宇都宮市の老人ホームの特徴と動向
最初に、宇都宮市の老人ホームの特徴と動向を紹介します。
宇都宮市の地理的特徴と介護施設の特徴
宇都宮市は、栃木県の中部に位置する県庁所在地です。人口51万7,369人(2021年10月1日時点)を有する北関東最大の都市です。
日光連山に連なる山地を背景に、鬼怒川などの大小河川が流れ込み、里山の姿を残す緑地・水田が広がるなど、自然環境に恵まれています。
宇都宮市には、東北新幹線や東北本線が通り、湘南新宿ライン・上野東京ライン、東武鉄道東武宇都宮線などが乗り入れています。道路も、東北自動車道・国道4号が縦貫し、北関東自動車道も開通するなど、南北・東西の結節点として整備されています。東京都心とのアクセスも良く、北関東各地域との往来も便利です。
このような利便性と環境の良さから、民間の「住みよさ」調査でも、全国の人口50万人以上の都市で2013年から5年連続で1位を獲得するなど好評価です。東京都心通勤者向けのマンションも多数供給されています。
宇都宮市の介護施設については、かっては老人ホームの少なさが目立ちましたが、市が特別養護老人ホームの増設を進めてきたこともあり、状況は改善されてきています。ただ、入居待ちをしている高齢者は依然多く、さらなる増設が期待されます。
有料老人ホームは、費用的には比較的低額で利用できる老人ホームが多いです。
宇都宮市は、持続的に発展し続けることのできるまちを理念として「ネットワーク型コンパクトシティ」の形成を目指しており、発展が期待されています。
宇都宮市の介護施設価格概観
ここで、宇都宮市の介護施設の価格を概観しておきましょう。
宇都宮市のココファンの介護施設の入居金・月額費用の平均値・中央値は、以下の表の通りです。
<入居金>
地域 |
平均値 |
中央値 |
宇都宮市 |
183,667円 |
183,667円 |
全国平均 |
297,256円 |
194,500円 |
<月額費用>
地域 |
平均値 |
中央値 |
宇都宮市 |
151,750円 |
151,750円 |
全国平均 |
169,518円 |
158,250円 |
表からわかるように、宇都宮市のココファン介護施設の入居金・月額費用は、全国平均よりも低く、ココファン施設の中でも安めの費用で済む傾向にあります。
提供されるサービスは信頼でき、安心して利用できます。
宇都宮市の高齢者人口
宇都宮市の65歳以上の高齢者人口は13万0,114人で、市の全人口の24.9%を占めています(2019年9月末時点)。
全国の高齢化率は28.8%(2021年度時点)ですので、全国の状況に比べれば、宇都宮市の高齢化率は低めとなっています。
今後の見通しについては、市の推計によれば、高齢者人口は年々増加し2025年には13万6,716人になり、高齢化率も26.6%に上昇するとされています。
生産年齢人口の減少に伴い高齢化率は今後も高まる見込みです。
出典:宇都宮市
宇都宮市の介護施設の状況
宇都宮市の75歳以上千人あたりの種類別施設数を、全国平均と比較すると、次のとおりです。
<宇都宮市の種類別施設数>
種類 |
施設数 |
75歳以上千人あたりの施設数(宇都宮市) |
75歳以上千人あたりの施設数(全国) |
訪問型介護施設数 |
170 |
3.19 |
3.25 |
通所型介護施設数 |
157 |
2.94 |
3.43 |
入所型介護施設数 |
93 |
1.74 |
2.17 |
特定施設数 |
13 |
0.24 |
0.32 |
居宅介護支援事業所数 |
163 |
3.06 |
2.41 |
福祉用具事業所数 |
78 |
1.46 |
0.80 |
介護施設数(合計) |
674 |
12.63 |
12.40 |
出典:日本医師会 宇都宮市
上の表の施設数は、2020年9月時点の情報です。
宇都宮市の75歳以上千人あたりの介護施設数は、合計では12.63と、全国平均の12.40よりやや多めです。
これは、居宅介護支援事業所数と福祉用具事業所数が多いことによるものです。
一方で、訪問型介護施設数・通所介護施設数・入所型介護施設数などは、全国平均を下回っています。
宇都宮市の要介護認定者数
宇都宮市の要介護認定者数は21,672人です(2019年9月末時点)。
要介護度の区分別に見ると、要介護2の認定を受けている方が3,944人で18%以上と最も多いです。
宇都宮市の要介護認定者数・認定率は年々増加しています。市の将来推計によると、要介護・要支援認定者数は今後も増加し続け、2025年には26,275人、2040年には32,208 人になると見込まれています。
高齢化が進展する一方、高齢者以外の人口減少により認定率はさらに高まるものと見込まれています。要介護認定者数の増加に伴い、介護サービス利用者数も増加しています。介護対策の一層の充実・強化が必要になります。
出典:日本医師会 宇都宮市
宇都宮市の高齢者相談委員会は?
