介護老人保健施設における医者の業務内容は?老健で働くメリット・デメリットを解説
更新日時 2023/12/13
「老健での医師はどんな仕事をする?」
「老健医師は医療行為はないけど、どんな人が向いている?」
老健は在宅復帰を目指す人が利用する介護保険施設です。
老健の運営母体となるのは、病院などの医療機関が行っています。
老健では、入居定員100名に対して必ず1名の常勤医師の配置が介護保険法で定められています。
老健で勤務する医師は、病院で勤務する医師とは異なった仕事内容になるため、やりがいと魅力のある仕事として人気があります。
この記事では、老健で勤務する医師の仕事内容や、メリット・デメリットなど、詳しく解説していきます。
- 老健には必ず1名の医師が配置される
- 老健の医師は施設長を兼務するため、病院医師とは異なる仕事を実施する
- 50歳以上の経験豊富な医師が求められる業界である
介護老人保健施設(老健)での医者の役割
通称「老健」と呼ばれる、介護老人保健施設では、要介護者の在宅復帰を支援する施設で、病院と居宅の中間施設として位置づけられています。
老健で提供されるサービスは、在宅復帰に向けたリハビリが中心となり、特別養護老人ホームなどの介護保険施設ほどの介護が必要な方の入居は基本的にありません。
そのため、他の介護保険施設よりもリハビリ専門職の配置が充実しており、他の介護保険施設よりも多様な職種のスタッフが勤務している特色が強い施設です。
老健医は常駐で施設長も兼務し、施設を統括する
老健で勤務する医師は、施設長を兼務している場合が多く、医師としての役割の他に、施設を統括する立場の管理職として勤務することになります。
そのため、施設の財務管理や人材管理なども施設長である医師が行います。
老健で勤務する医師の勤務形態としては、常勤が93.4%で非常勤が4.0%となっており、常勤として勤務することがほとんどです。
介護保健法でも、入所者100名に対して常勤医師を1名以上配置することが義務付けられており、老健で勤務する場合の医師は常勤として勤務していることが一般的です。
出典:公益社団法人 全国老人保健施設協会 「介護老人保健施設が持つ多機能の一環としての看取りのあり方に関する調査研究事業
老健で勤務する医師の重要な役割には、適切なリハビリが行えるように入居者の状態を把握し、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職や看護師、介護士などの適切な指示を出すことにあります。
また、入居者が入居中も在宅復帰を実現したあとも、穏やかな日常を送れるよう、健康管理や健康相談も重要な職務です。
老健医の仕事はきつい?
老健で勤務する医師は、通常1人体制であることが多く、病院で勤務する医師とは取り巻く環境が異なるため、きつく感じるかもしれません。
しかし、老健は他の介護保険施設に比べると、要介護度が比較的低い方が多いことや、医療行為も少ないため、病院で勤務するよりきついとは言い切れません。
また、基本的に老健で勤務する医師は、残業や当直がありません。
土日出勤もほとんどないため、心身の負担は低くなります。
病院で勤務している場合には、オンコールや緊急時の対応などもありますが、老健で勤務する医師は、緊急時に何かあっても、医療行為を老健で実施することが出来ないため、在宅で施設スタッフに指示を出すことも可能です。
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老健での医者の業務内容
老健の医師は入居者の健康管理や健康相談を実施し、理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフや、介護スタッフに適切な指示を出すため、入居者の正確な心身の状態を把握することが求められます。
老健で勤務する医師は、施設長としての側面もあり、健康管理などの仕事以外にも、仕事内容は多岐に渡ります。
この見出しでは、老健で勤務する医師の業務内容を詳しく解説していきます。
健康管理や健康指導
老健で勤務する医師の業務の中心となるのは、入居者の健康管理や健康指導です。
老健に入居している方は、病院での専門的な治療は終了しているため、老健に入居中は継続して本格的な治療を実施することはありません。
しかし、現状では自宅に戻って生活出来るほど回復しているわけではない、という状態の方が入居されています。
このような入居者に対して、入居中の健康管理を実施し、適切な機能訓練が行えるように作業療法士や理学療法士などのリハビリ職員に指示を出したり、入居中や退去後の健康維持に繋がる健康指導を実施します。
老健では入居者に対して本格的な治療をする場ではありません。
そのため、医師も健康管理などが中心となり、医師として治療をすることはないのです。
もし仮に老健で本格的な治療が必要になった入居者がいる場合には、医師は治療ではなく、医療機関にかかるための手配を行います。
職員の配置の決定
老健を管理する運営母体は医療法人になるため、医療法人としての理事長が在籍しています。
