アルツハイマー型認知症とは?症状や原因・患者さんへの対応法をわかりやすく解説!

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「アルツハイマー初期症状の特徴は?」

「予防策はある?」

アルツハイマー型認知症とは、記憶障害などさまざまな症状があらわれるものですが、誰でも発症リスクがあり、年々増加傾向にあると言われています。

今後も発症者が増えるであろうアルツハイマーについて、症状の特徴・治療法・対応方法、発症から寿命までの経過などを紹介します。

アルツハイマー型認知症の症状・原因・患者さんへの対応法についてざっくり説明すると
  • アルツハイマーの発症にはアミロイドベータが関わっている
  • 記憶障害・見当識障害・もの忘れ等さまざまな症状
  • 誰にでも発症リスクがあり、予防が必要

アルツハイマー型認知症とは?

ぼけた老人

アルツハイマー型認知症というワードは、今や世間に広く知られていますが、実際にどのような病気なのでしょうか。

以下では、アルツハイマー型認知症について解説します。

アルツハイマー型認知症の特徴

認知症は病名ではなく、何らかの原因により記憶・認識・判断などの認知機能の低下が起き、生活に支障をきたしている状態を指す言葉です。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番患者数が多い認知症であり、男性よりも女性に多く見られるという特徴があります。

また、アルツハイマー型の患者数は、脳血管性認知症の患者数が横ばいであるのに対して増加傾向にあり、今後さらに患者数が増えていくでしょう。

アルツハイマー型認知症ともの忘れの違い

は、アルツハイマー型認知症とよく勘違いされるのが、加齢によるもの忘れです。

しかし、アルツハイマー型認知症のもの忘れと加齢が要因のもの忘れには、大きな違いがあります。

認知症でみられる「もの忘れ」 年齢に伴う心配いらない「もの忘れ」
内容 自分の経験した出来事を忘れる 一般的な知識や常識を忘れることが多い
範囲 体験したこと全体を忘れる 体験の一部を思い出せない
最近の出来事を思い出せない
覚えていたことを思い出せない(ど忘れ)
ヒントを与えると ヒントでも思い出せない ヒントで思い出せることが多い
記憶障害の進行 ゆっくり進行していく 急激な進行·悪化はあまりない
自覚 自覚していない(病識なし)
深刻に考えていない
自覚しており、必要以上に心配する
日常生活 支障あり 支障なし
その他の症状 なくし物を誰かに盗られたという) なくし物を自分で探そうとする

アルツハイマー型認知症のもの忘れは、喪失する記憶の範囲が広く、忘れた内容に対して思い出しにくい・徐々に記憶障害が進行することなどが特徴で、進行しにくい加齢によるもの忘れとは違いがあります。

軽度認知障害(MCI)との関連は?

軽度認知障害とは、認知症の一歩手前の状態です。

軽度認知障害はMCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれます

MCIでは、認知症における物忘れのような記憶障害が出るものの症状はまだ軽く、正常な状態と認知症の中間と言えます。

よって、アルツハイマー病におけるMCIとは、アルツハイマー型認知症になる一歩手前の段階であると言えるでしょう。

これまでの研究の結果では、MCIの段階でもアルツハイマー型認知症と同様にその原因である脳内アミロイドベータの蓄積が認められました。

セルフチェックとしては

  • 客観的に1つ以上の認知機能(記憶、言語、実行機能、見当識など)の障害がある
  • 日常生活動作は保たれている。

などの状態があればMCIの可能性があるので注意しましょう。 記憶障害を伴う伴うMCIはアルツハイマー型認知症や血管性認知症に移行しやすいと言われていますが、正常に回復する人もいます。

若年性アルツハイマーについて

認知症は、高齢者だけに限らず若い年齢でも起き、64歳以下で起こる認知症を若年性認知症といいます。若年性認知症は日本では、血管性が多く40%、次いでアルツハイマー型が25%を占め、高齢発症の場合と進行の違いがあります。 18歳での発症例もあり、どの年代にもにでも起こりうる症状です。

患者数は、厚生労働省補助事業の調査結果から全国で1万人弱と推計されます。

認知症対応可能な介護施設はこちら!

アルツハイマー型認知症の原因は?

