【医師監修】認知症予防に効果的な食事は?ボケ防止に効く食材・食事方法を徹底解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「認知症になりたくないけど、具体的になにをしたらいいの?」

「ボケ防止に効果的な食べ物があるってホント?」

このような疑問をお持ちの方も多いと思います。

高齢者に多くみられる認知症ですが、一度発症してしまうと改善しない… といった話もよく聞きますよね。実際、認知症には現在のところ根本的な治療法がなく、予防することがとても大切になります。

そんな中、毎日三回の食事での予防は、今すぐに実践できる予防法として注目を集めています。

そこでこの記事では認知症予防に効果的な食事に注目して、具体的な食材やジャンルなどについて解説していきます。

認知症に効果的な食事についてざっくり説明すると
  • 認知症予防のために健康的な食生活を続ける
  • ボケ防止には魚や緑黄色野菜などの食べ物が効果的
  • 食事のジャンルをおもに和食に
  • 食事以外の生活習慣も改善する

認知症とは?

認知症になった老人の画像

認知症とは、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出る病気です。記憶の消失や理解力、判断力が大きく低下するなどの症状があげられます。

認知症は脳の病気や障害など様々な原因で発生します。

年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、認知症の人は増え続けると予想されています。

アミロイドβの蓄積が原因になりやすい

アミロイドβは、アルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質です。健康な人の脳にも存在しますが、通常は脳内のゴミとして短期間で分解され排出されます。

しかし、正常なアミロイドβよりも大きな異常なたんぱく質ができてしまうと、排出されずに蓄積していきます。 蓄積したアミロイドβは、脳細胞を死滅させてアルツハイマー型認知症を引き起こしてしまいます。

このアルツハイマー型認知症は認知症全体のおよそ6割を占めています。 したがって認知症予防にはアミロイドβの蓄積を防ぐのが重要とされています。

認知症予防には食事の見直しが必須

認知症は世界各国で新薬の開発が進められていますが、研究がとん挫してなかなか実用化には至っておらず根本を解決する薬がありません。

認知症になると寝たきりになった場合が多いです。また逆に、寝たきりになることで認知症を発症することもあり得ます。

そのため認知症予防のために積極的に行動を起こすことが大事なのです。

中でも、食事の改善は、運動や睡眠などの習慣と同様に、認知症予防に大きな効果があるため、見直してみましょう。 認知症対応が可能な介護施設はこちら!

認知症予防の食事方法・食習慣

健康的な食事のイメージ

認知症の予防に大切なことは脳の健康を維持することです。その際に生活習慣病の改善と食事からの老化予防が重要となります。

※以下で紹介する食材は医療機関による正式な調査によってある程度認知症が予防できるというエビデンスがあるものですが、必ずしも全ての方にとって効果的とは限りません。

バランスの良い食事をとろう

認知症の原因のひとつは、脳内のアミロイドβタンパクの蓄積です。

それを抑制することがわかっているのはEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸、ポリフェノール、カテキンといった抗酸化物質です。

このような物質を摂取するための食材を以下で紹介していきます。

塩分の取りすぎに注意する

脳血管性認知症は脳梗塞と関連性があります。脳梗塞によって血液が届かなくなった脳の部分が機能しなくなってしまうことで起きる認知症です。

脳梗塞の背景には高血圧が存在している場合が多いので、高血圧予防のための減塩(食塩を減らす)は必須です。

間食や糖分の取りすぎにも注意

糖分が多い食事をとり続けると糖尿病や耐糖能異常になります。これらは脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めてしまいます。

したがって血糖値の管理も重要です。 血糖値の管理も、肥満を含む生活習慣病を防ぐことにもつながります。

カロリー過多に気をつける

塩分・糖分のみならず摂取カロリーに気をつけることで肥満を予防できます。

肥満はアルツハイマー型認知症になりやすいだけでなく、内臓脂肪の蓄積によって高血圧や糖尿病、耐糖能異常を引き起こすので気を付けないといけません。

摂取カロリーに気をつけることで認知症だけでなく、他の生活習慣病や重大疾病の予防につながり、健康的な生活を送ることができるでしょう。

認知症予防に効果的な食べ物は?

魚(特に青魚)

イワシ・サンマ・サバなどの青魚を積極的に摂取することは、認知症予防に役立つといわれています。

これは青魚にはDHAやEPAと呼ばれる「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれており、悪玉コレステロールを減らす働きが期待できるからです。

脳の構成成分であるDHAは記憶力や判断力の向上につながり、ボケ防止に期待できるでしょう。

EPAも血管を拡張して血行を良くするため、生活習慣病の予防に効果的です。

緑黄色野菜、果実類

緑黄色野菜であるアスパラガス・にんじん・かぼちゃ・ほうれん草などは、ビタミンCやビタミンEが豊富です。

これらのビタミンは、血中コレステロールの値を下げたり、血管の老化を防ぐ抗酸化作用を高めたりする働きがあるとされています。

納豆

大豆製品にはコレステロールや中性脂肪を低下させる働きのある栄養素が含まれています。

その中でも特に、納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓の主成分フィブリンを溶かす働きがあります。

