お泊まりデイサービスとは?ショートステイとの違いや費用・デメリットまで解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「お泊まりデイサービスって何?」

「お泊まりデイサービスとショートステイの違いを知りたい!」

「サービス内容や費用について知りたい!」

このようにお悩みの方はいらっしゃいませんか?お泊まりデイサービスとは、通所介護ができる施設にそのまま宿泊することができるサービスです。

今回は、お泊まりデイサービスのサービス内容や費用相場、ショートステイとの違いについてまとめていきます。利用する際のメリットやデメリットについても解説します。

この記事を読めば、お泊まりデイサービスの基本的な情報について理解することができるでしょう。

お泊まりデイサービスについてざっくり説明すると
  • デイサービスの施設にそのまま宿泊することができる
  • 介護保険適用外のサービス
  • 急な用事でも予約が取りやすい

お泊まりデイサービスとは

デイサービス概要

お泊まりデイサービスとは、「デイサービス(通所介護)ができる施設で、高齢者が日中のサービスを受けた後、そのまま施設に宿泊することができる」というサービスです。日中のデイサービスが介護保険適用なのに対し、お泊まりデイサービスは保険適用外となります。

それにも関わらず、特別養護老人ホームやショートステイの空きが慢性的に少ないなどの理由から、非常に需要の高いサービスとなっています。

急な外出等で高齢者が夜間一人になってしまう場合などはお泊まりデイサービスの利用を検討することをおすすめします。このように、お泊まりデイサービスは介護者の強い味方となるため、人によっては月単位で継続利用しているケースもあります。

以前は自治体によってサービス内容や施設体制などにばらつきがみられましたが、2015年に厚生労働省からガイドラインが発行され、利用者がより安心して利用できる環境となりました。

お泊まりデイサービスの仕組み

お泊まりデイサービスは、一時宿泊が可能な介護施設である「ショートステイ」と同様にレスパイトとして利用されます。レスパイトは「一時的中断」「小休止」などを意味する英単語で、ここでは介護者の負担を軽減する意味合いで使われる言葉です。

在宅で毎日介護を行っている家族に対し、介護を一時的に代替してリフレッシュを取ってもらうことを目的としており、欧米から始まった概念とされています。

お泊まりデイサービスは、日中のデイサービスの付加価値的なものとしてサービス展開をされることが多いです。

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お泊まりデイサービスの運営基準

お泊まりデイサービスの運営基準

お泊まりデイサービスは介護保険外のサービスであり、以前は事業者のモラルや自治体によってサービスの質が左右されていました。そこで環境を整えるために定められたのが、厚生労働省によるガイドラインです。

ここではお泊りデイサービスの運営基準について、ガイドラインで定められた「人員基準」「設備基準」「安全基準」の3点から解説していきましょう。

人員基準

まずはお泊まりデイサービスの人員基準について解説します。

以前は夜勤専門として、介護に関する知識を持たない職員を雇用し配置することが認められていましたが、先に解説した厚生労働省によるガイドラインの発行により、介護職員や看護師を一人以上常駐させることが規定となりました。

また、利用者の定員は日中のデイサービスの定員の半分以下であり、最大でも9名までとなっています。

設備基準

次に設備基準について解説します。

お泊まりデイサービスでは、個室は基本的に1名での利用となりますが、希望する場合は2名までの利用も可能です。相部屋の場合は最大で4名までの利用が可能です。

利用者が泊まる宿泊室の広さは四畳以上の確保が必要です。1部屋あたりの正確な床面積は、最低7.43平方メートルとなります。また、個室でない場合はパーテーションなどにより区切る必要があります。

安全基準

最後は、お泊まりデイサービスの安全基準について解説します。

お泊まりデイサービスでは安全対策として、災害時などのいざというときに対応できるような設備が設置が推奨されています。例えば、懐中電灯や保存食、水などの備品の備蓄が挙げられます。

