家族の介護のストレスを軽減するには?認知症介護のポイントやイライラの対処法を紹介
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「家族の介護に疲れちゃったけど、どうすればいいんだろう・・・」
「在宅介護のストレス解消法を知りたい!」
介護をしていて、このように疲れやストレスに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、介護をしている家族のストレスについて解説します。介護をしていてイライラしてしまったときの対処法など、ぜひ参考にしてみてください!
- 多くの方が親(家族)の介護で疲れやストレスを感じている
- 認知症の介護は特に疲れやストレスが多い
- 介護うつになってしまう人も多い
多くの介護者が在宅介護で疲れを感じている
介護は、
- 家族が要介護者になったことへのショック
- 何から始めたらよいのかわからず混乱する
- 介護が仕事に影響を及ぼす
など、要介護者の家族に大きな精神的負担がかかります。
また、介護者が仕事と介護を両立できないため、仕事を辞める介護離職をすると、経済的負担もかかってくるため、さらに大きな負担となります。
介護は身体的・精神的・経済的負担があり、介護疲れが起きてしまうことがありますが、その際は家族間での協力や地域の助けが必要です。
しかし、家族での介護は、周囲から孤立しやすい傾向があります。孤立するのは、主に介護をしている介護者です。
そして、介護者の心身のバランスが崩れると「介護うつ」や「介護放棄」に繋がることもあります。
家族の介護でストレスを感じてしまう原因
「両親や親族は自分が介護しないといけない」と思い込み、ストレスが蓄積している人もいます。
その場合、ストレスが溜まっていることに気が付いていないこともあります。
介護ストレスの原因を自ら理解し、介護ストレスの特徴や解消方法を見出すことが大切です。
自分がしなければならないという思い込み
上記のグラフは、要介護度と介護時間の関係性をグラフにしたものです。
介護度が上になるほど、介護時間が「ほとんど終日」になる割合が多くなります。
要介護者が短期間施設に入所するショートステイという介護保険サービスがあります。
介護者が心身を休めたいときなど、このようなサービスを積極的に活用することが大事です。
職場に相談できない
上記の調査では、介護のために
- 残業をしない
- 時短勤務をする
- 休暇を取る
- 在宅勤務をする
など、仕事で何らかの対策をしていない人が全体の約7割もいました。
7割もの人が、仕事を調整しないまま介護をしようとしています。
しかし、介護と仕事を両立させるためには、職場に介護をしていることを伝え、理解を得ることが重要です。
介護ストレスによって引き起こされる問題
介護のストレスによって引き起こされる問題には、どのようなものがあるのでしょうか。
親や家族である要介護者への虐待
厚生労働省の調査によると、ここ10年ほどで介護者による高齢者虐待は増えています。
虐待は暴力だけではなく、要介護者に暴言を吐いくことや、要介護者にお金渡さずに全額を介護者が使う経済的虐待もあります。
虐待をしていると気付かない人、虐待をされていても我慢している人もいますので、虐待に対する意識の向上が重要です。
また、高齢者虐待が起こらないようにするためには、介護者のストレスを軽減し、適切なサポートを提供することも必要です。
社会全体で高齢者に対する理解と尊重を深め、高齢者が安心して生活できる社会を実現するために、私たち一人ひとりが行動することが求められています。
介護うつ
介護者は日々介護をしていく中で、慢性的な不眠に陥ったり、疲労感でいっぱいになってしまったりします。
また、介護に専念することにより家から出られないため気分が落ち込みがちになり、ストレスからうつ状態に陥っていきます。
その結果「介護うつ」になってしまうと、自分の生活すら成り立たなくなってしまう恐れもあります。
介護者の健康管理は、介護を受ける方の健康管理と同じくらい重要です。
介護者自身が体調を崩してしまうと、介護が困難になり、最悪の場合、介護を継続することができなくなってしまうこともあります。
介護者は自身の健康維持にも配慮し、介護負担の軽減や適切なサポートを受けることが必要です。
誰にでも起こり得る介護疲れ
介護疲れは、誰にでも起こり得る問題です。介護疲れにはどのような種類があるのか解説します。
身体的な疲れ
