老人ホームでのボランティアで知っておきたいことは?活動内容や注意点等について解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「老人ホームでボランティア活動をするにはどうすればいい?」

「老人ホームでボランティアをするときに気をつけることは?」

このようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

老人ホームでのボランティア活動に興味を持つ人も多いかと思います。

高齢化社会が進む中、介護施設では職員の人員不足も深刻になっており、入居者への満足感やサービス向上にも繋がるボランティア活動が注目されています。

こちらの記事では、ボランティア活動の内容、ボランティアの申込方法、参加する上での注意点などを、イラストを用いて分かりやすく解説していきます!

老人ホームのボランティアについてざっくり説明すると
  • 個別対応、集団対応、介護職員のサポートなどボランティアの種類がいくつかある
  • ボランティアをする人だけでなく、入居者や職員にとってもメリットが多い
  • ボランティアをする上で注意点がある

老人ホームにおけるボランティア活動

老人ホームでのボランティア

老人ホームに入居する高齢者は、外部との関わりが通常の生活よりも少なくなりがちです。

人との関わりを求めている高齢者も多くいます。

そんな生活の中で、老人ホームで入居する高齢者が地域コミュニティと繋がる手段のひとつとして、ボランティアの活動があります。

老人ホームの入居者にとって、ボランティアで訪れる人との関わりを持つことは、入居者にとってもいい刺激となるんです。

また、介護業界では慢性的な人材不足が進んでおり、職員への負担も増えているのが現状です。

ボランティアの活動が、職員の負担を減らしたり、入居する高齢者の満足度を高めたり、QOLの向上に繋がることもあり、老人ホーム全体を見ても、ボランティア活動はメリットがあります。

介護施設でのボランティアの活動内容

老人ホームでのボランティアは、身体介護を伴うボランティアを行うことは基本的にありませんが、個別を対象としたものや、集団向けに行うもの、職員の補佐をするものなど、老人ホームでのボランティアの活動内容は多岐に渡ります。

主に行っているボランティアの内容は、趣味や特技を活かして入居者の満足度を得ることを目的としたものや、特別な技術や知識は必要としない、入居者のQOL(生活の質)の向上を図ることを目的としたボランティアを行うことが多いです。

個別対応向けのサービス

個別対応向けのボランティアは、入居者ひとりひとりに対して行うもので、次のようなものがあります。

  • 傾聴(入居者の話し相手になる)
  • 入居者の散歩の付き添い
  • 本や新聞の朗読(文字が読めない人に対して)
  • 囲碁や将棋など個人ゲームの相手

老人ホームに入居する高齢者への個々の対応は、介護スタッフの業務として行う部分でもあります。

しかし、介護職員の人員不足が課題となっている介護施設は多く存在し、数多くの業務をこなす介護職員にとって個別対応に十分な時間を取れないこともあります。

入居者はコミュニケーションを求めている人も多くいるため、こうした個別対応をボランティアが行うことを重宝されています。

複数対応向けのサービス

複数の入居者を対象としたサービスには、このようなものがあります。

  • レクレエーションのサポートや、レクリエーションの主催
  • 簡単な習い事の場を作る(書道、楽器、歌の指導など)
  • 製作体験等の実施(ハンドクラフトの制作など)
  • ダンスや楽器などの発表

内容は多岐に渡りますが、対象を個人に限定せず、多くの入居者に楽しんでもらう取り組みが中心です。

個別対応のサービスとは違って、ボランティア自身の特技や、資格などを活かせる内容を行うことも出来ます。

介護職の業務補助

入居者に対してボランティアが身体介護を行ったり、介護業務のメインとなることをボランティアが行うことはありません。

しかし、介護職員の補助として、介護業務をサポートすることもあります。

  • ベッドメイキング
  • 食事の配膳
  • 施設の清掃
  • 施設の整備(備品交換や植木の剪定など)

このように、介護職員の業務のサポートをボランティアが行います。

間接的に入居者の介護に関わる業務をボランティア活動として行います。

ボランティアの活動事例

ボランティアの例

実際に行われているボランティアの事例を紹介します。

ダンスの発表

ダンス教室に所属している生徒たちが、地域の介護施設で発表会を行っています。

生徒たちは定期的に施設を訪れるだけでなく、予め練習したダンスの振付や歌を披露する前に、入居者との交流の時間を設けることで、お互いの心を通わせる機会を大切にしています。

