漢方薬に副作用はある?飲み過ぎなどの原因やかゆみ等の注意すべき症状も解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「漢方薬の副作用について詳しく知りたい!」

「漢方薬が合わない場合はどうすれば良いの?」

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

漢方薬は生活の中でよく馴染んでおり、風邪を引いた際に葛根湯などを服薬した経験がある方もいるでしょう。

しかし、合わない薬を飲んだり、飲み過ぎると湿疹やかゆみなどの副作用が出ることがあるので、漢方薬の副作用について知っておくことは重要です。

こちらの記事では、漢方薬の副作用症状や飲み過ぎてしまう原因などを解説していくので、参考にしてください。

漢方薬の副作用についてざっくり説明すると
  • 飲み過ぎたり、身体に合わない場合は副作用が出やすくなる
  • 症状としては、かゆみや頭痛などが代表的
  • 服薬を中断すれば治るのが一般的
  • 近年は認知症やフレイルの治療にも用いられている

漢方薬でも副作用は発生するの?

漢方薬は日本人の生活によく馴染んでいる薬で、服薬したことがある方もいるでしょう。

体調不良などの場面で用いられるケースが多く、葛根湯などをはじめとして市販薬でも多くの漢方薬が売られています。

漢方薬は様々な治療効果が期待できる有用な薬ですが、飲み過ぎると高血圧や胃腸不良、かゆみや湿疹などの副作用が起こす可能性がある点も見逃せません。

用法用量を守って服用すれば高い薬効が期待できますが、使い方が独特な面もあり用法用量を間違えてしまうと病気を悪化させてしまいます。

薬の種類や服用する人の体質などによって副作用の症状や強さは変わってきます。

また、漢方薬は一般的な医薬品とは異なる成分や作用があるため、他の医薬品やサプリメントとの併用によっては相互作用が起こる場合があります。

漢方薬を服用する場合には必ず医師や薬剤師に相談してからにするのが良いでしょう。

飲み過ぎなど副作用が起こる主な原因

漢方薬の副作用が起こる原因

漢方薬を通して副作用が起きてしまう主な原因としては、下記のものが挙げられます。

  • 規定量を超えて飲み過ぎる
  • 複数の種類の漢方薬を自分の判断で飲む
  • 生薬を含む市販薬やサプリメントを併用する

漢方薬に限らず、服薬する際には用法用量を守ることが重要ですが、含まれる生薬の重複にも注意が必要です。

そのため、飲み過ぎを避けるためにも市販薬やサプリメントを併用する場合は特に注意しなければなりません。

とはいえ、漢方薬で生ずる副作用は比較的軽い症状が多く、ほとんどの場合は服薬を中止すれば軽快します。

漢方薬と西洋薬の副作用の違い

漢方薬は生薬と呼ばれる植物・動物・鉱物などを組み合わせた薬で、一般的に効果が穏やかなものが多いです。

生薬は自然の原料からできており、人間の身体に本来備わっている自然治癒力を高める効果もあります。

漢方薬の薬効は穏やかなので、西洋薬のように飲み始めて数日間で治療が必要となるレベルの副作用が出ることは稀と言えるでしょう。逆に言えば、治療期間が長くなることも少なくありません。

成分である生薬自体にアレルギーを持つ場合や効能が強い生薬が含まれている場合があり、これらの働きによって皮膚症状や胃痛などの消化器症状が起こる場合があります。

一方で、西洋薬は肝臓や腎臓の機能が低下している場合に副作用が出やすいため、これらの点は大きな違いと言えるでしょう。

処方する際には、個人個人の体質や症状を考慮した上で合う合わないを判断するため、患者と医師のコミュニケーションが非常に重要となります。

副作用が発生・悪化しやすい方の特徴

副作用が発症しても、多くの場合は服薬を中断することでは治めることができます。

しかし、0.1%未満の頻度で治療が必要となるレベルの副作用を発症する場合があるため、油断は禁物です。

特に、下記に該当する方は副作用が起こりやすいため、注意が必要となります。

薬による副作用を注意すべき人
  • 漢方薬を3種類以上あわせて服用している方
  • 飲み始めてから3ヶ月経過していない方
  • 50~80歳代の中高年の方
  • 胃腸の弱い方
  • 女性(男性よりも発現率が約2倍)
  • 食事のバランスが偏っている方
  • インスタント食品をよく食べる方
  • 利尿剤を飲んでいる方
  • 肝臓疾患で治療をしている方
  • 糖尿病でインスリン治療をしている方
  • 副腎皮質の働きが弱い方
  • 健康診断や採血検査を1年以上受けていない方
  • 服用した薬で副作用が起きた経験がある方
  • アレルギーの経験がある方

