親の介護の実態とは|兄弟間のトラブルの原因や分担方法・利用できるサービスも紹介

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「親の介護は誰が面倒を見るの?」

「誰がお金を出すの?」

親を介護する上で、兄弟間でこのような疑問をお持ちの方は多いでしょう。

高齢化がすすみ、介護が必要な要介護者も毎年増え続けています。

厚生労働省「社会生活基本調査」によれば、介護者数も増加しており、女性で421万人、男性で278万人となっています。

この記事では、介護のことで兄弟間でトラブルになってしまう原因や、揉めないための介護分担の方法、介護サービスの利用についてご説明します。

親の介護の実態についてざっくり説明すると
  • 親の介護は病気やケガで突然はじまることが多い
  • 兄弟間で具体的な話し合いが不十分だとトラブルになる
  • 自分たちだけの介護は疲れて共倒れしてしまうことがある

子供に親の介護義務はあるのか

直系血族と要介護者の関係

上記の表で枠に囲まれているすべての人が「介護者(介護をする人)」の対象になります。

  • 子供や孫、親などの直系家族(黄色の枠)
  • 夫婦(ピンク色の枠)
  • 兄弟姉妹(緑色の枠)

枠内の人は、お互いに協力して介護をする「扶養・扶助」の義務があります。

そのため実は「自分の親及び兄弟姉妹に対する扶養義務」を放棄できるかというと、法律上はできないのです。

この章では、その介護の義務について詳しく説明します。

扶養・扶助義務とは何か

「介護をする」といっても、具体的に何をすればよいのでしょう。 1つは身の上の面倒を見る扶養です。 更にもう1つが経済的な支援をする扶養です。

介護は、実際に親の面倒をみるだけでなく介護に必要な経済的な援助も該当します。

「経済的な支援をする扶養」とは介護が必要な親の生活を助けるための金銭的な援助、つまり「お金」を援助する義務が発生することを指しています。

気になるのはその「扶養義務の程度」です。それは扶養義務を負う本人が、社会的地位や収入に応じた生活ができる範囲での支援・扶養とされています。自分の生活を最大限犠牲にする必要はない、ということですね。

民法第877条 第1項

実際に扶養義務の法律を2つ見てみましょう。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある

民法第877条 第1項

ここでいう扶養の義務とは、生活に必要な最低限の支援を指しています。

民法第752条

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法第752条

また、直系血族や兄弟姉妹のみならず夫婦間でも扶養義務があることが定められています。

介護の放置は罪になりうる

これまでの親子の関係性の良し悪しは、ひとそれぞれ違っていますが、法律上での親子関係は切ることができません。

ちなみに「経済的に余裕はあるが、親とは不仲だから扶養義務を放棄する」場合、法律上義務を放棄することはできません。

「自分は関わらなくても」、「お金がないから」と介護を放置するとどうなるのでしょう。

介護が必要な状態を知りながら、介護を放置すると次の法律違反となり、刑事罰につながりうることになります。

  • 保護責任者遺棄致死罪

援助や保護をする義務があったにもかかわらず、何もしなかったことで相手が死亡してしまった場合。

  • 保護責任者遺棄致傷罪

援助や保護をする義務があったにもかかわら、、何もしなかったことで相手が障害を負ってしまった場合。

なお、介護放棄や育児放棄により罪になると、懲役3か月以上5年以下の実刑となってしまいます。

実際に、娘が親の介護を放置したことで、懲役6年の有罪判決になった事例もあります。

では、扶養義務が発生しない場合というのはどのようなケースがあるのでしょうか。

扶養義務が発生しない場合も

先ほども述べたように、介護する側の子供や親族にもそれぞれ生活があり、援助も自分の生活に支障がない範囲でよいとされています。

つまり自分たちの生活がお金がない状況にもかかわらず、それでも「親の介護のために金銭的な援助をする」という必要はありません。

ただし、その介護義務が強制となるのか、強制でないのかを判断するのは、自己申告ではなく家庭裁判所が判断することになっています。

なお、家庭裁判所は、その家庭の収支(収入や財産、借金、家族人数など)を基に、生活水準に照らし合わせて総合的に判断します。

またよく問題になるのが、扶養義務者が複数いた場合に誰が援助を行うかという点です。

この場合は、まずは当事者間で協議して決めることが想定されています。

その協議がまとまらない、または協議すらできなかった際は、家庭裁判所に申し立ててこれを定めてもらうことが可能です。

ここでも家庭裁判所の判断に基づいて、だれが義務を負うかを決定します。

ワンオペ(一人きり)の介護は大変!

