【精神科医監修】うつになりやすい人は?うつ病の原因や治療法・日常の対策まで解説

この記事は精神科医に監修されています

特定医療法人清仁会のぞみの丘ホスピタル医師

安藤 広真 先生

「うつになりやすい人は?」

「うつ病と診断されたらどうしよう」

このように、うつ病に関して不安に思っている方は少なくないのではないでしょうか。

うつ病は、多くの人々が影響を受ける精神的な障害の一つであり、その原因は多岐にわたります

この記事では、うつになりやすい人の特徴や、うつ病の原因、うつと診断されたらどのように行動するべきか、などを医学に詳しくない一般の方にもわかりやすいように説明していきます。

うつ病の原因についてざっくり説明すると
  • うつ病の診断基準は医学的に定義されている。
  • うつ病の症状は気分の変化だけでなくさまざま。
  • うつ病の治療は薬物療法以外にもある。

うつ病とは

疲弊する男性

うつ病は、精神疾患の一つであり、感情、思考、体の機能に影響を及ぼします

一般的には持続的な悲しい気分、興味喪失、無感動などの感情的な症状が特徴的ですが、その他にも様々な症状が存在します。それぞれのケースで症状は異なり、軽度から重度までさまざまです。

そのため、うつになりやすい人でも、軽度のうつ病にかかるか、重度のうつ病になってしまい投げやりになってしまうかは、人それぞれです

うつ病の医学的な診断基準

どのような状態であれば病院で「うつ病」と診断されるのでしょうか?

うつ病の診断は、医学的に確立されたいくつかの基準に基づいています。

ここでは、DSM-5という、うつ病の有名な診断基準をご紹介します。

※『DSM-5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)』は、2つの主要な診断基準のうち、アメリカの精神科学会が発行している診断基準で国際的にもスタンダードなものです。

DSM-5によるうつ病の診断基準には、A~Cの3つがあり、それらをすべて満たす必要があります。

以下のA~Cをすべて満たす必要がある。

まず、Aには以下の1~9の項目があります。

9つの項目のうち、同一の2週間において、5つ以上が該当し、加えて、1または2を含む必要があります。

A: 以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している。これらの症状のうち少なくとも1つは、1 抑うつ気分または2 興味または喜びの喪失である。 注: 明らかに身体疾患による症状は含まない。

1. その人自身の明言 (例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例えば、涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。注: 小児や青年ではいらいらした気分もありうる。

2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退 (その人の言明、または観察によって示される)。

3. 食事療法中ではない著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の体重変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。 (注: 小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ)

4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。

5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではなく、他者によって観察可能なもの)。

6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。

7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感 (妄想的であることもある) がほとんど毎日存在(単に自分をとがめる気持ちや、病気になったことに対する罪の意識ではない)。

8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在 (その人自身の言明、あるいは他者による観察による)。

9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。

BおよびCは以下のような基準とされています。

B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。

精神疾患の診断・統計のマニュアル アメリカ精神医学会 Washington,D. C.,2013(訳:日本精神神経学会)

上述の通り、うつ病であると診断する上で、Aの1および2、つまり「抑うつ気分」「興味または喜びの喪失」が2週間以上続くことは必須とされいて、非常に重要な項目です。

これらの基準を読んで「もしかしたらうつ病ではないかも?」と思った方もいるかもしれません。

しかし、あくまで上記の基準(DSM-5)は精神科医の診断精度を上げるために使用される基準に過ぎず、実際には上記の基準に載っていない様々な症状を呈する方(頭痛、めまいなど)もいます。

「うつ病かもしれない」と心配な方は、まずはお近くの精神科や心療内科にご相談ください

うつになりやすい人は?

食習慣が悪い男性

うつ病は、多くの異なる要因によって影響を受け、個々のリスクは多様です。

一般的に、以下のような特徴を持つ人々がうつになりやすいとされていますが、これらはあくまで一般的な傾向を指すものであり、必ずしも全ての人に当てはまるわけではありません

しかし、上記に挙げたうつ病のよくある原因と関連が強い方が多いと考えられるので、以下のような方々はうつ病になりやすいと言えるでしょう。

うつ病になりやすい人の特徴
  • 遺伝的な要因を持つ人家族にうつ病の経験がある人
  • 過去の精神的トラウマがある人:幼少期や青年期において、虐待ネグレクトの経験がある人
  • 性格特性のある人悲観的な傾向があり、ストレスに対して抵抗力が低い人や、過度に自己批判的な人
  • ストレスが多い生活をしている人:長期的で高度なストレスがある職場環境や家庭環境にいる人
  • 身体の健康問題を抱えている人慢性的な病気痛みを抱え、それによって日常生活が困難な人

うつになりやすい人の具体的な特徴は?

