筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因は?食べ物・ストレス・遺伝の影響などを解説

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長

矢野 大仁 先生

「筋萎縮性側索硬化症(ALS)はどんな病気?」

「ALSの原因って何?」

このような疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんか?筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足やのど、舌など全身の筋肉が萎縮することで力が入らなくなり、全身の自由がきかなくなってしまう難病です。

今回の記事では、ALSの症状や原因について詳しく解説していきます。さらに現在行われているALSの検査・診断方法や治療法についてもまとめています。

この記事を読むとALSに関する基本的な情報について知ることができるでしょう。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)についてざっくり説明すると
  • 全身の筋肉が萎縮し力が入らなくなる病気
  • 高齢者に多く認められ、男女比は男性の方が多い
  • 原因は不明だが神経の老化と関連している
  • 内服薬と注射薬の2種類の治療法が存在する

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?

まず、ALS(筋萎縮性側索硬化症)がどのような病気であるのかについて解説していきましょう。この見出しでは病気の解説と発症数についてまとめています。

全身の筋肉が萎縮する難病

ALSは、運動神経細胞(運動ニューロン)に障害を与える病気です。

ALSが発症すると筋肉を動かす神経の機能低下により体全身の自由が利かなくなってしまいます。

そもそも運動ニューロンは上位運動神経細胞(上位運動ニューロン)と下位運動神経細胞(下位運動ニューロン)の2種類に分けられています。ALSになると上位運動ニューロン・下位運動ニューロンの双方がダメージを受けることで筋肉に指令が伝わりにくく力が弱くなります。その結果、筋肉は衰え、力が出なくなってしまうのです。

ALSは10万人に7~11人が発症すると言われていますが、明確な原因が不明で、治療方法が確立されておらず、指定難病に認定されています。

薬を飲んでも症状の進行を抑えることしかできません。発症の割合は男性の方が女性よりも1.2~1.3倍多いというのも特徴の一つです。

また、病気の進行スピードや初期症状は人によって異なります。短期間で急激に体が動かなくなる患者が比較的多い反面、進行速度が遅く10年以上かけてゆっくりと症状が進行するケースもあります。

ALSは進行性の病気であり、症状が軽くなることはありません平均生存期間は発症から2~5年程度であり、多くの場合は呼吸の筋肉の機能低下による呼吸不全が死因となります。医療技術の進歩や栄養状態の改善により感染症も減ったため、近年では1年ほど寿命は長くなっています。

寿命の延伸と共に発症数が増加

ALSの患者数は増加傾向にありますが、それには寿命の延伸に伴う高齢化が理由の一つとして挙げられます。

ALSの発症数は50~70歳代に多く見られます。昔は平均寿命が短かったため罹患する人が少なかったのに対し、団塊の世代が高齢者となり65歳以上の人口が増加し、患者数が増えたことでALSの発症数が増加していると考えられるでしょう。

また、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病など、他の神経が損傷する疾患もALS同様に患者数が増加傾向にあります。

ALSの原因となるものは?

前述したように、ALSの明確な原因は解明されていません。しかし研究が進められる上で、遺伝子異常、ストレス顆粒、グルタミン酸過剰による神経障害など、その原因にはいくつかの説が提唱されています。

ここではALSの原因として考えられている5つの説について紹介していきましょう。

グルタミン酸仮説

グルタミン酸仮説

グルタミン酸仮説では、グルタミン酸の再取り込みの障害によってシナプスの隙間に過剰に溜まってしまうことによって、運動ニューロンがダメージを受けることが発症の原因とされています。

そもそも人間の手足が自由かつスムーズに動かせるのは、脳からの指令が出ているからです。運動ニューロンが正常に作動しているときはその指令が運動ニューロンを経由して各筋肉へと伝えられます。

そしてこの運動ニューロンは、神経細胞体と樹状突起、そして軸索から構成されています。軸索と樹状突起には隙間が存在しており、その間の事をシナプスと言います。

脳で出された命令はシナプスを経由し、ニューロンが受け取ることにより電気信号へと変わり、軸索へと伝わります。そして軸索の末端からは神経伝達物質と呼ばれるグルタミン酸が放出されるのです。

ところがALS患者の場合、この取り込みが阻害されるとグルタミン酸が過剰になり、運動ニューロンが死滅してしまうと考えられています。

遺伝

ALSは多くの場合遺伝せず、約9割が遺伝と無関係に発症しますが、残りの1割は家族性ALSとされています。

家族性ALSの一部には、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)という活性酸素を解毒してくれる遺伝子の突然変異が見られます。家族性ALSの約2割は、この遺伝子異常が原因だと考えられていますが、他の患者も同じく活性酸素の影響により運動ニューロンが死滅しているという研究もあり、まだ未確定なものとなっています。

環境(紀伊半島など)

環境が病気の発症に関係しているという説も提唱されています。その理由として挙げられるのが紀伊半島の発症者数です。

紀伊半島南部は、グアム島や西ニューギニアと並び、筋萎縮性側索硬化症の多発地区となっています。多い地区では全国平均の50~100倍にもなるのです。

グアム島ではかつての多発地区が消滅し、ALSの発症頻度が激減している一方で、紀伊半島南部における発症頻度は数十年前と比較してもあまり変化がありません。また、グアム島と紀伊半島では、ALSのみならずパーキンソン認知症複合(PDC)という、二つの地域にしか存在しない特異な精神疾患が多発しており、未だに多くの謎が解明されていません。

ストレス類粒

ストレス類粒は、神経細胞の中に存在するRNA-タンパク質複合体を多く含んだ構造体で、細胞が感染や熱ショックなどのストレスを受けた際に形成される凝集体です。

ストレス類粒が消失せずに過剰に蓄積することで、筋萎縮性側索硬化症や精神変異性疾患、がんなどの原因となると考えられています。

神経栄養因子欠乏説

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因として考えられている説の一つに神経栄養因子欠乏説というものがあります。

神経栄養因子欠乏説とは、神経を成長させるために必要な栄養成分や、傷ついた細胞を回復させるために必要な栄養成分などが足りなくなってしまうことにより、運動ニューロンが破壊され、ALSの発症に繋がるというものです。

以上がALSの原因として考えられている主な仮説ですが、前述したように現時点では明確な原因が解明されていません。

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ALSの初期症状は?