しかし、老健にいるのではなく、運営母体となる病院にいることが一般的です。
そのため、老健の運営に関することは、施設長となる医師に任せられます。
老健で働く医師は施設長として、老健で働く職員を取りまとめる人材管理が必要になり、配置基準に基づいた人材を配置することも職務となります。
介護士や看護師に対する指示
老健で働く医師は施設長でもあり、老健のトップに立つ立場になります。
老健で勤務するスタッフが快適に働けるように環境を整えたり、スタッフに指示を出したりするのが医師の仕事になります。
特に機能訓練にあたる理学療法士などのリハビリスタッフや、看護スタッフは医師の指示のもと、入居者の支援にあたるため、医師からの指示は非常に重要です。
介護スタッフも適切なサポートを行うために、医療職との連携が大切です。
様々な立場の職員がいることに配慮した指示を出す力が求められます。
施設の財務管理・運営
老健で勤務する医師は、施設長にもなり管理職として老健で勤務することになります。
財務管理などの事務も医師の仕事になります。
老健では、入居者1人あたり1ヵ月の売上が20万円ほどになります。 他にも、光熱費やオムツなどの備品、食費など、様々な費用がかかります。
また、職員の人件費などもあるため、施設全体の運営や財務管理は重要な職務です。
入居者の受け入れの決定
老健は入居条件に合致すれば誰でも入居出来るわけではありません。
入居条件を満たしている上で、介護と医療の間にあたる、適当な入居者のみ受け入れが可能です。
入居希望の人は、面談や施設見学を実施し、施設内で入居判定会議を実施します。
入居判定会議には、医師の他に、介護・看護・リハビリ分野の管理職や、事務長などが参加し、入居させるかを検討します。
最終的な判断は医師が決定します。
そもそも介護老人保健施設(老健)とは?
そもそも老健とはどのような施設なのか、この見出しでは老健の概要や特養との違いを詳しく解説します。
介護老人保健施設(老健)の概要
通称「老健」と呼ばれる介護老人保健施設は、病気や怪我などが理由で自宅を離れて病院などに入院していた高齢者が、リハビリなどの機能訓練など、様々なサービスを通して在宅復帰を目指す入居型の施設です。
入所条件になるのは、
- 65歳以上
- 要介護度1以上
という入所条件が定められており、入所期間は3ヵ月~6ヵ月で、終身利用は出来ません。
老健は入所期間があることで、比較的入居を希望したときに入りやすい介護保険施設でもあります。
施設の人員基準の目安は以下の通りで、それぞれ入所定員100人あたり配置が義務付けられている人員になります。
- 医師1名
- 看護師9名
- 介護職員25名
- 機能訓練士(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか)1名
- 介護支援専門員1名
- 栄養士
- その他支援相談員など
上記からもわかるように、老健には医師や看護師といった医療スタッフ以外に、機能訓練士や介護士といった様々な職種が勤務しています。
医師を1名配置することは、介護保険法によって定められています。
また、在宅復帰を目指し機能訓練を行う施設であることから、リハビリ専門職の配置が義務付けられています。
老健退所後も、要介護者の居宅生活を支援し、家族の介護負担を軽減する目的で、ショートステイや通所施設、訪問リハなどを併設している老健もあります。
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特別養護老人ホーム(特養)との違い
通称「特養」と呼ばれる特別養護老人ホームは、
- 自宅での生活が困難
- 要介護度3以上
という高齢者が入居する施設です。
老健に比べると条件が重くなり、特養のほうが重度の介護を必要とする現場になります。
入居期間は老健が3ヵ月程度と定められていますが、特養は期間に定めがなく、終身利用することが出来る施設も多く存在し、一般的に特養は1度入居すれば障害利用することが出来る施設です。
入居期間に決まりがないことから、入居に空きがなく、地域によっては数年待つ場合もあります。
特養は入居待機者も多いですが、老健は比較的少なく、老健から特養に入居を待つ人もいます。
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老健の医師として働くメリット
この見出しでは、他の施設にはない老健で勤務する医師特有のメリットを解説します。
自分のペースで勤務ができる
老健では医師が施設長として勤務することが多いです。
そのため、自分の理想とする職場を実現することが出来たり、自分のペースで勤務することが出来ます。
老健では比較的介護度が軽い高齢者が入居するため、介護的負担も少なく勤務が出来ます。
また、老健の医師は基本的に定時で帰ることが出来たり、当直がなかったりするため、体力的に負担が少ないのも特徴です。
入居者の急変がある場合もありますが、老健の医師は原則医療行為を行わないため、治療そのものを実施せずに治療を受けさせる段取りを調整します。