ここまで、うつになりやすい人の特徴を説明しました。

実際、残業が多くてよく眠れていない人や、なかなか休みの日がなくリフレッシュできていない人など、過度なストレスがある生活をしている人はうつになりやすい人とよく言われています

しかしながら、同じようにストレスがかかる生活を送っているのに、うつになりやすい人とうつになりにくい人がいるのはどうしてでしょうか。

ここではうつになりやすい人の意外によくある典型的なパターンや特徴について、ご説明します。

誤り癖がある

間違いを繰り返すことに対して強い罪悪感を持つ人は、自己否定的な考えに陥りやすく、これがうつ病のリスクを高めます。

うつになりやすい人は、自分の過ちを許せず、絶えず自分を責めることで、精神的な負担が増大してしまっているのです。

環境の変化に弱い

環境の変化に対応するのが苦手な人は、新しい状況や変化に適応するのが難しく、これがストレスの原因となります。

環境の変化に弱い場合、不確実性や予期せぬ出来事に対して過敏に反応し、これが心理的な負担となりうつ病を引き起こす可能性があります。

断ることを苦手としている

断ることが苦手な人は、常に自分の限界を超えてしまう傾向があります。

というのも、他人の頼み事を断ることができず、結果的に過剰な責任や仕事を引き受けてしまうのです。これは過度なストレスとなり、うつ病のリスクを高める原因となります。

正義感が強い

正義感が強い人は、不正や不公平な状況に対して非常に敏感です。

しばしば自分自身を犠牲にしてでも、正しいと信じることを追求しようとします。しかし、このような行動はストレスや心理的な疲労を引き起こし、うつ病になってしまうこともあるのです。

他人から高い評価を受け続けてきた

常に他人からの評価を高く保とうとする人は、自己評価が他人の意見に大きく依存しているため、うつになりやすいです。

特に失敗を極端に恐れ、期待に応えられないと自己嫌悪に陥りやすく、うつ病を発症してしまったという事例も非常に多いです。

投げやりになる癖がある

何事にも投げやりになりやすい人は、失敗や困難に直面した際にすぐに諦める傾向があります。

挑戦や困難に立ち向かう代わりに、逃避することを選びがちで、これが自己評価の低下やうつ病のリスクを高めます。

うつになりやすい人の具体例

ここでは、うつになりやすいと言われている人を、実際の具体例を紹介しながらご説明します。

具体例1:看護師

例えば、看護師の方でうつ病にかかってしまった方は少なくありません。

看護師は女性の割合が多く、女性特有の人間関係に悩まされることや、妊娠・出産などライフステージが変化するタイミングでうつになってしまう方も少なからず、いらっしゃいます。

また、看護師の仕事は人の命を預かる仕事のため、常に気を張る必要があります。一般的なデスクワークと違い、立ち仕事も非常に多いです。

このように看護師の仕事は、精神的にも肉体的にも非常に疲れやすく、うつになってしまうことも少なくないのです。

以下の記事に、看護師の方でうつになってしまった方の事例や、うつになった時にするべき行動なども書いているので、ぜひ参考にしてみてください。

看護師がうつ病になったらどうする?休職・退職すべきかどうか、うつの事例などを解説

具体例2:介護うつ

高齢になった両親や家族を介護する中でうつになってしまう人も少なくありません。

「自分は家族なので、介護をしなければならない。」「大切に育ててもらった恩返しとして介護しなくてはならない。」 など、介護に対して責任感や義務感を感じている人もうつになりやすい人と言えるでしょう。

もちろん、高齢者を親族の方が介護をすることも重要ですが、介護をする方がうつになってしまっては意味がありません。

介護に対して過度にストレスを感じている方や、食欲が減ったり、睡眠時間が少なくなってきたなど、介護うつの兆候がある人は、施設の利用も検討するのも良いかもしれません

家族の介護のストレスを軽減する方法は以下の記事で紹介しています。

【精神科医監修】うつになりやすい人は?うつ病の原因や治療法・日常の対策まで解説

老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

うつ病の症状は?

