介護保険負担限度額認定証とは?減免要件・負担段階から申請の方法まで全て紹介
更新日時 2023/12/13
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「介護保険負担限度額認定証があるとどんなことができるの?」
「介護保険負担限度額認定証を使った負担軽減について詳しく知りたい!」
このようにお考えの方も少なくないでしょう。
介護にはお金がかかり、介護保険のサービス外である場合には全額自己負担になってしまうものもあります。
例えば、介護保険施設やショートステイを利用したときの食費や宿泊費です。
これらを全て自己負担すると大変な額になりますが、介護保険負担限度額認定制度を利用することで、一定の要件を満たすと所得によってこれらの負担の減免を受けることができます。
今回はこの介護保険負担限度額認定証、及び介護保険負担限度額認定制度について解説します。
負担の減免が受けられる条件、申請方法などを詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 介護保険負担限度額認定制度とは、介護保険施設やショートステイ利用時の食費・宿泊費の自己負担額を減免する制度
- 減免を受けるには、所得や預貯金の要件がある
- 必要書類を市区町村に提出すると、4段階の利用者負担段階と負担限度額が決定する
介護保険負担限度額認定証・認定制度の概要
介護保険負担限度額認定制度とは、要件を満たすことで介護保険施設を利用する際の居住費及び食費を軽減することのできる制度のことです。介護保険負担限度額認定証は、この制度の対象者のみに交付されます。
お住まいの自治体に申請すると発行してもらうことができますが、施設に入居している方も、施設から申請することができます。施設に入居している方には、毎年申請書類が送付されてきます。
一般的な介護保険サービスは1~3割負担ですが、介護保険施設やショートステイの利用時、食費や宿泊費は全額が自己負担額です。
しかし、この介護保険負担限度額認定制度を利用すれば、全額自己負担額のところを、要件を満たす人には上限額が設定され、一定額を軽減することができるのです。
なお、介護保険負担限度額認定制度の適用範囲や軽減額は、利用する自治体によって異なる場合がありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
以下に、この制度を利用できる要件を解説していきます。
負担の減免を受けられる要件は?
介護保険負担限度額認定証は全ての人がもらえるわけではなく、所得と預貯金等の要件があります。その基準は、世帯構成などによって異なります。
以下に、詳しい内容を見ていきましょう。
所得の要件
先ほど、介護保健施設を利用するとき、家賃にあたる居住費と食費は全額自己負担だと述べました。
しかし、介護保険負担限度額認定を受け、居住費と食費の全額自己負担分が負担軽減を受けられる要件は2つあり、そのうちの1つは本人を含む世帯全員が住民税非課税であることです。
本人の配偶者が別世帯になっている世帯もありますが、この場合も、配偶者も住民非課税世帯であれば該当します。
預貯金等の要件
預貯金の要件は、配偶者がいる場合は2,000万円以下です。
配偶者がいない方の場合は、預貯金額などが1,000万円以下になります。
預貯金とは「資産性があり・換金性が高く・価格評価が容易なもの」と定義されています。
借金や住宅ローンなどの負債は、預貯金から差し引かれます。
預貯金などの種類 | 対象か否か |
---|---|
預貯金(普通・定期) | ○ |
有価証券(株式・国債・地方債・社債など | ○ |
金・銀(積立購入を含む)などの貴金属 | ○ |
投資信託 | ○ |
タンス預金(現金) | ○ |
負債(借入金・住宅ローンなど) | ○ |
生命保険 | × |
自動車 | × |
貴金属(腕時計・宝石など、時価評価額の把握が困難であるもの | × |
その他効果な価値のあるもの(絵画・骨董品・家財など) | × |
自分の世帯はこの要件に合うかどうか確認してみましょう。
世帯分離しても所得は合計される
世帯分離をしているなど、夫婦で住民票上世帯が異なる家庭もあります。
しかし、世帯分離している場合も、配偶者の所得も合計されますので注意が必要です。 婚姻届を提出していない事実婚でもあっても同様です。
