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高齢者のひきこもりが増加している?8050問題が起こる理由や対策方法も解説

2023年06月20日
その他

この記事は専門家に監修されています

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介護支援専門員、介護福祉士

坂入郁子(さかいり いくこ)

「高齢者のひきこもりはどのように対処すればいいの?」

「8050問題について詳しく知りたい!」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

以前まで、ひきこもりは「若年者のニート」「不登校児」のイメージがありましたが、近年は50代以上の高齢者のひきこもりの多く発生しています。

また、高齢者になった子をさらに高齢の親が面倒を見る「8050問題」も注目を集めており、原因や対策について知っておくことは非常に重要となります。

こちらの記事では、高齢者のひきこもりが増加している理由や8050問題の対策について解説していきます。

中高年のひきこもりの方を支援するための方法を紹介したので、ぜひ最後までお読みください!

8050問題の原因・対策についてざっくり説明すると
  • 高齢者の引きこもりは増加傾向にあるので、要注意
  • 8050問題は社会問題となっており、無理心中などに繋がる恐れもある
  • 失業や日本独自の文化などが引きこもりの原因とされている
  • 支援団体や医療機関を利用して、早い段階から対策することが重要

高齢者のひきこもりとは

引きこもりの高齢者

ひきこもりとは、仕事や学校に行かずに家にこもっている状況を指します。

具体的には、以下の4項目のいずれかが6ヶ月以上続いた場合、ひきこもりと判断されます。

  • 趣味や用事のときだけ外出する
  • 近所のコンビニなどには出かける
  • 自室からは出るが、家からは出ない
  • 自室からほとんど出ない

ひきこもりと聞いて学生をイメージする方は多いですが、近年は高齢者や老人のひきこもりも問題となっています。

引きこもりは増加傾向

引きこもり高齢者数の推移

全国ひきこもり家族会連合会の『KHJ全国実態調査報告書』によると、2010年には40歳以上の割合が10%程度でしたが、2021年には30%を超えました。

また、内閣府の平成30年度調査の結果によると、全国の満40歳~満64歳までの人口の1.45%に当たる61.3万人がひきこもり状態にあると推計されています。

中高年が引きこもりになってしまうと状況が長期化してしまいがちなので、引きこもりにならないように注意しなければなりません。

老人のフレイルも重要な問題

高齢者のフレイル

フレイルとは「加齢に伴って心身の衰えた状態」を指しますが、フレイルになってしまうと引きこもる確率が高まります。

フレイルになっても努力次第で身体機能や認知機能などを回復できるため、家族も適切にフォローすることが重要です。

引きこもりがきっかけとなることも

引きこもり状態になると運動機会が大きく減るため、筋肉量が低下してフレイルに繋がってしまいます。

特に、高齢者の方のフレイルは生活の質を大きく落としてしまうだけでなく、認知症などの合併症なども招く恐れがあるので非常に危険です。

少しでも長く健康寿命を保つためにも、本人と努力と周囲の方の適切なサポートが必要となります。

運動不足からくるフレイルの予防改善には、個別に合わせた正しい運動プログラムやリハビリテーションを用意することが効果的でしょう。

フレイルサイクルが危険

フレイル状態になってしまった方の状況が悪化してしまう悪循環を「フレイルサイクル」と呼びます。

フレイルに陥る要因は相互に関連しているので、連鎖的に身体に問題を引き起こしてしまう恐れがあります。

元々健康だった方でも、骨折などの一つのアクシデントが様々なフレイル要因を引き起こしてしまうこともあるので注意が必要です。

フレイルになってしまうと身体能力が著しく衰えてしまうので、心身ともに衰弱してしまうのです。

以下の記事ではフレイルについて詳しく書いているのでぜひ参考にしてみてください。

2023.07.28
その他
フレイルとは|意味や症状・原因から予防方法までイラスト付きで紹介

8050問題とは

8050問題の概要

80代の親が50代の子どもの世話をすることを8050問題といいます。

近年問題になっているため、こちらのトピックで確認していきましょう。

80代の親が50代の子供を支える

8050問題とは、子が親を介護するのとは逆に、80代の親が引きこもっている50代の子どもの生活を支えている構図を指します。

引きこもりという言葉は当初は若者の問題とされていましたが、当事者が徐々に高齢化して子が50代、親が80代となってしまいました。

つまり、引きこもりの高齢化が大きな社会問題となっており、親の負担も非常に大きいことが分かるでしょう。

今後も深刻化する可能性が高い

8050問題は、今後もさらに深刻化すると言われています。

40~64歳の引きこもりは61.3万人程度ですが、世間体を気にして報告していない家族の存在を加味すると実際にはもっと数が多いと考えられます。

コロナによって引きこもりが加速

KHJ全国ひきこもり家族会連合会の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で下記のような変化がありました。

  • 定期的な面談や集合形式でのプログラム実施が困難になり、順調に面談を実施していた相談者が引きこもり状態に戻ってしまった
  • 就職してほしいという親の気持ちが、外に出るのは新型コロナが収束してからでいいと先延ばしになっている
  • 本人から「新型コロナが怖い」と言われると、支援しにくい
  • 自粛生活が促され、引きこもっている本人が現状の生活を正当化するようになった

