高齢者の水分補給のコツは?必要な水分摂取量や脱水予防の方法まで解説

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「高齢者が水分補給をする際のコツはあるの?」

「一日の水分摂取量や脱水予防の方法について知りたい!

このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

高齢になると脱水状態になりやすくなるので、水分摂取量を把握することは重要です。

脱水を起こしてしまうと、最悪の場合は命に関わってきてしまうので、本人だけでなく介護をする方も意識的に水分補給を促すようにしましょう。

こちらの記事では、高齢者の水分補給のコツや必要な水分摂取量について解説していくので、参考にしてください。

高齢者の水分補給のコツについてざっくり説明すると
  • 体液が果たしていく役割は重要なので、意識的に水分補給を行おう
  • 水分補給を行う生活ルーティンを作るのがおすすめ
  • 水分が多い食事メニューを取り入れるのも有効

高齢者は脱水をおこしやすい

体内水分量の割合

高齢になると脱水を起こしやすくなってしまいます。

身体の変化から身体に水分を蓄える機能が弱まったり、適切水分補給ができなくなることから脱水症状になりやすくなってしまうのです。

具体的な理由としては、以下のようなものが挙げられます。

高齢者が脱水を起こしやすい理由
  • 高齢になると皮膚にある温度センサーの感度が悪くなり、体から熱を逃がす機能が弱まる
  • 水分を蓄える機能を持つ筋肉量が減り、水分を蓄える機能を持たない脂肪が増える、体液量が減る
  • 腎臓の機能が低下して、尿をうまく凝縮できずに尿量が増加する
  • 病気や孤独化に伴って食欲が低下してしまい、食物から水分を得られなくなる
  • 自分で喉が渇いていることを認識できず、適切な水分を摂取できなくなる
  • 下痢や嘔吐が起きやすくなり、水分が減る

高齢者に必要な水分摂取量

高齢者が必要な水分

上記のイラストのように、体重70Kgの方であれば1日あたり2500mlの水分が身体から出ていくので、適切な水分補給は必須です。

そのため、水分補給により取る水分は1日1000~1500mlを目安にして、その他は普段の食事などで補うのが基本となります。

代謝によって生まれる水分もありますが、意識的に水分を補給することが重要と言えるでしょう。

体液の役割

人間の身体は、水分を体液として蓄えています。

体液には様々な役割がありますが、

  • 酸素や栄養を運搬する
  • 老廃物を排出する
  • 汗や尿により体温調節をする

主に上記のような重要な役割を果たしています。

水分が不足していると、血液がドロドロになって血管に負担がかかってしまったり、身体に酸素が回らずに思うように運動できなくなってしまう恐れがあります。

まさに、生きる上で重要なものなので水分補給を怠るのは危険であること分かるでしょう。

高齢者は等張性脱水症が多い

脱水症状には下記の3種類があります。、

  • 高張性脱水症(電解質に対して水分を多く失う)
  • 低張性脱水症(水分に対して電解質を多く失う)
  • 等張性脱水症(水分と電解質を同程度失う)

上記の3種類に脱水症状の中でも高齢者に起こしやすいのが等張性脱水症で、水分以外にも電解質が失われてしまいます。

水分だけでなく、電解質も意識的に取ることが重要と言えるでしょう。

発汗などにより水分は出ていく

気温の寒暖に関係なく、水分は体外に出ていくことを常に意識しましょう。

発汗やアルコール分解により水分は出ていくので、運動時や飲酒時は水分を意識的に摂取しなければなりません。

喉や口の中の渇きを感じた時はもちろん、めまいなどを感じた場合も脱水症状が起きている可能性があるので注意しましょう。

脱水状態で起こりうる症状

脱水が起きてしまうと水分が薄くなるので、血液が濃くなって血栓ができやすくなってしまいます。

血栓とは血液の流れを阻害するもので、血管に血栓ができてしまうと脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクを高めてしまいます。