宇都宮市では、高齢者の方の様々な悩みに応えるために、サロンや交流会、高齢者向け講座の活動内容や人間関係について相談できる、以下のような相談窓口を設けています。
宇都宮市総合福祉センター内の日常生活自立支援事業です。高齢者や障がいのある方の生活相談や、金銭管理代行・福祉サービスの利用などの支援を行っています。
宇都宮市の委託を受けた宇都宮市社会福祉協議会が、経済的に困窮している人をサ**」を行っています。高齢者の深刻な悩みを支援員が聞き、生活確保のためのアドバイスや支援を行うものです。
宇都宮市独自の介護サービスについて
宇都宮市では、介護予防のために体力向上や健康維持を重視しており、以下のような市独自の介護サービス・事業を行っています。
散歩・健康診断受診など健康につながる行動を行った方がポイントをもらえる事業です。貯まったポイントを特典に替えられます。
地域ぐるみでの健康づくりの推進を目指して、推進員を養成しています。推進員が老人クラブなどへ健康体操出前講座を行い、気軽に体操をできるようにするものです。
食事や口腔ケアも重視しています。歯科健康相談や検診を行い未病のうちに治せるようにサポートするとともに、出前講座・健康講座を開催し、食事への知識などを深めます。
引きこもりによる運動機能が低下するケースも多いことから、70歳以上の人を対象にバス乗車券の交付などを行い、外出を促進しています。
「みやシニアセンター」が開催する後援会で、シニアが自分自身を発信できる場所を設けています。
宇都宮市の地域包括ケアシステム
宇都宮市では、認知症高齢者数の増加に対応して、グループホームの増設など介護する家族へのサポートも重視しています。一人暮らしの高齢者や高齢夫婦世帯の生活支援ニーズに応え、安否確認のための見守り、ゴミ出しや買物代行も行っています。これらの活動はボランティアグループが中心となって行っているものです。
また、家の中の段差解消や手すり設置などの住宅改修・バリアフリー化もサポートしています。介護予防や生きがいづくりのための運動教室や教養講座を定期的に開催しています。
さらに、高齢者の医療・介護、生活支援、趣味活動などを、包括的にサポートする人材育成・相互連携システムの構築にも力を入れています。
地域包括ケアシステムは、以上のように、高齢者の支援を目的とした住まいや介護・福祉・医療・生活支援・介護予防などのサービスを一体として地域で包括的に提供する仕組みです。
団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、全国的な構築を国が目指しています。ただ、地域によって状況は異なりますので、地元の地方公共団体が地域の状況に応じて自主性をもって進めていくことが必要です。
胃ろうの方の老人ホーム選びのポイント
この記事は医師に監修されています
中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
矢野 大仁 先生
胃ろうを行っている方が、老人ホームを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
そもそも胃ろうでも老人ホームに入れるの?