うつ病は多くの異なる症状を持つ心の健康に関する状態であり、その表れは気分の変化だけではなく、個々の体験や状況に依存しており様々です。

ここでは、うつ病の一般的な症状を説明します。

気分の変化

うつ病における気分の変化は多岐にわたり、感情の深さや持続性、表れ方が異なります

ここでは、うつ病によって体験される一般的な気分の変化をご紹介します。

気分の変化
  • 悲しみ:深い悲しみや絶望感があり、これが持続します。
  • 無関心:かつて楽しんでいた活動や趣味に対する興味や喜びを感じなくなります
  • 無価値感自分自身を評価できない、または自己評価が低下します。無価値感や過剰な自己批判が見られることもあります。
  • 絶望感:未来に対して希望を持つことができない、全てが無意味に感じられることがあります。
  • 罪悪感:過去の出来事や、本人がコントロールできない事柄に対しても強い罪悪感を感じることがあります。
  • 不安:一般的な不安感からパニックまで、不安に関する感情が増大します。

物理的な変化

過眠の女性

うつ病は感情の側面だけでなく、物理的な側面にも多くの影響をもたらします

ここでは、うつ病によって体験される一般的な物理的な変化をご紹介します。

物理的な変化
  • 睡眠の変化:過剰な睡眠(ハイパーソムニア)または不眠(インソムニア)が起こることがあります。
  • 食欲の変化:食欲の減退や過食が起こり、それに伴い体重が減少もしくは増加することがあります。
  • エネルギーレベルの低下:常に疲れている感じがし、日常活動が困難に感じられることがあります。
  • 身体の痛み:頭痛、背痛、筋肉痛など、明確な原因がない身体の痛みを感じることがあります。

認知的な変化

うつ病が引き起こす認知的な変化は、思考、記憶、および注意に関わる機能に影響を与えます。これらの変化は、日常の業務や対人関係における困難をもたらすため、生活の質にも影響を及ぼしています。

ここでは、うつ病によって体験される一般的な認知的な変化をご紹介します。

認知的な変化
  • 集中力の喪失継続的な注意が難しくなり、物事に集中して完了させることが難しい場合があります。
  • 決定困難:単純な選択でさえも高負荷(オーバーウェルミング)に感じ、意思決定が極めて困難になります
  • 記憶の問題短期または長期の記憶に問題を抱え、記憶した情報の呼び起こし(リコール)が難しいことがあります。
  • ネガティブな思考:自己に対する否定的な信念や、未来に対する悲観的な見通しを持ちがちです。

行動の変化

うつ病は個人の行動にも影響を与え、外向的な行動の変更をもたらします

これらの行動の変化は、日常生活や対人関係に対する能力に影響を及ぼし、以下のような形で表れることがあります。

ここでは、うつ病によって体験される一般的な行動の変化をご紹介します。

行動の変化
  • 社会的引きこもり:他人との交流を避け、孤立する傾向があります。
  • 活動レベルの低下:かつて楽しんでいた趣味やアクティビティに参加する意欲がなくなります
  • 自己ケアの無視:個人的な衛生や外見に対する関心が減退します。
  • 就業や学業における困難:職場や学校でのパフォーマンスが低下します。
  • 不規則な生活スタイル食事や睡眠のパターンが不規則になります。
  • 衝動的な行動:ギャンブルや危険な行動など、衝動制御が困難になることもあります。
  • 自傷行動や自殺の試み:一部の人々は自傷行動や自殺の試みを経験することもあります。
老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

うつ病の原因は?