また、電解質バランスが崩壊して神経に異常をきたした結果として幻覚などが見えることもあるので、本人のみならず同居家族も対応に苦慮する事態となります。

脱水状態になると夏場に熱中症になってしまうリスクの増加し、最悪の場合死に至ることもあるので脱水を甘く見てはいけません。

本人と介護者が意識的に水分補給を意識して、本人が「のどが渇いた」と感じる前に飲み物を摂取するのが理想です。

脱水予防のために必要なこと

先述したように、脱水は命に危険を及ぼすことがある危険な症状です。

脱水予防をするためには、まずは高齢者が脱水の恐ろしさを認識して意識的に水分補給を行うことが重要となります。

また、生活の中で定期的に水分を取るルーティーンを作り、「1時間に1回は飲み物を飲む」など実践するのがおすすめです。

緑茶やコーヒーが好きな方にとってはショックな話ですが、緑茶やコーヒーには利尿作用があるので水分補給の際に常時飲む物としてはおすすめできません。

ミネラルウォーターやスポーツドリンクなどを常備しておくと安心で、無理なく体中に水分が行き渡る飲料を摂取するように心掛けましょう。

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高齢者に水分補給させるための工夫

それでは、高齢者に水分補給させるための工夫について紹介していきます。

こまめな脱水予防

汗をかくと水分補給を意識する方は多いですが、普段の生活の中でこまめに水分補給を意識している方は少ないです。

こまめに水分を取らないと脱水に陥りやすくなるので、意識的に摂取するようにしましょう。

1日あたり1000〜1500ml以上の水分を摂取するのが一つの目安となるので、コップ一杯の水分を6~7杯程度摂取するようにしてください。

特に、水分が不足しがちな寝る前や起きた後は意識的に水分補給をしましょう。

食事からも水分は摂れる

食事と水分

上記の表のように、食品にも水分は含まれているので必ずしも飲料で水分補給する必要はありません。

おかゆ・シチュー・煮物・ゼリーなどに水分は多く含まれるので、積極的に摂取すると安心です。

食事であれば、水分と同時に栄養も摂取できるので健康維持や栄養補給も可能です。

特に、野菜や果物にはもともと水分が含まれている上に栄養価も高いので、非常におすすめの食材です。

原因に合わせて水分補給を促す対策を

もし高齢者が水分を摂取したがらない場合は、要因ごとに対策を練っていきましょう。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • お腹が冷えないように常温の飲み物を用意する
  • 食事量が少ない時はおやつにゼリーなどを取り入れる
  • のどの乾きを感じない場合は、水分を手元に置いておく

本人が意識的に水分を摂取しない場合は、介護者が適宜工夫をしなければなりません。

無理強いするのではなく、本人も抵抗なく水分を摂取できるようにしていきましょう。

嗜好にあわせる

高齢者に十分な水分を摂ってもらうためには、本人の嗜好に合わせることも効果的です。

例えば、好きな飲み物を飲みやすい温度で提供したり、好きな食べ物に添えて水分を摂取することが考えられます。

特に、本人が好きな食べ物であれば積極的に食べてもらえるので、栄養を摂取しながらさりげなく飲み物を飲んでもらうように提案してみましょう。

高齢者に人気のある飲み物

高齢者が好きな飲み物の例として、下記ようなものが挙げられます。

  • 梅こぶ茶(塩分補給効果あり)
  • オレンジジュース、野菜ジュース(カリウム摂取効果あり)

本人の好みを聞いたり普段の様子を観察した上で、ストレスなく水分補給できるようにしましょう。

また、高齢者が好きな水分を摂れる食べ物の例は下記の通りです。

  • リンゴ・メロン・みかんなどの果物
  • ゼリー・プリンなどのおやつ

果物には水分が多く含まれているので、非常におすすめです。

甘くて食べやすい上に栄養価も高いので、健康増進にも役立つでしょう。

また、甘党の方であればゼリーやプリンなどのおやつも楽しみながら摂取できるので、食べ過ぎに注意しながら取り入れてみてください。

冬場はノロウイルスにも注意

冬になると、インフルエンザに加えてノロウイルスも流行しましが、ノロウイルスにかかってしまうと脱水症状を引き起こしやすくなるので注意が必要です。

下痢や嘔吐に伴って体内の水分が多く失われてしまい、十分に水分を補給しないと脱水状態になってしまうのです。

特に、持病のある人や高齢者は脱水症状を起こしやすく、嘔吐で吐き出したものが詰まって窒息してしまったり、気道など異物を飲み込んでしまい肺炎を起こしてしまう危険性もあります。

このように、高齢者の場合は命に危険が及んでしまうケースもあることから、冬場はいつも以上に手洗いや消毒に意識を傾けることが重要と言えるでしょう。

併せて、台所周りや普段過ごす場所の消毒も行い、ウイルスそのものを家の中から消すように意識してみてください。

高齢者の水分補給まとめ

高齢者の水分補給まとめ
  • 1日あたり1000~1500mlの水分を摂取するように意識することが重要
  • こまめに水分補給を粉うように働きかけよう
  • 本人がストレスなく水分補給できるように、嗜好を合わせると良い

高齢になると脱水状態になりやすいので、こまめに水分補給を行うようにしましょう。

季節に関係なく水分を摂取することは非常に重要なので、本人も介護者も一日の水分摂取量を知っておきましょう。

脱水症状は命にも関わってくるので、安心して生活するためにも水分補給をする習慣を身に着けることをおすすめします。

この記事は専門家に監修されています

介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

株式会社学研ココファン品質管理本部マネジャー。介護支援専門員、介護福祉士。2011年学研ココファンに入社。ケアマネジャー、事業所長を経て東京、神奈川等複数のエリアでブロック長としてマネジメントに従事。2021年より現職。

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