2012年頃までは、老人ホームの約70%で胃ろうの方の受け入れを制限していました。
その要因は、胃ろう対応出来る環境が整っている老人ホームが少なかったためです。
しかし、2012年に行われた介護保険法の改正により、現在は胃ろう対応が出来る老人ホームが増加してきています。
とはいえ、胃ろうのケアは看護師や医師が行う医療行為であるため、どこの老人ホームでも受け入れられるわけではないのです。
胃ろうの方の老人ホームへの入居は、近隣の医療機関との連携や、介護職員の人員体制、看護師等医療職員の配置、老人ホームの設備といった、老人ホームの受け入れ体制が整っていることが条件になります。
胃ろうの方や、体調に不安がある方は、希望する老人ホームの医療の連携、介護体制について十分に確認した上で入居を検討しましょう。
胃ろうの基本情報
胃ろうについて、詳しく解説していきます。
胃ろうが必要な状態
胃ろうが必要になるには、下記のような状態にあることが考えられます。
寝たきりの状態で起こる床ずれの原因の1つとなるのが、栄養不足があります。
胃ろうで足りない栄養を補うことで、床ずれの悪化を防いだり、場合によっては体の機能回復に繋がることがあります。
認知症や意識障害、脳血管疾患や神経筋疾患などの影響で口から食べることが難しい場合や、点滴では栄養が不足するときに胃ろうで対応することがあります。
加齢や病気の影響で、嚥下機能が低下した場合に、誤嚥を防ぐ目的の1つとして胃ろうで対応することがあります。
腸ろうの場合
腸ろうは、お腹に小さな穴を開けて、そこから小腸まで栄養を通す管(カテーテル)を通し、直接小腸まで栄養を送る処置です。
本来は胃ろうで対応することが多いですが、胃がんなどの理由で胃ろうを作ることが出来ない患者さんへの処置として、腸ろうを作ることが多いです。
介護的なケアは胃ろうと同じように行うことが多いですが、腸ろうの場合は胃ろうよりゆっくりと栄養を流さなくてはならず、時間と手間がかかります。
人員確保の面で、受け入れが難しい施設が多いのが現状です。
その他の経管栄養の場合
経管栄養は、口からの食事が難しくなった場合、胃までカテーテルを通して栄養を送る方法です。
胃ろうも経管栄養の1つです。
胃ろう以外では、鼻から胃までカテーテルを通す、経鼻経管栄養などが代表的です。
経鼻経管栄養の場合は、手術をすることなく行えるので、身体機能の回復により取り除くことも可能です。
胃ろうも経管栄養の1つですが、経管栄養の方の受け入れを容認している施設でも、胃ろうの方の受け入れをしていない場合があるため、注意が必要です。
胃ろうの方の在宅介護は非常に大変
胃ろうは誤嚥の心配がなくなり、介護が楽になると言われることがあります。
楽になる部分ももちろんありますが、家族による胃ろうの管理は、非常に大変です。
管理が不十分だと、感染症などのリスクもあります。
本人の状態を悪化させてしまう可能性も考えられます。
そのため、介護サービスを利用するなどして、プロに任せることも必要です。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。
栄養素の確保がしやすい
胃ろうの最大のメリットともいえるのが、栄養素の確保がしやすいという点です。
口から食べることが困難になると、必要な栄養素が不足しがちです。
胃ろうの場合は、胃に直接送り込むことが出来るため、必要な栄養素を確保したり、必要なカロリーを摂取することに役立ちます。
口から食事もできる
口から食べることが困難になった方が胃ろうの処置をすることが多いですが、胃ろうの方も口から食事をすることが出来ます。
胃ろうは腹部にあるため、喉や食道にカテーテルが通っていない分、経鼻経管栄養などと比べると口からの食事はしやすいと言えます。
また、嚥下訓練もしやすい特徴があります。
洋服で隠すことができる
胃ろうは腹部についているため、洋服を着てしまえば見た目では胃ろうがあるかどうか分からない点がメリットといえます。
鼻からカテーテルを通す経鼻経管栄養は、隠すことが難しく、違和感などから引き抜いてしまう方もいますが、胃ろうは目立ちにくく、引き抜く心配が少ないというところがメリットです。
運動やリハビリへの影響が小さい
胃ろうがあっても、基本的な運動やリハビリで体を動かすことは可能です。
胃ろうは洋服で隠すことが出来る点や、カテーテルが見えていないことからも、運動やリハビリに支障が少ないことも特徴です。
また、口からも食べることが出来るため、嚥下訓練を行うことも可能です。
入浴可能
医師の許可があれば、入浴することも可能です。
入浴の際は特別な処置をすることなく、普段通り入浴をすることが出来ます。
カバーをすることなく入浴が出来るため、介護する人の負担軽減にも繋がります。
清潔を保つことは皮膚トラブルの防止にもなりますし、胃ろうが付いている周辺の化膿防止にも繋がります。
誤嚥性肺炎の予防に効果がある
胃ろうは胃に直接栄養を送るため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
嘔吐物などの胃酸による化学性肺炎の防止にも効果があります。