しかし、自分ひとりで親の介護すべてを行うのは、とても大変なことなのです。

なぜなら、自分や、自分の家族の生活もあるからです。

次に、「どうやって親の介護を行えばいいのか」についてご説明します。

親の介護の分担例

親の介護の分担例

この章では、親の介護を親族で分担して行う方法について具体的にご紹介します。

兄弟姉妹で協力

介護が必要となる親の子供、つまり自分の兄弟姉妹全員で均等に分担することが最も望ましいかたちです。

しかし、実情では地方の風習で「介護は長男の妻がするもの」という特定の人へ大きな負担が生じるケースや、兄弟が長期的な金銭援助を拒否し人間関係のトラブルが生じるケースが多々発生しています。

このようにならないためにも介護前の事前の準備が大切になります。

例えば、

  • 親の経済状況を確認し介護費用の捻出を事前相談
  • 扶養義務者全員が介護に対して「何ができるか、できないか」を確認しあう
  • 介護が始まったら、介護費用を、兄弟姉妹で分割して負担する。

生活が苦しくて「金銭的援助ができなくなってしまった」という場合は、親の家に行って生活の世話(身の上の面倒を見る)をする頻度を増やしようにしましょう。

また、遠方に住んでいるなどで親の家に行くのが難しい場合は、金銭的な支援を多めにするなど、心理的・身体的負担双方を均等にして兄弟姉妹間で納得するような事前の取り決め(または介護がはじまった直後に話し合い)をしましょう。

特に兄弟間では、介護の押し付け、相続、金銭的負担の不平等、など様々な問題が生じるケースが多いため建設的な会話ができる段階で話し合うのがポイントです。

夫婦で協力

結婚している場合、配偶者である夫婦が望ましいかたちです。そこには介護をするためのメリットが多数あるためです。

例えば、夫婦は食習慣や就寝といった日常生活において、数十年おなじ生活リズムをとっているため介護生活が始まった際に、最もスムーズに適応できるとされています。 事前に相手の食の好みや苦手なこと、性格が分かると介護者の心理的ストレスも減るためです。

さらに特にトイレ介助や入浴介助といった身体に関する事柄は、娘が父を、または息子が母の下の世話をするのは、お互いに気恥ずかしいものがあり、親本人が拒否感を覚えることも多々あります。

夫婦間(配偶者)での介護のかたちがトラブルもすくなく理想的とされている一方で、介護者の心理的ストレスの緩和をいかに行うかという点で、第三者からのサポートが大切になっています。

介護者同士で交代で休息を取ったり、地域の介護施設や訪問介護サービスを利用することも、夫婦での介護生活を継続する上で大切なポイントです。

孫など親族と協力

一人っ子で兄弟がいない場合や、親が死別や離婚で独り身の場合は、介護義務がある親族に協力を求める方法もあります。

例えば、介護義務がある親族には親の孫(自分の子供)、親の兄弟姉妹(おじ、おば)が該当します。

孫は介護者との関係性が相対的に薄いことが多いため、金銭的負担を少なくするなど配慮がないと、その負担の大きさから介護者の親子間トラブルにつながりかねないので注意が必要です。

また、親の兄弟姉妹は、遠方に住んでいたり、自身も高齢で介護が必要な状況になっている場合が少なくないので、身の上の面倒は難しいでしょう。

事前におじやおばと介護観について話し合う機会を設けられると、金銭負担や肉体的負担の分担について整理できるため理想的です。

例えば、複数の親族で介護負担を分担したり、一緒に介護の手順を学んだりすることも、介護生活をスムーズに進めるためのポイントです。

さらに、介護に関する情報を収集し、定期的に情報共有を行うことで、介護負担を軽減することができます。

他に介護ができる人がいない場合

一人っ子の場合や、親族が高齢や既に他界しているなど他に介護をお願いできる人がいない場合は、自分で介護をすることになります。

しかし、介護は身体的負担や金銭的な負担があり、さらに長期になることがあるので、一人で行うのはとても大変です。

介護は一人で抱え込まずに、まずは公的機関に相談してみましょう。

親が住む市区町村の窓口または地域包括支援センターが該当施設となります。

※「地域包括支援センター」は、市区町村によっては名称が違う場合があります。

地域包括支援センターを活用しよう!