アルツハイマー型認知症の原因は、諸々の説があります。

中でも最も有力な説とされているのが、脳に異常に溜まったアミロイドβやタウというたんぱく質が原因となるものです。

脳に溜まったこれらのたんぱく質は、脳細胞を圧迫し神経細胞を変性させたりして、脳の全体を萎縮させると考えられています。

ただし、このような有害なたんぱく質がなぜ脳に蓄積してしまうのかということは、未だ解明されていません。

年齢

アルツハイマー最大の危険因子となるのは加齢です。

アルツハイマー病と診断された人の大半は、65歳以上の高齢者であり、日本の人口の1/4は65歳以上であることもアルツハイマー患者が増加している要因だと考えられます。

しかし少ないものの、65歳以下で認知症を発症する若年性発症型アルツハイマー病(早期発症型アルツハイマー病)もあり、アルツハイマーを引き起こす原因と加齢だけではないようです。

遺伝

アルツハイマーの危険因子には遺伝も考えられます。

親または兄弟など家族にアルツハイマー病の患者がいる場合、一親等にアルツハイマー病の患者がいない人よりも、この疾病に罹る可能性が高いです。

現代の医学では十分に解明されていませんが、アルツハイマーの発症には、遺伝・環境因子・生活様式などが影響しているのではないかと言われています。

また「apoE-ε4」という遺伝子がアルツハイマー病に関連する危険因子とされています。これを保持している人の25%(4人に1人)がアルツハイマー病を発症したと報告されています。

心血管疾患

脳の健康と心臓の健康には一見関係性がないように思えますが、アルツハイマー型認知症の危険因子は、心臓の疾患もそのひとつです。

アルツハイマー型認知症あるいは脳血管性認知症は、心臓や血管に影響するする多くの疾患によって発症の危険性が高まることがわかっていて、実は強い関係性があります。

アルツハイマー型認知症あるいは脳血管性認知症における発症の危険性は、心臓や血管を破損する多くの疾患(高血圧・心臓疾患・脳卒中・糖尿病・高脂質症など)により高まるでしょう。

喫煙

喫煙とアルツハイマー病も関連が強いです。

心疾患など生活習慣病が認知症の発症につながる可能性があるのと同じように、生活習慣病の要因となる喫煙も認知症発症の危険因子であると言えるでしょう。

喫煙による酸化ストレスは、動脈硬化症と関連して血管性病変につながり、神経変性の進行にも悪影響を及ぼすことがわかっていて、これらがアルツハイマー型認知症を引き起こします。

また喫煙にともなう一酸化炭素ヘモグロビン血症も認知機能低下のリスク要因です。

教育

アルツハイマー型認知症発症の原因には、教育を受けた年数も深く関係しています。

とある研究によって、学校教育を受けた年数が短いほどアルツハイマー病およびその他の認知症のリスクが増大しているという結果が発表されました。

アルツハイマーと教育年数の関連は、理由についてははっきりしませんが、一部の研究者は学校教育を長く受けることでニューロン間の接続が増加するため、アルツハイマー病などの認知症によって脳に変化が起こった場合でも、ニューロン間の代替経路を使用することができるためではないかと考えており、学校などの教育を長く受けた分、認知症のリスクが減少すると言えるでしょう。

頭部外傷

重度の頭部負傷もアルツハイマーと関係が深いと言われています。

とくに、頭部の負傷が一度きりではなく何度も繰り返し発生したり、負傷の際に意識が喪失したりした場合は、タウが過剰に蓄積し将来的なアルツハイマー型認知症を発症する可能性が上がるでしょう。

重度の頭部負傷を防ぐための対策としては、

  • 運転の際はシートベルト装着(同乗者も)
  • スポーツ参加はヘルメット着用
  • 自宅を転倒防止設計にする

頭を守るための安全策は、アルツハイマーなどの認知症予防につながります。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の症状には、大きく分けて中核症状とBPSD(行動・心理症状)の二つがあります。

