【医師監修】認知症になりやすい人の特徴は?性格や口癖・生活習慣などについて解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「認知症になりやすい人の特徴について知りたい!」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

高齢化に伴って誰しもが発症する可能性がある認知症ですが、なりやすい人の性格については一定のデータがありません。

逆になりにくい人の性格については科学的な報告がありますので、紹介したいと思います。

こちらの記事では、認知症になりにくい人の特徴について解説していきますので、参考にしてください。

認知症になりにくい人の特徴についてざっくり説明すると
  • 誠実で責任感の強い人
  • ストレスに強く、くよくよしない人
  • 生活習慣病がない人

認知症を完全に予防するのは不可能

高齢者の人口が増えたこともあり、認知症に関する問題や今後の課題について目にする機会が増えています。

誰しもが恐れている認知症ですが、残念ながらこれらを完全に予防することは不可能です。

老化に伴って脳機能や身体機能は衰えるため、これに伴う認知症を確実に予防することは今のところ困難と言えます。

しかし、食生活や運動習慣をはじめとして生活習慣を改めることで、ある程度は認知症を予防することができることも分かっています。自分の生活習慣を見直し、認知症のリスクを軽減させるための努力は意義深いでしょう。

自分の生活を見直しつつ、早い段階から認知症の予防を心掛けて発症するリスクを抑えていきましょう。

では、どんな人は認知症になりにくいのでしょうか?

認知症になりにくい性格とは?

責任感のある人

責任感、自制心、勤勉さなどがある人は認知症になりにくいとの報告があります。(Sutin AR, et al. Psychological Medicine 48(6): 974-982, 2018)

また逆に、神経症の傾向があり、誠実性が低いと認知症を発症しやすく、なかでも誠実性が低い人は認知障害から認知症に発展しやすいとの報告もあります。(NEJM Journal Watch 2017)

ストレスの影響

ストレスの影響

強いストレスは過剰なホルモン分泌によって脳細胞が影響を受け、認知力が低下することも起こりえます。ストレスに強い人は認知症になりにくいと言えるでしょう。

ストレスをあまり感じない生活習慣を作ることは大切です。・

誠実で開放的な人は周囲と良好な人間関係を築きやすく、ストレスを溜めることなく日常生活を送ることができます。

逆に、ストレスを感じやすい人は脳にダメージを負いやすいので、要注意と言えるでしょう。

認知症にはお酒やスマホも影響

認知症は高齢者がなる病気と思われがちですが、生活習慣が乱れていたり脳を使う機会が少ないと、若者も認知症を発症することがあります。

スマホが影響する認知症

スマホは非常に便利なアイテムとして、生活に欠かせない存在です。

知りたいことは何でもスマホで検索すれば出てくるので、自分で考える習慣が無い若者も多いでしょう。

近年は「スマホ依存症」が社会問題となっていますが、IT機器を長時間使用することで脳機能が低下してしまうことが分かっています。

スマホの使用時間が長いほど脳は疲労してしまい、記憶したり思い出す機能が弱まってしまいます。これらはデジタル認知症と言われ、要注意と言えるでしょう。

アルコールが影響する認知症

過度の飲酒は血流に悪影響を与えてしまい、高血圧や糖尿病などの病気を誘発してしまいます。

高血圧や糖尿病や認知症との合併症として有名なので、これらの病気を予防することはすなわち認知症予防にも繋がるのです。

若い人の中には「自分はまだ若いから大丈夫」と思っている人もいますが、実際に生活習慣の乱れが原因でアルコール性認知症を発症している人は多いです。

適度に休肝日を設けるなどして、過度なアルコール摂取は慎みましょう。

生活習慣によっても認知症リスクは高まる

生活習慣と認知症の関連は深く、生活習慣が乱れていると認知症リスクが高まります。

アルツハイマー協会(Alzheimer's Association)は認知症リスクを減らすために改善するべき生活スタイルを10項目を提唱しています。

  • 健康的な食事
  • 適度な運動
  • 高血圧や糖尿病を治療する
  • 禁煙する
  • 十分な睡眠をとる
  • メンタルヘルスを大切にする
  • 社会的な交流を保つ
  • 知的な刺激を得る
  • 学習する機会を見逃さない
  • 交通事故に注意

以上の10項目は常に意識し、よりよい生活習慣を作っていきましょう。

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認知症発症リスクを高める病気

認知症を発症するリスクを高める病気も存在します。

以下で紹介する病気に注意を払い、健康寿命を延ばしていきましょう。

歯周病

「歯と認知症ってなんの関係があるの?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、歯周病予防は認知症予防にも繋がります。

