義歯とは|入れ歯の種類やそれぞれの特徴・費用まで全て解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「義歯はどのようにして作るの?」

「義歯や入れ歯の種類について知りたい!」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

義歯には、入れ歯やインプラントなど様々な種類がありますが、自身にとってピッタリな義歯を使うことで日常のストレスを軽減できます。

「噛む」という動作は認知症を予防する効果もあるので、歯が無くなったり食事の際に不自由を感じている方は義歯の利用を検討しましょう。

こちらの記事では、入れ歯の種類や特徴、費用負担の目安について解説していくので、義歯の利用を検討している方はぜひ参考にしてください!

義歯の種類や特徴についてざっくり説明すると
  • 口の中の健康を守り、認知症を予防するためにも義歯が果たしている役割は大きい
  • 保険適用の入れ歯と自費で作る入れ歯がある
  • しっかりと継続的に手入れを行うことが重要

義歯とは

義歯を作ることで、食事を楽しめたり若々しさを取り戻せる効果があります。

まずは、義歯とはどのようなものなのか、どのような役割を果たしているのか確認しましょう。

義歯はなぜ必要?

加齢に伴って虫歯や歯周病になりやすくなったり、歯茎の外傷などにより歯が欠けたり失ってしまうリスクが高まります。

また、歯を失うことで、さまざまな問題が生じる場合があります。第一に、歯を失うことで噛むことが困難になり、これにより日常生活や食事に支障が出ることが考えられます。

口腔内環境を悪化させることがある点も注意です。歯茎が腫れたり、歯周病を引き起こす恐れもあります。歯は見た目や美しさにも影響を与えるため、歯を失うことは心理的にも悪影響です。

このように歯は体の部位の中でも重要な役割を果たしているので、できる限り健康に保ち、必要に応じて義歯を活用することが重要です。

保険と自費の違い

入れ歯には保険が適用されるものと自費で賄うものがありますが、違いについては下記の通りです。

メリット・デメリット 保険の入れ歯 自費の入れ歯
メリット 安価
比較的早くでき上がる
修理が簡単にできる
素材を豊富な種類の中から選択可能
しっかり咬める
じっくりと自分に合ったものを追求できる
機能性が高い
見た目が自然
デメリット 素材がレジンに限られる
壊れやすい
見た目に入れ歯とわかりやすい
口に慣れるまで違和感がある
違和感があることがある
咬む力が弱い
高額
作製に時間がかかる
修理が難しい素材がある

参考:トリス矯正デンタルクリニック

保険の入れ歯は治療費が安いメリットがありますが、自費のものと比べると耐久性や見た目で劣ってしまいます。

また、基本的にプラスチック製なので、不快感を感じやすく口の中で熱が伝わりにくいデメリットもあります。

一方で、自費の入れ歯は機能に優れており、見た目や素材が優れている点が大きなメリットです。

しかし、費用が高額になりやすくカスタイズできる反面、修理が難しい点には注意が必要でしょう。

双方のメリット・デメリットを踏まえ自分に合ったものをよく検討することが重要です。

認知症予防

咀嚼することで脳に刺激を与えることができるので、義歯を作ることで認知症予防に繋がると言われています。

実際、認知症患者は義歯の相性が悪かったり流動食ばかり口にしているので咀嚼していないことがよくあります。

しっかりと噛めるようにコンディションを整え、食習慣を改善することで認知症が改善したケースもあるので、義歯が果たしている役割は大きいと言えるでしょう。

認知症予防を進めたい方であれば、義歯を調節して「噛む」動作を意識しましょう。

さらに、定期的な歯科健診や口腔ケアで、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けながら、口内環境の健康を保つことも重要です。

義歯の種類

義歯には、下記の表のように3種類があります。

比較項目 インプラント 入れ歯 ブリッジ
メリット 自分の歯と同じような感覚で噛むことができる
周囲の歯に負担をかけない
天然歯と見た目が同じで美しい
治療が比較的短期間
ものによって、バネが目立たないものがある
手術が不要
広範囲の欠損にも対応できる
治療が比較的短期間
固定されているので違和感はそこまで感じない
材質によって天然歯と同じような美しさにできる
デメリット 手術が必要
骨の状態により対応できない事がある
治療期間が比較的長い
食べカスが挟まりやすい
硬いものが食べにくい
保険の場合、バネなどの見た目が良くない
手入れに手間がかかる
両隣の健康な歯を削る必要がある
材質によって見た目の差がある
食べカスが挟まりやすい
保険適応 ×

