老人ホームの食事とは?施設入居前に確認すべきポイントや本当に美味しいのかも解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「老人ホームではどんな食事が提供されるの?」

「介護施設に入居する前に食事関係で確認すべきポイントは?」

このようなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?介護施設を選ぶ上で意識したい項目の一つに、食事の内容が挙げられます。

そこで今回は、高齢者施設で提供される食事の内容や、食事面を重視して施設を選ぶ際のポイントについて解説します。

この記事を読めば、老人ホームの食事に関する基本的な内容が分かります。

老人ホームの食事についてざっくり説明すると
  • 和食・洋食・中華・イベント食など、バラエティー豊かなメニューを提供する高齢者施設が増えている
  • 介護施設によっては食事の自由度を上げるために「セレクト食」を提供している場合もある
  • 利用料が高い有料老人ホームでは、提供される食事の質も高い傾向がある
  • 見学の際には献立表を確認したり、試食したりすることで自分の好みと合っているかを確認することが大切

老人ホーム選びに食事のチェックは欠かせない

老人ホームでの食事の様子

老人ホームへ入居される人にとって、毎日提供される食事の内容は非常に気になるポイントでしょう。

食堂の雰囲気や食事を楽しむ機会を提供する取り組みも、入居者の生活満足度に影響を与える大事な要素になります。

食事には栄養を摂取するという役割の他、精神的な満足感を得る役割もあるため、日常生活の満足度は食事によって大きく左右されると言っても過言ではありません。

また、食事を楽しいと思える要素は味付けや見た目だけではありません。

租借能力や生活習慣病など、それぞれの体調や心身の状態にあった食事を提供してくれるか否かは施設を選ぶ際の重要なポイントとなるでしょう。

毎日食べる食事だからこそ、入居前にしっかりと確認しておく必要があります。

バラエティー豊かな食事メニュー

食のニーズは年々多様化しており、高齢者施設もその影響を受けています。その結果、最近では「高齢者の食事はこう」という固定概念にとらわれず、バラエティー豊かな献立を作成する高齢者施設が増加傾向にあります

また、入居者のカロリー、栄養バランスを考慮した味付けや調理、そして見た目に配慮した盛り付けによって利用者が楽しく食事をとれるような工夫が施されています。

以下の見出しでは、老人ホームで提供される献立の例をいくつか見ていきましょう。

通常の献立の例

老人ホームでの食事例

高齢者施設の食事は、和食や洋食などバラエティー豊かなメニューが提供されます。通常時の朝・昼・夕の献立例を見てみましょう。

朝食
例1 ごはん・焼き魚・味噌汁・野菜炒め・漬物
例2 ごはん・煮物・卵焼き・サラダ
昼食
例1 ごはん・角煮・ナムル・中華スープ・フルーツ
例2 ごはん・味噌汁・炒り鶏・卵焼き・サラダ
例3 焼きそば・しゅうまい・スープ・ヨーグルト
夕食
例1 炊き込みご飯・煮物・炒め物・すまし汁・漬物
例2 ごはん・味噌汁・魚の煮つけ・ふくさ豆腐・サツマイモの金平・春雨の和え物
例3 麦ごはん・鯖味噌煮・和え物・すまし汁・漬物

イベント時の献立の例

イベントでの食事

クリスマスや正月、節分、七夕などイベント時には四季折々の食事が提供されることもあります。例を見ていきましょう。

  • 1月:おせち料理
  • 2月:恵方巻
  • 3月:てまり寿司・ちらし寿司
  • 4月:花見弁当 など

このように、旬の食材を取り入れたりイベントに合ったメニューを取り入れたりすることにより、食事を五感で楽しめるように工夫している施設が多くなっています

高齢者食と介護職はしっかり確認しよう

入居時には問題なく食べられていた食事でも、時間の経過とともに食べづらくなることも考えられます。対応している食事形態が少なければ、食事の形態が変わるたびに施設を移動しなければなりません。そのようなリスクを避けるためにも、食事形態の幅広さに関しては入居前にしっかりと確認することを心がけましょう。