また、消防法によって定められているスプリンクラーや火災報知器、消防器などの防火設備の設置も必要です。

お泊まりデイサービスのサービス内容

では、お泊まりデイサービスでは一般的にどのようなサービスが提供されるのでしょうか。

食事

お泊まりデイサービスの施設内で、夕食と翌日の朝食が提供されます。ミキサー食など、利用者が食べやすいように体調や状態に応じた食事を提供してくれます。

ただし、食費はお泊まりデイサービスの利用料には含まれません

就寝前の口腔ケアのお手伝いもしてくれます。

宿泊

デイサービスの利用の延長として宿泊することが可能です。就寝前の着替えの手伝いもしてくれます。

さらに、スタッフ体制によっては夜間の入浴が可能な場合もあります。入浴を希望する場合は、予めケアマネージャーに相談をして確認しておくようにしましょう。

ターミナルケアには対応していない

ターミナルケアとは、余命が残り少ない人へ行うケアで、終末期医療・終末期看護とも言われます。

お泊まりデイサービスは短期間の利用を想定しているため、自治体によっては利用日数に上限が設けられていることもあります。そのため、ターミナルケアや看取りの対応は原則行っていません

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お泊まりデイサービスの費用

お泊まりデイサービスは介護保険適用外のため、全額自己負担となります。保険外のため事業所によって設定料金に多少のばらつきがありますが、デイサービス利用料の10割を基準にしている事業所が多いでしょう。また、要介護度によっても料金は異なります。

相場としては一泊3,000円~5,000円程度で、中には一泊利用で数百円程度で済む事業所もあります。

実費の料金

上に挙げた利用料の他に、その日の夕食代と翌日の朝食代が加算されます。また、使用したおむつや生活用品など、日常生活費も必要です。

さらに、連泊で使用する場合は理美容代や洗濯代などがかかってきます。

お泊まりデイサービスの利用料や食事代など、料金の詳細については、各事業所で異なるので、事前に利用する施設に確認をとるのがおすすめです。

なぜここまで安く済むのか?

デイサービス(通所介護)は介護保険事業です。そのため、事業者は利用者負担額の10倍の報酬を受け取ることができるのです。

お泊まりデイサービスを利用することで宿泊前と宿泊後、計2日分の介護報酬を得ることができます。つまり、お泊まりデイサービスを受け入れることにより、お泊まりデイサービスだけの利益だけではなく、デイサービスでの収益も出るため、多少安くてもサービスとして十分に成り立つのです。

以上の理由から、デイサービスの付加価値としてお泊まりデイサービスが展開されることが多くなります。

お泊まりデイサービスのメリット・デメリットは?

お泊まりデイサービスを利用するメリット・デメリットについてまとめていきましょう。

利用者のメリットはたくさんある

利用者にとって、お泊まりデイサービスは非常に多くのメリットがあります。ここでは主なメリット4つについて紹介していきましょう。

  • 介護者の心身の負担を減らすことができる(レスパイト)
  • 要介護者が家族以外と交流することができる
  • 予約が取りやすい
  • 通いなれた場所での宿泊なので安心できる

通常のデイサービスに引き続き、そのままその施設で宿泊することによって、介護者の負担を減らすことができます。その時間に用事を終わらしたり小旅行に行ったりなど、自分の時間をゆっくり過ごすことができるでしょう。

また、要介護者も宿泊することでプチ旅行気分を味わうことができます。家族以外と関わる時間を持つことで気分転換にもなり、他の利用者と交流する良いきっかけにもなります。

通いなれた場所、スタッフ体制での宿泊となるので、安心して夜を過ごすことができるというのも大きなメリットの一つです。

普段通っている場所であれば、食事の量や内容の調整も相談しやすく、余計な不安を感じずにケアを受けられるでしょう。

お泊まりデイサービスの懸念点

メリットが多い一方でいくつかのデメリットもあります。主な3つの懸念点については次の通りです。

  • プライバシーの確保が難しい
  • 介護保険が適用されない
  • 原則短期間での利用

お泊まりデイサービスでは、基本的に個室ではない場合が多く、その場合はパーテーションなどで仕切りを入れるため、プライバシーの確保が十分ではないこともあります。

スタッフも十分に配慮はしているものの、人によっては苦痛に感じる場面もあるかもしれません。

費用面でのデメリットとしては、介護保険が適用されないという点が挙げられます。高額ではありませんが、実質全額負担なため、月に数回利用するとすれば金銭的な負担が大きくなるでしょう。