中核症状とは、記憶障害など認知症では必ず現れる症状のこと、BPSDは、不眠など精神科領域にあたる症状で、中核症状に付随して症状が現れます。

初期の症状

アルツハイマー初期症状では、身辺の自立は可能だがそれ以外に多くの症状が見られる状態になります。

記憶障害

初期症状では、置き忘れ・片付けたことを忘れるなど、常に探し物をしていることが増えます。

他にも、ついさっき話した人の名前を忘れる・新しいことが覚えられない(記銘力障害)・物の名前を思い出せない(健忘性失語)など、言葉に関する記憶の喪失が特徴的です。

実行機能障害

初期症状では、計画を立てて順序よく物事を行うことができなくなる実行機能障害が起きます。

例えば、料理の手順がわからなくなり味付けが変わる、バスや電車に乗り遅れるなど、毎日当たり前に行っていることの順序が混乱するなどの症状です。

時間の見当識障害

アルツハイマー初期には、時間の見当識障害も見られます。

今日が何月何日なのかわからない、何度も時計を見ているのに時間の感覚がなくなるなどの場合、見当識障害に当てはまる可能性があるでしょう。

自発性の低下

自発性の低下もアルツハイマーの初期症状としてあります。

自発性の低下とは、自分で考えて行動することができなくなることで、周囲からは「だらしない」と言われることも多くなるでしょう。

物盗られ妄想・被害妄想

アルツハイマー型認知症では、初期~中期に「財布を盗まれた」などの被害妄想が現れることがあります。

実際には起きていないこと・起き得ないことを疑うような事があれば、認知症の進行が疑われます。

中期の症状

アルツハイマー中期では、初期に比べて介助が必要になるほどの状態になることも多く、「真夏に冬物の衣服を選ぶ」などの行為によって他人に指摘されて認知症に気づく場合もあるでしょう。

また、深刻さは乏しく多幸状態になることもあり、精神面にも影響が出てくる時期です。

場所の見当識障害

家の近所でも迷子になってしまうなど、場所の見当識障害は中期で多く見られる症状です。

自宅のトイレの場所がわからなくなるなど、明らかに健常な状態とは異なる状態にあります。

他にも、自宅にいるのに「家に帰ります」などと言い出す、自分のいる場所が説明できないなどの症状があれば注意が必要です。

失認・失行

初期に比べ中期では、失認・失行が見受けられます。

アルツハイマー中期では、日常的な動作ができないほどの症状の進行が見受けられ、時計の文字盤が読めない・はさみなどの使い方がわからなくなる・服を着ることができなくなるなどの症状が見られるでしょう。

他にも、それまで当たり前にできていた動作が急にできなくなる症状が中期では見られます。

失語

アルツハイマー型認知症の症状には、よく失語の症状も見られます。

失語の症状とは、具体的にいうと

  • 見えているもの・聞こえている音が何なのか認識できない
  • 言われたことを理解できない・理解してもすぐに言葉が出ない
  • 話すスピードは速く流暢に話せるものの言い間違いが頻発

などです。

ほかにも、反響言語(言葉のオウム返し)・保続(同じ言葉を繰り返して会話が進まない)・語間代(語尾や言葉の中間を何度も反復)などが現れるケースもあります。

古い記憶の障害

中期の症状では、初期より深刻化した記憶障害がみられ、新しい記憶だけでなく古い記憶も忘れてしまうことがあげられます。

このような記憶障害は、本人の自覚がないまま徐々に深刻化していくことが考えられ、生活に支障が出てくることも多くなるでしょう。

徘徊

自分がどこにいるのか分からなくなる見当識障害が原因で、徘徊につながることもあります。

さまざまな障害がみられる認知症患者が、屋外を徘徊するのはとても危険です。

徘徊の症状が見られる場合は、

  • カメラやセンサー機能を利用して徘徊を阻止する
  • GPSを利用して早期発見に努める
  • SNSや地域のネットワークなどを捜索に利用する

などの対策をしましょう。

後期の症状

後期になると、認知障害の悪化のためにより手厚い介護が必要となる頃です。

相手が家族であっても誰なのか認識できなくなります。歩くことも座ることもできなくなり転倒や骨折で寝たきりになることも多く見られます。さらに発語や嚥下機能の低下や表情の喪失などに至り、肺炎などを起こして終末期となります。

人の見当識障害

アルツハイマー型認知症の後期では、肉親が誰か分からなくなるほどの見当識障害が現れます。

同居する家族や親しい介助者であっても、覚えていない・認識できない場合があり、介助する側の辛い部分でもあるでしょう。

弄便(ろうべん)・失禁

弄便(ろうべん)とは、排泄物を手で触ったり壁や床にこすりつけたりする行為を指し、アルツハイマー型認知症の後期でよく見られる症状です。

また、失禁もアルツハイマーでよくみられ、大小便を抑制できずもらしてしまうことも頻発するでしょう。

異食

異食とは、本来食べ物ではないものを食べてしまう症状で、後期ではよくみられる症状です。

ある例では、ビニール袋を飲み込もうとして窒息してしまった・洗剤を飲み込んで中毒を起こしたという報告もあり、自力で歩くことが可能な患者などはとくに注意してください。

認知症対応可能な介護施設はこちら!