また、コロナウイルスによる収入の低下により、家族の生活が苦しくなってしまった問題も報告されています。

経済的に困窮してしまうと、生活が立ち行かなくなどの様々な問題が発生してしまうので要注意です。

無理心中の事件もある

80代の親と50代の子どもの関係が上手くいかないと、暴力や無理心中などの事件に繋がってしまう恐れがあります。

実際に、2018年に起こった親子の孤立死事件が8050問題を世間に広めるきっかけとなっています。

子の引きこもりの長期化をはじめとして、8050問題には様々な要因が絡んでいるので解決は一筋縄ではいきません。

8050問題が複雑に絡み合った多くの事件が発生していることからも、今後の対策は急務と言えるでしょう。

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8050問題が起こる理由

8050問題の原因には多くの要素が考えられており、一括りにして論ずることはできません。

問題が起こる理由や背景について知っておくことで、未然に防ぐことが可能となります。

仕事を失う

引きこもる前は会社で元気に働いていた、という方は少なくありません。

しかし、職場の人間関係の悪化や上司からのハラスメントなどが原因で、精神を病んでしまい退職するケースは多いです。

また、中高年の場合はリストラや会社の倒産などをきっかけに仕事を失い、活力が湧かずに引きこもりになる方が多くいます。

突然仕事を失ってしまったショックや転職活動の不調が続いてしまうことも引きこもりを招く要因として挙げられています。

そのため、身体のケアのみならず精神的なケアも行うことが重要と言えるでしょう。

ストレスチェックなどで悪い結果が出た際には、恥ずかしがることなく医師に相談しましょう。

ニートの増加

そもそも就労経験がゼロに近く、社会に出る必要性を感じてずに引きこもっているニートも存在します。

特に、現代はインターネットなどが発達した影響で一日中ゲームやチャットにのめりこんでいる方も少なくありません。

その結果、外出する時間が減り社会性を身に着けることもできず、そのまま40代・50代へ突入してしまうのです。

このような状況は、将来的に経済的な問題や孤立化、精神的な健康の悪化など、さまざまな悪影響をもたらす可能性があります。

親が世間体を気にする

いい年になった子が家で引きこもっているという事実は、周囲に打ち明けづらいものです。

実際に、子どもの引きこもりに対する親の姿勢も一つの原因となっており、「50代になった子が、働かずに家に引きこもっている」という状況を恥ずかしいと感じる親は多いです。

周囲とのコミュニケーションが希薄になってしまい、できるだけ外部の人と合わないようにする傾向が強まり、なかなか解決に向かって動けない悪循環に陥ってしまいます。

そのため、悩んでいる親は世間体を気にしすぎるのではなく、勇気をもって行政機関や地域のコミュニティに助けを求めると良いでしょう。

日本の文化も一因か

アメリカのメディアによると、日本社会の風潮や文化が8050問題を引き起こす原因になっていると指摘しています。

日本社会は統一性や周囲との一体感を重視しており、異質者に冷たい傾向が強いためです。

また、日本では欧米と比べて自己認識を助長する教育が行われないことから、引きこもりなどの社会に溶け込めないことを「恥」と感じやすい環境です。

このように、周囲や社会と協調できない自分を否定してしまった結果として、引きこもりになってしまうのです。

早めに対策を打とう

医師と相談する高齢者

引きこもりは、早めに対応しなければ解決が難しくなってしまいます。

なお、全国ひきこもり家族会連合会の『KHJ全国実態調査報告書』によると、2010年から2021年にかけて「引きこもりの開始年齢」と引きこもっている「本人の平均年齢」は上昇しています。