自分が漢方薬による副作用のリスクが高いか否かを把握しておくことで、医師や薬剤師に相談しやすくなります。

副作用が起こりやすい場合の対処法

漢方薬の副作用には対処法があるため、副作用が起こりやすい場合の対処法について知っておきましょう。

〈高齢の方〉

高齢になると代謝機能が低下して薬の副作用が現れやすくなるため、飲む量を減らす対処法が効果です。

普段と違う症状が現れたら、すぐにかかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。

〈胃腸が弱い方〉

漢方薬の成分は、食欲不振・腹痛・下痢・胃のもたれなどが引き起こすことがあります。

そのため、胃腸の弱い方はあらかじめ医師や薬剤師に相談して、量などを調節してもらいましょう。

〈服用した薬で副作用が起きた経験がある方〉

漢方薬の中には、過去に副作用を起こした成分と同じ生薬が含まれている場合があります。

そのため、過去の副作用遍歴などをできるだけ整理して、かかりつけ医や薬剤師に伝えておきましょう。

〈アレルギーの経験がある方〉

生薬の中にアレルギー物質が含まれている可能性もあることから、過去のアレルギー歴についてかかりつけ医や薬剤師に伝えておきましょう。

副作用のリスクを軽減するためには、医師とのコミュニケーションが非常に重要となります。

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注意すべき漢方薬の副作用の症状

漢方薬が引き起こす副作用の中にも、注意するべき症状があるので確認しておきましょう。

症状の種類について知っておくことで、発症しても冷静に対処できるようになります。

偽アルドステロン症

偽アルドステロン症とは、生薬の「甘草」によって引き起こされる副作用です。なお、「甘草」は漢方エキス製剤の約7割に含まれています。

甘草の主成分であるグリチルリチン酸によって、血圧上昇・むくみ・体重増加・カリウム喪失などの症状が起こることがあります。

併用する薬によっては起こる頻度が高くなってしまう恐れがあるので、甘草やグリチルリチン酸を含む薬・一部の利尿薬と併用する際には注意しましょう。

皮疹

人参・黄耆を両方含む参耆剤や桂皮などの解表作用のある生薬は、発疹や蕁麻疹などの皮膚症状を引き起こす可能性があります。

また、皮膚炎を治す薬剤に紫雲膏がありますが、紫雲膏は以前に過敏症を起こしたことがある方には外用が禁じられています。

漢方薬を服薬してから皮膚に何らかの異変や症状が起きた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

上部消化器症状

上部消化器とは、食道・胃・十二指腸を指しており、上部消化器症状は胃の不快感やもたれ、食欲低下などを引き起こす副作用です。

麻黄・地黄・当帰・川芎などを含む処方を用いる場合に生じることが多いため、食堂や胃に不安がある方は注意しましょう。

不安がある場合は、服用時間を食前から食後に変えたり服用量を減らすことで対処可能なので、医師と相談しながら対策を考えてみてください。

肝機能障害

肝臓病に対して漢方が高い薬効を示す場合が非常に多く、肝臓病の治癒や病状のコントロールをする上で大きな期待がされています。

肝機能障害を起こしてしまう頻度は少ないものの、柴胡や黄芩を含む漢方薬を服用後1~2週で発症することがあります。

なお、服用しても問題ないのは、急性期から慢性期に移行する段階で体力が残っている方です。

肝硬変まで進行してしまった方や、体力の落ちている方は副作用が出やすいため服用が禁じられています。

間質性肺炎

間質性肺炎とは、発熱・空咳・呼吸困難などの症状が現れ、全症例の約半数で原因が解明されていません。

小柴胡湯・柴朴湯などを含む処方で起こりやすいことから、不安がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