歯周病はは口の中で多くの細菌が繁殖して歯肉の周りに炎症が起きる病気ですが、歯周病が進行すると歯を失ってしまうこともあります。

歯を失うと噛む力が弱くなり、食事の際に噛むことによって脳の中枢神経に与えていた刺激が無くなってしまい、認知症の発症リスクを高めてしまうのです。

2019年にはアルツハイマー病の患者の脳から歯周病菌が見つかったと報告されています。この歯周病菌は「ジンジパイン」という酵素を出して、脳の海馬を破壊していました。 (Dominy SS, et al. Sci.Adv 5(1):eaau3333, 2019) 歯周病がアルツハイマー病の原因になることを示した重要な報告です。

口臭が歯周病発見のきっかけになることもあります。 定期的に歯医者に行くなど口腔ケアをしっかりと行い、歯周病にならないように気を付けましょう。

糖尿病

糖尿病と認知症の関連性が深いことは知られていますが、糖尿病を抱えている方はアルツハイマー病に約1.2~2.3倍なりやすいと言われています。(日老医誌 47: 385-389, 2010) 糖の毒性によって蛋白が糖化しやすくなり、その結果に生じる酸化ストレスが神経細胞の変成に関与すると考えられています。

さらに、糖尿病にが引き起こすインスリン抵抗性の発症がアルツハイマー病の要因であるアミロイドβの蓄積を促すことも指摘されているので、糖尿病にならないような食生活を意識することが重要です。 すでに糖尿病の人は食事療法、運動療法、服薬治療などを指導に従ってきちんと行うことが何より大事です・

高血圧

高血圧も認知症と深い関係があります。

血圧が高いほど血管性認知症を発症しやすいという調査結果も出ています。久山町研究によれば、血管性認知症の発症リスクは、高血圧でない人と比較して、高血圧前症の中年期で2.4倍、老年期でで3.2倍と言われています。またステージ2の高血圧(収縮期血圧血圧160以上または拡張期血圧100以上)の中年期で10.1倍、老年期で老年期で7.3倍です(老年期認知症研究会誌 21(9), 2017)。

高血圧により動脈硬化が起きてしまうと、脳梗塞や脳出血などによって脳の神経細胞がダメージを受けしまいます。その結果、認知機能の低下をもたらしてしまうメカニズムです。

高血圧にならないように塩分を控えたり、ストレスを溜めないようにするなど、生活習慣を正すことが認知症予防につながります。

慢性腎臓病

腎臓機能障害を患っている人は、認知症のリスクが高くなるという調査結果があります。特に女性の慢性腎臓病は軽度の認知障害の進行が速いとの報告もあります。(日腎会誌会誌 58: 263, 2016)

慢性腎臓病が引き起こす高血圧・糖尿病・脂質異常症、酸化ストレスなどが認知症につながると考えられています。

肥満・運動不足・飲酒・喫煙・ストレスの蓄積などに心当たりがある方は、生活習慣を改めて慢性腎臓病予防に努めましょう。

認知症を予防する方法は?

それでは、認知症を予防するための具体的な方法について紹介していきます。

意識的に生活に取り入れて、健康寿命を延ばしていきましょう。

生活習慣の改善が予防には大切

認知症対策の新薬開発が進んでいないのと同様に、認知症予防の明確な方法についても不明点が多いです。

しかし、近年の研究では認知症の発症には「生活を取り巻く環境の影響が大きく関わっている」ことが分かってきています。

また、脳の状態を良好に保つためには、繰り返しになりますが食習慣や運動習慣を取り入れて日々の生活習慣を改善することが重要です。

以下では、食事・運動・社会活動・知的活動・睡眠の5分野に分けて予防策を解説してきますが、認知症予防の具体的な方法を実践するにあたっては以下の「認知症予防の10か条」を意識してみてください。

  • 第1条:生活習慣病を予防・治療する
  • 第2条:バランスのよい食生活で健康を保つ
  • 第3条:よく歩き、運動する
  • 第4条:過度の飲酒・喫煙に注意する
  • 第5条:活動・思考を単調にしないように努める
  • 第6条:生きがいをもつ
  • 第7条:人間関係を普段から円滑にしておく
  • 第8条:健康管理は自分で
  • 第9条:病気や障害の予防や治療に努める
  • 第10条:寝たきりにならないよう心掛ける

(出典:『認知症にならないための10か条』杉山孝博(川崎 幸クリニック院長)より)

食生活

認知症予防で最も大切なことは脳の健康を維持することですが、そのためには生活習慣病の予防と食生活の改善が欠かせません。

以下で紹介する食材は、医療機関による正式な調査によって一定の認知症が予防できるというエビデンスがあるものなので、積極的に摂取しましょう。

とはいえ、必ずしも全員の認知症予防に効果的であるとは限らないので、過信しないでください。

  • EPA(エイコサペンタエン酸)
  • DHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸
  • ポリフェノール、カテキン、ベータカロチンといった抗酸化物質
  • オレイン酸