アルツハイマー型認知症の経過・治療法

治療指針

アルツハイマー型認知症では、人やもの・場所が認識できない見当識障害や、徐々に進行していく記憶障害などさまざまな症状がみられますが、症状を緩和するための治療を施すことは可能です。

アルツハイマー患者の治療や経過について、下記で解説しましょう。

余命

アルツハイマー患者は、発症してから8~12年が平均余命です。

初期段階では比較的軽度の症状であることが多いアルツハイマーですが、次第に脳の損傷が広がり、症状が悪化していくにつれて寿命が近づきます。

ただし、進行速度は人によって異なるため、アルツハイマー患者の余命も人それぞれ個人差があるでしょう。

治療法

アルツハイマー病の治療法は、まだ発見されていません。

しかし、完全に病をなくすことはできなくても、病気の進行を遅らせる・症状を緩和させる方法はあります。

その方法が、薬物治療あるいは非薬物治療です。

これらの治療方法は、認知機能や行動における症状を緩和すると考えられています。

薬物療法

アルツハイマー型認知症における薬物治療とは、認知機能改善薬がメインです。

認知機能の改善薬には、

  • アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(塩酸ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)
  • NMDA受容体拮抗剤(メマンチン)

の二種類程です。

一般に抗認知症薬とも呼ばれる認知機能改善薬は、中核症状の進行をおさえ、比較的軽度な状態を長く保つことができるとされていますが、根本的に進行を食い止めるものではありません

非薬物療法

アルツハイマーの治療法には、投薬以外にも、薬物を使わない非薬物療法がいくつかあります。

非薬物療法には、運動療法・回想法・レクリエーション・音楽療法などがあり、認知症の症状緩和に効果的です。

アルツハイマー型認知症患者の対応のコツは?

寄り添う様子

アルツハイマー型認知症は、記憶障害や見当識障害など独特の症状が多くみられ、患者の対応にはコツが必要です。

以下では、アルツハイマー患者と過ごす上で使えるコツを紹介します。

生活しやすい環境を整えてあげる

時計などは、アナログよりも見やすいデジタルに変えるなど、アルツハイマー型認知症患者と過ごす上では生活しやすい環境を整えることが重要です。

ただし、適切な生活環境かどうかは本人に確認する事が大事で、わかりにくいこと・わかりやすいことは人によって違うので、本人と話をしながら使いやすいものを揃えてあげてください。

例えば、火をつけっぱなしにすることが多い患者さんなら、見守りを増やし、「火がついてるね」とさりげなく声をかけたり、IH・過熱防止コンロに買い換えるのがよいでしょう。

家の中をウロウロしている時には、トイレに誘導してみることもよいでしょう。

話題を繰り返しても聞いてあげる

アルツハイマー型認知症の方の場合、同じことを何度も繰り返し聞いたり話したりしてしまうことが多いですが、話題を繰り返しても根気強く聞いてあげることが大切です。

同じことを繰り返し聞かれると「さっき言ったでしょう」などと対応してしまいがちですが、本人は忘れてしまっていますし、同じ話を繰り返す場合も「同じ話ばかりしている」と言われると、本人は嫌な事を言われたと不快に思ったり、怒られたと感じてしまいます。

こういう場合、不快や怒られたという感覚だけが残りやすく認知症初期のうつ傾向に繋がり、さらに体調が悪化する可能性があります。介護者は繰り返す話題に怒らず出来るだけ付き合ってあげることが大切です。

ただし、ずっと付き合うことは介護者の負担になる場合があるので、そのようなときは、興味がある違う話題に変えるなど工夫しましょう。

メモなどを利用する

約束など大事な予定がある場合は、本人がよくわかる場所に大きく書いて貼り出したり、カレンダーを使って、管理・確認出来るようにしたりするなど、メモを利用するのもおすすめです。

家にあるのに忘れて同じ物を買ってしまう場合も、冷蔵庫のドア・ホワイトボードなど本人がよく見る場所に買い物リストや買い物メモを貼ったり、買い物の際にメモを持たせましょう。

