グループホームの食事は?食事作りの目的・献立例や認知症についても解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「グループホームでは、どのような食事メニューが提供されているの?」

「そもそもグループホームはどのような施設なの?」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

グループホームとは、認知症と診断されている方がユニットを組んで共同生活を送る場であり、自立した生活を促す目的があります。

調理をはじめとして、残っている能力を生かして生活を送ることになりますが、どのような食事メニューが提供されるのか気になる方も多いでしょう。

こちらの記事では、グループホームの食事や実態について解説していきます。

グループホームの食事についてざっくり説明すると
  • 居住者とスタッフが協力して調理を行う
  • 健康的で食べやすい献立が提供されることが多い
  • 認知症予防やコミュニケーション機会の創出などの役割がある

そもそもグループホームとは

グループホーム概要

グループホームとは「認知症対応型老人共同生活援助施設」とも呼ばれており、NPOや地方自治体・社会福祉法人などが運営しています。

認知症高齢者を対象とした介護施設で、5~9人の利用者が1つのユニットを組んでスタッフの介助を受けながら共同生活を行う点が特徴です。

介護をスタッフに任せるのではなく、各入居者の能力に応じて料理や掃除などの役割を担いながら生活する点が他の介護施設と大きく異なります。

なお、食事面を見てみても、施設側が入居者と共に食事を用意することが他の介護施設とは異なるポイントです。

介助を受けながら家事を行うことで、認知症進行の抑制や回復に繋がるメリットが期待されています。

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グループホームの食事

食事の図

グループホームの目的は「認知症の進行を抑えること」「入居者の能力を維持すること」です。

食事はグループホームで作られ、料理も家事の一つとして能力維持を目的に行われています。

調理から食事までスタッフと入居者が共同で行うのが基本ですが、メニューやレシピ作成も入居者の話し合いで決めさせるグループホームもあります。

他の介護施設では調理を施設側で全て行ってくれるので、認知機能の維持という観点からもグループホームの仕組みは優れていると言えるでしょう。

利用者が食事を楽しむことができるので、食欲の促進にもつながり、健康維持の役割も期待できます。

メニュー例

グループホームの食事は1日3食が基本で、間食としておやつがある場合もあります。

献立の例

献立は上記のように健康的なものが多く、栄養バランスが考慮された健康的な食事が提供されるよう心がけられています。

グループホームによっては献立を入居者が話し合って決めているところもあります。

また、おやつは羊羹やプリンなどの柔らかくて食べやすいものが提供されており、高齢者に配慮している点が特徴です。

入れ歯や嚥下機能が低下している方でも食事を楽しめるような工夫がされているので、安心して利用できるのが実態です。

グループホームでの食事が果たす役割

それでは、グループホームの食事が果たしている役割について見ていきましょう。

栄養摂取

しっかりとした食事を取ることで必要な栄養を体内に摂取することができるので、食事は生命活動の一環です。

ビタミンやカルシウムなど、質の高い栄養素を摂取することが健康維持の観点からも重要です。

栄養不足やカロリー不足などに注意して食事することで、健康を保ちながら病気の予防もできるでしょう。

一方で、利用者の健康状態や食事制限の応じて提供されるので、アレルギーなどの問題がある場合にも特に問題はありません。

認知症の予防

調理や食事を通して、入居者同士やスタッフとのコミュニケーションが生まれるので認知症の予防にも繋がります。

また、調理は脳と手を使う作業なので、認知機能の衰えを防ぐ効果も期待できるでしょう。

コミュニケーションが生まれることで生活が豊かになり、また調理を通して認知症予防も可能なのでメリットは非常に大きいです。

定期的に調理することで残された能力を維持できるため、これはグループホームならではの強みと言えるでしょう。

食事作りは大変?