毎日、起床介助、移動介助、体位介助などの介助をすることにより、介護者の体には大きな負担がかかります。
体を持ち上げたり降ろしたりすることを一日に何回もしなければなりません。
そのため、体力がなくなる他、腰などにも多大な負担がかかり、痛めてしまうことも多いです。
また、散歩や通院への付き添いでも疲れが溜まります。
夜中のおむつ交換、トイレ介助により、睡眠不足に陥る介護者も多いです。
このような生活を送ることにより、介護者の身体には相当なストレスがかかっていると言えます。
精神的な疲れ
介護する側は、要介護者と日常的に接しなければならないだけではありません。
家族たちとの関係性の維持、介護スタッフとのやり取り、役所などの公的な手続きなど、しなければならないことがたくさんあります。
その中で人間関係に疲れてしまい、ストレスを抱えてしまうことは多いです。
また、家族が介護を手伝ってくれないことから孤立感を抱き「自分だけに介護が押し付けられている」と感じると、これもストレスを溜める原因になります。
介護者は、人間関係の問題や孤立感といったストレスを抱えることで、介護の負担が増大し、身体的・精神的な健康に影響を及ぼすことがあります。
介護者自身がストレスを溜め込まないよう、家族や周囲の人々に理解を求めることや、適切なカウンセリングやグループセラピーに参加することなど、自己ケアの方法を模索することが重要です。
経済的な疲れ
介護サービスは要介護度に沿って支給限度額が決まっており、介護サービスで自己負担額があっても多くの場合は1割で済みます。
しかし、おむつ代、デイサービス・デイケアでの食事代など、日常生活にかかる費用には介護保険は利用できず、全額が自己負担です。
さらに、介護者が介護離職をすれば世帯収入が大幅に減ってしまい、経済的にも負担を強いられることになります。
経済的な不安を抱えながら介護をしなければならないのはとても辛いことです。
介護者が経済的な不安を抱えながら介護を続けることは、精神的・身体的なストレスにもつながります。介護者自身が健康を損なってしまうと、介護の質が低下してしまうことがあります。
介護者にとっても、介護を必要とする方にとっても、経済的負担を減らすことが大切です。
認知症介護による疲れ
認知症者への介護は、一般的な介護よりも疲れを感じやすくなります。
徘徊(目的もなく歩き回る)、排泄が上手くできず失禁する、被害妄想から介護者にお金を盗られたなど延々と言いがかりをつける、介護者に暴力を振るうなど、とても対応できないことが日々起こります。
また、生活リズムが安定せず、夜中に起きて活動を始めたり、外に出て徘徊に出てしまったりするので、認知症者の全ての行動に付き添うことはかなりの疲労が蓄積されていきます。
介護疲れを軽減するための5つの方法
さまざまな原因により介護者は介護疲れに悩まされます。しかし、各種サービスを活用することで、介護疲れやストレスを軽減させることが可能です。
介護サービス等の高齢者支援サービスの利用
以下にご紹介するようなサービスを積極的に利用していきましょう。
介護保険サービス
訪問介護・訪問入浴介護を利用すれば、食事介助、排泄介助、入浴介助などをしてもらえます。
また、ケアマネージャーと相談すれば、支給限度額を考えながらケアプランを作ってもらえます。
介護を家族が担当する部分、プロに任せる部分などをはっきり決めることも可能です。
また、デイサービス、ショートステイなどを使えば、介護者が休息すること(レスパイトケア)が可能です。
介護保険外サービス
社会福祉法人やNPO法人などでは介護保険外サービスを行っています。
例えば、要介護者に同居家族がいる場合の日常生活援助や、リハビリとは関係ない散歩、旅行、墓参りの付き添いなどの援助です。
その他にも、生活援助や、配食サービス、安否確認などもあります。
どのサービスがよいかは、ケアマネージャー、地域包括支援センターに相談したり、口コミ・インターネット情報を参考したりするとよいでしょう。
地域包括支援センターやケアマネージャー
市区町村では紙おむつ費用の数割が助成されます。詳しくは地域包括支援センターなどで聞くことができます。
その他、高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス、高額医療費などの費用負担緩和制度についても、地域包括支援センターに相談可能です。
また、ケアマネージャーは介護のプロであるため、介護者の率直な悩みまで相談しても受け入れてくれ、解決策を考えてくれます。