うつ病の原因は多様であり、複数の要素が複雑に絡み合うことで発症すると広く認識されています。

ここでは、うつ病の一般的な原因や危険因子(リスクファクター)について、例をご紹介します。

以下に紹介する原因はあくまで可能性に過ぎません。またどれか一つをとって「これがうつ病の原因です」と特定することも難しいです。

実際には主に以下の原因などからいくつかの原因が複雑に絡み合って発症していることが多いということを理解しておきましょう。

うつ病の原因1: ストレス

過度なストレスや長期的なストレスがうつ病を引き起こす可能性があります。

ストレスの感じ方には個人差がありますが、過度なストレスや継続的なストレスにより、不安、焦燥感、集中力の低下、そしてうつ病のリスクが高まることが知られています。

さらに、長期的なストレスは、睡眠の質や量を低下させることがあり、これもうつ病のリスクを増加させる要因となり得ます。

質の良い睡眠を十分にとることは、心と体の健康を保つために不可欠です。睡眠不足や質の悪い睡眠は、情緒の不安定や疲れやすさを引き起こし、うつ病の症状を悪化させる可能性があります。

うつ病の原因2: 性格

自己評価が低い、過度に自分に厳しいなどの性格は危険因子とされています。

このような性格をメランコリー親和型性格と言いますが、一つのミスや失敗を大きな失敗と捉え、自己評価を下げてしまうことがあります。

また、他者からの評価や反応に過敏になり、小さな批判や否定的な意見に強く影響されることが多いです。

真面目で自分に厳しい性格の人は、自分の感情や要求を抑え込むことが多いため、内部に感情を溜め込み、悲観的になる傾向があります。

しかし、こうした性格には強みもあり、例えば、誠実さや責任感、計画的な行動などは、社会的な評価が高くなりやすい傾向があります。

大切なのは、こうした性格を持ち合わせていることを重く考えず、自分自身の性格や傾向を理解し、適切なセルフケアやストレス管理を行うことで健全な心の状態を維持することです。

うつ病の原因3: 生活環境

孤立や対人関係の問題、家庭内の問題、職場のストレスなどもうつ病を引き起こす可能性があります。

生活環境は私たちの心の健康に深く影響を与える要素であり、原因の1つ目として挙げた「ストレス」と大きく関わってきます。

特に注意が必要であるのは、環境の変化に伴うストレスです。例えば職場や学校での人間関係のトラブル、家庭内でのトラブル、恋人や大切なペットとのお別れなどが要因として挙げられます。そのため、ライフイベントに伴う感情の変化には注意が必要です。

対人関係の問題や家庭内の問題は、緊張感や人間関係の衝突をもたらすことが多く、これが過度なストレスとなり得ます。特に家庭は、多くの人にとって安らぎの場であるため、家庭での問題や対立は心に大きなダメージを与えることがあります。

同様に、持続的な職場のストレスは、疲労や焦燥感を増加させ、これが心の健康に悪影響を及ぼすことがあります。

うつ病の原因4: 身体的健康問題

持続する健康問題や慢性の痛みを持つ人はうつ病を発症しやすいとされています。

心と体の健康は密接に関連しています。一方が乱れると他方にも影響を及ぼすことが多いです。

持続する健康問題によって日常の活動や趣味、食事などが制限されると、自己肯定感が低下したり、孤立感を感じたりすることが増えるかもしれません。

また、病気や痛みそのものが、自分の将来に対する不安や悲観的な思考を引き起こすことがあります。

うつ病の医学的な原因

うつ病の原因は現在も正確にわかっていませんが、様々な要因が関係していることが最新の医学研究でわかってきました。

その中でも今現在多くの病態、原因を説明する説として有力であるのが「モノアミン仮説」というものです。

モノアミン仮説

モノアミン」とは、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの脳内ホルモンのことで、それぞれ心の安定や意欲、興味、睡眠などに関係していることが知られています。

モデル動物実験などにより、うつ病では「モノアミン」がストレス、過労、貧困などによって枯渇してしまうことが知られています。

そのため、「モノアミン」を調整するお薬が現在も治療の第一選択薬(詳細は後述)となっています。

現在日本国内で使用できるこれらの薬は10種類ほどありますが、ほとんどの場合は副作用の少ないものから使用されます

モノアミン仮説以外の説

一方で、これらの「モノアミン」を調整するお薬が効かないような患者も一定数いることが知られています。

「なぜモノアミンが効かないのか」ということの病理背景として、ゲノム研究などから以下のような原因が考えられています。

  1. 脳内の脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少
  2. 視床下部―下垂体―副腎系(HPA系)の過活動
  3. ヒトヘルペスウイルス6というウイルスの潜伏感染によるもの

しかしながら、未だにどれが主要因なのかがわかっていないのが現状です。

うつ病の具体的な対策法は?

