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【医師監修】認知症検査「VSRAD(ブイエスラド)」とは?特徴や評価方法を解説

2023年08月26日

この記事は医師に監修されています

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中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター副センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 准教授(客員)

矢野 大仁 先生

現代の高齢化社会において多くの人悩みの種であるアルツハイマー型認知症。

その早期発見の手法としてVSRAD(ブイエスラド)という検査法はご存知でしょうか?

VSRADは、MRI画像のコンピュータ解析を用い脳の萎縮度を調べることで認知症の可能性をテストする検査です。通常の通常のMRI検査に延長してできる検査法ですから、注射なども必要なく痛みもありません。

しかし詳しくはあまり知らない方も多いはず。

そこで、この記事ではVSRADについて、概要・注意点・費用などの観点から総合的に解説していきます!

この記事を最後まで読めばVSRADについてはバッチリです!

VSRADについてざっくり説明すると
  • 脳の萎縮度から認知症の可能性を検査する
  • MRI検査の一つとして受けられる。
  • 50歳以上で認知症の疑いのある方におすすめ

VSRAD(ブイエスラド)の概要

VSRADの検査イメージ

VSRAD(ブイエスラド)とは、MRIの検査データを使ってアルツハイマー型認知症の原因である脳の萎縮を調べる検査です。アルツハイマー型認知症の重症化を防ぐために重要な早期発見にも効果的と言えます。

VSRADという名前は、英語の「Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer's Disease」の頭文字を取って名付けられており、大日本印刷株式会社とエーザイ株式会社が共同で開発し、前:国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター長・松田博史氏総監修(現:南東北創薬・サイクロトン研究センター院長)のもと作られた検査です。

海馬傍回・扁桃・海馬を検査

VSRADは、記憶に関わる部位である海馬傍回(かいばぼうかい) 、海馬、扁桃の萎縮度を痛みもなく簡単に調べられる検査です。この検査では、これらの部位の萎縮度をテストしアルツハイマー型認知症の可能性を数値化します。

人間の脳は通常、加齢とともに萎縮し物忘れの頻度も高まります。しかしその症状の進行はとてもゆっくりであるため、発見が遅れることも多いです。そのためVSRADでは、アルツハイマー認知症においてもっとも早期に萎縮が見られる海馬傍回付近を特に見ることで早期発見につなげています。

どのように脳の萎縮をみるの?

MRIで撮影した頭部の画像データと、あらかじめ用意しておいた健康な脳の画像から作ったデータをコンピューターで照合・解析し、脳の萎縮の度合いを測ります。

通常、海馬傍回付近は非常に小さく目で萎縮を確認することが難しいのですが、VSRADではコンピューター解析により萎縮をより簡単に確認できます。

VSRAD検査でわかることは?

アルツハイマー型認知症では、脳の中心に近い内側側頭部分(海馬傍回、扁桃、海馬)の萎縮が起こることがわかっています。そのためVSRADでは、早期アルツハイマー型認知症における画像診断のポイントとなる内側側頭部の萎縮度の評価を行います。

検査結果を4段階で評価する

VSRADは内側側頭部の萎縮の強さを4段階の数字で表しています。

萎縮度が0から1の場合は脳の萎縮はほとんど見られません。萎縮度が1から2の場合は萎縮がややみられ、萎縮度が2から3の場合はかなりの萎縮がみられるため、アルツハイマー型認知症の可能性が高まります。

萎縮度が3を超える場合は脳に強い萎縮が見られる状態で、治療が必要なレベルです。 このように、脳の萎縮度は認知症の可能性を判断する基準となっています。

VSRADの注意点は?

閉所恐怖症の方や脳クリップを入れている方、心臓ペースメーカーを入れている方などは、VSRADに必要なMRI検査そのものができない可能性があるので注意しましょう。

その他、検査中の体動などでもMRI検査ができないと判断されることがありその場合はVSRADは受けられません。

また脳梗塞が存在している場合などは解析結果が正しく表示されない場合があります。

若年性アルツハイマーは診断しにくい?