食べやすい高齢者食

高齢者食とは、加齢に伴う体の変化に対応した食事のことです。

例として、咀嚼力が低下している高齢者のために、食材を一口サイズにカットして食べやすさにこだわることが挙げられます。

また食欲が低下している高齢者に対しては、彩や盛り付けに工夫をすることで五感を刺激します。

高齢者の低栄養を予防する為には「美味しそう」「食べたい」と思わせるような食事環境を整えることが大切です。

健康状態や嗜好に応じて、食事の内容や調理方法を変えることが、高齢者の健康維持や生活の質を向上させる鍵といえます。

体調に合わせた介護職

介護食は、高齢者食よりも一人一人の状態に合った食事のことで、咀嚼力の低下や嚥下機能の低下を補うように調理されます

介護食には以下のタイプが存在します。

  • ミキサー食:ミキサーなどにかけて液体状にした食事
  • ソフト食:よく煮込んだりゆでたりすることで舌で簡単につぶせるように柔らかくしたもの
  • 刻み食:食べ物を小さく刻んでペースト状にしたもの
  • とろみ食・ゼリー食:片栗粉や葛粉などでとろみをつけて食べやすくしたもの
  • 水分補給食:水分補給しやすいように飲み物をゼリー状にしたもの

加齢とともに嚥下機能が低下し、次第に普通食を食べることが困難になっていきます。栄養バランスのとれた食事を摂取することはもちろん大切ですが、飲み込みやすさや食べやすさに関しても食事をとる上で欠かせないポイントです。そのため、施設選びの際には食べる力に合わせた介護食が提供されるかどうかを確認しておくことが大切です。

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最近はこだわりの多い老人ホームの食事も

それぞれの老人ホームで、利用者が「楽しく」そして「美味しく」食べられるように、季節やイベントに合わせた献立が考えられています。

歳事・イベントでは楽しい食事の演出

食事の時間を楽しむことで生活の質は上がります。

そのため、最近では食事にこだわり四季折々の行事食を「五感で楽しむ」工夫を施している老人ホームが増えてきました

中には入居者が参加可能な手打ちそば体験や、目の前で作った天ぷらやお寿司を提供してくれるなど、食事を楽しめる環境づくりにまでこだわった施設も存在します。

入居者にとって食事が季節感や行事の楽しみとなり、心身のリラックスや生活の充実につながる効果も期待できるでしょう。

セレクト食で好みの食事を自由に選択

一般的に、老人ホームでは栄養バランスや健康面に配慮した献立を、利用者が食べられる食事形態にして提供しています。この食事方法はバランスの良い食事をとることができる反面、食事内容の自由度が下がってしまうという欠点もあります。

そこで、一部の老人ホームでは「セレクト食」を提供している場合もあります。セレクト食は、レストランの食事メニューのように複数の献立の中から利用者がその時食べたい食事を選択して注文できる仕組みです。

セレクト食は一般的な食事よりも料金が高い傾向にありますが、「和食・洋食・中華」「ごはん・麺類」「肉・魚」のように、自分が食べたい食事を選べることから非常に人気があります。

生産者や調理師の顔が見える食事

老人ホームの中には、生産者や調理師の顔が見えるような心がげをしている施設もあります

  • 食材の生産者の顔を食事ポスターに載せる
  • 栄養士や調理師が紹介されている情報誌を配布する

このように、作り手が見える食事を提供することで、利用者は安心して美味しい食事を楽しむことができるようになるでしょう。

他にも、「栄養士や調理師が利用者と直接話をする機会を設ける」、「イベントなどの際に目の前で作りたての料理を提供する」など、顔が見えるサービス提供のために様々な取り組みが行われています。

ココファンは管理栄養士監修

学研ココファンが展開しているサービス付き高齢者向け住宅では、管理栄養士が監修したバランスの良い食事が提供されています

また、食事は必ず毎日3食食べなければならないというような決まりがなく、利用者の希望によって1食から注文することが可能です。

そのため、

  • 今日の夕食は外食したい
  • 朝食は自分で用意したい

など、多様な食事スタイルに対応することができます。

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食事を調理している場所がポイント

調理中の様子

老人ホームで提供される食事は、施設によって調理方法・場所が異なります。それぞれに特徴があるため、食事を調理している場所も、施設選びの際に注意したいポイントの一つです。