うつ病の対策は多岐にわたり、個々の症状やその重篤度、患者の生活環境や支援体制など多くの要因を考慮に入れながら進められます。

以下に一般的な対策をいくつか示しますが、専門的な評価と治療を行うため、精神保健の専門家や医療者と密に連携をとることが不可欠です。

うつ病の薬物療法

これまで述べてきた通り、うつ病はモノアミン仮説に基づき、モノアミンを安定化する薬が国内・海外ともにガイドライン上の第一選択薬とされています

具体的には

  1. SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  2. SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  3. S-RIM(セロトニン再取り込み阻害作用ならびにセロトニン受容体調整作用薬)

などが副作用などが少なく、処方量も多い薬であるとされています。

一方で、それらのお薬による治療が困難な場合には、

  1. NaSSa(ノルアドレナリン作動性、特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
  2. TCA(三環形抗うつ薬)
  3. その他の薬(四環形抗うつ薬、非定型抗精神病薬、甲状腺ホルモン、リチウムなど:一部保険適応外のため注意)

などの薬を使用することもあります。

SSRIについて

SSRIとは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」と呼ばれる薬です。

神経細胞の間のことをシナプスというのですが、そのシナプスの間をモノアミンで情報伝達しています。

その中でも特にセロトニンというものに特化してシナプス間隙内の濃度を上昇させる作用があります。国内では現在4剤程が保険適応となっています

その中でも特に処方量が多いのは、比較的副作用の少ないとされているエスシタロプラム(商品名:レクサプロ)、セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)などが挙げられます。

一部例外はありますが、不安に対する効果も持っているため、パニック症や強迫症といった病気に対しても保険適応を有します

SNRIについて

SNRIとは「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」と呼ばれる薬です。

SNRIは、上記のSSRIの作用に加えて、ノルアドレナリンというモノアミンの濃度も上昇させることが特徴です。

それであれば最初からSNRIを使用すれば良いのでは?という疑問が湧くかもしれませんが、ノルアドレナリンにもメリットとデメリットがありますので、その薬剤選択に関しては医師とよく相談してください。

国内ではベンラファキシン(商品名:イフェクサー)やヂュロキセチン(サインバルタ)などが有名で、疼痛(痛み)に対しても適応があることも特徴です。

S-RIMについて

S-RIMは、日本では一番新しいタイプの薬剤です。

薬理学的にはセロトニン・ノルアドレナリンのみならずドーパミン、アセチルコリン、ヒスタミンへも効果を有している薬です。

副作用も比較的少ないとされますが、上記2剤よりも新しいこともあって、まだまだ薬の効能に対する証拠(エビデンス)の集積が待たれるところです

今のところボルチオキセチン(トリンテリックス)という薬剤のみになりますが、そのポテンシャルには期待が寄せられています。

うつ病の薬物以外の治療について

お薬以外の治療としては①環境調整②精神療法などが挙げられます。

  1. 環境調整:就労の制限金銭的なサポートがメイン
  2. 精神療法:カウンセリングなどがメイン

詳しくは主治医の先生や産業医の先生にお問い合わせください。

うつ病と診断されたら?