こうした介護施設でのボランティア活動を、教室全体の取り組みとして積極的参加を提言している教室も存在しています。

司会進行など一連の流れも、教室内で企画し行うことが多く、ただ発表するだけでなく入居者参加型で行ったり、簡単なクイズを取り入れたりしています。

ハンドクラフト教室の開催

フラワーアレンジメント、ビーズアクセサリー、洋裁など、簡単に出来るハンドクラフト教室を老人ホームで開催します。

老人ホームでのハンドクラフト教室を行っているのは、個人で活動しているハンドメイド作家などに多いです。

利用者の自立度に合わせて難易度を調整して開催することも可能で、利用者の満足度も高い活動です。

定期開催している人や、時期に合わせて以来を受ける人など様々です。

セラピードッグとボランティア

癒し効果が高いとされる、セラピードッグのトレーナーが行っているボランティア活動では、セラピードッグと入居者がふれあえる機会を作っています。

レクリエーションの一環として多数の入居者とセラピードッグとふれあったり、セラピードッグについて紹介するコーナーを設けたりしています。

また、個別対応として個室を回ってふれあう機会を設ける活動を行っているトレーナーもいます。

福祉系大学の学生ボランティア

福祉系大学や、専門学校等に通う学生が、老人ホームなどの介護施設でボランティア活動を行っています

介護スタッフの補助業務をボランティアとして任され、現場の介護を間近で見る機会を作ることで、学生のモチベーションアップや、将来をイメージしやすく就職率が上がる取り組みとして、学生にもメリットがあります。

学生は高齢者とのコミュニケーション能力やチームワークを養うことができ、人間関係を構築する能力や問題を解決する能力を向上させられるメリットもあります。

ボランティアによるさまざまなメリット

老人ホームでのボランティアは、ボランティアを行う人だけでなく、施設の職員、入居者など、各々にメリットがあります。

それぞれの視点から、どのようなメリットがあるのかを紹介します。

ボランティア側のメリット

  • 生きがいややりがいを感じられる
  • 社会貢献が出来る
  • 趣味や特技を活かすことが出来る

ボランティアを行うことで、普段関わる機会のない世代の人とコミュニケーションをとることが出来ます。

老人ホームの入居者は、人生の先輩として様々な知識や経験を持っています。

こうした関わりから様々なメリットを得る貴重な機会です。

また、入居者や施設の介護職員などから感謝されることで、人の役に立つことのやりがいや、生きがいを感じることにも繋がります。

老人ホーム側のメリット

  • 仕事の負担軽減になる
  • 入居者の満足度向上につながる
  • 地域との関わりを持てる

人材不足が問題視される介護の現場では、ボランティアにレクを担当してもらったり、個別対応としてコミュニケーションを図ってもらうことで、業務の負担軽減に繋がります。

また、老人ホームは限られた人の出入りしか基本的にはないため、閉ざされた空間になってしまいがちです。

地域のボランティアを受け入れることは、地域に根差した開かれた施設になるメリットがあります。

入居者側のメリット

入居者側のメリットとしては、下記のようなものがあります。

  • コミュニケーション能力の維持
  • 精神的な癒しになる
  • 認知機能の維持、向上

入居者の中には、コミュニケーションの機会を求めている人も多くいます。

ボランティアとの関わりによって、コミュニケーション能力の維持にも繋がり、こうした交流を持つことが認知症予防にも繋がります。

また、普段とは違った活動をすることが出来ると、気分転換にも繋がり、生きがいを感じたり、精神的な癒しになるといったメリットもあります。

参加資格は必要なのか?