ですから、どのような夫婦形態であっても、介護保険負担限度額認定を受けるためには、本人と配偶者を含む世帯が住民税非課税世帯でなければなりません。
ただし、DV防止法により、配偶者から暴力を受けた場合や行方不明の場合などは対象外です。
このような例外の事由以外は 「世帯分離しても所得は分けられるわけではない」 という点は重要です。
利用者負担段階と負担限度額の関係
上の画像は、令和3年(2021年)8月に改訂された最新版の負担段階・負担限度額です。
介護保険負担限度額認定証を受け取っていても、所得・預貯金の条件によって負担の軽減度合いが変わります。
これを利用者負担段階と言います。負担段階には4段階あり、第1から第4にかけて負担が重くなっていきます。
特例軽減措置
上記の表の第4段階の利用者は、居住費と食費を減額される対象ではありません。
しかし、高齢者夫婦の世帯など、世帯の一人が施設入所したことにより利用料を負担しなければならなくなり、世帯が経済的困難に陥る場合もあります。
そのような場合、条件に該当すれば、入所した人の居住費と食費について、第3段階の負担限度額にすることができます。これが特例軽減措置です。
特例軽減措置は、高齢者夫婦の世帯だけでなく、同居している家族が年収が低く経済的に困難な状況にある場合にも、利用することができます。
対象者・認定要件
特例軽減措置の対象者になる要件は以下の6つです。
- 世帯人数が2人以上。配偶者が同一世帯でない場合には、世帯員の数に1人を加える
- 介護保険施設や地域密着型介護老人福祉施設に入所しており、利用者負担第4段階の方
- 世帯全体の年間収入から、利用者が負担する施設での自己負担額を引いた額が80万円以下
- 世帯の預貯金等の総額が450万円以下
- 日常生活に使う資産以外に資産を持っていないこと
- 介護保険料を滞納していないこと
【特養・老健も】負担軽減の対象サービス一覧
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)なども、負担軽減の対象施設です。
負担軽減の対象施設は以下の施設です。
負担軽減の対象となる施設 |
---|
<施設サービス> 特養(特別養護老人ホーム) 老健(介護老人保健施設) 介護医療院(介護療養型医療施設) |
<ショートステイ> 短期入所療養介護 短期入所生活介護 |
<その他> 地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養) |
ご自身が利用を検討している施設が、負担軽減の対象内の施設なのかどうか、しっかり把握することが重要です。
有料老人ホームは対象外
民間介護施設であるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・グループホーム・有料老人ホームなどは、負担軽減の対象外です。
特養、老健などは負担軽減の対象内なので入居希望者が多いですが、定員以上の入居希望者がおり、入居待機をしている高齢者の方は多いのが現状です。
ただ、サ高住・グループホーム・有料老人ホームなどは介護保険負担限度額認定制度の対象外と言っても、比較的安い料金で入居できる施設もあります。
学研ココファンの提供する施設は、入居一時金0円で利用することができるため、初期費用の面では公的施設に引けを取らないお得さとなります。
入居難易度が高い公的施設だけでなく、こう言ったコストパフォーマンスに優れる民間介護施設も検討することがおすすめです。
ココファンの老人ホーム・介護施設を探す!介護保険負担限度額認定証の申請方法
介護保険負担限度額認定証を申請するには、どうすればよいのでしょうか。申請の方法や注意すべき点などを詳しくご紹介します。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は以下の3点です。
- 介護保険負担限度額認定申請書
- 同意書
- 預貯金等の証明のための添付書類
添付書類については、以下のように細かく内容が指定されています。
預貯金などの種類 | 添付書類 |
---|---|
預貯金(普通・定期) | 通帳の写し(インターネットバンクであれば口座残高ページの写し) 原則、申請日の直近から2ヶ月前までの期間のもの |