グループホームの基本的な考え方は「入居者が主体的に食事をする」ことにあり、食事を楽しむことと調理を通して認知機能の改善が期待されています。

調理にはリハビリ効果もあり、また同じ入居者と共に食事する時間を設けることで認知症の回復・進行の抑制に繋がるでしょう。

食事作りは別段大変ではなく、介護スタッフも適宜必要なサポートをしてくれるので安心です。

食事作りは苦痛か

男性に特に多いですが、調理の経験が乏しかったり調理について難しさに抵抗を感じる方は多くいます。

自分たちで献立やレシピを考えて実際に材料を買うことは入居者の負担になるため、食事については炊飯器やコンロさえ使えればば作れるように簡略化されていることもあります。

つまり、そこまで負担を感じることなく入居者・スタッフが楽しみながら料理を行えるので、気張る必要はありません。

料理を委託する場合も

とあるグループホームでは、施設開設から数年が経過した後に利用者が重症化してしまったケースがあります。

このようなケースでは食事作りを入居者が行うことができないので、スタッフが行うことになります。

つまり、場合によっては特色に拘泥することなく柔軟に対応しているわけです。

また、施設や入居者の状況変化次第では食事作りを業者などに外部委託しており、これによりスタッフの負担が減り身体ケアなどの介護サービスに時間を使うことができるメリットも期待できます。

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良いグループホームとは

グループホームは数多くありますが、「良いグループホームとは」何なのか考えてみましょう。

スタッフの雰囲気

スタッフの入居者に対する接し方や心配り、またスタッフ間の雰囲気などは施設選びにおいて非常に重要なポイントです。

入居者のことをどれだけ考えているか、またスタッフ間の関係性は良さそうか次第で、グループホームにおける満足度は変わって来ます。

アットホームな雰囲気を重視し、利用者の個別の好みやリクエストにも対応する心遣いなどがとても大切な要素となります。

忙しい時間帯のスタッフの働きぶりや入居者とのコミュニケーションをチェックすることで、自分が入居した際のミスマッチを防ぐことができるでしょう。

食堂や食器は綺麗か

食事を楽しむ空間や食器が綺麗かどうかもチェックしましょう。

料理の味だけでなく、細かいポイントまで気を配っている施設は利用者の満足度が高い傾向にあるため、以上のポイントも欠かせません。

具体的には、食堂のテーブルや椅子は清潔か、床が清掃されているかを確認して快適な食事の時間を送れるかどうかをイメージしてみてください。

清潔で快適な食堂や食事スペースが提供されることで、利用者が食事を満喫し、健康維持にも繋がるでしょう。

食事時間の様子

グループホームの良し悪しを見極める上で重要なポイントが、食事時間の様子です。

食事時間はグループホームにとって最も忙しい時間なので、スタッフの力量や心の余裕などの真価が試される時間でもあります。

そのため、施設見学をする場合は食事が行われる11時半頃~12時くらいの時間に足を運んでみるのがおすすめです。

入居者に対して食事介助がきちんとできているか、楽しい空間づくりなどの細かい心配りができているかどうかを確認してみましょう。

良いグループホームの見分け方については、以下の記事でより詳しく紹介しています。

良いグループホームとは|施設の見分け方からサービス内容・費用まで解説

認知症の症状を把握しておこう

グループホームに入居できるのは、65歳以上の高齢者で要支援2又は要介護1以上の認知症患者です。

認知症とは、脳の病気や障害などが原因で認知機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたしてしまっている状態です。

代表的な症状は痴呆や徘徊などが挙げられますが、脳が萎縮するアルツハイマー型、脳の一部分が障害される血管性認知症など様々な種類があります。

現在でも社会問題として取り上げられる機会が増えていますが、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると言われているため、認知症に関する知見を深めておくことは有意義です。