引きこもりは10代後半から始まる

引きこもりは、一般的に10代後半~20代前半の若年の頃から始まります。

一度引きこもりになってしまうと30代を超えても状況が変わらない方が多く、引きこもっている期間は平均7~9年にも及びます。

また、引きこもりの開始年齢と平均年齢は年々高くなっており、引きこもり期間が長期間すると社会復帰が難しくなってしまいます。

そのため、早期の支援や適切な治療、家族や地域社会のサポート体制の充実が求められます。

支援団体や医療機関を利用する

引きこもりの解決支援を行う支援団体や医療機関が存在しますが、継続的に利用している方は46.5%しかいないという調査結果があります。

そもそも、引きこもりの解決支援を行う団体や機関があることを知らない方も多いです。

世間体を気にして子どもの引きこもり状態を隠そうとする余り、意欲的に解決しようとしない親も存在する問題も指摘されています。

これらの支援団体などを利用するハードルを下げることが、引きこもりを解決する上で重要となるでしょう。

引きこもり支援センター

厚生労働省も引きこもりの解決を支援する取り組みを行っており、中でも引きこもり地域支援センターが代表的です。

引きこもり支援センターは各自治体やハローワークと連携しており、中高年の引きこもりにも対応している頼れる相談機関です。

相談窓口業務以外にも、自立支援や就業支援・引きこもりに関する啓発活動なども行っているため、解決のためのノウハウを豊富に持っています。

さらに、引きこもりを早期発見し、引きこもっている本人や家族を支援する人材育成にも取り組んでいるため、引きこもり支援の中心として機能しています。

各都道府県・政令指定都市の相談窓口

各都道府県や政令指定都市では、引きこもりに関する相談窓口を設けて様々な悩みに対応しています。

家族だけで悩んでも解決するケースは少ないので、早い段階から引きこもり支援の専門家に相談することをおすすめします。

早期の相談と適切な支援を受けることで、引きこもりの状況を改善し、再び社会への参加や充実した生活を取り戻すことが可能です。

自治体としても、引きこもり人口が増えると様々な悪影響が出てきてしまうので解決に向けて力を入れているのです。

生活困窮者支援窓口

自治体にある生活困窮者支援窓口では、年齢に関係なく幅広い相談に応じてくれます。

生活困窮者だけでなく、引きこもっている本人や家族の相談や支援も行っているので、悩みや不安があれば積極的に活用するべきです。

経験豊富な専門家が適切にサポートしてくれるので、役立つアドバイスをもらえるでしょう。

地域の生活困窮者支援窓口や関連施設の存在を知り、積極的に相談に足を運ぶことが重要です。

9060問題を防ぐために

9060問題とは

厚生労働省は、現在よりも8050問題が深刻化してしまった「9060問題」が本格化することを懸念しています。

これは、子が60代となり親が90代になってしまった家庭を指しており、現状よりも問題が深刻化してしまっていることが分かるでしょう。

実際に、9060問題が広まってしまうと下記のような問題・トラブルが発生すると予想されています。

  • 孤立死、無理心中の増加
  • 親の死体遺棄の発生
  • 親の年金・生活保護費の不正受給、生活保護費の受給増加

8050問題が多く発生している以上、9060問題は無視できる問題ではありません。

すぐそこまで忍び寄っている、身近で重大な問題なのです。

そのため、1人1人が改善に向けて努力を重ねて引きこもりを少しでも減らしていく取り組みを実行することが非常に重要と言えるでしょう。

ココファンの老人ホームもおすすめ

学研ココファンの紹介

一度家に引きこもってしまうと、心理的にも外に出るハードルが高くなってしまいます。

特に、高齢者の方の場合は心を閉ざしたり引きこもりになってしまう状態になる前に、老人ホームを利用すること選択肢の一つのして考えておくと良いでしょう。

ココファンの老人ホームでは、レクリエーションが充実していたり人と交流できる機会が多く、社会的な繋がりを保つプログラムが充実しています。

外に出ることの楽しみやコミュニケーションを取る楽しさを促すための取り組みが非常に充実しているので非常におすすめです。

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親の理解・共感も重要になる

引きこもりに関する長く関わってきた筑波大学の斎藤環先生は、引きこもっている方を「何らかの理由で、たまたま困難な状況にあるまともな人」と表現しています。

つまり、引きこもりは精神的な疾患を抱えているというわけではなく、社会参加をしない「状態」を指しているので、必ずしも治療が必要とはなりません。

家族の中には「本当は精神的な病気なのではないか?」「治療が必要なのでは?」と、考えてしまう方がいますが、必ずしもそんなことはないので安心してください。

とはいえ、同居家族に引きこもりがいる状態をそのまま放置していいということではありません。

引きこもりが長期化してしまうと、ただでさえ本人が苦しんでいるのに二次的な精神症状や問題行動が顕在化することがあるので、病気ではないにしても専門医師やカウンセラーに助言を求めるのは非常に効果的です。

併せて、引きこもりに関する相談を受けてくれる公的な相談機関も活用しながら、解決に向けて動くことが重要といえるでしょう。

斎藤環先生によると、引きこもり支援には「説得やアドバイスをしてはいけない」「就学や就労をゴールにしてはいけない」「結論ありきの会話をしてはいけない」「対話の継続を目標にする」など、段階を踏んだいくつかのポイントがあります。

また、解決の第一歩は「本人が安心してひきこもれる関係作り」とも述べているので、自宅にいる間は本人の悩みや考え方に共感しながらコミュニケーション機会を増やしていきましょう。

ついつい説得や激励をしてしまいがちですが、これらは逆効果です。

親としては、共感的に接することや対話をすることを忍耐強く継続することが効果的なアプローチとなります。

8050問題の原因・対策まとめ

8050問題の原因・対策まとめ
  • 失業などをきっかけに中高年の引きこもりが発生してしまう
  • 行政も相談窓口や医師に相談することで解決に繋がることがある
  • 9060問題に発展する前に対処することが大切
  • 親が状況を理解して共感する姿勢も重要

高齢者の引きこもりがもたらす問題は深刻であることをお伝えしてきました。

失業やニートの増加など、様々な要因が8050問題を引き起こしているので、誰しもが当事者になり得る問題と言えるでしょう。

支援するための相談窓口や行政機関もあるので、少しでも不安がある方は早い段階から利用して解決するようにしてください。


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