ただ、物と名前が一致しなくなっていれば、メモの効果が得られませんので 買い物には付き添いあるいは訪問介護を利用するなどしましょう。

薬の管理(服薬管理)をする

アルツハイマー患者では、薬の管理は重要です。

度々薬の飲み忘れ・逆に飲んでいないと思ってたくさん飲んでしまうことがあり、危険な状態になる可能性もあります。

患者本人の管理が難しければ、1回分をまとめてカレンダーなどに貼り、飲み忘れがないように工夫しましょう。

ただ、症状が進行するにつれ1人で管理するのは段々難しくなるので、家族・ヘルパー・訪問看護師が管理して飲むまでを見届けるようにしてください。

連絡先を常備し周りに協力を求める

一度でも外出で迷いそうになったら、連絡先を常備させましょう。

  • 名前や連絡先を服に付ける
  • 小型のGPSをポケットに入れる
  • ドアや窓に内鍵をつける

などをしておくと、もしもの場合に備えられます。

また、徘徊が始まり家の外に出たがる時は、出来るなら一緒に近所を一周して帰ってくるなどをするのがよいでしょう。

可能ならば近所の人や民生委員などに徘徊があるという事を伝え、協力してもらうのもおすすめです。

否定はせずに話を合わせる

物を盗られたという妄想・幻視の訴えが起きている場合は、まずは否定せずに話を合わせるのが正解です。

患者がかなり興奮している場合には、否定すると余計興奮に繋がり、わかってもらえない事に腹を立てるだけになります。

妄想が「ものが盗まれた」というものなら、一緒に探しながら話題を変えたり、一息入れてから「もう一度探しましょう」と場所を変えてみるなどすると興奮が治まるでしょう。

財布を盗られたと家族や他人を責める時は、一緒に探し、財布を発見したら患者が見つけやすい場所に置き換えて、自分で発見してもらうなどといった対応がよいでしょう。

無理強いは厳禁

アルツハイマー患者に接する際、とくに注意したいのが無理強いは絶対にしないことです。

介護拒否に対し無理強いをすると、余計拒否が強くなったり興奮したりするので止めましょう。

お風呂に入らない・服を着替えないなどは、体が自由に動かせず面倒である場合や異性の介助者への羞恥心が原因の場合があるので、一旦お風呂に入ってしまうと気持ちが切り替わる場合もあります。

「お風呂は気持ち良いですよ」と伝え、本人が安心できるよう配慮すれば気持ちを切り替えてもらえることもあるので試してみましょう。

不快な言葉をさける

記憶障害のある認知症患者でも、嫌な思いや不快な事などの感情は残りやすく、患者に対して不快な言葉を使うのは避けるべきです。

不快な思いなどは、ストレスとなって症状の悪化に繋がる場合もあり、介護者が出来る範囲で本人に合わせ、褒める・感謝する・相槌をうつなどして受け入れる姿勢を見せましょう。

また、そうした介護は「バリデーション」などのような認知症ケアとして注目されています。

信頼関係を作る

認知症高齢者と介護者の間で大切なのは、信頼関係です。

認知症を発症した際、もっとも戸惑い不安に思うのは認知症高齢者自身であり、心の中では「うまくできないのは恥ずかしい」「いろいろと言うと、家族の手を煩わせるのではないか」と考えていることも多いでしょう。

助けてほしいけれど言えない、家族から強い口調で怒られたりといった状況が続くと、不安・恐怖・ストレスなどが重なり、結果として怒りっぽくなることや幻覚・幻聴などの妄想が現れることがあります。

一方、介護者との信頼関係が築けている場合は、頼れる存在として家族がいることでワガママになる場合も考えられますが、認知症高齢者のストレスは軽減されるでしょう。

一人の人間として尊厳を持つこと

アルツハイマー患者と接する上で、一人の人間としての尊厳を守ることは大切です。

アルツハイマー型の認知症でも、最初から重度であることはなく、発症したからといって本人の人格・性格は発症前となにも変わないため、できなかったこと・忘れてしまったことを怒って責めたり、雑な対応をしたりして本人の自尊心を傷つけないように注意しましょう。

ただし、できないときにはフォローするなど、ご家族や周りの人も「認知症である」という認識をもって接してください。

アルツハイマー型認知症を予防・改善するには

アルツハイマー型認知症の予防方法や改善する方法について解説します。

認知症改善に効果のある薬物を利用する

アルツハイマー型認知症の症状を改善させる方法として、投薬はごく一般的です。

アルツハイマー認知症を完治させるような治療法は未だないものの、症状を改善させる薬はいくつか世に出回っていて、現在日本では、それぞれに役割が異なる4種類の薬物が認可されています。