主治医に相談する
高齢者を在宅介護する場合、介護者は、健康面だけではなく日常的な悩みも主治医に相談するとよいでしょう。
主治医とケアマネージャーは、介護保険サービスに関わることについて連携を取っています。
ケアマネージャーは定期的に主治医と面談し、介護・医療関連の情報収集をして、ケアプラン作成に役立てています。
主治医からの意見で介護サービスが見直されることも少なくありません。
介護者の会などを利用する
在宅介護をしていると、どうしても孤立してしまいます。悩みやストレスが溜まっても、なかなか解消することができません。
そんなときは、お住まいの地域にある「介護者の会」を利用しましょう。
介護者の会とは、家族の介護を行っている人たちが集まり交流を行っている会です。
悩み相談ができるのはもちろん、さまざまなアドバイスももらえます。
身近に信頼できる相談相手を作る
何か悩みができたら、すぐに相談できる相手を作ることも方法の一つです。
介護に関する悩みやストレスは、介護の専門的な知識を持つ人や介護経験がある人に相談するのがよいでしょう。
例えば、ケアマネージャーは介護のプロであり守秘義務がありますので、相談には適した人だと言えます。
また、認知症者を介護している場合には、主治医に相談することが最もよいでしょう。
介護スキルを向上させる
介護を始めたばかりのときは、介護のスキルがまだ身についていないため、上手くできずにストレスを感じてしまうこともあります。
上手く介護ができないと、要介護者との関係も悪化しかねません。
各自治体では、介護家族のための介護教室を開催していることがあります。ぜひそのような講座に参加し、介護のスキルを向上させましょう。
その他の介護ストレス解消方法
ここまで述べた以外にも、さまざまな介護ストレス解消法があります。
一人で溜め込まない
「家族が介護をするのは当たり前」という意識から、毎日介護を頑張っても、その頑張りを認められる機会はなかなかありません。
そうすると「こんなに頑張っているのに」という思いからストレスが増大してしまいます。
ストレスで体調を崩す前に、家族と介護の分担を変えるなど、一人で溜め込んで、頑張りすぎない環境になるよう状況を見直してみましょう。
介護体制の見直し
家族や地域包括支援センター、ケアマネジャー、主治医、介護施設などと相談し、無理なく続けられる介護の環境を作ることが大切です。
特に、介護者は毎日介護に追われ休む時間がありません。時には休息(レスパイトケア)をして、ストレスや疲れから解放されましょう。
レスパイトケアには、デイサービスやショートステイなどがあります。このようなサービスを積極的に利用することをおすすめします。
予約
介護中にイライラしてしまったら、その場を離れて、短時間でできるリフレッシュ方法を試してみましょう。
お茶を飲んだり、お菓子を食べたりするだけでも気分が切り替えられます。また、花や香水などのいい香りを嗅ぐこともリフレッシュになります。
いずれにしても、介護する部屋から離れ、自分の時間を過ごすことが大切です。
十分な睡眠をとる
特に認知症の方の場合、昼夜逆転しており、夜中の方が活動的な方もいます。
夜中にも付きっ切りで介助していれば、介護者は寝る時間がないため睡眠不足に陥り、体力が低下したり、ストレスを感じやすくなってしまいます。
しかし、高齢者は若い頃のように6時間以上寝ることが難しくなってくるのが特徴です。短時間でも自分に合った質の高い睡眠をとることが重要です。
与薬・薬管理に関する精神的負荷の軽減
認知症の患者の方の中には、薬の服用を拒否する方や、薬を飲んだのに「飲んでいない」と言い張る方などがいます。
認知症の治療には薬が重要であるだけに、介護者の方は薬の管理に関してプレッシャーを感じ、それがストレスになっていきます。
それを防ぐためには、訪問薬剤管理指導といったサービスや、お薬カレンダー、服薬ボックスなどの利用がおすすめです。
介護施設への入居という選択も
ここまで、介護者の負担や疲労、ストレスを軽減する方法を解説しました。
様々な対策をご紹介しましたが、最もおすすめなのが介護施設の利用です。在宅介護で無理をせず、専門家に任せることで疲れ・負担を大きく減らすことができます。
公的施設・民間施設の両方がありますが、公的施設は費用を抑えてサービスを利用できる一方で、入居待機者が多く、容易に利用できる状態ではありません。
そのため、民間施設の利用も同時に検討することが必要です。学研ココファンの高齢者住宅では、費用を抑えながらも充実の介護サービスを利用することができます。