なお、認知症の症状は以下で解説する中核症状と周辺症状に大別されます。

中核症状とは

中核症状とは、脳の機能が低下することで直接的に引き起こされる症状を指します。

例えば、直近の記憶を忘れてしまったり同じことを何度も繰り返し行う記憶障害など、痴呆の全般的な症状をイメージすると分かりやすいです。

また、自分が置かれている状況が分からなくなってしまう見当識障害や、判断力が低下して混乱状態に陥りやすくなる点も中核症状の特徴です。

周辺症状とは

周辺症状とは、個人の性格や環境に影響されて現れる認知症の症状を指します。

人によって差があり、グループホームでは以下の周辺症状を軽減するアプローチを取っています。

シャドーイング

認知症が進行し、判断力や認知機能が衰えてしまうと感情がコントロールできなくなります。

その結果、不安や焦りなどを感じやすくなり、誰かに依存する傾向が強まります。

感情が不安に支配されてしまい、常にスタッフなどに付きまとうのが「シャドーイング」で、グループホームでは能力を生かした自立した生活を営むのでシャドーイングからの脱却を目指すことができます。

幻覚

認知症患者の中には幻聴や幻視に悩まされる方が多くいます。

幻視の具体的な症状は「見知らぬ人が話している」「子どもがそこにいる」など、実際にはいない存在が見えてしまっている状況です。

グループホームのスタッフは認知症対応のプロなので、突拍子のないことを言っても冷静に対処してくれるでしょう。

妄想

妄想には様々な種類がありますが、財布などの貴重品を誰かに盗まれたと主張する物取られ妄想が代表的です。

標的は家族になりやすく、これは自身の正当性を主張するための自己防衛が根本にあります。

また、自分のご飯に毒を入れているなどと思い込んでしまう被害妄想や嫉妬妄想なども現れることがあります。

反抗

認知症になると感情がコントロールできなくなり、注意を受けたり入浴や衣類の着脱などの介助をする際に反抗的な言動に及ぶケースがあります。

物事が自分の思い通りにならないことに対して不満が爆発したり、運動機能の低下に伴って怪我することへの不安が起因していると考えられています。

グループホームの職員は反抗に対する接し方も心得ているので、安心です。

徘徊

徘徊は行くあてもなくふらついているイメージがありますが、新しい道順などを覚えられないことが起因しています。

病状が進行すると、住み慣れたエリアなど本来は知っているはずの場所でも道に迷ってしまうケースも多いです。

さらに、重度の認知症になると目的が無いにも関わらず徘徊を始めて近隣に迷惑をかけてしまうこともあるので、GPSを持たせるなどの対策が必要となります。

グループホーム利用するメリット

食事面でメリットが期待されているグループホームですが、他にもメリットが考えられます。

  • 他の介護施設よりも低価格で利用できる
  • レクリエーションが充実している
  • 住み慣れた地域で引き続き生活できる
  • 認知症ケアに精通しているスタッフが常駐しているので安心して生活できる
  • 全般的な家事をできる範囲で行うので、日常生活そのものがリハビリになる

調理や食事の時間をユニットやスタッフで共有できる点も大きな魅力ですが、以上のようなグループホームならではのメリットが存在します。

特に、認知症を患うと新たな環境に馴染むのが大変なので、住み慣れた地域で引き続き生活できる点は大きなメリットでしょう。

少人数制のユニットで生活するので、場に溶け込みやすく余計なストレスを抱えずに済む点を魅力に感じている方も多いので、以上のメリットに惹かれる場合はグループホームの利用を検討しましょう。

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グループホームの食事まとめ

グループホームの食事まとめ
  • 献立作りや調理を実際に行うので、認知症予防や能力の維持に役立つ
  • 調理経験が無い方でも安心して居住できる
  • 楽しみながら健康的な食事を作るだけでなく、住み慣れたエリアで住み続けられるメリットがある

グループホームでは、認知症患者が協力しながら自立した生活を送ることができます。

調理に関しても、できる範囲で作業に携わりながら、健康的な食事を楽しみながら摂取できます。

食事以外にも様々な魅力がある施設なので、興味がある方はぜひ利用を検討しましょう。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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