地域包括支援センターとは、社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員といった高齢者保健福祉に関する専門職員が配置されており、高齢者が安心して生活を継続するサポートをする総合窓口です。

介護保険サービスや、市区町村が行っている福祉サービスを提案してもらえることもあります。活用することで、介護者の身体的負担や金銭的負担が楽になることがあります。

高齢者福祉サービスの申請や、介護保険制度、高齢者の方の介護予防、そのほか様々な相談を受け付けているため、介護について相談したい場合は足をはこんでみてはいかがでしょうか。

老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

親の介護におけるよくある問題とは

高齢者の増加に伴い、介護を必要とする人も増え、併せていろいろな問題が発生します。

この章では、親の介護でよくある問題についてご説明します。

ストレスによる介護離職や鬱(うつ)

親を介護するために、子供が仕事を辞めてしまう「介護離職」が増えています。

総務省の「就業構造基本調査」によれば、1年間で約9万人弱が介護を理由に離職しています。

親のために仕事を辞めて介護に専念するのは、素晴らしいことですが、その反面で次のような問題が起きています。

  1. 安定した収入がなくなり、経済的に困窮する。
  2. 地域や社会とのかかわりが薄れ、周囲から孤立してしまう。
  3. 相談できる人がなくなり、また、介護疲れなどから、介護者が鬱(うつ)状態(介護うつ)になってしまう。

介護うつを発症してしまうと、自分自身がつらい思いをするだけでなく、症状が悪化することで大きな問題に発展してしまうことがあります。

介護放棄や介護殺人につながることも

介護うつの悪化から、介護を行わない介護放棄(ネグレスト)につながってしまうケースがあります。

厚生労働省の調査によりますと、介護放棄などの件数は1年間で3,420件の事例が起きています。

また、介護疲れや将来を悲観し、「親を殺したい」と考えて、実際に殺してしまったり、母子や夫婦での無理心中に至ってしまうケースもあります。

日本福祉大准教授の湯原悦子氏によれば、介護殺人は17年間で少なくても672件は起きていると衝撃的な発表をしています。

介護うつも、「殺したい」と考えてしまう介護殺人も、決して別世界で起きていることではないのです。

介護者が精神的にも肉体的にも健康であることは、介護を受ける方にとっても良い影響を与え、より良い介護生活を送ることができます。

介護による人間関係のトラブル

介護は、介護放棄や介護殺人といった事件にならなくても、次のような人間関係のトラブルを引き起こしてしまうことがあります。

  • 「仕事が忙しい」、「子供が受験生」など自分の都合を主張し、兄弟姉妹間や親族間で介護を押し付け合う。
  • 介護に必要な費用負担を拒否する。
  • 親の預貯金や年金を搾取して、自分のために使ってしまう。
  • 親の資産の相続を自分だけ有利にしようとする。
  • 「長男なんだから」、「長男の嫁だから」と古い考えで介護を押し付ける。
  • お金や労力の支援をしないにもかかわらず、介護に関する文句や口出しだけしてくる。

といったことで、兄弟姉妹間や親族間でトラブルになるケースがあります。

問題が発生してしまう原因

なぜ、自分の親の介護のことなのに、兄弟姉妹間で揉めてしまうのでしょう。

この章では、親の介護で問題が発生してしまう原因についてご説明します。

突然始まる介護

親の介護は、病気の後遺症や転倒によるケガなどが原因で、突然、介護が始まることが多いからです。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」の結果によれば、介護になった原因の2位が脳卒中(16%)、4位が骨折・転倒(13%) と、いずれも急なアクシデントが原因となっています。