施設内の厨房で調理する場合

施設内の厨房で調理している施設は、何と言っても出来立ての美味しい食事を味わえるというメリットがあります

ただしその分人件費もかかり、外注の場合と比べて手間や費用がかかります。

塩分を使いすぎることなくしっかりとした味付けにしやすく、素材本来が持っている味や触感を味わえるいう点も良さの一つです。

また、厨房や調理師が公開されることにより、作り手と食事をする人との距離が近くなり安心感がますという良さもあります。

外注の場合と比べて手間や人件費などの費用がかかるものの、手間暇がかかる分、入居者に提供される食事の質や満足度を向上させることにつながります。

食事の調理を外部に委託することも

施設内に大きな厨房設備がない場合、もしくは利用者の費用負担を抑える場合は、セントラルキッチンなどの外部に委託して食事を作ってもらい、出来上がった食事を提供する老人ホームも存在します

食事を外部に委託するとコストを削減できるというメリットがある一方で、以下のデメリットも考えられます。

  • 冷凍の場合もある
  • 味や見た目は厨房で作る老人ホームに劣る

このように、調理場所の違いによりそれぞれメリットとデメリットが異なります。コストを重視するか、味を重視するかをしっかり検討し、自分に合った施設を選択することが大切です。

高齢者施設の給食にはまずいという苦情も

老人ホームでは、高齢者に対する介護サービスを大きな目的としており、食事に割ける予算や人員には限りがあります。

いくらこだわりのある食事を提供しても限度があり、高齢者一人一人の好みに合わせることは難しいというのが現状です。そのため、「施設の食事は美味しくない」という苦情が寄せられる場合もあります。

味や献立など食事内容に不満

食事の味や見た目、内容関する不満では、以下の項目が多くなっています。

  • 味が濃い・薄い
  • 料理が冷めている
  • 食材が固い・柔らかすぎる
  • メニューのバリエーションが少ない
  • 苦手な食材が使われている
  • 食事形態が合っていない
  • ボリュームが少ない
  • 塩分量にばらつきがある など

前述したように、老人ホームは介護サービスがメインの施設であり、レストランではありません。一人一人の要望に対して完璧に応えることは困難なため、上に挙げたような不満を感じてしまう利用者もいます。

サービス内容に不満がある

中には、味や見た目など食事内容に関する不満だけではなく、サービスの内容に対して不満を感じている入居者もいます。

サービス内容に関する不満として多いものは以下の通りです。

  • 配膳の順番を間違える
  • 食べ終わった食器がなかなか下膳されない
  • 配膳時にカップの飲み口に手が触れている
  • 髪などの異物が混入している など

このように、食事の提供に関するサービスやテーブルへ着く際の介助サービスなどに関して不満の声が上がっている施設もあります。

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有料老人ホーム・特別養護老人ホーム等の違い

高齢者が利用できる介護施設は運営主体や利用目的、入居条件などにより、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など様々な種類が存在しています。以下は特別養護老人ホーム、老健などそれぞれの介護施設の特徴をまとめた表です。

種類 特徴 受け入れ可能な介護度
特別養護老人ホーム 要介護度3以上の高齢者を対象とした公的介護保険施設 要介護3~要介護5
介護老人保健施設 退院後、自宅での生活が難しい場合に在宅復帰を目指す介護保険施設 要介護1~要介護5
有料老人ホーム 介護を必要とする高齢者に本格的な介護サービス及び生活支援を提供する 自立~要介護5
サービス付き高齢者向け住宅 住宅として扱われ、外出や外泊など自由度の高い生活を送ることができる 自立~要介護5

特別養護老人ホーム、老健などは公的施設に分類され、比較的安い費用で利用することが可能です。一方、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は民間施設に分類され、施設によって費用が大きく異なります。そして、利用料金の高さに伴い提供される食事の質も異なります。

