【医師監修】認知症を予防するには?食事・運動など生活習慣改善のポイントを解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「認知症を予防するのに効果的な方法を知りたい!」

「若年性認知症やアルツハイマーは、どのような違いがあるの?」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

認知症になると、本人だけでなく介護する家族にも大きな負担となります。

認知症やアルツハイマーを予防する方法や進行を遅らせる方法はいくつかあるので、早い段階からケアすることが重要です。

こちらの記事では、認知症を予防する方法や食事・運動など生活習慣を改善するポイントを解説していきます!

認知症予防についてざっくり説明すると
  • 若年性アルツハイマーなど、年齢に関係なく発症するので生活習慣を見直そう
  • 寝たきりになると、認知症のリスクが高まる
  • 気になる場合はMMSEや長谷川式簡易知能評価スケールなどを使ってチェックしよう

認知症とは?

認知症の高齢者イメージ

認知症は病名ではなく、記憶や判断力などの認知機能が低下して生活に支障をきたしている状態を指します。

認知症有病者の半数以上はアルツハイマー型認知症を患っており、次に多いのが血管性認知症、レビー小体型認知症と続きます。(厚労省老健局)

後述しますが、長谷川式簡易スケールなどの認知症判断ツールがあるので、こちらも有効活用すると良いでしょう。

半数以上がアルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症有病者の約6割を占めています。

男性よりも女性に多く見られる傾向にある点が特徴ですが、男女関係なく予防に励む必要があるでしょう。

物忘れや痴呆が目立つようになったら、アルツハイマーを疑うべきです。

若年性アルツハイマー

認知症は高齢者が患ってしまうイメージがありますが、若い年齢の人でも発症する可能性があります。

若ければ18歳から発症し、64歳以下のアルツハイマーを「若年性アルツハイマー」と呼びます。

若いと「認知症になるわけがない」と高をくくってしまい、認知症を疑わなかったりする人が多いので要注意です。

また、病院で診察を受けても、うつ病や更年期障害などと誤診されてしまうケースがあるので、診断までに時間がかかってしまう点が若年性アルツハイマーの恐ろしさです。

認知症を予防して寝たきりを防ごう!

現在、認知症対策の新薬の開発が世界各国で進められています。

しかし、認知症治療薬の開発は難しいようですが、認知症の進行を抑える薬剤として、現在では塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなどが処方されています。

つまり、根本を解決する薬物治療は無いので、予防することがとても重要なのです。

活動量が落ちて寝たきりになったり、逆に寝たきりになることで認知症を発症してしまうケースも起こりえます。

目にみえる予兆がなくても、早い段階から予防することが非常に重要なので、自分だけでなく家族も違和感を感じたら医療機関を受診しましょう。

生活習慣の改善が予防には大切

残念ながら、認知症を予防するための明確な方法は未だに分かっていません。

しかし、近年の研究では「認知症には生活を取り巻く環境の影響が大きく関わっている」ことが判明しているので、生活環境を見直すことで予防可能です。

脳の状態を良好に保つためには、食事や運動習慣を変えることが重要なので、自分で意識するだけでなく家族と協力することも効果的です。

なお、杉山孝博氏が書いた『認知症にならないための10か条』の内容を紹介するので、こちらも意識すると良いでしょう。

  • 第1条:生活習慣病を予防・治療する
  • 第2条:バランスのよい食生活で健康を保つ
  • 第3条:よく歩き、運動する
  • 第4条:過度の飲酒・喫煙に注意する
  • 第5条:活動・思考を単調にしないように努める
  • 第6条:生きがいをもつ
  • 第7条:人間関係を普段から円滑にしておく
  • 第8条:健康管理は自分で
  • 第9条:病気や障害の予防や治療に努める
  • 第10条:寝たきりにならないよう心掛ける
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認知症予防①:食事・食習慣

健康的な食生活

認知症を予防する上で大切なのは、脳の健康を維持することに尽きます。

生活習慣病の改善と食生活を見直すことで脳の老化を防げるので、非常に重要なアプローチ方法と言えます。

医療機関による正式な調査を経て、ある程度の認知症予防ができるというエビデンスがありますが、必ずしも万人に効果があるとは限らないので、その点には留意してください。

食事に気をつけて認知症の進行を防ぐ

バランスの良い食事をとろう

認知症の原因の一つとして挙げられるのが、脳内のアミロイドβタンパクの蓄積です。

アミロイドβタンパクの蓄積を抑制できると分かっているのは、EPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)などの多価不飽和脂肪酸、ポリフェノール、カテキンなどの抗酸化物質です。