特別な参加資格はない

老人ホームでボランティアを行う上で、特別に必要な資格や、経験などは必要ありません。

自分自身の経験や、趣味や特技を活かしたボランティアを行うことももちろん出来ますが、大切なのは誰かの役に立ちたいという気持ちです。

ボランティアの活動は、自分に出来ることを活かして、人の役に立つことが出来るといった点や、自分がしたことで誰かに喜んでもらえるところが魅力です。

ボランティアを行う上での資格や経験はいりませんが、老人ホームでボランティアを行うなら、介護に関する基本的な知識入居者に多い病気の特徴などを理解しておくと、ボランティアでもスムーズに活動することが出来ます。

年齢関係なく参加している

ボランティアは、年齢に関係なく参加することが出来ます。

東日本大震災以降、社会貢献活動に意欲を示す若い世代が増えたこともあり、近年ボランティア活動は低年齢化が進んでいます。

しかし、健康な高齢者がボランティアに参加することで、介護予防に繋げたり、小学生が学校の授業の一環としてボランティア活動を行ったりすることもあり、年齢を問わずに参加することが出来ます。

ボランティアの多様性が広がることで、異世代間の交流や相互理解が促進され、社会の関心が一層高まっています。

老人ホームのボランティアに参加する方法

介護施設に問い合わせ

介護施設では、施設単位で随時ボランティアを募集しているところが多くあります。

老人ホームだけでなく、デイサービスやグループホーム、デイケア、ショートステイなど、様々な介護施設を確認してみてください。

ボランティア募集の情報は、各介護施設のホームページやSNSなどに記載されている場合が多いです。

NPO法人等の募集に応募

高齢者施設でのボランティア活動を積極的に行っているNPO法人も多く存在します。

NPO法人がボランティア希望者と、介護施設の橋渡しとなる活動をしているNPO法人もあれば、ボランティア活動について学びを深める活動をしているNPO法人など、様々な活動を行っています。

近くで活動しているNPO法人があれば、活動内容などを確認してみましょう。

社会福祉協議会に問い合わせ

社会福祉協議会とは、社会福祉の活動を推進することを目的とし、営利活動をしない民間組織です。

社会福祉協議会では、ボランティアセンターの開設なども行っており、ボランティアをしたい人と、ボランティアをしてほしい施設の橋渡しとなる活動を行っています。

ボランティアの募集内容は、社会福祉協議会のホームページに記載されています。

介護支援ボランティア制度を活用

介護支援ボランティア制度とは、平成31年4月から本格施行された制度です。

高齢者を対象とし、ボランティア活動を通じて社会参加や地域貢献をし、参加する高齢者自身の健康増進と介護予防に繋げることを目的として設けられた制度です。

社会福祉協議会が、市からの委託で運営を行っています。

現在はボランティア活動の対象となる範囲が広がり、一般高齢者だけでなく、介護認定を受けた人もボランティアとして活躍しています。

参加するときの注意点

体調管理

ボランティアへの参加が決まったら、体調管理を万全にして参加しましょう。

老人ホームで暮らす高齢者の中には、免疫力が落ちている人や、病気になると重症化しやすい人などがいます。

もし、病気をうつしてしまった場合、重大な事態を引き起こす可能性もあります。

体調管理には注意して、健康な状態でボランティア活動を行いましょう。

ボランティア活動の当日に、もし普段と違う状態であったり、風邪症状が出ている場合には、参加を控えることも大切です。

笑顔やマナーを欠かさないこと

笑顔で接することや、基本的なマナーは、ボランティアをする以前に、社会において大切なことです。

  • 元気な挨拶
  • 丁寧な言葉遣い
  • 笑顔を忘れない

こうした対応は欠かさず、しっかり行います。

入居者や職員に対して敬意を持ち、思いやりの心を持って接することで、信頼関係が築かれ、良いコミュニケーションが生まれます。

このような対応が出来ていないと、入居者も職員も不安に感じてしまいます。

高齢者である入居者を尊重した言動

ボランティアを行う際は、自己満足で行動するのは控えます。

入居者が何をして欲しいのか、何を望んでいるかを考え、相手の気持ちを尊重した行動を心がけましょう。

入居者に対してだけでなく、ボランティアを行う施設の職員や、同じボランティアに対しても、相手を思いやった行動を心掛け、協力しあえる関係を作ることで、円満なボランティア活動を行うことが出来るはずです。