医療行為がないので、プレッシャーを感じることが少なく、長時間勤務もないことから、自分のペースでゆとりを持って働くことが出来るのがメリットです。
定年を過ぎても勤務できる
一般的な病院などに勤務する医師の場合、多くの医療機関で65歳を定年としている医療機関が多くあります。
しかし老健の場合は、定年を定めていない施設が多いのが特徴です。
ある老健勤務の医師の求人では、応募年齢を99歳までとしている例もあるようです。
99歳までとする例は稀ですが、応募年齢を75歳以上まで可能としている求人は多くあり、医療機関の医師を退職したのち、セカンドキャリアとして老健で勤務することも可能です。
老健で勤務する医師は、専門的な医療対応が不要で、救急対応もないため、医師の心身の負担がなく働けることから、一般的な65歳の定年を迎えたあとでも働きやすい職場といえます。
また、老健での勤務は医療スキルよりも豊富な経験や対人スキルを重視されるため、定年を過ぎても長く働くことが出来ます。
患者と深い関係を築ける
病院に入院中は、医師から直接受ける健康指導や回診は、せいぜい1~2回とあまり多くの時間は取られことはありません。
しかし、老健に入居中は医師の健康管理と健康指導が日常的に行われており、医師が入居者の居室を訪れることも多くあります。
病院では外来診察や手術などの業務が中心となるため、1人の患者にかかわる時間に限りがありますが、老健は1人の入居者と長く関わる時間を持つことが出来ます。
病院では実現できない、入居者との深い関係を築くことが出来るのが、老健で勤務する魅力でもあります。
どの地域にも老健がある
老健は、都市部や主要都市に限定された入居施設ではなく、全国のあらゆる場所に存在する介護保険施設です。
そのため、老健で働きたいと考えていても、老健がある地域に限定して暮らす必要はありません。
現役の病院医師として勤務を終えたら、田舎に帰ってゆっくり暮らしながら老健で勤務したい、という思いも叶えることが可能です。
地域を限定されずに働けるので、ライフワークバランスを保ちながらの勤務も可能になります。
他の医療機関では身につかないスキルを身につけられる
老健での勤務は、医療行為を行うことがほとんどないため、医師としてのスキルアップは望めません。
医療行為を実施することがないことから、満足できない医師もいるでしょう。
しかし、医療機関で勤務することでは望めない、介護やリハビリの知識をしっかり身に付けることが出来ます。
老健は様々な業種のスタッフがいる中での勤務になるので、多方面からの知見を得ることにも繋がります。
また、施設長として管理するスキルを身に付けることも出来ます。
プライマリ・ケアの専門性を高めたり、コミュニケーション能力を鍛えることが出来るのも、老健で勤務する医師の魅力といえます。
老健の医師として働くデメリット
老健の勤務にはデメリットも存在します。
この見出しでは、老健の医師として働くデメリットを解説します。
医療行為のスキルアップは望めない
老健での勤務する医師は、原則医療行為を行うことがありません。
そのため、医師としては物足りなさを感じる方もいるでしょう。
老健で医療行為が原則ない理由としては、老健で医師が医療行為をすることで、老健の医療の持ち出しが多くなり、病院との差別化が難しくなることがあります。
また、老健で医療提供もしてしまうと、費用がかかってしまうといった問題があります。 新たに医療機器などの設備も必要になるため、制度的にも現実的にも難しい問題です。
老健に入居する方に専門的な治療が必要だと判断した場合には、その場で治療を実施せず、医療機関に送る段取りを調整するのが老健の医師に役目になります。
したがって老健で勤務する医師は、医療面でのスキルアップの機会を得ることが難しいのです。
求人が少なく、非公開のものも多い
1つの老健で勤務出来る医師は1人です。
そのため、老健で勤務する医師自体が少なく、求人数が非常に少ないです。
また、老健で勤務する医師は、自身の健康が続くかぎり働くことが出来るため、1度埋まった医師のポストがいつ空くかは分かりません。
医師として働く条件としては、老健での勤務はメリットが多く、近年は老健の医師を狙う方も増えています。
就きたいと思ってなれるものではないため、条件が良い老健の医師の応募は殺到することを避けるため、非公開求人として取り扱っていることがあります。
人間関係が難しい
老健で勤務するデメリットとして多くあげられるのが、人間関係を保つことの難しさです。
老健には、医療スタッフだけでなく、介護スタッフ、リハビリスタッフ、薬剤師や管理栄養士といった様々な職種の人が勤務しています。
それぞれの賃金や勤務形態、学歴や過去の経歴も様々です。
こうした様々な職員が同じ職場で勤務することで、提供するサービスに対する思いや考え方も異なるため、スタッフ間でのもめ事も少なくありません。
両者の話し合いで解決しない場合には、施設長となる医師が間に入ることもあります。
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老健の医者にはどんな人が向いている?