突然、介護が必要になっても、介護される本人も介護をする家族も、介護の準備がまったくできていないことで、兄弟姉妹間でもめてしまうことがあるのです。

また、話し合いをしていても介護の役割分担などが不明瞭のままで見切り発車すると、計画通りにいかないときにトラブルになってしまうことがあります。

家族同士でのトラブルが発生した場合は、第三者の仲介を依頼することも有効です。

地域のケアマネージャーや社会福祉協議会などが、介護に関する相談やトラブル解決のサポートを行っています。

介護を行う上で、家族全員が協力し、互いに理解し合うことが大切です。

その他の「介護をパス」する理由

その他にも「介護をパスする」という理由として次のようなものがあります。

  • 親が80歳とすると、その子供は40歳代~60歳代で、働いている場合は職場で責任のある立場に置かれていることが多く、介護のための時間が作りづらい。
  • 子供が結婚して親となっている場合、子供のこども(孫)が10歳代だと、「子供に手がかかるから」という理由で介護を拒否する。
  • 「あいつは独身だから時間自由に使える」 という理由で独身者に介護を押し付ける。
  • 親の家から遠方に住んでいるため、「親の近くに住んでいるから」 という理由で介護を押し付ける。
  • 「長男だから」 と古い考えで長男に介護を押し付ける。

下の世話などの介護は想像以上に大変

介護が突然始まるため、介護の内容や役割文体や協力体制について、兄弟姉妹間でしっかり話ができていないことが多いのが現状です。

介護は長期になることがあるので、一人だけに介護の負担がかかり、他の兄弟姉妹がたまに顔を出すだけでは、双方の信頼関係は築けないばかりか、関係が悪化してしまうことがあります。

排泄物の世話や嘔吐したものを処理する介護は、身体的な負担だけでなく精神的な負担も大きいのです。

まわりに介護の大変さが理解理解されないとは、介護者にとって非常につらいことなのです。

介護者にとって、周囲の理解や支援は非常に大切です。周囲が介護者の負担を理解し、共感することで、介護者自身も気持ちを切り替えることができます。

認知症になってしまう

介護が必要なケースは、麻痺や衰えといった身体的な場合だけではありません。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」の結果によれば、介護になった原因の1位が認知症(18%) となっています。

認知症の介護は、身体的なケアよりも心身ともに介護者が疲弊してしまうことが多いのです。

例えば、

  • 食事をしたことなどを忘れる。
  • トイレの失敗が増える。
  • 徘徊をして迷い人になったり、警察に保護をされる。
  • 被害妄想などで、無くなった物は介護者が盗んだと疑う。
  • 正しい判断ができずに、万引きをしてしまう。