若年性アルツハイマーとは65歳未満で発症する疾患のことです。

VSRADは通常50歳以上の方が対象であり、50歳以下でもテスト自体は可能ですが解析結果の個人差が著しいため判定の信頼性が下がってしまいます。

そのため、50歳未満の人の診断はVSRAD以外の検査を受ける方が良いとされています。

VSRAD検査にかかる費用・時間

VSRADは医療機関を受診し、医師が必要と判断した場合に受けられます。

VSRADは通常の脳MRI検査に追加して行うものなので、基本的にVSRAD単独での検査はできません。

保険診療の場合(3割負担)には追加料金は発生せず、5000円から6000円程度です。脳ドック(自費)のオプションとして受ける場合は数千円の追加が一般的のようです。

詳しくは自分が検査を受ける予定の医療機関に尋ねてみるのが良いでしょう。

時間は約20分〜30分

VSRADは通常のMRI検査のオプション検査であるので通常のMRI検査時間に加えて6分程度長くなり、トータルで約20~30分ほどかかります。 特別な注射などはなく検査の間に安静を保つ(じっとする)ことができればOKです。

結果説明は検査当日に聞ける医療機関もあれば、次回の診察時になる医療機関もあり、これも検査の際に医療機関に尋ねておくとよいでしょう。

VSRADを受けるべき人

  • 日常的にもの忘れが気になる方
  • 軽度認知症機能障害と既に診断されている方
  • 年齢が50歳以上の方

ただし、VSRAD検査の有無の最終的な判断は医療機関で行われます。

認知症と加齢による物忘れの違い

物忘れには認知症によるものと加齢によるもので次のような違いがあります。

認知症でみられる

「もの忘れ」
年齢に伴う

心配いらない「もの忘れ」
内容自分の経験した

出来事を忘れる
一般的な知識や

常識を忘れることが多い
範囲体験したことの

全体を忘れる
体験の一部を思い出せない

最近の出来事を思い出せない

覚えていたことを思い出せない(ど忘れ)
ヒントを与えるとヒントでも

思い出せない
ヒントで

思い出せることが多い
記憶障害の進行緩徐に進行していく何年たっても

進行·悪化していかない
自覚自覚していない(病識なし)

深刻に考えていない
自覚しており、

必要以上に心配する
日常生活支障あり支障なし
その他の症状あり(物事を段取りよく行えないなど)なし

【FAQ】VSRADに関するよくある質問

検査は痛いの?

検査中、頭部MRIの撮影を行うため装置内で大きな雑音はしますが、耳栓をつけますので大丈夫です。検査をしている最中に痛みが生じることはありません。

また、食事制限等もなく検査前後であっても普段通りの生活をすることが可能です。

ただし、MRI検査自体をを受けることができない人(心臓ペースメーカー埋め込み後や閉所恐怖症の方など)はVSRADはできません

結果が悪かったらアルツハイマー型認知症なの?

悪い結果が出てもアルツハイマー型認知症とは限りません。

VSRADで脳の萎縮度からアルツハイマー型認知症を疑うことはできますが、アルツハイマー以外の原因も考えられるため、MRI検査とVSRADの画像検査だけではアルツハイマー型認知症であると判断はできません。

口頭による質問形式のMSSE(ミニメンタル・ステート)検査や長谷川式スケール検査などの結果もあわせて最終的な判断をすることが多く、最終的な診断には、症状や経過などをあわせた医師の総合的な診察が必須になります。

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VSRAD検査だけ受けられるの?

VSRADは通常の脳MRI検査に追加して行うものです。基本的にはVSRAD単独での検査はできません。

VSRADまとめ

VSRADまとめ
  • VSRADで脳の萎縮度を検査すると、認知症の可能性が確認できます。
  • VSRADは脳ドックに付随するものであり単体では受けられません。
  • 保険診療での追加費用は発生せず、追加時間は6分間(全体では20~30分)
  • VSRADだけでは認知症とは診断できず、医師の総合診断が必要です。

この記事では、VSRADについて紹介しました!

VSRAD検査はアルツハイマー型認知症の早期発見に役に立つ検査です。

アルツハイマー型認知症が心配であればVSRAD検査を含めたMRI検査についても医療機関に相談してみてください!


この記事は医師に監修されています

hirohito_yano.png

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター副センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 准教授(客員)

矢野 大仁 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。