間質性肺炎を発症してしまうと、早期に適切な処置を行わないと重篤化する危険があります。

そのため、服薬後に咳などの肺炎症状が現れた場合は、迷わずに医師に相談してください。

かゆみ・むくみ・湿疹など生薬別の副作用

生薬には、種類ごとに起こしやすい副作用があります。

そのため、初めて漢方薬を飲む場合や長期的に服薬する際には注意が必要です。

なお、代表的な生薬の副作用は下記の表の通りなので、当てはまる症状があれば早めに医療機関を受診してください。

生薬の種類 生薬の特徴、副作用の症状
甘草 「偽アルドステロン症」「低カリウム血症」「ミオパシー」
血圧の上昇、手足のしびれ、むくみ、つっぱり感、筋肉痛、こわばりなど
麻黄 動悸、不眠、頻脈、多汗、血圧上昇、胃もたれ、食欲不振、みぞおちの痛み、下痢、尿の出にくさなど
地黄 胃もたれ、食欲不振、下痢など
附子 「アコニチン中毒」
動悸、口や舌のしびれ、手足の麻痺・しびれ感、のぼせ、吐気・嘔吐、発汗など
山梔子 「腸間膜静脈硬化症」
腹痛、便秘、下痢、腹部膨満など
黄芩 「間質性肺炎」「肝機能障害」
発熱、空咳、頭痛、全身のだるさや痒み、呼吸困難、食欲不振、不眠など

漢方薬は副作用以外にも身体に影響をもたらす

漢方薬は、副作用以外にも身体に影響を及ぼします。

安心して服用するためにも、身体への影響について知っておきましょう。

長期間服用すると身体の負担になることも

漢方薬は日常生活によく馴染んでいるとはいえ、長期間の服用は身体への負担になってしまいます。

特に、「大黄」という生薬が含まれる漢方薬は大腸を刺激して便を出しやすくする効能があることから、便秘に悩んでいる方に効果があります。

しかし、長く飲み続けると自身の腸機能を弱めてしまい、自然治癒力も弱まってしまいます。

さらに、大腸の粘膜に色素が沈着して黒ずんでしまうこともあるため、漢方薬に頼った生活を送るのはおすすめできません。

また、漢方薬は西洋薬と異なり、効果が現れるまでに時間がかかる場合があるため、即効性を求める場合は向いていません。

効能について正確な知識を持ち、利用する際には安全性と効果のバランスを考慮することが大切です。

血液検査に影響を及ぼす

2015年に認められた、物忘れを改善する生薬に「遠志」というものがありますが、遠志は血液検査に影響を与えることがあります。

この事実を知らないと健康診断などで誤った数値が出てしまうことがあるため、要注意です。

また、服薬していることを伝えずに糖尿病の検査をすると、正しく結果が出ずに本来の薬よりも強い薬が処方される可能性があるため正しい治療が行われない恐れがあります。

「遠志」を含む漢方薬として、人参養栄湯や加味帰脾湯、加味温胆湯などが挙げられるので、服薬している方は要注意と言えるでしょう。

妊娠中に服用を控えたい生薬

妊娠5~7ヶ月を過ぎて安定期に突入していると、比較的安全に漢方薬を使用できます。

しかし、全ての生薬が安全というわけではないので、妊娠中の方は注意してください。

妊娠に伴って体内のホルモンバランスや代謝が変化するため、漢方薬の使用は慎重に行ってください。

特に、大黄・桃仁・亡硝・牡丹皮・牛膝・紅花を含む漢方薬は早産や流産のリスクを高めてしまいます。

妊娠中はデリケートな時期なので、余計なストレスを抱えないためにも上記で挙げた生薬を含む漢方薬は妊娠中に服薬しないようにしましょう。

副作用に気づくセルフチェックリスト

漢方薬を服用する方は、身体に何らかの不調を感じるケースがほとんどです。

つまり、元々体調不良な状態であることから、服薬したことによって新たな不調が起きてもそれが副作用と気付きにくいのです。

事前に副作用のリスクについて把握しておくためにも、下記のチェックリストを参考にしてください。

  • いつも疲労を感じている
  • 心当たりのない消化器症状(胃もたれ、下痢など)がある
  • 湿疹やじんましん、かゆみといった皮膚症状がある
  • ベルトや靴下などがきつく、身体のむくみを感じる

上記のような症状があったり、何らかの違和感や不安がある場合は医師に相談することが重要です。

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漢方薬の服用が効果的な病気は?