など、認知症特有の症状に対応するため、介護者は心身ともに非常に大変な状況になり、最悪「殺したい」と思ってしまうこともあります。

老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

円滑に介護を進めるには

それでは、どのようにすれば円滑に介護をすすめることができるのでしょう。

この章では、円滑に介護を進めるために、今からやっておくべき3つの準備をご紹介します。

親が元気なうちから介護への考えを聞く

介護の主役は、介護を受ける親自身です。介護する子供の意見だけで決めるのではなく、正しい判断ができる今から、本人が望む介護について家族で話し合っておきましょう。

「縁起でもない」や「そのうち」と片付けるのではなく、折尾をみて介護や老後の話をしてみてください。

例えば、ドラマやテレビのCMなどで介護のシーンがでてきたときに、「お母さん(お父さん)なら、どうしたい?」と自分に振り替えて話を振ってみるのもいいでしょう。

特に、人生の最期となる場所は自宅がいいのか、病院なのか、老人ホームで迎えたいのか、といった意向を確認しておきましょう。

介護知識を積極的に身につけておく

介護についての技術的な知識を身につけておきましょう。

介護の知識がないために、介護者自身がケガをしてしまうことがあります。

茨城県福祉サービス振興会の調査では、介護職員の44.3%が腰痛に悩んでいるという結果となっています。

移動介助や排せつ介助、おむつ交換などは、身体的にも精神的も大変な介護です。

介護知識はお互いのため

介護知識を身につけておけば、ケガ防止だけでなくお互いの信頼関係が築けるので、介護を円滑にすすめることができます。

介護のスキルを身につけるには、市区町村や地域包括支援センターが実施している介護教室を活用してみましょう。

記録を残す

本人の意向や考え、家族で話し合った内容は、しっかり記録として残しておくと、後々にトラブルを予防することができます。

最近では、「エンディングノート」 などが売られていたり、ネットで入手できます。市によっては無料で配布している場合もあります。

エンディングノートは、介護サービスを受ける際に、ケアの内容の参考にもなります。

要介護者に時間を割いているなら立派な介護者

「介護をしている」というと、寝たきりの親を毎日献身的に介護をするというイメージを持たれるかもしれません。

しかし、介護のやり方は、人それぞれ違っていています。

自分の時間を割いて、一週間に数回、親の家に行って世話をすることも立派な介護といえます。

大切なのは、自分ができる介護を安定して続けていき、なおかつ、自分や自分の家庭のための時間をもつことが大切なのです。

家族間での役割分担の決め方

この章では、親の介護について家族間での役割分担の決め方についてご紹介します。

親族間で話し合いを重ねる

まずは、親族が集まり、体の状況や介護の役割分担、介護の費用負担などについて話し合いましょう。

話し合いは、あくまでも前向きに進める必要があるので、次のような発言は止めましょう。

  • 「自分は仕事が忙しいので介護は無理」 という主張は、介護から逃げているようにしかとれません。
  • 「自分には子供がいてお金の余裕がない」 という主張も、金銭的負担から逃げているようにとられます。

急な話で困惑してしまうのも分かりますが、親族みんなで協力して取り組まなければいけないものです。

これを機に、しっかり親の介護に対する向き合い方をみんなで考えてみましょう。

急な話でもあるので、場合によっては数回、話し合いの場を設定し、みんなが納得できるまで話し合いを重ねましょう。

具体的にできることを考える

話し合いを通じて、それぞれの気持ちが理解しあえたところで、それぞれ何ができるのか、何ができないのかを確認しましょう。

親の家に行って手助けをするのが、何曜日なら可能なのか、何時間くらいできるのか、などできるだけ具体的に確認しましょう。

また、費用負担については、話し出しにくいこともありますが、介護が長期になることもあるので、月々の負担できる金額なども、しっかりと確認しましょう。

また、介護に必要な費用の総額や内訳については、不信感を招かないためにも親族間でしっかり共有しましょう。

主介護者とそれ以外も役割分担

親族間が協力して介護を行っていく場合、必ず主介護者(「キーパーソン」)を決める必要があります。

主介護者は、他の介護者よりも負担が大きくなってしまうので、他の介護者は主介護者に理解を示す必要があります。

また、主介護者以外の介護者は、自分にできることを探して、できるだけ主介護者の負担を減らせるように、介護の役割を担うようにしましょう。

さらに、勤めている会社の福利厚生などで

使えそうなサービスや利用できる休暇制度がないかチェックしておくことも必要です。

キーパーソンとは

キーパーソンとは、親族の介護者全体の代表で、主たる介護者が兼ねること多くなっています。

キーパーソンには、次の役割があります。

  • ケアマネジャーと打ち合わせを行ったり、介護プランの把握をする。
  • 介護サービス事業者との打ち合わせや契約の手続きを行う。
  • 万が一の時の緊急連絡先。
  • その他の介護者への情報提供や意見のとりまとめを行う。
老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

介護をする余裕がない時の対処法

親族で介護に必要な費用の負担についての話し合いをしたときに、親自身の年金や預貯金が不十分で、親族が費用の一部を負担する場合があります。

そのとき、あなた自身の仕事が不安定であったり、病気やケガを患っていたりと何かしらの理由で費用を負担できないことがあると思います。

そんなときの対処法をお伝えします。

生活に余裕がないことを伝え認めてもらう

親族で介護分担の話し合いをするときに、自分の状況を詳しく伝えて、しっかり理解してもらうことが必要です。

しかし、理解してもらえず揉めるようでしたら、家庭裁判所の判断を仰ぐという方法もあります。

これなら、自分だけ費用負担を免れるという罪悪感は緩和できますが、費用と時間がかかるので出来るだけ話し合いで済ませることをお勧めします。

親に生活保護を受給してもらう

親の介護費用を家族が捻出できなかったり、親自身の年金が不十分だと、介護サービスは受けられないのでしょうか。

そのような場合は、生活保護を受けて介護サービスを受けたり、介護施設に入所するという方法があります。

ただし、生活保護を受給するのは、主に次ぎ4つの条件があります。

  1. 家やマンションといった不動産や定期預金、株券などの資産がないこと。
  2. 病気やケガで働けないこと。
  3. 生活保護以外の公的支援を受けられないこと。
  4. 親族からの支援が受けられないこと。