それぞれの義歯のついては、以下で細かく紹介していきます。

入れ歯

総義歯と局部義歯

入れ歯は上記のイラストのように総入れ歯と部分入れ歯に分けられますが、総入れ歯は全ての歯を失ってしまった方向けで取り外し式が一般的です。

一方で、部分入れ歯は歯が無い部分に装着する入れ歯で、一般的に人工歯・義歯床・クラスプ(固定するバネ)で構成されています。

また、部分入れ歯は着脱可能でバネなどを利用して引っ掛けるものが主流ですが、残存する歯の保全や入れ歯のメンテナンスが随時必要になります。

ブリッジ

義歯のブリッジ

ブリッジは、歯を何本か失った場合に適用されることが多く、上記のイラスト用に土台となる永久歯の上にかぶせる形となります。

両隣の歯に連結させることになるので、場合によっては健康な歯を削る必要性が手括る点には注意が必要です。

入れ歯よりも異物感や違和感を感じづらい魅力がありますが、食べカスが挟まりやすいと感じる方も多いです。

歯科用インプラント

歯科用インプラント

歯科インプラントとは、上記のイラストのようにチタン製などの人口の歯根を天然歯の代わりに埋める人工歯を指します。

保険が適用されないので治療費は高くなりがちですが、耐久性や見た目の良さは優れている点が魅力です。

インプラント治療では、残っている歯を削ったり装置を付けたりすることはしないので、残っている歯に負担がかかることもありません。

金属床義歯

種類 料金
金属床義歯 220,000円~

金属床義歯の主要部分は金属製で、薄く作れるのでプラスチック製よりも着脱時の違和感が少ない点が特徴です。

金属製なので温度が伝わりやすいので、食事の際に違和感を感じることもありません。

金属アレルギーを起こしてしまう恐れがある点や、費用が高額になりうるデメリットが存在する点には留意しましょう。

ノンクラスプ義歯

種類 料金
ノンクラスプ義歯 110,000円~

ノンクラスプ義歯は、名前の通りクラスプがない点が特徴です。

義歯床の範囲を広くしており、歯茎を覆って固定するため見た目が入れ歯と分かりづらいです。

また、周りの歯への負担が少なく、入れ歯が外れたりずれたりするリスクも小さいので安定感は抜群と言えるでしょう。

コンフォートデンチャー

種類 料金
コンフォートデンチャー 275,000円~

コンフォートデンチャーは入れ歯の裏面がシリコンで覆われており、入れ歯で強く噛んだときの歯ぐきの負担を和らげてくれます。

驚くほどの吸着力を持っており、歯茎を優しく守り「痛い」「噛めない」「外れる」といった悩みを抱えることもありません。

ハイグリップ金属床義歯

種類 料金
ハイグリップ金属床義歯 220,000円~

ハイグリップ金属床義歯は上の総入れ歯が落ちやすい方へおすすめで、入れ歯の内側の金属部分がうろこ状に凹凸がある点が特徴です。

焼き物の人工歯を使うので、入れ歯に見えない透明感を誇っており見た目を気にしたい方にもおすすめです。

また、落ちにくい特徴も備えた総入れ歯なので使い勝手の良さも魅力でしょう。

Kamデンチャー(ハッピーデンチャー)

種類 料金
Kamデンチャー(ハッピーデンチャー) 220,000円~

Kamデンチャーは焼き物の人工歯を使うので、入れ歯に見えない透明感を誇っており見た目を気にしたい方にもおすすめです。

噛み切りの良さも魅力なので、食事の際にストレスを感じたくない方にもピッタリでしょう。

レジン床義歯

種類 料金
レジン床義歯 10,000円~

歯科用の樹脂のことをレジンと呼びますが、レジン床義歯は保険が適用されるので費用負担を大きく抑えることができます。

製作時間も短く済むポピュラーな入れ歯なので、多くの高齢者に利用されています。

とはいえ、耐久性や見た目の美しさなどは劣ってしまうので、その点には注意しましょう。

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入れ歯の手入れ

入れ歯の手入れ方法

こちらのトピックでは、入れ歯の手入れ方法について解説していきます。

清潔に使うことで口の健康を維持できるので、しっかりと手入れ方法も知っておきましょう。

なぜ手入れは必要か

入れ歯の手入れが不十分だと、菌が繁殖して口臭が発生したり口内炎の原因になってしまいます。

他にも、入れ歯に色素や歯石が付着したり周囲の歯が虫歯になってしまい、さらに義歯を増やす必要性に迫られることもあります。

口の中の健康を保つことは、快適な食事を楽しむことはもちろん、認知症予防にも繋がるので手入れはしっかりと行いましょう。定期的な入れ歯のメンテナンスや歯科医の指示に従うことも重要です。