ALSの症状の画像

ALSが発症すると、上記のような初期症状がみられます。初期症状の種類は人により異なります。

いずれの場合も、次第に全身の筋肉がやせて力が入らなくなり、歩けなくなります。また、のどの筋肉の力が入らなくなり声が出しにくくなる構音障害や水や食べ物の飲み込みができなくなる嚥下障害がおこるという点も共通です。

さらにALSが進行すると呼吸筋も弱まるため、多くの場合呼吸不全に陥ります。 このように、発症後は進行した病気の症状は回復しないというのがALSの恐ろしい特徴の一つだと言えるでしょう。 しかし、進行しても通常は視力や聴力などの体の感覚に影響を及ぼすことはありません

ALSの進行期の症状経過

次にALSの進行期にはどのような経過をたどるのかについてまとめていきましょう。

まず大きな特徴として、ALSという病気は常に進行性であるということが挙げられます。そのため一度ALSを発症すると、症状が軽くなることがありません。発症後の平均寿命はおおよそ3~5年程度と言われています。

先に述べたように初期症状は人によって異なります。ただし、身体のどの部分から筋萎縮が始まったとしても、次第に全身の筋肉がやせて力が入らなくなり、歩けなくなります。また、のどの筋肉の力が入らなくなり声が出しにくくなる構音障害や水や食べ物の飲み込みができなくなる嚥下障害がおこるという点も共通です。

さらに進行すると呼吸筋も弱まるため、多くの場合呼吸不全に陥ります。そのためALSの患者さんの多くで呼吸不全が死因となります。筋萎縮が進んでも呼吸器を使うことで寿命が延びるケースもあります。

このように、発症後は進行した病気の症状は回復しないというのがALSの恐ろしい特徴の一つだと言えるでしょう。

しかし、進行しても通常は視力や聴力などの体の感覚に影響を及ぼすことはありません

ただし症状の出現には個体差があり、また、進行状況も人によって異なるため、中には呼吸器なしで10年以上存命したケースも存在するのです。

ALSの検査・診断の方法

ALSと診断するには、呼吸筋の麻痺や運動ニューロンに障害を来す様々な病気と区別をつける必要があります。

検査にはエックス線やMRI、CTなどの画像診断、そして筋電図検査が用いられます。さらにその他の病気の可能性を除外するために、必要に応じて脳脊髄液を採取して髄液検査を行うこともあります。

そうした検査を通し、運動ニューロン障害の有無やその他の病気の除外などを経て判断が下されるのです。また、初期症状の場合は特に判断が難しいため、数年経過観察を経て診断を行うケースもあります。

早期の診断と適切な治療は重要ですが、正確な診断を下すためには継続的な取り組みと専門家の知識が必要です。

ALSの治療はどうやって行う?

最後に、ALSの治療についてまとめていきましょう。現在の医学ではALSを完治させることはできませんが、進行を遅らせることは可能です。

治療に使われる薬は飲み薬と注射薬の2種類ありますが、そのうちリルゾールと呼ばれる内服薬がALSの治療薬として昔から有名な薬です。

リルゾールの作用は、グルタミン酸による毒性を抑えて運動ニューロンを保護するというもので、これにより患者の生存期間や人工呼吸器に頼る期間を延ばせるという結果も出ています。このことは成果に期待できるだけではなく、グルタミン酸過剰説を裏付ける結果にもなっています。

さらに2015年には、ALSに有効な注射薬(エダラボン)が承認され、治療の幅が広がりました。

これらの薬剤はあくまでもALSの進行を抑える効果だけで、病気を完全に治す効果には期待できません。しかし、ALSに対する研究は現在も進められており、今後も原因因子や治療薬の発見が期待されます。

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)についてまとめ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)についてまとめ
  • 患者は特に50歳以降に多く、高齢化とともに発症者数も増加している
  • 進行性の病気で、一度かかると回復は難しい。
  • 原因として有力なのはグルタミン酸仮説
  • 原因の解明・治療に向けて研究が進められている

今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)について解説しました。

筋萎縮性側索硬化症は指定難病に認定されており、原因と完全な治療法が未だに解明されていない病気です。遺伝子異常、ストレス、地域環境なども原因の一つとして考えられています。

身体の自由が利かなくなる上に回復が期待できない病気ため、介護や周囲のサポートが必要不可欠です。こうした難病と向き合う為には正しい知識を身に付けることが重要になるでしょう。

この記事は医師に監修されています

中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長
中部療護センター副センター長
岐阜大学連携大学院脳病態解析学分野 准教授(客員)

矢野 大仁(やの ひろひと) 先生

1990年岐阜大学医学部卒業、医学博士。大雄会病院などの勤務を経て、学位取得後、2000年から岐阜大学医学部附属病院脳神経外科助手。2010年 准教授、2013年 臨床教授・准教授、2020年4月から現職。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医。脳卒中の他、脳腫瘍、機能的脳神経外科など幅広い診療を行っている。患者さんが理解し納得できるようにわかりやすい説明を心がけている。

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