幅広い介護度の方に対応可能な、自由度の高いサービス付き高齢者向け住宅や、安心の介護サポートを受けられる有料老人ホームを、入居一時金0円で利用できるため非常にお得です。
全国各地に施設を配置しておりますので、ぜひお近くの介護施設を探してみてください。
近くの介護施設を探してみる!もしも在宅介護中にイライラしたら
ここまで紹介してきた介護者が感じるストレスの解消法は「今すぐその場でイライラを解消できる方法」とは言えません。
ここからは、介護中にイライラしたときに実践すれば、すぐに効果が出るような解消法をご紹介していきます。
心の中で6秒間カウントする
自分の怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」というものがあります。
アンガーマネジメントでは、イライラしたときに心の中で6秒カウントする方法がおすすめされています。
脳が怒りに反応するまでには6秒ほどかかるため、この6秒間怒りを我慢すれば、実際に怒りの感情は治まっていくというのがこの6秒ルールです。
一旦その場から離れる
要介護者や家族、ヘルパーさんなどにイライラした場合、同じ部屋にいるといつまでもイライラが治まりません。
まずは、自分の気持ちを切り替えるためにその場から離れましょう。
ただし、何も言わないでその場を去ると、怒りのあまり言葉も発せないまま立ち去るという誤解を生んでしまいます。
部屋にいる人には必ず声をかけてから部屋を出ましょう。
リフレッシュに繋がることをする
趣味や好きなことをしてリフレッシュすることは、精神的に満たされるため、とてもよい方法です。
介護の隙間時間のような、短い時間でのリフレッシュ方法としては、
- 花やハンドークリームなどの良い香りを嗅ぐ
- テレビを観る
- おいしいものを食べる
- 好きな曲を聴く
- 旅行など楽しかったときの写真を見る
など、五感ですぐ楽しめるものがおすすめです。
最も幸せだった瞬間を思い返す
イライラしているときは、気持ちがネガティブになっています。
ご自分がポジティブになれた経験を思い出すことにより、気持ちをポジティブに切り替える方法がおすすめです。
例えば
- 就職活動が成功したとき
- 仕事で成果が認められたとき
- 結婚したとき
- 子供が生まれたとき
など、人から認められたときや幸せだったときのことを思い出すと、イライラが治まっていきます。
認知症介護者はうつ予備軍になりがち
介護者はストレスを抱えていることが多く、うつ予備軍になりがちです。特に認知症の介護は精神的負担が大きいと言えます。
また、老老介護の場合には、介護者が精神疾患にかかりやすい傾向もあります。
- 食欲がなくなる
- 気分が落ち込む状態が続く
- 集中力がなくなる
- 何にも興味が持てなくなってくる
- 自分は生きている価値がないと思う
- 自殺したいと思うようになる
などの症状がある方は、うつになっている可能性があります。
「介護で疲れているだけだから休めばよくなる」などと思ってやり過ごすのではなく、うつを疑って対策をする必要があります。
気軽に精神科や心療内科などを尋ね、介護をしていることを含め、ご自分のお話をしてみましょう。
認知症介護をする家族の心理ステップ
以降では、認知症に特化した対応の仕方をご紹介します。
特に認知症の介護で感じる「先が見えない」ことにより、認知症の方の介護をする家族は辛い思いを抱えています。
本人の認知症が診断されたとき、ご家族の心境、ご本人が認知症を受け入れるまで、といった流れをご紹介しましょう。
①困惑や否認
認知症を発症したばかりの時期は、ご家族がご本人を見て変化に気付きます。
しかし、このときは、ご家族も、認知症を発症したことを認められない時期です。
検査の結果認知症の診断が出ても、「誤診だ」「今たまたまこうなっているだけだからいずれ治る」などと思い、診断を受け入れられないこともあります。
しかし、認知症は進行していく病気ですので、認知症が進行し、ご家族が認知症なのだと認めざるを得なくなってくると、次のステージになります。
②混乱・怒気・拒否
認知症の症状が現れるようになると、知識や経験がない中でご家族の介護をしなければならず、混乱の中で毎日が進んでいきます。
そんな中、認知症の症状が進行していく家族に対し怒りを感じたり「なぜ私がこんな辛い思いをしなければならないのか」といった絶望感を抱いたりするのがこの第2ステージです。
介護者はこのように混乱しながら孤立してしまいがちです。