コーヒー・緑茶

コーヒーや緑茶に含まれているカフェインには利尿作用があり、血液中に不要となったたんぱく質の排出を促すとされています。

血流が良くなることから脳内の神経伝達を円滑にし、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。

赤ワイン

赤ワインに含まれるポリフェノールには、強力な抗酸化作用があり、老化、動脈硬化、高血圧、認知症予防への効果が期待されています。

フランスで行われた研究では、ワインを飲む人は飲まない人に比べておよそ5分の1しか認知症にならなかったという結果も発表されています。

ただしこの研究結果はワインが直接的な原因ではないとする意見もあります。

また大量の飲酒はかえって認知症の危険性を高める可能性があるので、適度な量でとどめましょう。

カレー

カレーにはターメリックという香辛料が含まれています。

その中のクルクミンという成分が、免疫細胞を活性化し、認知症の予防に役立つ可能性があるという研究がアメリカやシンガポールで発表されました。

しかしカレーの認知症予防への効果には否定的な意見もあり、本当に効果的かどうかは定かではありません。

カマンベールチーズ

認知機能が低下すると、BDNF(脳由来神経栄養因子)というたんぱく質の血中濃度が減ることが知られています。

しかしカマンベールチーズを食べることでBDNFが上昇したというデータがあり、ボケ防止への効果が期待されています。ただし、脂質が多く含まれるため食べ過ぎは禁物です。

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認知症のリスクを上げかねない食べ物

認知症のリスクを上げかねない食品として、主に以下が挙げられます。

  • 肉の脂身(ラードや背脂など)
  • マーガリン
  • ショートニング

動物性の油(魚は除く)に含まれる飽和脂肪酸やショートニングやマーガリンなどのトランス脂肪酸の過剰摂取は、血中のLDLコレステロールを増やし動脈硬化を引き起こします。(参考:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット)

また、トランス脂肪酸の摂取が認知症の発症に関与するという結果が久山町研究で報告されています。一方で、同研究において和食、野菜、牛乳、乳製品を組み合わせた食事パターンが認知症の発生を抑制したと報告されています。

特にファストフード市販のお惣菜、菓子類、菓子パンなど中心の食事になるとトランス脂肪酸の摂取量が増えるので、これらの食品の過剰摂取は控え、適度な摂取に留めることがおすすめです。

おすすめの料理のジャンルは?

地中海式食事法

イタリア、ギリシャ、スペインなど地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理を 「地中海食」 と呼びます。

「不飽和脂肪酸」「抗酸化物質」が認知症予防に有効という海外の論文もあります(海外の医学誌「JAMA Internal Medicine」で2015年に掲載)。

なぜ地中海食が認知症予防に優れているかというと、食事からこの「不飽和脂肪酸」「抗酸化物質」を多く摂取するからです。

具体的には 地中海食で多く取り入れるオリーブオイル、ナッツなどに含まれる「オメガ3」は、不飽和脂肪酸であり、これは、上に記載したように認知症予防に効果的です。和食ではイワシ、サバなどの青魚や大豆、小豆、豆腐、油ではエゴマ、亜麻仁油などに多く含まれています。

和食

東北大学の研究によると、日本食パターンの度合いが高い高齢者は、動物性食品や高乳製品の摂取度合いが高い高齢者と比べ、認知症発症リスクが20% 低下したとされています。

和食には緑黄色野菜と魚の油が多く含まれています。

緑黄色野菜には、認知症の原因物質「アミロイドβ」の生成を阻害するポリフェノールが、魚の油にはDHAやEPAなど脳に良いといわれる脂肪酸が多く含まれているので、これらを取りやすい和食は生活習慣病の改善や認知症、ボケ防止への効果が期待できます。

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食べ物以外の認知症予防法は?

食べ物以外でも認知症予防は可能です。

具体的には、

  • 適度な運動
  • 家事や趣味、社会活動などの「知的活動
  • 十分な睡眠

といったことが認知症の予防に良いとされています。

適度な運動としては、週三日以上の有酸素運動がのぞましいです。

人とよく会って話すことや、声を出して笑うこと、そのためのコミュニティを持つことはボケ防止に大きな効果を持つでしょう。

また本を読む、日記などの文章を書く、趣味を極めるなど自分の好きなことを持続的に行うことで頭を動かすことができるでしょう。

ボケ防止に食べ物を自分で調理することも良い知的活動になるかもしれませんね。

【医師監修】認知症を予防するには?食事・運動など生活習慣改善のポイントを解説

認知症に効果的な食事まとめ

認知症に効果的な食事まとめ
  • ファーストフードや惣菜ではなく自分で料理を考えて作るように心がける
  • 認知症予防にはアミロイドβの蓄積を防ぐDHAや抗酸化物質などが効果的
  • 食事のジャンルをおもに和食に
  • 生活習慣を全般的に見直す

認知症予防が期待できる食事について様々なものを解説してきました。

肉ではなく魚中心の料理をこころがけ、野菜もバランスよく食べることが食生活改善の一歩になるでしょう。

地中海料理を食べ続けることは難しいかもしれませんが、なじみある和食なら続けやすいですね。

また食べ物だけでなく健康的な生活習慣がボケ防止につながるでしょう。

この記事を参考に、一度ご自身の食生活を含め生活全般を見直し、改善してみてはいかがでしょうか。

認知症、ボケ防止はもちろん、健康的でハリのある生活を送る一助になるはずです。

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この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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