名古屋市の老人ホームの特徴
日本でも有数の大都市・名古屋市の老人ホームについて、特徴と動向を解説します。
経済的に発達した都会的なイメージが強い名古屋市ですが、一方で名古屋城など歴史的な建造物や、郊外には緑あふれる公園なども多い住みやすい街です。
そのため「名古屋市で最後の住居として老人ホームを利用したい」という方も多くいらっしゃいます。
以下では、高齢者増加の波が徐々に広がりつつある状況の名古屋市における、
- 市内老人ホームの特徴
- 市内老人ホームの価格概念
- 介護サービス利用者の傾向
- 介護利用者の相談窓口
- 名古屋市の介護が抱える課題
などについて紹介します。
名古屋市の地理的特徴と介護施設の特徴
東京・大阪に次ぐ日本第三都市と言われる名古屋市。
名古屋市の人口は、 横浜市・大阪市に次いで日本で3番目とされ、令和2年で2,200,749人となりました。
その中でも、65歳以上の高齢者人口が増えている名古屋市ですが、一方で高齢者を受け入れるための居住施設の整備は追いついていないのが現状で、施設入居を待つ待機者が多いという問題を抱えています。
老人ホームの施設数は愛知県中の3分の1ほどを占めるとはいえ、名古屋市では高齢者人口数と施設数が見合っているとは言えず、特に特別養護老人ホームでは入居待機者が数多いです。
介護報酬の相場は、平均的に見れば、愛知県内はもちろん岐阜県・三重県など中京圏の中でも若干高めとされます。
そのため、名古屋市で介護を利用する場合には、介護保険が適用される特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付・住宅型有料老人ホーム・グループホーム・ケアハウス・高齢者住宅などの施設サービスを各自のニーズに合わせて検討するのが現実的でしょう。
また、名古屋市中心部では片道3~5車線の道路があるなど、道路網は全国でも有数の充実ぶりで、車での移動は非常に便利です。
同時にバス・電車の路線網も充実しているため、JR・名鉄・近鉄といった地上を走る鉄道、地下鉄・バスの路線網も充実しているため、公共交通機関も非常に利用しやすくなっています。
名古屋市の交通アクセスのよさは、高齢者の方やその家族が老人ホームを利用するにあたって大きなメリットとなるでしょう。
名古屋市の介護施設価格概観
以下は、名古屋市ココファン介護施設の入居金・月額費用について、それぞれの平均値・中央値です。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
名古屋市 |
200,993円 |
202,000円 |
全国平均 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
名古屋市 |
157,670円 |
156,650円 |
全国平均 |
169,518円 |
158,250円 |
名古屋市の学研ココファン施設の価格は、入居一時金は全国平均よりやや安め〜同等程度、月額費用は全国平均と比較して同等程度となっています。
名古屋市の高齢者人口
令和3年10月1日現在、名古屋市内に住む65歳以上の高齢者人口は57万4,039人、高齢化率は約25.0%(全国平均は28.8%)です。
名古屋市は、区によっては高齢者人口数が平均値を大きく上回っている地域がいくつかありますが、名古屋市全体でいうと平均値を下回った高齢化率で現状、高齢者が多いかというとそうではありません。
名古屋市の高齢化率は、同じ市内でも地区によって大きな差があります。
なお、平均値を上回るほどの高齢者人口を有するのは北区・南区、中村区です。
一方で商業施設などが多い中区は平均値を大きく下回る20%以下となっており、また、人口の多い守山区・名東区・天白区・緑区などでも高齢化率は平均値以下となっていて同じ市内でも大きなばらつきがあります。
しかし、名古屋市の高齢者人口は今後さらに増加する予想です。
予想では、令和元年から令和7年度では前期高齢者(65~74歳)が12.1%減少するものの、75歳以上の後期高齢者は19.8%もの増加が見込まれています。
また、若い世代の未婚・晩婚率も全国平均を上回っており、名古屋市では市民の少子化・高齢化が今後の大きな課題となってくるでしょう。
名古屋市の介護保険事業者・施設の状況
下記は、令和2年10月1日における名古屋市の介護保険事業者・施設の状況について表したものです。
種類 |
事業所数 |
居宅介護支援事業者 |
685 |
訪問介護 |
796 |
訪問入浴介護 |
29 |
訪問看護 |
328 |
デイサービス |
322 |
通所リハビリテーション |
170 |
ショートステイ |
132 |
福祉用具貸与 |
171 |
特定福祉用具販売 |
175 |
特別養護老人ホーム |
119 |
介護老人保健施設 |
75 |
介護療養型医療施設 |
4 |
介護医療院 |
3 |
グループホーム |
120 |
名古屋市内の介護保険事業者・施設では、医療系介護サービス業者の増加が著しく、一方で地域密着型の介護保険サービスの利用者数は徐々に減っています。
とくに訪問看護・居宅療養管理などの医療系介護サービス業者は、年に1割ほどのペースで増加していることから、名古屋市内では在宅で病気療養をしている人が多いと言えるでしょう。
しかし一方で「地域に密着した介護サービスの利用は管轄地域に住民票がある方のみ利用できる」などの制約が名古屋市にはあり、認知症の方などが利用するグループホーム・通所と訪問どちらも選択可能な小規模多機能型介護などの利用者数は少ない傾向です。