毎食後

食事が終わったら、必ず入れ歯を流水で掃除しましょう。

義歯用ブラシを使用して、力の入れすぎに注意しながら軽く力で汚れを落とすように磨いていきましょう。

なお、掃除の歳は掌の上に乗せ、破損などを防ぐために洗面器の上で行うことをおすすめします。

汚れを落としたい気持ちは分かりますが、歯肉などに接する内面を磨きすぎると隙間が発生してしまうので注意しましょう。

また、クラスプなどは汚れが残りやすいので、併せてしっかり磨くことを意識してください。

就寝前

就寝前には、ブラシを使って毎食後と同じように掃除を行いましょう。

また、就寝前はぬるま湯に義歯洗浄剤を入れた容器に漬け置きして、そのまま一晩放置することで様々な菌を殺菌できます。

浮き上がった汚れをブラシで撮りながら洗い流し、常に清潔な状態を保つようにしましょう。

入れ歯周辺の手入れも忘れずに

クラスプをかけている歯や入れ歯と接する歯は汚れが溜まりやすいので、意識的に掃除することを心掛けましょう。

虫歯や歯周病になると、さらに義歯を作る出てくるので、健康な歯を1本でも多く残せるように丁寧に磨いてください。

磨き方としては、ブラシを横から入れて小刻みに動かし、その際粘膜も一緒に磨くと清潔な状態を維持できます。

義歯に関するよくある疑問

こちらのトピックでは、義歯に関するよくある質問について紹介していきます。

参考になるQ&Aも多いので、下記の内容について知っておくと良いでしょう。

入れ歯の寿命はどのくらいか

入れ歯の寿命は、歯茎や顎の骨などの変化、噛み合わせの変化などによって変わります。

口の中の状況や健康状態が変化した場合、同じ入れ歯を使い続けると身体に悪影響が出てしまうので、少しでも違和感を感じたら検査に行きましょう。

さらに、定期的に検査を定期的に行うことで使用している義歯を使い続けても問題ないかチェックできるので、こまめに診察を受けることも重要です。

入れ歯をすることで話しづらくなるか

入れ歯は人体にとって「異物」なので、話しづらさなどの影響は少なからず出てきます。

しかし、違和感や影響は人によってまちまちなので、過度に心配する必要はありません。

大きい入れ歯の場合は発音が困難になることもありますが、ほとんどの場合で慣れれば自然に話せるようになります。

インプラントと入れ歯どちらがよいか

近年は、元々の歯の感覚に近い「インプラント治療」が広まりつつあり、多くの高齢者の生活を助けています。

しかし、インプラントだと手術が必要になるので、身体的負担が大きいデメリットがあります。

また、失敗した場合でもやり直せない問題や費用負担が重くなりがちなデメリットもあります。

「インプラントと入れ歯のどちらが良いか」は、自身の希望やライフスタイルによって違うので、歯科医師との相談や十分な情報収集をしつつ、自身の価値観に合わせて適切な選択をしていきましょう。

入れ歯を入れると味が変わるか

味覚は舌にある味蕾で感じ取っているので、入れ歯をすることで味覚が大きく狂うことはありません。

しかし、味は味覚だけでなく舌触り・食感・温度などさまざまな要因が影響しているので、入れ歯を入れ始めて間もない頃は「以前より美味しくない」と感じてしまうケースも有り得ます。

熱の伝わりやすい入れ歯を使うと味覚に関する違和感を軽減できるので、味覚のズレを気にする方は熱の伝わりやすい入れ歯を選ぶと良いでしょう。

就寝時はつけたままか

入れ歯は就寝前に必ず外しましょう。

外して就寝することで、入れ歯をさしている歯茎を休ませることができるので、口の中のストレスを軽減して口臭を予防できます。

また、もし就寝中も入れ歯を刺していると誤飲してしまう危険もあるので、寝る前は必ず外して洗浄液に漬けておきましょう。

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義歯の種類や特徴まとめ

義歯の種類や特徴まとめ
  • 噛み合わせが悪くなったり、食事の際に不自由を感じる歳には義歯の利用を検討するべき
  • 義歯の種類によって費用負担やメリットが違うので、自身の価値観や希望に合わせて選ぼう
  • 毎食後や就寝前には必ず洗浄し、清潔に保とう

元々の歯を残すことがベストではありますが、加齢に伴って歯を失ってしまうことは往々にして有り得ます。

食事を楽しみ、認知症を予防するためにも必要に応じて義歯を活用しましょう。

また、義歯にも様々な種類があるので、希望や費用などを総合的に勘案してベストなものを選びましょう。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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