具体的には、青魚や緑黄色野菜・果物が挙げられます。またオリーブオイルに含まれるオレイン酸は動脈硬化の予防効果があると言われています。

普段肉の食事が多い方や野菜不足の自覚がある方は、意識的に青魚や野菜を摂取するようにしましょう。

運動

認知症の予防には、軽い有酸素運動が非常に効果的です。

軽い運動をすることでストレスを発散することができ、また脳に適度な刺激を与えることができます。

ウォーキングやジョギングなど、体力に自信が無い人でも行える運動は多くあるのでぜひ日々の生活に取り入れてみてください。

できれば週1回以上のペースで行い、長続きするか不安な方は家族や友人を誘い、一緒に運動習慣を取り入れましょう。家族や友人と一緒に楽しみながら行うことで、モチベーションも高まりますね。

社会活動

週1回以上友人や知人と交流している方は、活動能力障害や死亡のリスクが低いとされています。

社会活動やコミュニティへ参加することで、生活にメリハリを持たせて前向きで積極的な気持ちになれるメリットがあります。

気持ちの面でメリットがあるだけでなく家族・隣人・社会との人間関係を良好に保つことでストレスを緩和し、認知症リスクを軽減できるのです。

知的活動

学習活動や趣味などの知的活動は脳に良い刺激にを与えることができるので、認知症リスクを軽減できます。

また、掃除や買い物などをこなすことで自立した生活を送れるので「自分のことは自分で行う」意思を持ちましょう。

さらに、自分で調理をするなどといった簡単な家事も脳に良い影響を与えるので、積極的にこなすようにしてください。

関心のない脳トレーニングや学習は長続きしない上に効果が期待できないので、自分が興味がある分野に関する知的活動に取り組むのがおすすめです。

睡眠

認知症予防に効果的な睡眠時間は約6~7時間程度と言われており、睡眠不足も過剰睡眠も良くありません。

中高年期(50歳、60歳、70歳)の時点で睡眠パターンが常に短い(6時間以下)の人は、認知症のリスクが30%高かったと報告されています(Sabia S, et al. Nat Commun 12, 2289, 2021)。 )

起きている間にアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβは増えますが、睡眠時間中に減ることが分かっています。

特に、質の良い睡眠ができれば脳内アミロイドβが脳の血管から脳外へ排出されると言われているので、量だけでなく質に関しても意識しましょう。

また、認知症の方は夜間の不眠とともに昼寝時間が増え、昼夜が逆転した不規則な睡眠リズムに陥りがちです。

そのため、もし認知症を発症してしまった場合は「日中に刺激を与えて覚醒させる」「規則正しい生活リズムを保つ」「夜間睡眠の妨げになる原因をなくす」ことを心掛けましょう。

健康診断や人間ドックでは血糖に注目

健康診断や人間ドックの結果を受け取ったら、自覚症状がなくても隅々までチェックしましょう。

中でも、血糖レベルが比較的高い状態を放置してしまうと、糖尿病・認知症・がん・フレイルなどのリスクが高まることが分かっているので、血糖に関しては必ずチェックしてください。

30歳代から高めの血糖レベルである結果が出ていたものの放置してしまい、数年後に改めて病院で検査したところ、想像以上に症状が進んでいたというケースは多くあります。

「もっと早い段階で来院していれば」と嘆く医師も多いので、血糖値に少しでも以上がある場合は早めに医療機関でチェックしましょう。

なお、日本生活習慣病予防協会は高血糖が継続して体への悪影響が蓄積することを「血糖負債」と名付け、注意喚起と周知を進めています。

繰り返し述べているように、糖尿病と認知症は関連が深いので、高血糖状態が続くと認知症のリスクを高めてしまうことになります。

血糖負債の蓄積を防ぎ、早い段階から生活習慣の改善に着手することは非常に重要です。

仕事に忙しい人は、健康診断の結果の総合評価だけ見て細かい数値を隅々まで見ない人も多いでしょうが、忙しい人こそ結果を細かくチェックすることを心掛けてください。

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認知症になりやすい人の特徴まとめ

認知症になりやすい人の特徴まとめ
  • おおらかに誠実に生きれば認知症リスクは軽減できる
  • 生活習慣を改めつつ、リラックスして生活することが重要
  • 健康師団や人間ドックの結果は必ず確認し、懸念事項があれば必ず医療機関を受診しよう

また、生活習慣が乱れていると、認知症を発症リスクが高まるので要注意です。

健康寿命を延ばすためには、積極的な自己ケアが重要です。

完全に認知症を予防することはできませんが、自助努力することで一定の予防は可能なので、ぜひこちらの記事を参考にして健康寿命を延ばしていきましょう。

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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