漢方薬のベースとなっている漢方医学は、自覚症状と他覚症状を重視しています。

つまり、人間の身体が本来持もっている防御作用を高める点に重きを置いていることから、自然治癒力を高めるという点では非常に優れています。

健康診断や精密検査では特段異常が無いものの、体調が優れなかったり冷えや疲労などの不定愁訴を感じるケースでは有効に作用します。

また、高齢者の外科診療や多臓器疾患を持っている方に対する総合的治療などにも高い効果を発揮するので、当該症状に悩んでいる方は漢方薬が覿面に効くでしょう。

葛根湯など身近な漢方薬が合わないことも

漢方薬は日本人の生活に非常に馴染んでおり、かぜ薬として葛根湯を服薬する方も多いでしょう。

一般的に風邪のひきはじめの段階でよく使われる葛根湯ですが、自然に汗が出ないような体質に働きかける効果があります。

一方で、同じく発熱や頭痛などの風邪症状があっても、汗が自然に滲み出るような体質の方には桂枝湯を用いることが多いです。

つまり、単に病気や症状だけで使い漢方薬を選ぶのではなく、体質や症状などの身体の状態を総合的に見て服薬することが重要です。

正確な情報や知識をもとに、漢方薬の利用を検討することが大切です。

これを機に漢方薬に関する知見を深めて、生薬の種類について調べてみてください。

認知症やフレイルの治療に漢方は用いられている

漢方医療は近年大きく発達しており、認知症やフレイルの治療にも取り入れられています。

身体に合わない場合もあるので、医師と相談しながら服薬の判断をして行きましょう。

循環器疾患の治療

心筋梗塞などの循環器疾患の治療においては、半夏厚朴湯という漢方薬が用いられるケースが多いですが、服薬後2週間程度で症状が軽減したという事例があります。

また、慢性心不全の治療をする際にも漢方薬が用いられているので、循環器に関する持病を持っている方は漢方の活用を検討するといいでしょう。

しかし、麻黄や甘草を含む薬は心不全を悪化させたり血圧を上げてしまう副作用が発症する恐れがあるので注意が必要です。

循環器に関する病を持つ方は、信頼できる医師との十分な相談の上で安全性を考慮して漢方薬の利用を検討しましょう。

認知症の治療

認知症患者に対しては抗精神病薬や抗うつ薬などが処方されるケースが多いですが、薬の副作用として運動障害や日常生活動作(ADL)低下などが出現してしまう問題がありました。

近年は副作用を発症させることなく認知症の症状を改善する薬として、抑肝散・抑肝散加陳皮半夏・釣藤散・補中益気湯なども有効であることが分かっています。

服薬後1~2週間程度で症状改善の効果が現れた上に、服薬を中止した後も一定期間効果が持続した事例もあるため、副作用に気を付けながら漢方を用いて認知症治療を進めていきましょう。

フレイル

加齢に伴って運動機能や活力が低下してしまう症状を「フレイル」と呼びますが、フレイル治療においても漢方が活用されています。

実験の結果、牛車腎気丸という生薬に筋肉量を増やす効果があることが判明したので、筋肉量の低下を防止するうえで漢方薬の活用は大きな役割を果たしていくでしょう。

特に高齢者には個別の体質や症状に応じた漢方薬の適切な処方が必要となります。

高齢者が自身に残された身体機能を生かすという観点からも、漢方薬の存在意義や価値は高まっていくと考えられるので、単に「処方されたから飲む」のではなく患者自身も効能について知っておくことが重要です。

漢方薬の副作用まとめ

漢方薬の副作用まとめ
  • 飲み過ぎると副作用のリスクが高まるので要注意
  • 身体に合わない場合は医師に相談して支持を仰ぐことが大切
  • 生薬ごとに副作用の症状が異なるので、事前に知っておくと良い
  • 副作用が起こりやすい方は要注意なので、医師と相談しながら服薬しよう

葛根湯などをはじめとして、漢方薬は日本人の生活に馴染んでいます。

しかし、身体に合わない場合や飲み過ぎると副作用の症状が出てしまうことがあるので、事前にリスクについて知っておきましょう。

医師や薬剤師と相談しながら、適切に服薬するように心掛けましょう。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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