国 |
169,518円 |
158,250円 |
学研ココファンでは、多くの施設で充実の医療体制を整えています。
そのため、インスリン注射に対応できる施設で探した場合でも、費用が高くなることはありません。
インスリン注射が必要な方の入居条件
インスリン注射が必要な方に対して、施設側から入居条件を指定することは特にありません。
ただ、インスリン注射を行う回数によっては、施設側の対応が課題になることもあり、入居が難しくなることもあります。
糖尿病の進行によっては、現在と異なる症状がみられることがあり、著しい高血糖になった場合、口の乾きや多飲・多尿・体重減少・昏睡などの症状が出ることがあります。
また、治療によって低血糖を起こす可能性があることや、糖尿病の三大合併症を引き起こす可能性もあります。
変化する症状に対して、様々な状態を過程した上での施設選びが重要になっていきます。
まずは入居を検討した段階で、症状をしっかりと伝えて相談してみることが大切です。
介護施設に入居する際のリスク
いくら食事、運動療法に力を入れている老人ホームでも、看護師が24時間常駐している老人ホームでも、老人ホームはあくまでも生活をする場所です。
病院とは異なるため、専門的な治療を行うことは出来ません。
そのため介護施設に入居中、もし症状が悪化した場合や、医療ケアが常時必要になった場合、入居する施設では対応しきれずに退去しなくてはならない場合もあります。
入居を継続出来た場合でも、病院ほど専門的なケアが受けられたり、常に医師や看護師がいる病院とは異なるため、生活の場として安らげる老人ホームか、医療面で安心できる病院か、という判断が必要になる可能性があります。
QOLの低下により、老人ホームでの暮らしにくさを感じることもあるかもしれません。
想定出来る様々な状況に応じて、ご本人が納得出来る適切な判断が出来るように、入居する施設の医療スタッフとは、しっかりコミュニケーションをとっておくようにしましょう。