これらを意識的に摂取することで認知症予防が可能で、以下で具体的な食材について紹介していきます。

摂取カロリーを守る

肥満はアルツハイマー型認知症になりやすいので、肥満を防ぐために摂取カロリーに注意を払うことも重要です。

また、肥満はアルツハイマーだけでなく、内臓脂肪の蓄積によって高血圧や糖尿病などの病気を引き起こしてしまいます。

メタボリックシンドロームの人やBMI数値が高めの人は、摂取カロリーを控えるようにしましょう。

摂取カロリーを抑えることでアルツハイマー型認知症を予防することにつながり、さらには他の重大な病気も防いで健康的な生活につながると言えます。

塩分・糖分を控える

脳血管性認知症は脳梗塞と関連性がありますが、脳梗塞は高血圧と密接に関係している場合が多いです。

高血圧を予防するためには、摂取する塩分を減らすことが効果的なので、減塩も重要な認知症予防となります。

また、糖分が多い食事を続けていると、糖尿病や耐糖能異常を引き起こしてしまい、これにより脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めてしまいます。

そのため、塩分制限だけでなく糖分の摂取量にも注意を払い、血糖値を管理しましょう。

トランス脂肪酸などは避けよう

動物性の油による飽和脂肪酸や、マーガリンなどのトランス脂肪酸を多く摂取していると、LDLコレステロールを増やし動脈硬化や脳梗塞の発症リスクを高めてしまいます。

具体的には、ファーストフードや市販のお惣菜、菓子パンなどを多く摂取している人は要注意です。

手軽に摂取できる食事の需要は非常に高いですが、これらの食事はトランス脂肪酸を多く含んでいるので注意しましょう。

地中海食が効果的?

地中海食を聞いたことはありますか?

地中海食は、ギリシャやスペインなどの地中海沿岸国の伝統的な食事様式で、豆類や種実類などの植物性食品を豊富に取り入れることを指します。

また、オリーブオイルや乳製品を適量摂取することも、地中海食の特徴です。

地中海食には認知症予防において重要な食材が多く含まれているので、地中海食を継続すれば認知機能の低下が抑制される効果が期待できます。

認知症の他にも、地中海食は多くの生活習慣病を予防する効果があると言われているので、実践する価値は大いにあるでしょう。

認知症予防に効果的な食材は?

魚(特に青魚)

イワシ・サンマ・サバなどの青魚は、DHAやEPAと呼ばれる「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれています。