名古屋市の要介護・要支援認定者数
令和2年5月末での名古屋市の要介護・要支援認定者数は117427人です。
名古屋市の高齢者は全体の人口からすると割合が低いとはいえ、人数でいえば全国トップレベルとなり、それに伴って要介護・要支援の認定を受けている人も多くいます。
名古屋市で要介護・要支援認定を受けた人のうち、介護サービスを利用している人は、訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスで約3,500人、介護老人福祉施設などの居住系介護サービスで約500人です。
介護施設に入居する人が減る一方で、在宅介護・通所介護を選択する人が増加している名古屋市では、特別養護老人ホームの施設数も少なく入居希望者に対して全く足りていない状況です。
特別養護老人ホームの利用者(令和2年10月1日現在)
事業所所在区 |
事業所数 |
定員(人) |
待機者数(人) |
千種区 |
3 |
240 |
388 |
東区 |
4 |
270 |
382 |
北区 |
11 |
686 |
1,202 |
西区 |
8 |
623 |
625 |
中村区 |
4 |
360 |
552 |
中区 |
2 |
190 |
182 |
昭和区 |
3 |
220 |
473 |
瑞穂区 |
5 |
400 |
387 |
熱田区 |
7 |
499 |
690 |
中川区 |
12 |
852 |
728 |
港区 |
16 |
953 |
522 |
南区 |
9 |
734 |
820 |
守山区 |
12 |
847 |
941 |
緑区 |
11 |
735 |
1,173 |
名東区 |
3 |
470 |
334 |
天白区 |
10 |
721 |
1,388 |
名古屋市合計 |
120 |
8,800 |
10,787 |
このように名古屋市内では、令和2年10月1日時点で 特別養護老人ホームが120か所・定員は約8,800枠存在します。
それに対し、待機者が約10,000人となっており、施設を利用したくてもできない人の方が多いと言えるでしょう。
今後、名古屋市では、このような老人ホーム入居待機者を解消するため「はつらつ長寿プラン名古屋(介護保険事業計画)」を計画中です。
その計画により、2012~2014年の間に820床の増設がされる予定ですが、約10,000人いるとされる待機者に対して1,000床にも満たない増設では名古屋市全体の待機者問題が解消されるとは言ず、この問題は解決にまだまだ時間がかかることが予想されます。
::出典要介護・要支援者の状況(R3年度分)NAGOYAかいごネット::
名古屋市の高齢者相談窓口は?
名古屋市では、介護利用者が気軽に相談できる窓口を設けています。
「福祉サービス苦情相談センター」の役割は、
- 利用者からの相談・苦情の受付
- 事業者側が受けた苦情に対しての相談受付
- 事業者側への助言役
などです。
福祉サービス苦情相談センターでは、利用者が在宅介護・介護施設のヘルパーに対する苦情などを電話・FAX・来所窓口などで相談できます。(ただし、裁判で係争中の案件や、すでに結論が出た案件は含みません。)
また、利用者が直接利用施設に持ち込んだ苦情に対して、利用者・事業者の間に入って双方の受け皿となるのも相談センターの役割です。
その他にも、常日頃から施設で発生するさまざまな問題をヒアリングして「利用者の要望」という段階で対処できるよう相談センターが助言を行うなどし、利用者と事業者の間のクッション材として機能しています。
名古屋市の地域包括ケアシステム
地域包括ケアとは、高齢者を支えるサービスを地域一体となって提供する働きです。
名古屋市では「NAGOYAかいごネット」を旗頭にして、各区に地域包括ケア推進会議を設置し、システムの構築に力を入れています。
急激に高齢化が進む名古屋市では、同時に単身の高齢者や高齢者だけの世帯も急増すると予測されており、地域支援が今後の重要な課題です。
日本では現在、戦後のベビーブーム時代に生まれた団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となって提供される地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。
今後も認知症高齢者のさらなる増加が見込まれる名古屋市でも、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、認知高齢者などのための地域包括ケアシステム構築が重要なポイントです。
名古屋市だけではなく、市町村や都道府県が自主的・主体的に働きかけ、地域の特性を活かしながら作り上げていく地域包括ケアシステムが今後の日本では必要とされるでしょう。
名古屋市の老人ホームの種類
老人ホームの施設数が希望者に対して不足している状況の名古屋市ですが、高齢者人口が多いため利用者ニーズもさまざまで、多様な施設が選択可能です。
名古屋市では、介護保険が適用される特別養護老人ホーム・介護老人保健施設をはじめ、サ高住・介護付き住宅型有料老人ホーム・グループホーム・ケアハウス・高齢者住宅など、高級な施設から低価格なものまで揃っています。
地域によって入居施設やその価格には傾向があり、例えば中区・昭和区・千種区などの高所得層が多く住む地域ではm施設の利用料が高額になり、市南部の中川区・港区・熱田区などは比較的低価格な施設が多い傾向です。
名古屋市内で介護施設を利用したい場合には、上記のような地域による価格帯の傾向も踏まえながら探してみるといいでしょう。