介護サービスのスタッフや認知症の家族会の方などと繋がり、辛い気落ちを少しでも楽にすることが大切になります。
③踏ん切りがつく
認知症は進行していくもので、上手く付き合っていくしかないのだと踏ん切りがつく時期です。
また、認知症のご家族への愛情を感じて「家族として一緒に頑張っていこう」と前向きに思えるようになります。
ただ「もし家族が認知症じゃなかったらどうなっていただろう」「こんなに苦労する必要があるのかな?」といった葛藤がないわけではありません。
しかし、それよりも「家族と一緒に認知症と付き合っていくにはどうすればいいのだろう」という考え方になっていきます。
④受容
認知症のご家族や認知症という病気、介護者である自分全てを受け入れることができ、新しい価値観が生まれていきます。
「家族が認知症になってよかった」「家族が認知症になったことで、新たな人間関係ができ人生が豊かになった」など、ポジティブな心情になる方も多いです。
認知症のご家族を介護する方全員がこのような考え方になるわけではありません。
しかし「いつかは受け入れられるかもしれない」と思うと少しは気持ちが楽になるのではないでしょうか。
心の負担を軽減する心得
介護者には、どうしても心への負担がつきまとうものです。どうすれば負担を軽減することができるでしょうか。
抱え込まない
「家族が認知症になったことを誰にも知られたくない」「家族の介護を他人にされることに抵抗がある」と感じる人は少なくないでしょう。
その結果、自分一人で介護を乗り切ろうと全てを抱え込んでしまう方もいます。
介護サービスを積極的に利用したり、認知症の家族会に参加するなど、他の人との関わりを持ち、さまざまな人と助け合っていきましょう。
がんばらない
最新の介護について学んだり、介護の研修会に通ったりするなど、熱心に介護に向き合う方もいます。
しかし、このような場合、家族を大切に想うあまりに、ご自分の疲れや精神的な葛藤が二の次になってしまっていることがあります。
がんばり過ぎず、自分のことも大切にして、自分だけでゆっくりできる時間を持つことも非常に大切です。
比較しない
他の認知症の方を見て、ご自分の家族と症状を比べてしまうことがあります。
しかし、認知症の症状や進行の仕方は決まっているわけではなく、人それぞれです。
比べてしまうと「どうして」「なぜ」といったネガティブな考え方になり、ストレスを抱えてしまいます。
人と比べるのではなく、ありのままのご家族と楽しく過ごせることが一番よいことではないでしょうか。
不満や辛さなどの弱音を吐く
「介護する側はいつも明るくいなければならない」などと思い、自分の辛い気持ちに蓋をしてしまう人もいます。
しかし、実際に介護をする中で生まれる辛い気持ちは否定されるべき感情ではありません。
このような感情は、特に認知症の家族会でわかってくれる方が多いです。
同じような悩みを持つ方と共感し合うことで、精神的な負担が軽くなっていきますので、ぜひ家族会に参加してみてください。
終わりを考える
認知症の介護は「先が見えない」「終わりがない」と思いがちです。
しかし、徘徊をしてしまう方は足の機能が衰えれば徘徊ができなくなります。
また、「お前からお金を盗られた!」などと騒いでしまうこともありますが、この「もの盗られ妄想」は、症状が進行すればなくなっていきます。
実は、認知症の介護は「終わりが来る」ものです。
介護で感じる苦しみは「いつか終わりが来るもの」と考えると、少しは楽になるのではないでしょうか。
介護うつになりやすい人の特徴
介護をしていて、うつになりやすい人の特徴を以下で紹介します。
ただし、以下のような方が全員そのような状態になってしまう、というわけではありません。
責任感の強い方
責任感が強く、自分一人で頑張ってしまう方は要注意です。
介護うつの状態になりやすい場合があります。
自分で介護をしなければいけない、と抱え込んでしまい、その分ストレスも大きくなってしまいます。
完璧主義の方
完璧主義の方は、在宅介護の際にも完璧を求めてしまうでしょう。
そうなった場合、自分を犠牲にしてまで介護に一生懸命になってしまいます。
手を抜いたり、他人に任せたりすることが苦手ですので、疲労を溜め込んでしまい、ストレスを感じやすいです。
気持ち良く認知症介護をするための鉄則
認知症の介護を気持ちよく行うためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
ゆっくり・ゆったりといった心がけ