老健で医師として勤務するには、老健の特色も理解した上で勤務することが求められます。
そのため、老健での勤務が向いている人が見えてきます。
この見出しでは、老健で勤務する医師に向いている人の特徴を紹介します。
コミュニケーション能力が高い医師
老健で勤務する医師は、施設長を兼務する場合も多く、様々なスタッフを取りまとめる立場として、コミュニケーション能力を求められます。
老健は施設の特徴から、リハビリスタッフ、介護スタッフ、医療スタッフと様々な職種や専門領域、様々な経験を持った職員が働く施設です。
それぞれの立場に配慮して、円滑にサービス提供ができるように良好な関係を築く必要があります。
スタッフだけではなく、入居者の状態を適切に把握し、信頼関係を築くためにも、医師のコミュニケーション能力が必須ともいえるのが老健です。
50歳以上の経験豊富な医師
老健の入居条件は65歳以上となるため、高齢の入居者に対して、医師は経験に基づく高齢者への理解が必要です。
また、様々な職員が勤務する中でそれぞれの職員を取り持ち、中立の立場として対応出来る人間力も求められます。
老健スタッフの中には介護の仕事が未経験の50代以上のスタッフも多いため、介護職員がミスなく仕事が出来るように、柔軟な対応が必要です。
老健では本格的な医療行為こそないものの、原則1人での勤務になるため、いかなる状況にも対応できる医師としての知識やスキルが必要です。
このような環境下で勤務するため、あらゆる場面で細かい気配りが出来るベテラン医師が歓迎される傾向にあります。
利用者にしっかり向き合いたい医師
病院勤務で「患者とゆっくり向き合う時間がない」ことが不満に感じているなら、老健での勤務が向いています。
病院勤務は、治療以外にも多くの時間を要するため、患者1人1人にじっくりゆっくり向かい合う時間をしっかり取れない場合もあります。
また、患者との関わりには、看護師も間に入ることから、患者を直接治す実感が得られない場合もあります。
老健の場合は、医師は医療行為を行わないため、治療することはありません。
健康相談や健康観察が主な仕事になり、入居者の部屋に行くこともあります。
コミュニケーションをしっかり取れる時間があるため、患者としっかり向き合いたい方に向いている職場です。
自分のペースで働きたい医師
老健での勤務には、当直がありません。 オンコールや、緊急対応もないため、ゆったり勤務したい医師におすすめの職場です。
土日祝日に休みを取ることも可能なので、プライベートとのバランスを取りやすい職場です。
- 病院の激務に疲れた
- 開業するリスクを負いたくない
- 当直やオンコールにうんざり
という医師は、老健での勤務は自分のペースで勤務出来るおすすめの職場です。
プライマリ・ケアの経験が豊富な医師
身近な存在でなんでも相談に乗ってもらえる総合的な医療として、プライマリケアの経験が豊富な医師は、老健での勤務に向いています。
老健では、入居者の心身の健康を良好に保つために、予防医療や公衆衛生が重要です。
老健で病気を診たり、治療にあたることはありませんが、予防医療の観点からも、老健で働く医師は幅広い対応をした経験があり、問診や触診、視診などのフィジカルアセスメントに慣れていることで、老健医師として活躍の場が広がります。
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老健の医師の役割や仕事内容についてまとめ
- 老健で勤務する医師は責任者としてスタッフを取りまとめる立場になる
- 老健医師は医療行為がないため医師として満足しない場合もあるが、ゆっくり働けるやりがいの多い職場
- 老健医師の求人は人気なため、非公開求人として扱われることが多い
老健医師は、入居者の健康管理や健康相談が仕事の中心となるため、医療行為を行うことがなく、医師として満足できない職場になる人もいるかもしれません。
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