高級レストランのような本格的な料理を好むのか、手作り感のある家庭的な料理を好むのか、利用者の食の好みを踏まえて施設を選ぶようにしましょう。

介護施設入居前の食事の確認ポイント

食事中の高齢者

入居前に確認しておきたい主な確認ポイントは以下の通りです。

  • 味が利用者の好みに合っているか
  • 食事の環境は明るく清潔化
  • 急に体調を崩した場合や持病に対応した食事は可能か
  • 苦手なメニューに対する対応はどうか
  • 食事の提供温度は適切か など

食事に関する情報を入手するには、見学に行くのが一番です。見学では試食ができる施設もあります。

また、毎日どのような料理がどのような頻度で提供されているか献立を見て確認することも可能です。

食事は入居者にとって重要な生活の一部であり、健康や生活の満足度に大きな影響を与える要素なので、しっかりと確認しましょう。

日中に老人ホームの見学に行って試食

老人ホームについて知るためにはパンフレットやホームページで情報収集した後、実際に施設へ見学に行くことが重要になります。その際、施設によっては事前予約を入れることで食事の試食ができる場合もあります

実際に食事を味わうことで、食事や温度、味、触感など体験してみなければ分からないことを確認することが可能ですので、積極的にチャレンジしてみると良いでしょう。

また、見学の際には食事内容の他にも食器やスタッフによるサービス内容にも注意しておくようにしましょう

週間や月間の献立を確認する

見学に行った際には週間・月間の献立を確認しておくことも大切です。自分の好みに合った食事内容か、メニューはバラエティーに富んでいるか、季節感があるメニューかなど、事前にしっかり確認しておくことで入居後のトラブルを防ぐことができます。

メニュー名が分かりやすいかも要チェック

献立を見せてもらう際にはメニュー名も確認しましょう。カタカナが多く使われるような聞き馴染みのないメニューだと、食材や味を想像することが困難です。

もしもメニュー名が分かりづらい場合は、簡単な説明が載せてあるかどうかもチェックしておくと良いでしょう。

食事のバリエーションの幅が広いか確認

洋食・和食・中華、イベント食、四季折々の行事食など、食事のバリエーションの幅が広いかどうかを確認しましょう。食事のバリエーションが豊富ということは、マンネリ化の防止や食事を楽しむための工夫がされているということです。

また、嚥下機能が低下した時の介護食や病気に対応した減塩食、他にも糖尿病食や腎臓病食など、様々な症状に対応した食事を提供してくれるかどうかも重要な確認ポイントの一つです。

朝食が判断のポイントになる

施設の食事への配慮を知るためには朝食の内容を確認することも大事です

朝早くに提供される朝食は、一日の中で時間や人員の制約が最も大きい食事となります。限られたスタッフが短時間で食事の準備をするため、どうしても簡素になりやすくなってしまします。

簡素になりがちな朝食を、どこまでこだわって調理し提供しているかで、施設の食事に対する姿勢を知ることが可能です

食事の環境や雰囲気もよく確認

食事をとる場所の環境や雰囲気も要チェックポイントの一つです。

いくら食事自体が美味しくても、環境次第ではそのおいしさを存分に楽しむことができません。例えば、同じ食事でも暗くてジメジメした場所で食べるよりも、明るくて清潔な場所で食べる方がより美味しく感じます。

見学の際には、利用者仲間やスタッフと楽しく話をしながら食事をとることができるのか、利用者が食事中に笑顔でいるかなど、食事の環境や雰囲気についてしっかり確認しておきましょう。

老人ホームの食事についてまとめ

老人ホームの食事についてまとめ
  • 見学時には通常時の献立のバリエーション、イベント食などが豊富かどうかを事前に確認し、自分の好みに合っている介護施設を選択する
  • セレクト食や一人一人の状態に対応した食事などを提供してくれるかどうかを確認する
  • 食事で生活の質を上げたい場合は、食事内容だけではなく環境や雰囲気にも気を配った介護施設を選ぶことが大切

いかがでしたか?今回は、有料老人ホームや特養、老健などの高齢者施設で提供される食事の基本情報について解説しました。

老人ホームでの食事は日々の暮らしを豊かにするために欠かせないものです。「楽しく美味しいものを食べること」が日々の活力につながります。

老人ホームを選ぶ際には、費用や特徴の他、食事に関してもじっくり検討し、自分の好みに合った食事を提供している施設を選択してください。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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