また、長期間での利用を前提としたサービスではないため、その場合は別のサービスを検討する必要があります。

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お泊まりデイサービスの利用方法

お泊まりデイサービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定は申請から認定まで約1ヶ月ほどかかります。

要介護認定の通知を受けたらケアマネージャーまたは地域包括支援センターに連絡をしましょう

お泊まりデイサービスは日中のデイサービスの延長で宿泊することになります。そのため、利用者が自分らしく楽しめるデイサービスを探さなければなりません。

施設を決める際には複数のサービス提供事業者を比較し、自分の要望に沿った施設を選ぶことが重要です。

ホームページやパンフレット等で施設の情報をゲットし、可能であれば見学・体験利用を通し、実際の雰囲気を掴みましょう。夜間体制やプライバシーの確保状況など気になる点をチェックすることが後悔しない施設選びのポイントです。

利用したい施設が決まったら利用申し込みをしてサービス提供事業者との契約を行います。空きがない場合はケアマネージャーと相談し、別の施設を探してもらいます。

以上の手続きを終えると、指定日からサービスの利用が可能となります。

お泊まりデイサービスとショートステイの違い

一時的な宿泊という点で似ている介護サービスに「ショートステイ」があります。ショートステイも介護やの負担軽減や急な用事の際に利用することができる施設で、食事や宿泊などのサービスを受けることが可能です。

では、お泊まりデイサービスとショートステイとの違いについて解説していきましょう。

介護保険が適用されるかどうか

お泊まりデイサービスとショートステイとの大きな違いとして「介護保険が適用されるかどうか」という点が挙げられます。

この記事で解説したように、お泊まりデイサービスは介護保険が適用されず、全ての費用が自己負担となります。

一方、ショートステイは介護保険が適用されるため、サービス利用料である基本料金に関しては1割~3割程度の自己負担ですみます。ただしショートステイで提供される食事・滞在費については保険適用外です。

宿泊する部屋の違い

宿泊する部屋に関しても違いがあります。

お泊まりデイサービスは日中利用しているデイサービスをそのまま宿泊に利用します。そのため、しっかりとした個室がなくパーテーションなどで区切られたスペースで就寝することもあります。

一方ショートステイで使用されるのは特別養護老人ホームや介護療養型医療施設などの大型施設またはショートステイ専門の施設です。そのため、プライバシーの確保できる個室がお泊まりデイサービスよりも多く用意されています

予約の取りやすさ

お泊まりデイサービスのメリットでも触れたように、お泊まりデイサービスは予約が取りやすいというのが特徴です。対してショートステイは施設自体がかなり少ないため、予約が取りづらいのが現状です。

また、ショートステイでは基本的にケアプランに沿った定期利用が主体となっているため、スムーズに利用するには1ヶ月ほど前から依頼をしておく必要があります。

お泊まりデイサービスは通所介護の施設にそのまま宿泊することができるため、ショートステイよりも予約が取りやすく、急に介護ができなくなった等のニーズに応えやすくなっています。

日ごろから慣れ親しんでいる場所・スタッフにより、気軽に安心して利用できるというのもお泊まりデイサービスの特徴の一つです。

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お泊まりデイサービスについてまとめ

お泊まりデイサービスについてまとめ
  • 介護保険外のサービスのため全額自己負担
  • 介護者のレスパイトや、要介護者の気分転換などにも利用することができる
  • 長期的な利用を考えている場合は他のサービスの利用がおすすめ

今回はお泊まりデイサービスの基本的な情報について解説しました。

予約が取りやすく、通いなれた施設で宿泊サービスを受けられるというメリットはありますが、プライバシーの確保が難しい・保険適用外などのデメリットもあります。今回紹介したお泊まりデイサービスだけではなく、どのサービスにも良し悪しがあります。

事前情報を集め、実際に見聞きして体験することで自分や家族に合った施設・サービスを選ぶことが大切です。

また、利用者や家族が抱える疑問や不安をスタッフに相談することで、より適切な選択ができるでしょう。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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