介護処遇改善手当とは?もらえる方法・支給額や特定処遇改善加算について解説
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)
「介護処遇改善手当とは、どのような意味を持つ手当なの?」
「介護処遇改善手当は、いくらくらい支給されるの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
介護人材の不足が社会問題となっていますが、給与アップや待遇を改善する意味を込めて介護処遇改善手当が創設されました。
介護職に携わっている方は、自分が対象となっているのかやいくらくらい貰えるのか、どのような計算方法なのか、気になる方も多いでしょう。
こちらの記事では、介護処遇改善手当の意味や支給額、支給方法などを解説していきます。
介護職に就いている方・これから目指している方に役立つ内容となっているので参考にしてください!
介護サービス事業者が得た利益を介護職員に還元する仕組み
事業者に「いくらくらいもらえるのか」「自分が対象なのか」確認してみよう
手当がもらえないケースも有るので、事前に確認しておくと安心
今後の介護職員の待遇を改善する動きは進んでいくと考えられる
介護処遇改善手当の意味とは
介護処遇改善手当とは、処遇改善加算を介護サービスの利用料に上乗せして請求し、得られた利益を介護職員に分配する仕組みです。
処遇改善加算とは、一定の要件を満たした事業所であれば、介護職員の給与を増やすお金が国から支給されるシステムで、1人あたり最大月37,000円相当が受け取ることが可能です。
処遇改善加算は、介護業界の人手不足を解消するために、長期間働ける環境を整備し、優秀な人材を確保するために実施されました。介護職員の給与の増加や、職場環境の改善による離職率の減少が目的となっています。
処遇改善加算は4段階あり、段階に応じて加算を請求して職員の賃金改善に充てられます。
介護処遇改善手当の背景・目的
介護処遇改善手当という仕組みが設けられた背景には、介護職の収入が他の業種と比較して低いことや離職率が高いこと、これらが原因となって人材不足な状況が続いている状況があります。
2026年度には約240万人、2040年には約272万人の介護職員を確保することが必要とされています。
出典:厚生労働省介護人材確保に向けた取り組み 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
高齢化が進んでいく日本において介護人材の不足は大きな問題となるので、介護人材を確保する意味合いは非常に大きいです。
まずは賃金を改善して介護職員の処遇を改善することで、雇用を安定させる意味も込めて介護処遇改善手当が導入されました。
介護処遇改善手当は介護職員のモチベーション向上にもつながり、高品質かつ安心して介護サービスを受けられる社会を実現するために必要な施策の一つとして位置づけられています。
介護処遇改善手当を受け取る条件
介護処遇改善手当を受け取るためには、勤務先の事業所が「介護職員等処遇改善加算」を算定している必要があります。
2024年度の介護報酬改定以降は、従来の3つの加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が一本化され、新しい処遇改善加算としてⅠ〜Ⅳの4区分で加算率が設定されています。
新しい処遇改善加算の算定要件は
月額賃金改善要件(Ⅰ・Ⅱ)
キャリアパス要件(Ⅰ〜Ⅴ)
職場環境等要件
の3種類で構成されており、いずれも満たす必要があります。
処遇改善加算の加算要件
介護処遇改善手当には月額賃金改善要件・キャリアパス要件・職場等改善要件が設けられていますが、詳細は下記の通りです。
算定要件 | 内容 |
|---|---|
月額賃金改善要件Ⅰ | 新加算Ⅳで入ってくる加算額のうち、少なくとも 1/2(7.2%相当)以上を基本給として月給アップに使うこと |
月額賃金改善要件Ⅱ | 事業所が新加算Ⅰ〜Ⅳを新たに算定する場合に、旧ベースアップ等支援加算分の2/3以上を基本給の引き上げとして実施すること |
キャリアパス要件Ⅰ | 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること |
キャリアパス要件Ⅱ | 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること |
キャリアパス要件Ⅲ | 経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を 判定する仕組みを設けること |
キャリアパス要件Ⅳ | 経験・技能のある介護職員のうち少なくとも1人について、賃金改善後の年額賃金が440万円以上となるようにする |
キャリアパス要件Ⅴ | サービス類型ごとに、一定割合以上の介護福祉士などの有資格者を配置していること |
職場環境等要件 | 賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること。例としてキャリアアップ支援や働きがいの醸成などがある |
※就業規則などの明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む。
出典:厚生労働省 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の概要
なお、キャリアパス要件Ⅲの昇給の仕組みの例としては、具体的に下記のようなものが挙げられます。
勤続年数、経験年数などに応じた昇給
介護福祉士などの資格取得に応じた昇給
実技試験や人事評価の結果に応じた昇給
スキルアップを目指したり長く働くモチベーションを高めることができる仕組みと言えるでしょう。
また、介護職員処遇改善加算を受け取るためには、処遇改善内容等を雇用している全介護職員に周知する必要があります。
職場環境など要件については以下のような区分に分かれています。
以下の区分ごとにそれぞれ1つ以上取り組んでいることが介護職員など特定処遇改善加算の条件となります。
区分 | 具体的内容 |