ただし、唾液等の誤嚥による細菌性肺炎はリスクが上がる可能性がありますが、口腔ケアを行ったり、口から少量でも食事を摂ることで細菌性肺炎のリスクを予防することに繋がります。
胃ろうのデメリット
一方で、胃ろうには以下のようなデメリットも存在します。
手術の必要がある
胃ろうは腹部に小さな穴を開けて設置するため、穴をあける外科手術が必要です。
手術には抵抗がある人も多く、その点がデメリットといえます。
ただ、胃ろうの手術は内視鏡を使って行うため、30分程度の短い時間で終わります。
合併症のリスクも
胃ろうで起こる可能性がある合併症には、汎発性腹膜炎や創部感染症などのリスクがあります。
合併症に関しては胃ろうに限らず、他の経管栄養法でも発生する可能性はあります。
むしろ、胃ろうの場合には合併症のリスクが他の経管栄養法よりも少ないとされています。
口腔ケアが必要
口から食べる機会が減少することで、口臭や細菌の増加など、口腔トラブルが発生しやすくなります。
こうした口腔トラブルは、食べる機会が減ることで唾液の分泌が減り、自浄作用が低下することで起こります。
口腔内のトラブルを防ぐためにも、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
逆流することがある
胃に注入する栄養剤は液体のため、逆流する可能性があります。
逆流してしまうと誤嚥に繋がることもあるので、栄養剤を注入している最中と、注入後は30度以上上半身を起こしておく必要があります。
また、体質的に胃に入れたものが逆流しやすい症状を持っている人もいます。
このような場合は、とろみのついた栄養剤で症状が抑えられる場合があります。
胃ろうの設置は本人の意思確認も重要
日本の胃ろう利用者は25万人以上とも言われており、世界的に見ても日本は胃ろう患者が多いことが知られています。
ただ、日本では胃ろうを望まないとする人が8割以下と少ない傾向があり、本人の意思と尊厳の重視に注目されています。
胃ろう設置の最大の目的は生命維持であることが大半ですが、決して胃ろうが延命治療とは断言できません。
胃ろう患者の介護施設受け入れも増えてきたため、介護施設入居にあたって胃ろうの選択肢を辞めるという必要性はほぼ無くなりました。
そのため、本人の意思をしっかり確認し、家族も納得した上で検討することが大切です。
胃ろうが必要な方の介護施設の入居条件
胃ろうは医療行為のひとつで、2012年までは主に看護師が行うケアでした。
現在は、看護師などの医療従事者以外に、家族や所定の研修を受けた介護職員が胃ろうの対応が出来るようになりました。
とはいえ、どの介護施設でも受け入れられるわけではありません。
胃ろう患者が断られる理由には、
- 看護師が日中、もしくは24時間常駐がない
- 介護職員への研修が進んでいない
- 胃ろう患者のための設備が整っていない
このような理由から断られることがあります。
胃ろうの方が施設を探す場合には、検討段階から胃ろうを使用していることを伝え、入居後安心して暮らせる環境かどうかをしっかり確認することが大切です。
胃ろう対応可能な介護施設選びで重視する点
それでは実際に、胃ろうの方が施設選びをする場合、どのような施設を選ぶべきか紹介していきます。
口腔ケアに精通している
胃ろうの方で、口から食べる機会が減ると、口腔内の状態が悪くなりがちです。
口から食べる機会が減ることで、口の中を清潔に保つ重要な役割を持っている唾液の分泌が減るためです。
口の中に細菌が繁殖すると、虫歯や口内炎になったり、口臭の原因になったりします。
肺炎にかかる可能性などもあります。
そのため、口腔ケアによって口腔内を清潔な状態に保つ必要があります。
口腔ケアをしっかり行っている施設を選ぶ基準にしましょう。
入居者の体を清潔に保とうとしている
胃ろうを設置していると、入浴が出来ないイメージがあります。
実際には胃ろうに特別な保護をしなくても、普段通り入浴をすることが出来ます。
入浴後も、胃ろうを入れ替えたり、消毒をしたりすることなく、普段通りのケアで充分です。
むしろ、胃ろうが不潔な状態になると、感染症などの心配もあります。
そのため、身体を清潔な状態に保つ必要があり、入浴や清拭によって体を清潔に保とうとしているかどうかは、必ず確認が必要です。
栄養剤にこだわっている
胃ろうで使われる栄養素には、タンパク質が分解された状態で含まれる「消化態栄養剤」と、分解前のタンパク質がそのまま含まれている「半化態栄養剤」の2種類あります。
この2種類の栄養剤から、胃ろうを設置している方の消化能力などを見て、どの栄養剤を使用するか、医師や看護師と連携をとりながら選択してくれる施設が望ましいです。
また、胃ろうの方にとって栄養剤等の補給は健常者の食事と同じです。
胃ろうのチューブに詰まらないように注意して調理されたものであれば、医師の診断の元、何を入れても大丈夫です。
普通の食事を作るように調理したものや、野菜ジュース、スポーツドリンクなども入れることが出来ます。
こうした胃ろうの方の"食事"にも気を配っている施設であれば、安心することが出来ます。