ただし、効き目が出るタイプも異なるため医師と相談しながら服用する薬を選ぶことが大切です。

予防習慣に常に気を使う

アルツハイマーになる直接的原因はまだわかっていないものの、生活習慣を見直すことで発症を予防できる可能性が高いと言われています。

生活習慣を見直すことが認知症予防に大きな効果を発揮すると考えられるため、喫煙・飲酒・運動不足など普段の生活に気になる部分があれば見直しましょう。

アルツハイマーは、発症してからでは完治の難しい症状なので、まだ元気なうちから予防を意識することが大切です。

しっかりとした睡眠をとる

しっかりした睡眠をとることは認知症予防になります。

通常、睡眠によって脳の中のアミロイドベータなどの老廃物が取り除かれるのですが、睡眠不足の状態では老廃物が除去されません。

睡眠不足の人は、十分な睡眠を確保できている人と比べて5倍も発症のリスクが高まるので注意しましょう。

しかし昼寝は1日30分程度に抑え日中は光を浴びて明るい場所で過ごすことも大切です。

リハビリに楽しんで取り組む

アルツハイマー型認知症の後期では、体の不自由も起こりますが、リハビリを楽しんで行うことで脳が活性化され症状が改善する可能性が高まります。

また、脳が刺激されやすいという点でいえば、家族との昔話をするのも効果が高く、さらに手指を使う遊びなどもおすすめです。

個人でのリハビリに不安がある場合は、大勢の人と会うことができるデイサービスを利用するのもよい刺激になるでしょう。

ココファンのデイサービスでは、認知症の予防・改善に効果的なアクティビティを、要介護度に関わらず誰でも利用できますので、ぜひチェックしてみてください。

近くの学研のデイサービス事業所を探す!

早期段階で発見し進行を遅らせることが重要

アルツハイマー型認知症は、早い段階で症状を発見し、進行を遅らせることが重要です。

適切な医療・介護・福祉サービスにつなげることで本人や家族の混乱・戸惑いを最小限にとどめられ、症状の進行を遅らせることも可能なので、少しでも疑いのある場合はすぐに医療機関に相談しましょう

また、認知症の進行を遅らせる方法は、現在でもさまざまな研究がなされており、多くの研究において中年期・老年期における定期的な身体活動がアルツハイマー型を含む認知症の発症率低下の面で効果があると報告されています。

適度な運動・バランスのよい食事・夜間の良好な睡眠などが認知症予防につながるので、生活習慣に積極的に取り入れましょう。

アルツハイマー型認知症の症状・原因・患者さんへの対応法についてまとめ

アルツハイマー型認知症の症状・原因・患者さんへの対応法についてまとめ
  • アルツハイマーは進行型の症状で完治する方法はない
  • 投薬療法・非投薬療法が症状緩和に効果的
  • 接する際は一人の人間として尊厳を守る
  • 正しい生活習慣を取り入れて予防を

アルツハイマーは若年者でも発症例があるように、誰にでも発症リスクがあります。

一度発症すると徐々に進行するので、完治する方法はありませんが、投薬治療や運動・レクリエーションなどを楽しむことで症状を緩和することが可能です。

患者さんと接する際には、薬の管理などをして生活しやすい環境を整え、本人の主張や気持ちに寄り添って接すると、本人の不安を取り除くことができるでしょう。

また、アルツハイマーは、年齢や遺伝でも発症リスクが変わりますが、喫煙や寝不足など不規則な生活も発症の原因になります。

発症リスクを下げるため、普段から規則正しい生活習慣を身に付けて予防しましょう

認知症対応可能な介護施設はこちら!

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月 中部療護センター入職、2024年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

監修医師の所属病院ホームページはこちら 監修医師の研究内容や論文はこちら

この記事に関連する記事

MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?評価方法から長谷川式との違いまで解説!

【医師監修】認知症を予防するには?食事・運動など生活習慣改善のポイントを解説

【医師監修】認知症検査「VSRAD(ブイエスラド)」とは?特徴や評価方法を解説

【専門家監修】認知症の方を病院に連れていくには?受診のタイミングなどを徹底解説

全国の老人ホーム・介護施設・高齢者住宅を探す

介護施設の種類
介護施設の比較
介護施設の費用

上に戻る 上に戻る