医師とのコミュニケーション

うつ病と診断されるとショックを受けるかもしれませんが、まず正しい診断を受けることで初めて適切なサポートと治療を受ける道が開かれるのです。

そのため、うつ病と診断された場合、それは精神的な健康に対して重要な一歩であるのです。

以下に、うつ病の診断を受けた際の一般的なアプローチをいくつか挙げています。

1. 専門家とコミュニケーションを取る

あなたの症状、感情、思いを正直に伝えましょう。 治療プランについて十分な説明を受け、疑問や懸念があれば積極的に医師に質問します。

2. 治療プランの理解と実施

抗うつ薬の使用や心理療法のセッションなど、提案された治療プランに従いましょう

薬物治療がある場合、効果が表れるまでに時間がかかることを理解し、副作用についても十分な情報を医師から得ましょう。

3. サポートシステムの構築

家族や友人、同僚など、信頼できる人々にあなたの状態をオープンに共有することを検討しましょう。

サポートグループに参加することも一つの手段です。

4. ライフスタイルの調整

有意義なアクティビティや趣味を見つけ、リラクゼーションとポジティブな時間を確保します。

健康的な食事、適度な運動、十分な睡眠も重要です。

5. 学習と理解

うつ病について深く理解し、自分の感情や行動パターンを学びます

書籍やオンラインリソースを利用して、病状やコーピングメカニズムについて学びましょう。

うつ病にかからないために気をつけること

うつ病を予防するためには、精神的および身体的な健康をサポートするいくつかの習慣やライフスタイルの選択を意識することが重要です。

ここで挙げるアプローチは、うつ病を完全に防ぐ保証があるわけではありませんが、精神的な健康をサポートし、リスクを低減させる役割を果たす可能性があります。

1. ストレスマネジメント

ストレスの発生源を把握し、適切な対処法を学びます。

心身の緊張をときほぐすように定期的にリラックスすることを心がけたり、過去にとらわれないように現在に注意を向けるようなマインドセットを心がけることが大切です。

2. 運動とアクティビティ

定期的な運動は、気分をリフトアップさせ、精神的な健康をサポートします。好きなアクティビティを見つけ、楽しみましょう。

自分の年齢や体力に合った運動プランをたてて、無理をしない程度に体を動かすこと心がけましょう。

3. 健康的な食事

バランスの取れた食事適度な水分摂取は、心の健康にも寄与します。

タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの主要な栄養素を摂取しましょう。また、食事をとるタイミングや量などにも気を配るようにしましょう。

4. 十分な睡眠

品質の良い睡眠を確保し、リズムを整えることで、気分やエネルギーのバランスを支えます。

睡眠の質を高くするためには、規則的な就寝・起床、快適な寝室環境が非常に重要です。また、睡眠直前の食事やスマホ等の使用はなるべく控えるようにしましょう。

睡眠の質は自身の健康に直結するので、特に意識しましょう。

5. 社会的なつながり

家族や友人との良好な関係を保ち、コミュニケーションを大切にしましょう

人の幸福度には人間関係が大きく影響するといわれるように、社会的なつながりは人間が生活していくうえで非常に重要な要素となります。

孤独感や不安を感じた時には、友達や家族に相談することで自身の気持ちが楽になる場合があります。

6. 自分自身のケア

セルフケアの時間を設け、心身のリフレッシュを大切にします。

自分の興味を追究し趣味に時間を割いたり、温泉やリラクゼーション施設で心身を休めたりすることがおすすめです。

老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す 老人ホーム・介護施設を探す

うつになりやすい人についてまとめ

うつ病の原因についてまとめ
  • うつ病の原因は医学的にも様々。
  • うつ病に対してどんどん新しい薬剤が開発されている。
  • うつ病を予防するためにはストレス管理が重要。

うつ病の原因は多様で、遺伝的要素、脳の生物学的な特徴、環境ストレス、心理的な傾向、そして社会的な要因など、さまざまな要因が組み合わさって影響します

特定の神経伝達物質の不均衡は気分のコントロールに関与し、一方で、生活のストレストラウマ体験も感情の管理に影響を与える可能性があります。

また、個人の心理的な特性や家族内のメンタルヘルスの歴史も、うつ病の発症に寄与する要素とされています。

この複合的な要因が、一人一人異なる形で交わり、うつ病を引き起こす場合があるのです

うつ病にならないためにも、身体的な健康だけでなく精神的な健康の管理もしっかり意識することが大切です。

この記事は精神科医に監修されています

特定医療法人清仁会のぞみの丘ホスピタル医師

安藤 広真(あんどう ひろまさ) 先生

2017年岐阜大学医学部医学科卒業。東京都立松沢病院、多摩総合医療センターなどでの初期研修を経て、現職。日本精神神経学会所属。 主な資格:日本専門医機構認定精神科専門医、精神科保健指定医

監修医師の所属病院ホームページはこちら

この記事に関連する記事

サ高住と有料老人ホームの違い|種類ごとの費用・入居条件からサービス内容まで徹底比較

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に住むメリットとは?魅力や問題点まで大調査!

サ高住の入居はどんな人におすすめ?メリットやシニア向け分譲マンションとの違いも解説

看護師がうつ病になったらどうする?休職・退職すべきかどうか、うつの事例などを解説

全国の老人ホーム・介護施設・高齢者住宅を探す

介護施設の種類
介護施設の比較
介護施設の費用

上に戻る 上に戻る