認知症の方は、脳の情報処理の機能が低下していくため、通常の会話のスピードでは早すぎるように感じ、話に付いていくことができません。
しかし、早い速度で全てが進んでいくので、追いつこうと頑張り疲れ果ててしまいます。
そのため、状況把握などが余計にできない状態になり、自分に対して怒りを感じるなど感情にも影響が出ます。
介護者は、ゆっくり話してあげ、介助する際の動作もゆったりしたものにしてあげると、認知症の方は安心することが多いのです。
五感を活かしたコミュニケーション
認知症の方は、情報処理の機能が低下しています。情報処理の機能が低下した状態でも意思疎通に役立つのが、五感を使うことです。
認知症の方は、五感を使って情報把握をしようとしています。
例えば、声かけをする際には無表情でぶっきらぼうな話し方よりも、抑揚をつけて笑顔で話しかけると、認知症の方も安心できるでしょう。
また、言葉だけでコミュニケーションしようとするのではなく、ジェスチャーを使いながら話しかけると、伝えたい内容がより伝わることがあります。
共感によるコミュニケーション
人は、相手の感情を感じてそれに共感する能力がありますが、認知症になってもそれは失われにくい能力です。
そのため、共感力を利用して認知症の方とコミュニケーションをするのは効果的です。
認知症の方も、その方がコミュニケーションの内容を理解しやすいと言えます。
例えば、認知症の方が混乱しているとき、介護者が笑顔で接すれば、認知症の方は介護者の感情を読み取り、だんだん安心感が生まれてくるでしょう。
それを見て介護者も安心しますので、お互いに穏やかな関係性になることができます。
認識や心の世界の理解
認知症の症状には妄想がありますが、妄想を否定するとご本人の精神状態などがさらに悪化する恐れがあります。
ご本人にとっては妄想ではなく事実なので、否定はせずに、なぜそう思うのか原因を理解することが重要です。
例えば「誰かにお金を盗られた!」と妄想していても「お金なんて盗られていませんよ」と否定はしない方がよいでしょう。
一緒に探してあげることで、ご本人が介護者を信頼し、ご本人の精神状態が安定することがあります。
分かりやすさを重視した調整
認知症の方は、脳の機能が低下しているため、聴覚や視覚の衰えもあります。
また、脳の機能の低下に伴い、集中力や注意力も低下しています。
そのため、周囲の状況を把握しにくくなっており、ときには混乱していることもあります。
そんなご本人をなるべく安心させるためにも、環境作りは非常に大切です。
「以前から使っているものは変えない」「話しかけるときはわかりやすい言葉を選ぶ」など、ご本人を安心させることを意識しましょう。
必要でかけがえのない存在を体感してもらう
「認知症の方は何もわからない状態になっていて、自分のことも認識できないだろう」というのは大きな誤解です。
認知症の方は確かに脳の機能が低下してはいますが、感情を中心に認識できることもあります。
特に「自分はなぜこれができなくなっているのだろう?」といった不安感や絶望感は感じやすいと言えます。
認知症の方には、例えば何か簡単な作業をしてもらい「役に立てた」という自己肯定感を持ってもらうことにより、かけがえのない存在であるということを伝えることは非常に大切です。
外部との繋がりで社会と関わる
認知症が進行すると、閉じこもりがちになる方が多いです。
しかし、だからと言って「認知症の人は他人と関わらず、部屋でじっとしているべき」ということは間違っています。
認知症の方も、周りの助けを借りながらではあっても社会に参加することは大事なことです。
また、認知症の方が社会に参加することにより、地域の方々が認知症をより理解できることにも繋がります。
認知症のご家族が参加できそうな場所にはなるべく参加することをおすすめします。
介護をする家族のストレスについてまとめ
- 「先が見えない」ことが辛いと感じストレスを溜める人も多い
- 介護の悩みは家族会などで話すと楽になる
- 介護施設への入居も対策の一つ
「家族の介護だから疲れないしストレスも溜まらない」という考えは間違っています。
「介護うつ」などになってしまう前に、介護の役割分担を考え直したり、ショートステイなどに預け休息を取ったりしましょう。
場合によっては、施設入居も選択の一つです。要介護者も介護者も、お互いが元気で暮らせることを一番に考えましょう。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)