生活保護については、残念ながら悪用される事例があるので、審査は市区町村の職員によって厳しくチェックされます。

審査は、生活状況や収支の聞き取りや所有している資産の確認、親族への支援可否の調査などを行います。

親のお金で介護施設を利用する

親の資金状況に余裕があれば、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど、いろいろな介護施設に入所するという選択肢もあります。

介護施設を利用すると費用がかかりますが、家族が介護を行うことが無くなり、施設から何かあったときの連絡に対応するだけで済むので、

  • 介護のための時間が軽減するので、あなたのための時間が確保できる。
  • 親がひとり暮らしの場合、火事や事故の不安がなくなる。
  • 介護に関する精神的負担を軽減することができる。

といったメリットがあるのです。

なにより、介護をうける親自身も、

  • 安否確認や、適切な介護が受けられる。
  • 毎日、多くの人たちと会話や食事ができる。
  • 施設の設備がバリアフリーなので、安全かつ快適に生活ができる。

など、安心で充実した日々を過ごすことができます。

家族が親の介護を行うことは、とても大切なことですが、家族が無理をして介護を続けた結果、家族が悩んだり疲弊してしまう場合があります。

親の介護は、家族が介護をするという直接的な方法以外にも、介護のための手続きや金銭的援助をするという方法も立派な介護のひとつです。

近くの介護施設を探す!

また、介護施設といっても様々な種類があるため、それぞれの特徴を把握することが重要です。

以下の記事で、それぞれの老人ホームの特徴や違いについて詳しく解説をしています。

【一覧で紹介】老人ホームの種類と特徴|違いや費用・施設の選び方まで解説

公的制度・介護サービスで負担を軽減

老人ホームの様子

公的制度や介護サービスを利用することで、あなたの介護負担の軽減や、介護の悩みを解消することができます。

この章では、公的支援や介護サービスについてご紹介します。

デイサービスや訪問介護など

介護サービスには次のようなサービスがあります。

  • デイサービス:定期的に送迎車で施設に行き、集団でリハビリやレクリエーションなどを行い、送迎車で家に送ってもらうサービスです。
  • 訪問介護:ホームヘルパーが定期的に自宅に来て、買い物や掃除といった生活介護、食事や入浴、トイレなどの身体介助を行ってくれるサービスです。
  • その他の介護サービス:宿泊できるショートステイや、自宅で行う訪問リハビリなどもあります。

これらの介護サービスは、全国で行っている介護保険事業で、基本的に費用(利用料)は1割~3割の負担で済むので、積極的に利用してみてください

利用については、親が住んでいる市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみてください。

公的支援も活用しましょう

市区町村によっては、おむつ代の補助や配食サービス、福祉用具の貸出など独自の事業を行っています。

公的支援は、利用条件のハードルが低く、費用負担も低額または無料といったものが多いので、ぜひ、活用してください。

こちらの利用についても、市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみてください。

老人ホームへの入居もおすすめ

介護は、長期的になることが多いだけでなく、どんなに一生懸命に介護をしても、親の身体的能力は、年々落ちてしまいます。

場合によっては、認知症を発症してしまうことも少なくなく、介護に要する時間や精神的負担は増えてしまうことがあります。

このため、介護者は体力的にも精神的にも疲れてしまい、親子で共倒れといった不幸な状態になってしまうことがあります。

そこで、お勧めしたいのがサービス付き高齢者向け住宅などの老人ホームの利用です。

サービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームに比べて費用負担が少なく、特別養護老人ホームのような入居待ちがなく、スムーズに入居することができます。

サービス付き高齢者向け住宅の一例

サービス付き高齢者向け住宅は、民間事業者が運営していて、施設によって費用も設備もいろいろ違っているので、どこがいいのか迷ってしまうことがあります。

そこでご紹介したいのが、株式会社学研ココファンが運営している施設「ココファン」です

学研ココファンのサ高住の魅力は?