有価証券(株式・国債・地方債・社債など | 証券会社や銀行の口座残高の写し(ウェブサイトの写しも可) |
金・銀(積立購入を含む)などの貴金属 | 購入先の銀行等の口座残高の写し (ウェブサイトの写しも可) |
投資信託 | 銀行、信託銀行、証券会社等の口座残高の写し (ウェブサイトの写しも可) |
タンス預金(現金) | 自己申告 |
負債(借入金・住宅ローンなど) | 借用証書など |
生命保険 | ‐ |
自動車 | ‐ |
貴金属(腕時計・宝石など、時価評価額の把握が困難であるもの | ‐ |
その他効果な価値のあるもの(絵画・骨董品・家財など) | ‐ |
申請の手順
介護保険負担限度額認定申請を介護保険負担限度額認定申請書、同意書、その他の書類を準備してください。
提出先は、各市区町村の介護保険課の担当窓口です。提出方法は、郵送または持ち込みでも可能です。
ただし、申請前に必ず自治体のホームページや窓口で必要書類を確認しましょう。
基本的には、申請後一週間程度で結果が通知されます。
ただし、提出書類に不備があるとより通知が遅くなる可能性がありますので注意しましょう。
第1~第3段階に該当した場合には、介護保険負担限度額認定証が交付されます。また、第4段階であればその旨が通知されます。
申請時に注意すべき点
介護保険負担限度額認定証の申請時には、主に2点注意すべき点があります。
不正申告には加算金も
不正申告により、故意に介護保険の負担軽減を受けた場合は、加算金の支払いを命じられます。
加算金は、負担限度額の2倍の金額です。つまり、不正申告をすると、負担限度額の3倍分の費用を払わなければなりません。
また、不正申告によって得た費用については返還することになるため、申告内容には細心の注意を払う必要があります。
ショートステイを利用している場合の申請
ショートステイを利用している際に申請するときの書類では「介護保険施設の所在地」と「名称」の欄を記入する必要はありません。
その他の注意点としては、被保険者本人の名前を書き、ハンコを押して提出することが必要です。
介護保険負担限度額認定証は1年で更新が必要
介護保険負担限度額認定証の期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間です。
毎年更新が必要ですが、一度目に認定されたあとは、翌年以降は自動的に更新書類が送付されます。
時期としては、自治体によって異なりますが、5月上旬頃には送付されることが多いです。
期限ギリギリに更新書類が送付されることはありませんので、更新介護保険負担限度額認定証の期限が切れて利用できない時期が発生することはありません。
ただし、所得や預貯金などの変化によって負担段階が変化しますので、その点には注意しましょう。
一度目の申請時と同じように、負担段階の認定があり、その結果が送付されてきます。
通知が来たら、負担段階が前回と同じか、または変わっているのかよく確認しましょう。
介護保険負担限度額認定証についてまとめ
- 負担限度額を決める際に参考にされる所得は、世帯分離をしていても合算される点には注意が必要
- 介護保険負担限度額認定証は1年ごとの更新なので、毎年申請する必要がある
- 介護保険負担限度額認定制度対象内の特養や老健などは入居しにくいため、サ高住、グループホーム、有料老人ホームなど民間介護施設への入居も検討しよう
介護保険負担限度額認定制度は聞いたことがない制度だったという方もいるかもしれません。
しかし、介護保険施設やショートステイでの食費・宿泊費が場合によっては減免されるという非常に便利な制度です。
減免を受けるにはいくつか要件がありますが、それをクリアさえすれば、負担限度額が決定します。
特に、住民税非課税世帯の方でも介護保険施設やショートステイを利用しやすくなる点は大きなメリットです。
ただ「介護施設に入居するなら特養や老健がいい」とお思いの方もいるかもしれません。
しかし、特養や老健などは入居が難しいのが現状です。有料老人ホームなど民間介護施設の入居も検討してみてはいかがでしょうか。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。
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