|---|---|
入職促進に向けた取り組み | 法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策仕組みなどの明確化 など |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動 |
両立支援・多様な働き方の推進 | 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 など |
腰痛を含む心身の健康管理 | 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 など |
生産性向上のためいの業務改善の取り組み | 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減 |
やりがい・働きがいの醸成 | ミーティングやカンファレンスを活用した意見交換・振り返り など |
ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 など
出典:厚生労働省介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の概要
介護処遇改善加算の加算段階と新加算率
上記のように、要件をどれだけ満たしたかによって加算段階が決まり、中でも加算(Ⅰ)が最も加算率が大きいです。
なお、サービス区分ごとの新加算率は下記の表の通りです。
サービス区分 | 新加算 I | 新加算 II | 新加算 III | 新加算 IV |
|---|---|---|---|---|
訪問介護/夜間対応型訪問介護/定期巡回・随時対応訪問介護看護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
通所介護(デイサービス) | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
通所リハビリテーション(予防含む) | 8.6% | 8.3% | 6.6% | 5.3% |
地域密着型特定施設入居者生活介護(特養など) | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
認知症対応型通所介護 | 18.1% | 17.4% | 15.0% | 12.2% |
小規模多機能型居宅介護(および複合型サービス) | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
地域密着型介護福祉施設(特養など) | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
介護処遇改善手当受給までの流れと金額
事業所が請求できる処遇改善加算の計算方法
加算率は、事業所が認定されている処遇改善加算の加算段階と行っているサービス内容で決まります。
介護サービス費に対して決められた割合分を請求できる仕組みですが、分かりやすくするために事例を挙げて計算方法を解説していきます。
※訪問介護の新加算 II の加算率は 22.4%
・介護給付 9,000円 + 2,016円 = 11,016円
・自己負担 1,000円 + 224円 = 1,224円
処遇改善加算 の2,240円は職員に支給
※地域密着型特定施設入居者生活介護の新加算 II の加算率は 12.2%
・介護給付 9,000円 + 1,098円 = 10,098円
・自己負担 1,000円 + 122円 = 1,122円
処遇改善加算の 1,220円は職員に支給
以上の計算方法で算出しますが、介護処遇改善加算として受け取った分は必ず職員の処遇改善として使う必要があります。
1円でも残してしまうと違反となり、返還や認定取り消しに繋がってしまう恐れがあるので要注意です。
介護処遇改善手当はいくらもらえる?
気になる介護処遇改善手当の金額ですが、厚生労働省の資料によると下記の表のような金額となります。
段階 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ |
|---|---|---|---|---|
介護職員一人あたり加算額(月) | 37,000円相当 | 27,000円相当 | 15,000円相当 | 13,500円相当 |
上記の金額はあくまでも目安であり、必ずしもこの金額通りに支給されるわけではない点に注意しましょう。
処遇改善手当は事業所や職員によって異なるため、詳しくは勤務先に確認するしてください。
介護処遇改善手当の支給方法・支給時期
介護処遇改善手当の支給方法には、下記の3パターンがあります。
基本給の増額
賞与に反映する
特別手当として支給
しかし、厚生労働省の資料によると、加算を受けている事業者の内、支給方法として取り入れているのは下記の通りです。
ベースアップ等(基本給や毎月の手当の底上げ)で対応:59.8%
定期昇給の実施:43.6%
各種手当の新設:17.8%
既存の各種手当の引き上げ:24.4%
賞与等の引き上げまたは新設:33.1%
(複数回答のため合計は100%を超えます)
現在は約6割の事業所がベースアップ等によって毎月の給与水準そのものを上げる形で活用しています。
支給時期としては、
毎月の給与に上乗せ(基本給・毎月手当)
年2回など賞与支給時に一部をまとめて支給
といった形が一般的ですが、具体的な配分方法・支給タイミングは事業所ごとに決定されます。
手当は毎月もらうことができる?
介護処遇改善手当の支給時期や支給方法については管理者に任せられているため、従業員が手当てを受け取れる時期や頻度は各事業所で異なります。
毎月の給与に上乗せして支給される場合もあれば、ボーナスのように一時金として支給されることもあるので、支給方法はまちまちと言えるでしょう。
しかし各事業所は、手当の支給時期や方法を決める際に、公正かつ透明性のある基準を設け、従業員に十分な説明を行うことが求められているため、自身で調べて把握しておくことをお勧めします。
介護処遇改善手当をもらえない人は?