認知症への理解

老人ホームに入居する人の中には、認知症患者もいる場合があります。

認知症について、どんな病気なのか、どんな症状があるのか、ということは事前に知っておきましょう。

認知症は個々によって程度や、症状、対応が異なる場合が多いです。

予め現場スタッフに症状の程度や、対応方法について確認しておくことも大切です。

ボランティアに参加する際は、認知症を患う人に対しても、自尊心を傷つけない対応が重要です。

また、各地で「認知症サポーター養成講座」などが開催されています。

認知症への理解を深めるためにも、こうした講座へ参加することは有効な手段といえます。

職務権限を侵さない

ボランティア活動は、現場で働く介護職員から依頼された案件に沿って行うことが鉄則です。

ボランティア活動中は、依頼された事柄に専念することが大切です。

活動内容については、事前に介護職員と打ち合わせを行い、合意の上で行うようにしましょう。

ボランティア活動中に、入居者から身体介助を希望された場合でも、ボランティアは勝手に介助すること控えます。

個人情報の口外禁止等のルールを守る

ボランティア活動を行う上で、個人情報は厳守することがルールです。

ボランティア活動で知りえた情報は、外部に漏らすことはないよう、個人情報の取扱いについて、ルールを守りましょう。

各施設において、個人情報の取扱いに規則を設けているところもありますが、必ず現場の規定に従うようにします。

特に気を付けたいのは、入居者の情報です。

老人ホームへの入居を外部に知られたくないと考えている人もいます。情報管理を徹底して、ボランティア活動を行いましょう。

ボランティア保険加入の検討

ボランティア保険は、ボランティアの活動中に起こった怪我や事故を保障してくれる保険です。

社会保険協議会のボランティア活動保険の場合

タイプ 保険料(年間) 死亡保険金 入院保険金(日額)
基本タイプA 350円 1,040万円 6,500円
基本タイプB 510円 1,400万円 1万円

上記の基本タイプ以外にも、天災(地震・津波など)への補償を含んだタイプの保険も選択できます。

参考:社会福祉協議会「ボランティア活動保険」

ボランティアを辞めるときは

ボランティアは自発的に行うことで、特に契約等はありません。

ボランティアを辞めることになったときは、所属するボランティア団体や、ボランティアを行った施設等に辞めることを伝えましょう。

可能な限り、後日挨拶に行くなど、関係を壊さないような対応を心掛けます。

社会的地位は関係ない

ボランティアに参加する場合には、社会的地位があるなしは関係がありません。

ボランティアとして活動する以上、みんな平等です。

ボランティア同士はもちろんですが、入居者や介護職員とも対等な関係を築いて活動していくことが基本になります。

お互いの役割を考え、協力しながら活動することで、より有意義な経験と成果を得ることができます。

介護施設でのボランティアの今後

介護職員の人材不足を補うボランティアの存在

介護施設でのボランティアの需要は、今後ますます高くなるといえます。

介護施設では、少子高齢化に伴い利用する高齢者が増えていますが、それに対して、介護職員は少なく、介護業界での人手不足が課題となっています。

介護職員の負担軽減のためにも、ボランティアの存在が重宝される可能性は高いです。

地域資源としてのボランティア活動

少子高齢化によって社会保障費が増加傾向にあります。

政府が推進する、地域包括ケアでは地域資源の活用という点で、ボランティアの活動自体に注目が集まっています。

ボランティアの活動は、高齢者自身の介護予防にも活用できる上、人材不足の解消に繋がることなど、大いに有用といえる存在です。

老人ホームでのボランティアについてまとめ

老人ホームのボランティア活動まとめ
  • ボランティアは個別、集団、施設や職員の手助けになるものなど、多岐に渡る
  • ボランティアは、個々に様々なメリットがある
  • ボランティアに参加する際は、体調管理に注意し、最低限のマナーで接し、規則を遵守する
  • ボランティアは地域包括ケアの一環として、国も注目する存在であり、今後も需要は増える

老人ホームでのボランティアについて、イラストを交えながら解説していきました。

少子高齢化社会が進む日本で、介護サービスを利用する人は増加傾向にあります。

しかし、介護業界は慢性的な人材不足が深刻化しており、職員への業務負担も増えているのが現状です

ボランティアの活動には、国も地域包括ケアの一環として人材の活用に注目をしており、介護業界においても職員の負担軽減や、細やかなサービス提供の一環として重宝しています

「誰かの役に立ちたい」と考えたときは、行動に移す第一歩です。

ボランティア活動を始めるにあたっての注意点等、こちらの記事を参考にして参加してみてください。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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