不飽和脂肪酸には悪玉コレステロールを減らす効果があるので、青魚を積極的に摂取することは認知症予防に役立つと言われています。

肉を多く摂取する傾向にある人は、意識的に青魚を中心とした魚料理を取り入れてみましょう。

緑黄色野菜、果実類

にんじん・かぼちゃ・ほうれん草などの緑黄色野菜には、ビタミンCやビタミンEが豊富に含まれています。

これらのビタミンには血中コレステロールの値を下げ、血管の老化を防ぐ抗酸化作用を高める効果があるので、積極的に摂取するべきです。

野菜が苦手な人は多いですが、まずは野菜ジュースから挑戦するなどして、徐々に野菜を取り入れる食生活にシフトしていきましょう。

コーヒー・緑茶

コーヒーや緑茶にはカフェインが多く含まれていますが、カフェインには利尿作用があります。

尿意を促すことで血液中に不要となったたんぱく質が排出されるので、こちらも認知症予防に効果的です。

また、水分を摂取することで血流が良くなり、脳内の神経伝達を円滑にして認知機能の低下を防ぐ効果も期待できます。

トイレに行く回数を増やすことで尿管結石の予防にもなるので、様々な病気を未然に防げる飲料と言えるでしょう。

赤ワイン

お酒と聞くと身体に悪いイメージを持つ人もいるでしょう。

しかし、赤ワインに含まれるポリフェノールには強力な抗酸化作用があります。

ポリフェノールには、老化・動脈硬化・高血圧・認知症を予防する効果が期待できるので、実は適量に飲むことで健康促進に繋がるのです。

お酒好きな方は、ビールや焼酎だけでなく赤ワインも適度に取り入れてみましょう。

カマンベールチーズ

認知機能が低下すると、BDNF(脳由来神経栄養因子)というたんぱく質の血中濃度が減ってしまいます。

しかし、最近の研究では、カマンベールチーズを食べることでBDNFが上昇することが判明しました。

チーズをおつまみにしながら先程紹介した赤ワインを楽しむことで認知症予防になるので、お酒好きな人は実践してみる価値はあるでしょう。

認知症予防②:運動

運動中の高齢者

認知症の予防には、軽い有酸素運動が効果的です。

高齢になると体力が衰えてしまうので、週一回程度のペースから始めて、無理のない範囲で行いましょう。

散歩・歩行

ゆっくり長く歩くことは、年齢に関係なく脳の血流を増加させる効果があります。

散歩は全身を使う運動なので、全身の血流を改善して脳の細胞を活性化する効果が期待できます。

なお、歩く強度は「息がほとんど弾まない程度」が良いとされており、体力が衰えていても自分のペースで手軽にできる点が魅力です。

歩く習慣は動脈硬化や循環器系の機能低下予防だけでなく、筋力を維持して転倒の予防にもなるのでメリットしかありません。

認知症予防③:睡眠

睡眠中の高齢者

認知症予防に必要な睡眠時間は、約5.5時間程度と言われています。

医学の研究によると、起きている時間アルツハイマーの原因物質であるアミロイドβは増え、睡眠中に減ることが分かっています。

質の良い睡眠を取れていると、脳内のアミロイドβが脳の血管から脳外へ排出されると言われているので、睡眠の質も重要であることが分かるでしょう。

また、認知症の人は夜によく眠れず、その反動で昼寝が増える傾向にありますが、これは良くありません。

予防の観点のみならず、認知症を患ったら「日中に刺激を与えて覚醒させる」「規則正しい生活リズムを保つ」「夜間睡眠の妨げになる原因をなくす」ことを心掛けましょう。

認知症予防④:社会参加

仲の良い高齢者イメージ

脳を活性化させるという観点から、生活にメリハリを持たせて前向きな気持ちになれる社会参加も非常に有意義です。

週1回以上社会的な交流をしている高齢者は活動能力障害や死亡のリスクが低いとされているので、積極的に趣味や地域のボランティア活動へ参加しましょう。

家族や社会との人間関係に問題があると、活力が出ずに引きこもりになってしまい、精神神経症状に繋がる恐れがあります。

また、同世代のみならず、他世代との世代間の繋がりを持つことで脳に良い刺激になり、フレイル予防に効果的とされています。

介護施設への入居も社会参加の一つ

介護施設に入居することで、同年代の人々と関わる機会を増やしつつ、さらに家族の負担も減らすことができます。

介護施設というと、要介護度が高い人向けで費用が高い住居をイメージしがちですが、そこまで介護度が高くない人にも対応でき、尚且つ費用を抑えられる住居があるのも事実です。

学研ココファンでは、サービス付き高齢者向け住宅を中心に、安心のサービスと手頃な費用を実現した住居を多数紹介しているため、ぜひチェックしてみてください。

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認知症予防⑤:知的行動の習慣

買い物をする高齢者

学習活動や脳を使う趣味を持っていると、脳に良い刺激を与えることができます。

家事や買い物など、自分ができる簡単な家事をこなすことで、身体を使うだけでなく脳に良い影響を与えられます。

しかし、自分が全く興味がない脳トレーニングや学習は長続きせず、ストレになってしまいかねません。

そのため、自分が興味がある分野の知的行動を積極的に取り入れて、無理のない範囲で取り組みましょう。

認知症予防に効果的な学研の「脳元気タイム」

学研のデイサービスで行う「脳元気タイム」は、認知症予防はもちろん、進行抑制にも効果的なプログラムです。

東北大学と共同開発した、脳を活性化させるアクティビティを行うことで、大脳・前頭前野のトレーニングを効果的に行うことができます。

楽しく脳機能向上が望める、最適なプログラムを提供しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

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認知症が気になったら長谷川式などでテストしよう

物忘れなどが目立つようになったら、まずは「自分は認知症であるかもしれない」と自覚することが大切です。

気になったらすぐに認知症の検査を受けて、症状の進行具合などを確認しましょう。

代表的な認知症検査としては、改訂版長谷川式簡易知能評価スケールとMMSE(ミニメンタルステート検査)

が挙げられます。

他にも様々なテストがあるので、複数のテストを受験して認知症のチェックをしてみてください。

早期発見で認知症の進行を防ごう

認知症対策は、できるだけ早く発見して、早い段階から対応を行うことが非常に重要です。

そのため、物忘れが激しくなるなどの自覚症状があり、少しでも「認知症かもしれない」と感じたら、MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールなどの検査や診断を受けることをおすすめします。

発見が遅れてしまうと、予防策の効果も薄れてしまい、本人や家族の負担が重くなってしまいます。

先程紹介した認知症検査を受ける際には、かかりつけ医や役所の窓口、地域包括支援センターなどに相談しましょう。

若い人でも認知症は要注意

前述したように、若年性アルツハイマーという病気があるので「自分は若いから大丈夫」と高を括るのは危険です。

特に、若い人の中には食生活が乱れ、夜型の生活を送っている人が少なくありません。

すなわち、認知症の原因となり得る生活習慣を送っているので、若いからと言って油断しないようにしましょう。

また、若い頃の生活習慣を中高年になってから変えるのは難しいので、やはり若い段階から規則正しい生活を送ることが重要です。

若い時間を楽しみながら生活習慣を整え、豊かな人生を送れるようにしましょう。

多くの人脈を作り、健康的な食生活を意識して、たまにお酒などを楽しみながら中高年になっても健康を維持できるように意識してみてください。

認知症予防まとめ

認知症予防まとめ
  • 認知症や若年性アルツハイマー予防は、食生活を見直し運動を取り入れるのが効果的
  • 特に、散歩は手軽にできるので非常におすすめ
  • 不安がある場合は、MMSEや長谷川式簡易スケールを活用してチェックしよう

認知症や若年性アルツハイマーになると、本人や周囲の人の負担を増やしてしまいます。

重症化を防ぎ、症状の進行を遅らせるには早い段階から長谷川式簡易スケールなどを活用してセルフチェックしたり予防することが非常に重要です。

認知症に関する不安がある方は、こちらの記事で紹介した食生活の改善や運動習慣の取入れなどを実践してみてください!

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター副センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 准教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

監修医師の所属病院ホームページはこちら 監修医師の研究内容や論文はこちら

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