ココファンのサ高住の魅力とは

ココファンの特徴としては、

  • 全国に151の施設、7,338の居室がある。
  • 初期費用が比較的安価
  • プライバシーと安心安全を両立
  • 24時間365日、スタッフが常駐
  • 元気な人から要介護の人、医療が必要な人まで幅広く対応

などが挙げられます。

費用を抑えつつ、充実したサービスを受けることができますので、費用対効果に優れる施設を探している方には特におすすめです。

近くのサービス付き高齢者向け住宅を探す!

介護の費用のトラブルを避けるには

老人ホームに入居するときに注意したのが、施設利用に関するお金のことです。

有料老人ホームなどに比べて費用負担が少ないといっても費用はかかります。

  • 家賃や食費などの生活費
  • 医療にかかる受診料や薬代、交通費
  • ヘルパーなどの介護サービス費
  • おむつなどの介護用品代

これらの費用は、人それぞれ体の状態によって変わってきます。

入居してから、家族間で金銭関係のことでもめないために、事前に具体的な費用を把握しておきましょう。

親の金融資産を把握しておく

先ほど述べたように親の介護に必要な費用は、親の年金や資産で賄える範囲で行うのが基本です。

介護は期間が長くなることが多いので、介護者が費用を捻出し続けることは、負担が大きくなるのであまり好ましいことではありません。

また、年を取るにつれ身体能力は落ちていくので、親の介護の負担は大きくなり、介護に必要な費用も増えていきます。

介護の状況や介護に必要な費用について、ケアマネジャーや施設の人と定期的に情報共有をして、しっかり把握しておきましょう。

家族で揉めない介護の方法についてまとめ

介護の方法についてまとめ
  • 親や家族の間で介護の分担について話し合う
  • 介護サービスや公的支援を積極的に活用する
  • サービス付き高齢者向け住宅などの老人ホームを利用する

親の介護は、病気やケガなどで突然はじまることがあります。

親の介護は、親の配偶者や子供、孫、親の兄弟姉妹、祖父母などの親族に義務があり、介護を怠ると刑罰になることもあります。

介護については、介護を受ける親の意向を踏まえ、介護をする親族間で、介護の負担や介護費用の分担について、具体的な話し合いをしましょう。

分担については、介護者全員が均等になることが望ましいのですが、遠方に住んでいたり、経済的な問題があることもあるので、みんなが納得するまで話し合いをしましょう。

介護は長くなることが多く、自分たちが直接介護を行うと、時間や体力などの負担が大きので、介護サービスや公的制度を積極的に活用しましょう。

在宅での介護は、介護者の負担が大きいので、サービス付き高齢者向け住宅などの老人ホームを活用するのも選択肢の一つです。

サービス付き高齢者向け住宅の相談は、

  • 無料の相談窓口に相談する。
  • 運営会社に資料請求をする。

必要に応じて施設見学もできます。ただし、現在は新型コロナウイルス感染症の影響により、一時中止にしている場合がありますが、リモートで施設案内をしている施設もあります。

介護をするあなたも、介護をされる親も、幸せになる介護のひとつの選択肢として、サービス付き高齢者向け住宅を検討してみてはいかがですか?

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

監修した専門家の所属はこちら

この記事に関連する記事

ショートステイの費用はどのくらい?介護保険の適用範囲や料金を抑える方法まで紹介!

老人ホームの費用相場は?介護施設別の平均料金や内訳・年金で足りるかまで全て解説

成年後見人とは|役割や後見制度のデメリット・選任手続きの流れまでイラスト付きで解説

サービス付き高齢者向け住宅とは?費用や入居条件・老人ホームとの違いまで全て解説

全国の老人ホーム・介護施設・高齢者住宅を探す

介護施設の種類
介護施設の比較
介護施設の費用

上に戻る 上に戻る