下記のような方は介護処遇改善手当をもらえないので注意しましょう。
そもそも勤め先の事業所が介護処遇改善加算を受け取っていない
介護の事業所に勤務しているが、介護職ではない
介護処遇改善手当の配分の際に、事業所が選んだ配分対象になっていない
以下の事業所は介護処遇改善手当の対象外となります。
処遇改善を取得していない介護事業所
訪問リハビリテーション
福祉用具貸与
特定福祉用具販売
居宅療養管理指導
居宅介護支援
介護予防支援
このように、事業所によって大きく事情が異なる点は把握しておくべきです。
また、介護施設に勤めていても内勤事務など、介護現場に出ていない場合は手当をもらえないので注意しましょう。
自分が処遇改善手当を貰えるのか知りたい場合は、勤め先に個別に確認することをおすすめします。
せっかく国が介護職員の処遇改善のために設けた制度なので、自身がもらえるかもらえないかは細かく確認しましょう。
自分の手当の額をまずは確認してみよう
処遇改善手当は毎月の給料に上乗せして一緒に振り込まれることが多いですが、ボーナスや一時金として支給されることもあります。
制度についてそこまで気にせず、意識せずに受け取っている方もいるかもしれませんが、ぜひこの機に「いくらもらっているのか」チェックしてみましょう。
まずは給与明細や就業規則を見直して、そもそも自分が対象となっているのか、もらっている場合はいくらなのか、どのような支給方法なのかを確認すると良いでしょう。
手当の額に納得できない場合は?
勤続年数の長さや業務の内容など、手当の金額は総合的に鑑みて決められることになります。
もし、自身が受給している手当の額が少なく納得いかない場合は、転職を検討することも選択肢の一つとなります。
幸いなことに、介護職の求人数は多く経験者が食いっぱぐれることはほとんどありません。
転職活動を通して「自身の市場価値」を見直す良い機会にもなるので、現在の職場の手当の金額や待遇に不満がある場合は転職を検討しましょう。
なお、事業所が介護職員処遇改善加算の算定要件を満たしていているのも関わらず給与や手当に反映されていない場合は事業所が支給額を従業員に支払っていない可能性があります。
この場合、労働基準法に基づき従業員は支払われるべき金額を正当に受け取る権利があります。
もし従業員が支払われるべき金額を受け取っていないと感じた場合は、まずは上司や人事担当者に相談することが重要です。
それでも問題が解決しない場合は、労働基準監督署に相談することができます。
介護職の方への追い風
高市早苗首相は、賃上げと社会保障の持続性確保を重要課題に据え、介護の人材確保・定着を政策の中心テーマの一つとして扱っています。
実際、介護分野では報酬改定と処遇改善の仕組み見直しが進んでいます。
さらに国は、2024年度に+2.5%、2025年度に+2.0%のベースアップにつながるよう、改定による加算措置の活用などを促しています。
つまり「公定価格(介護報酬)の枠組みの中で、賃上げを継続的に起こす」設計がより明確になった形です。
仕事のAI化は一部のみ
介護職員の人手不足という状況を受け、介護現場に職員の身体的負担を軽減するためのロボットやAIを導入する事例が相次いでいます。
これにより「人間の仕事が無くなるのでは?」という指摘がありますが、介護現場において利用者に快適に生活してもらうためには、人間と人間のコミュニケーションが欠かせません。
つまり、いくらAIやIT分野が発達しても、結局のところ信頼関係を築く根幹となるのは人間とのコミュニケーションなのです。
そのため、今後は介護業界において「肉体労働などはロボットに任せ、きめ細かいサービスは人間が提供する」という構図が実現されていくでしょう。
介護職員初任者研修や介護職員実務者研修などといった介護系資格有している人材の需要は高い状況が続くと考えられるので、積極的にスキルアップを目指しつつ現場経験を積んでいきましょう。
また、条件を満たす方であれば20%OFFで講座を受講できる「一般教育訓練制度」を使うことでお得に資格を取得しながらキャリアアップを目指せるので、併せて活用を検討してみてください。
介護処遇改善手当の意味や支給額まとめ
支給方法は会社に任されているので、給与明細や就業規則を確認してみよう
自分が手当をもらっているのか、支給額はいくらなのかチェックしてみよう
今後も介護職員の待遇改善は進むので、積極的にキャリアアップを目指そう
介護処遇改善手当をはじめとして、介護職員の待遇を改善して人材を確保するための政策が行われています。
金銭的なメリットを設けることで現に介護職員として働いている方のモチベーションアップにもなるので、この機会に自分が該当しているのかを確認してみましょう。
また、併せて自分がいくらもらっているのかも確認し、事業主がきちんと支給しているかチェックしてみてください。
今後も介護職員の処遇改善は進んでいくと考えられるので、ぜひ積極的にキャリアアップを目指していきましょう。
この記事は専門家に監修されています
介護支援専門員、介護福祉士
坂入郁子(さかいり いくこ)